僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた。 作:楠富 つかさ
森を歩くこと一時間強。現在の時刻は正午ちょっと過ぎ。必ず通るチェックポイントしか押えていないものの、それなりに楽しく歩いている。
「り、リベラルアーツ!!」
主にしりとりが白熱しているのだが。
「麻琴、意味を分かって言ってるの?」
「う、意味は知らない」
昨日のババ抜きと同じ流れで回っている。麻琴の次はボクだ。
「つまさき」
「貴金属」
「く、く……クヌギ」
「義理」
「またり!?」
さっきから麻琴が明音さんに“り”を回されまくって大変ピンチ。リール、リード、竜、流星、リップクリーム、リベラルアーツが既出だ。あと、花の品種にリューココリーネっていうのがあるけど、麻琴の口からは出てこないだろう。
「あ。リップ!」
「プレッシャー」
ボクの次は千歳ちゃん。で、初美さんの順だ。
「やで始めていいのよね。社」
「ろ? ローソンしか出てこない……ローソクは出たし……」
ろも意外に厳しいんだよなぁ。それに、初美さん語彙少ないっぽいし。
「ろ、ろ……露天もダメだし……路地裏?」
ラジオ、楽、羅刹なんかが出ている。羅刹って言ったのが千歳ちゃんだから納得である。
「ら、洛中洛外図屏風」
「「なにそれ?」」
麻琴と初美さんからステレオでハテナが飛んできた。
「有名な絵よ」
「そっかぁ。まぁ、りじゃないからいいか。武士道」
ボクたちは別にしりとりに熱中しているわけじゃなくて、ちゃんとチェックポイントも探しているわけで、
「ちょい中断。あったよ」
初美さんの視力がいいため、ちょっと遠くからでもチェックポイントの番号と書いてある数字や記号が見えるのだ。……双眼鏡を持ち込んだ班もあるとかないとか。
「チェックポイント27番。書いてある数字はローマ数字の5。記号は内側も塗られた丸」
「うん。ありがとう」
結局うちの班は最低限のチェックポイントだけを巡ることにした。高得点を取ると夕食が豪華になるらしいけど、最低限でもカレーセットがもらえるのでそれで問題ないって麻琴も納得してくれたし、森の中をどんどん進む。
「なんだか、森林浴をしている気分や」
好天にも恵まれ、のんびりとした雰囲気で歩いている。
「う、からだね。ウミガメ」
「女狐」
……女狐て、千歳ちゃんのチョイスがなかなかカオス。
「ね、ね……ネック!」
「クイックアクセツールバー」
パソコン用語だっけ……。明音さん博識だなぁ。
「ば? 何かあったかなぁ。ば……バルブ?」
麻琴の次はボク。“ぶ”で回ってきたか……。部活、部活動、部費、豚、豚肉、豚バラ肉といった単語が既出だ。となると……。
「ブーイング」
「群雄割拠。しりとりもいいけど、そろそろ中間地点じゃない?」
しりとりしながら結構歩いてきた。地図を見る限り、確かにひとまずの目的地である中間地点は近付いてきている。
「やっとお弁当かぁ。アタシ結構お腹空いてたんだよ……」
初美さんがお腹をさすりながらぼやく。中間地点には、けっこうな人数がいた。少し開けた空間に、切り株みたいなテーブルと丸太みたいな椅子がいくつかおいてあってまさにハイキングの休憩所って感じだ。
「よし、四組五班だな。きちんと手を拭いてから食べろよ」
先生から人数分のお弁当とお茶のパックを受け取り、班員それぞれに渡す。めいめいに腰掛けて、お手ふきで手を拭く。
「それじゃ、食べようか」
「けっこう疲れたよねぇ」
五人で輪になってお弁当を食べ始める。シンプルなおにぎり二つに卵焼きと唐揚げ、ちょっとしたお漬け物といった内容だ。
「唐揚げはやっぱり悠希が作った方が美味しいよね」
「まぁ、手作りとこういったのを比べられちゃうと……まぁ、味付けとか衣の感じとか……」
「姫さんの料理は見た目から美味しそうやからなぁ」
千歳ちゃんは箸でおにぎりを器用に食べてる。明音さんや初美さんはマイペースに食べてる。ふと周囲を見てみると食べ終えた他の班が分かれ道の一つへ進んでいった。
「あたしらはどこに進むの?」
「一番左の道だよ。最短ルート」
最短ルートのチェックポイントさえ回ればカレーセットがもらえる。他のメンバーもそれでいいって言ってくれているし、そんな感じだ。
「みんな、食べ終わったね」
そうこうしている内に、ちょっとしたお弁当なので皆が食べ終えた。ゴミは全て回収して先生の横にあるゴミ袋へと片付ける。
「さてと、四組五班……出発だよ!」
「「「「おー!!」」」」