僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた。 作:楠富 つかさ
「ちょっと走り込み行ってくる。あ、お風呂沸いてるからね」
走り込みに行く夏希の声で、ようやくお風呂が沸いていたことを知った。ついついけっこうな話数を見てしまっていた。
「あ、ありがと。車には気を付けなよ!」
知らせてくれた夏希に、注意をしつつ感謝。ついでに、付き合ってくれた麻琴にも感謝。それじゃ、お風呂に行きますか。
「あ、そういえば悠希の着替えってさ、その引き出しに入ってるの?」
我が家の脱衣所は、洗濯機と物干しを置くために広めにできている。そのため、収納もここに置いているのだ。
「あるけど……見ちゃダメだからね」
「えー、選ばせてよー」
「ダメ。恥ずかしい」
そんな問答を繰り返しつつ、お互いに服を脱いで浴室に入る。もわっとした湿気が好きではないものの、手早くシャワーを浴びて湯船につかる。二人で入ってもそれなりに余裕があるものの、温泉と違ってお互い真正面に座ると流石に恥ずかしい。全部見えちゃってるし。……入浴剤くらい入れておけばよかったかな。濁り湯系のやつ。張りのある胸とか引き締まったウエストとか、しなやかな脚とか、女の子のエリアとか、見ないようにしようとしても、つい目に入るし、顔が熱くなってしまう。
「悠希、背中洗ってあげる」
麻琴はちょっと顔が紅い気がするけど、目が泳いでるなんてことはなくて、生まれつきの女の子だからなのかなぁなんて思っていたら、背中を洗ってあげるなんて言われた。向かい合ってるよりはいいかなって思って、湯船から上がる。
「優しくしてね」
風呂椅子にこしかけて髪も前の方にたらして背中を晒す。優しくってむしろくすぐったいくらいの力で麻琴がスポンジを動かす。それが終わると、お礼に今度はボクが麻琴の背中を流してあげた。髪も洗ってあげて、まったりとお風呂の時間を過ごした。
「そういえば、悠希のパジャマ姿ってレアだよね。って、え……」
お風呂上がりのボクの格好は、男子の頃のお気に入りのTシャツを下着の上に着ただけのものだ。男子だった頃の服は夏希にあげる筈だったのだが、肩幅が合わなくて着れない服が多々あり、それで、捨てられそうだったからキープしておいたのだ。ま、本当は半袖パジャマがあるのだが、夏場はこの格好が一番楽なのだ。それに、男物の服はコーディネートによっては、可愛さを増幅させる魔法のアイテムにもなるし。
「あ、あざとい格好してるね……。こう……見えそうで見えない具合が」
「やっぱりパジャマにするよ」
「スト、ストップ! 悪かったって」
確かに弛くて胸元とかパックリしてるけど、他意があってそうしている訳ではないし。麻琴の反応を楽しみにしてたとか、そんなのないし。
「ま、いいや。部屋に行こうか」
「うーい」
取り敢えず階段から二階へ向かう。
「あ、今度は見えた。つっても、中身が分かってると……なんかつまんない」
「こら! いい加減にしなさいよ!」
「だったら……うぅん、なんでもない。ただ、もうちょっと覗いていたい」
「さっさと行くよ!」