僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた。   作:楠富 つかさ

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夏休み
#33 いざ温泉地へ


 電車の揺れる音にも負けない蝉の鳴き声を聞きながら、ボク達七人は旅館のある温泉地へ向かっていた。電車で一時間とちょっと。取り敢えず自己紹介をする流れになったんだけど……。ボクだけする必要がないっていうね。

 

「えーと、一応……自己紹介してみようかな。姫宮悠希、よろしくね」

 

今日はセーラー襟が特徴的なマリンブラウスに膝丈のフレアスカート。タイツにするかニーハイにするか悩んでニーハイにしたけど、どっちみち暑かったかなぁと反省。ま、電車の中は涼しいけど。

 

「次はあたしで。雛田麻琴です。取り敢えずこんだけ」

 

眠いのかなんなのか滑舌も悪いまま麻琴は自己紹介を終えた。ちなみに服装は、気に入ったのか以前姉からプレゼントされた服のタイを省略した着こなしだ。

 

「ユウちゃんと同じクラスの支倉明音です。よろしくねぇ」

 

今日も明音さんはふわふわしている。特に髪の毛とかが。今日もゴールデンウィークの時と同じでロリータファッションに身を包んでいるんだけど、スカート丈が短かったりノースリーブだったり夏っぽさが協調されている。あと、腰がきゅっとしまっている上にフリルの効果もあって普段以上に胸が大きく見える……。初美さん、ちょっと可哀想かも。

 

「同じく初美綾だ。まぁ、よろしくな」

 

Tシャツにショートパンツという活動的な初美さんらしい格好だ。外ではキャップもかぶっていて、少年のような見た目だった。

 

「次はウチかな。本条千歳、今日は誘ってくれてありがとうね、ユウちゃん」

 

白のワンピースに和柄の帯風のリボンが千歳ちゃんらしくてよく似合っていた。

 

「えっと、一年二組の双美希名子です。家は和菓子屋です。あ、これお気に入りの簪なんです」

 

女子高生に簪が似合うなんて思ってもみなかった。しかも希名子ちゃんの格好はふんわりとしたブラウスに長めのスカート。避暑地に行くようなお嬢様って感じなのに違和感なく簪が収まっている。不思議だ……。

 

「最後はあたしか。姫宮光希よ。大学生で悠希の姉。ま、お姉さんって呼んでよ」

 

姉はジーパンにTシャツというラフな格好……ま、素材がいいからギリギリセーフみたいな格好だ。まぁ、初美さんと大差無いと言えばそうなのだが。

 

 

 そんな七人を乗せた電車は、花馬(はなま)駅に到着した。電車を降りた途端に硫黄の臭いがしてきた。この温泉地特有の臭いが苦手な人も多いだろうが、みんな意外と平気そうだ。ただ、

 

「眠い……悠希……おぶって〜」

 

問題児が一人いるのだ。

 

「いや、流石に……」

「昔は出来そうだったじゃんかぁ」

 

男の子の時でも無理だっただろうし、事情を知らない人の前で言わないでよ!

 

「ちょ、真琴、何年前の話をしてるの! ほら、しゃきっとしなさい」

「うぅ……む。いや、昨日はさ……楽しみにしすぎて寝れなかったんだよ……」

 

小学生か!! らしいと言えばらしいのだが……。初美さんなら大丈夫そうだけど任せるのもなんか申し訳なし。お姉ちゃんは……と思ってそっちを向くと、目を合わせようともしない。

 

「自力で歩きなさいよねっ。まずは観光だから。チェックインまで時間もあるし。取り敢えずお昼ご飯を食べれば元気にもなるよ。さ、行こうか」

 

そうは言ったものの、体力のないボクが何時間も動ける筈もなく、当初の予定より早めにチェックインすることになった。この花馬も、アウトレットと同じように盆地に位置するために……暑い……暑い……。大事だからもう一度、暑い……。おかけで汗だく……すぐに温泉に入ることとなった。……不甲斐ない。


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