仮面ライダー鎧武 新章 〜幻獣の樹海〜   作:ダイタイ丸(改)

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どうもこんにちは。ダイタイ丸(改)です。
最近のマイブームはウルトラマンオーブ。アレ超面白い。
エグゼイドはどうなんでしょうね?多人数ライダーといえばバトルロワイヤルが定番ですけどね。
ストーリーに期待している!


第19話 美鈴の想いとサプライズ

前回までのあらすじ

 

再開発地区に突如現れた巨大インベス。

それを迎え撃つアーマードライダー達。

それぞれが死力を尽くす中、戦場に新たな戦士フランが舞い降りる。

そしてフランに変身していた蜜華美鈴は戦いを終えた十馬に迫る。

 

 

「貴方をこれ以上戦わせるわけにはいかない。今すぐベルトとロックシードを渡しなさい」

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「がっ!?」

周囲を木に囲まれた森の一角で相手の攻撃を受け十馬は地面に伏せる。

 

それをふんと鼻で笑うのは十馬の相手、訓練用の動きやすい衣服をまとった蜜華美鈴だ。

 

彼女は先日、十馬からベルトとロックシードを奪いこれ以上関わらないようにと言ってきた。

 

平常時であればこのチームのリーダーである貴虎がそれを許すわけはない。

だが貴虎は昏睡状態であり、出資者という強い立場にいる美鈴に逆らえるものは現在この場にはいなかった。

 

しかしそれでも十馬は食い下がった。

 

それを受け、余計な真似をしないようにということで模擬戦に勝利したら返すという条件を提示したのである。

 

 

 

しかし、こうして戦闘してみて十馬は理解し始めていた。

 

彼女は自分にベルトを返す気など毛頭ない。

むしろ徹底的に痛めつけ、恐怖をその身に刻ませようとしている。

 

「くっそ・・・貴虎とは結構いい勝負できてたんだけどな」

「あら、怪我人と互角に戦えて喜ぶなんて程度が知れるわね」

「どういう意味だ?」

「教えてあげる。呉島貴虎はね、戦極ドライバーの開発当初から進んで稼働実験に志願していたの。そしてヘルヘイム時の苛烈な戦闘で彼の体はもうボロボロだった・・・でもそれを隠して彼は戦ってきた。今回の昏倒はそのツケってわけ」

 

そう言って美鈴は手にした樹脂製サーベルをこちらに向ける。

 

「まだやるのかしら?」

「当たり前だろ!」

 

そう叫び、十馬は手にしたレイピアと刀を振るい美鈴に迫っていく。

だがその攻撃の全ては受け流され、挙句の果てに説教を始められる始末だ。

 

「貴方は戦い方が成っていない。そもそも武器の特性すら把握できていないの。こんな風にねっ!」

言うと同時、手のサーベルでレイピアを弾き飛ばし開いている左手でキャッチ。

 

攻守が一転する。

 

サーベルで流れるように切り付けてくる美鈴に十馬はかろうじてそれを跳ね返す。

攻撃をしながらも美鈴の説教は止まらない。

 

「貴方はいつもレイピアを斬撃武器として使うわよね?でもそれはエネルギーが表面を伝っているからよ。生身の戦闘じゃ役に立たないわ。レイピアとは本来こういうものよ!」

 

言うが早いかレイピアを突き出し、斬撃の隙間を縫って正確に打突してくる。

 

「ぐっ!うわっ!」

「レイピアは刺突武器。斬るのではなく貫くことに特化した武器よ。必要なのは正確に相手を貫く技術!」

 

何度も連続で、蜂の針のようにレイピアを打ち付けられいつしか十馬は地に伏せていた。

 

 

「くっそ・・・」

拳で地面をたたくが起き上がることができない。

 

そんな十馬を見下ろし、喉元にサーベルをあてて最後に美鈴は言い放った。

 

 

「与えられた力ばかりに頼るような貴方を私は認めない。何度やっても同じよ。諦めなさい」

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

森林のフィールドを再現していたシミュレーションルームから出てすぐの長椅子に座り十馬はうなだれていた。

 

「何で勝てない・・・」

そう呟いていると昴が近づいてきて缶コーヒーを手渡す。

 

「僕も言われたよ。貴方が戦う必要はないってね。ま、君に対しては結構当たりが強いみたいだけど」

「あいつは何がしたいんだ?・・・ヨルムンガルドのスポンサーってことは目的は一緒じゃないか」

「さぁね・・・竜希くんも無理矢理ベルトを取られたらしいよ」

「竜希もか・・・」

「まぁそれで大体彼女がしたいことは予想がついたよ」

「なんだ?」

 

そう聞くと少し気まずそうにしながらも昴は自分の考えを話した。

 

「彼女はこの戦い・・・二ヴルヘイムとの戦いから僕たちを遠ざけたいんだよ」

「なんでそんな必要がある?」

「よく考えてごらんよ。光実くんやザックくん達はヘルヘイムを経験してる。僕らとは覚悟も経験も段違いだ」

「でも俺はあいつらと同じくらい強い。強くなったんだ・・・なのに何で?」

「強さが全部じゃないってことかな・・・僕は彼女の気持ちは少しだけ理解できるかな」

「理解?」

「うん。たまにダンスをしている君や君の友達を見ると時々思うんだ。君たちにとって戦いは非日常でダンスが日常だった。それが逆になってしまってるんじゃないかってね。彼女は君たちを暖かくて安全な日常に戻してあげたいんじゃないかな」

 

優しく語る昴に、しかし十馬は賛同できない。

譲れないものは十馬にだってあるのだ。

 

「でも、俺は真奈を守らなくちゃならない。誰にも譲れない。あいつを連れ戻した責任が俺にはあるんだ」

「うん。分かってる。でもね、今の君は本当に守るために戦っているかい?」

「え?」

「今、真奈ちゃんがどんな気持ちか分かっているかい?君が守りたいのは藤井真奈の存在かい?」

 

そう言われ、十馬はようやく気が付いた。

 

「そっか・・・俺・・・」

 

十馬は強くなることが真奈を守ることにつながると考えてきた。

だが、ただ強くなるだけでは真奈の命は守れても心は守れない。

思えばここ数日、真奈の顔を見ていない。

 

「ずっと一緒だって約束したのにな・・・何やってんだよ俺は・・・」

「気づいたなら早いこと行ってあげなよ。きっと心配してるよ?」

「そうだな・・・ありがとう。おかげで大事なこと思い出せた。じゃあ行ってくる!」

 

 

そう言い残して走り去っていく十馬の後ろ姿を昴は見えなくなるまで見守っていた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

本部を飛び出した十馬は真奈を探してあちこちを走り回った。

 

 

ドルーパーズにチームガレージ、ステージまで行ったが真奈は見当たらなかった。

というかガレージには誰もいなかったし、坂東さんが妙によそよそしかったのは気になるけれど・・・

 

「あいつに携帯持たせるの忘れてたからな・・・」

携帯を取り出し、念のため名前がないか調べるも当然ながらない。

 

「そうだ、イリスなら何か知ってるかも!」

そう思い、電話をかけることにした。

 

『もしもし?』

「イリスか!十馬だけど・・・」

『十馬!?今まで何してたんですか?すっごく心配してたんですから!』

「ごめん!毎回毎回ホントにごめん!」

『全くです!これは罰としてシャルモンでケーキをおごってもらうしか・・・』

「その前に!真奈知らないか!?」

『真奈ちゃんなら買い物しに行くって・・・あ!というか十馬!今日あなた・・・』

「買い物?モールか!ありがとう!ケーキはまたな!」

『ちょっと十馬!?』

 

そんな声を聞きながら十馬は通話を切って再び走り出した。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

一方、本部の廊下を美鈴は歩いていた。

 

すると後ろから声をかけられ足を止める。

 

声で話しかけてきた人物を察し、あきれ顔で振り返るとそこには案の定、昴の姿があった。

 

「何かしら?私は今から出かけるのだけれど」

「いや~どうしても気になってさ。あんたが僕からベルトを取り上げなかった理由が」

「取り上げてほしかったのかしら?もしかして貴方M?」

「違うよ・・・ただ、父さんの口添えとかあったらどうしようかと思ってね」

 

そう言って睨みつける目には抑えきれない激情がこもっている。

 

「違うわ。私が貴方からベルトを取り上げなかったのは・・・同じだからよ」

「何が同じなのさ?」

「貴方も私も貴虎も、皆己の血に苦しめられた者だから」

 

そう言う彼女の表情はどこか普段と違っているように見えた。

 

「私の旧姓は・・・呉島よ」

「なんだって!?・・・ってことは?」

「ええ、貴虎と光実君は親戚ね。私は呉島の分家筋の生まれで、昔から英才教育・・・という名の虐待を受けてきたわ」

「・・・」

「ささいなことですぐに”しつけ”をされた。そんな私を呪縛から救ってくれたのが蜜華咲哉・・・私の元夫だったわ」

「え?結婚してたの?」

「ええ。私は16の時彼の家に嫁入りして家から解放されたの。彼は病弱だったけれど人を助けたいという気持ちは人一倍だった。私の事をどこから聞きつけたのかしらね。16の誕生日に突然家に押し掛けてきて・・・半分駆け落ちみたいなものだったわ」

「えーっと・・・元ってことは今はもう?」

「ええ。5年前に肺がんで死んだわ。だから今はこうして私が彼の遺したグループを纏めているわけ」

 

全部聞き終わり、昴は目の前の女性への印象を改めた。

 

「あんた・・・本当はすごく無理してるんじゃないか?」

「正直言うとキツイわよ。貴虎ともそれなりに長い付き合いだから心配だし・・・でも、私は屈しないわ。理不尽にはもうなれっこだもの」

 

そう言って最後に不敵に笑う彼女に、昴は笑い返すことができなかった。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

ショッピングモールに着いた十馬は真奈を探して走り回っていた。

 

 

避難勧告のせいで客が一人もいないモールの中をひたすら探し続ける。

 

「あと探してないのは・・・屋上か」

 

エスカレーターを駆け上がり屋上のドアを開ける。

 

 

屋上はちょっとした遊園地風になっており、普段は大勢の家族連れでにぎわっている。

 

 

だが今は客どころか係員すらおらず、がらんとした寂しい空間になり果てている。

 

 

そんな場所に彼女はいた。

 

 

「真奈!」

 

そう呼びかけると一瞬、驚いた顔をしてから彼女は笑みを浮かべる。

 

ヒマワリのような輝く笑みを。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

真奈を見つけ、近くのベンチに座りながら十馬は思いのたけを真奈に打ち明けていた。

 

「俺さ・・・また真奈を失うのが怖くて、力が欲しくて、そればっかり考えてた。でも、お前の気持ちを全然考えてなかった・・・本当にごめん。今度こそ約束する。ずっとそばにいる」

 

そう宣言すると少し照れ臭そうにしながら真奈は「うん!」と頷いた。

 

「十馬の気持ち・・・すっごく嬉しいよ。ありがとう」

 

そうして笑いあっていると真奈が突然何かを思い出したように「あ!」と声を上げた。

 

「どうした?」

「どうしたじゃないよ!ハイこれ!」

 

いぶかしむ十馬に足元の袋から包みを取り出し「はい!」と手渡す。

 

「ん?なんだこれ?」

「いいから開けて!」

 

言われるがまま開けると中にはベージュの布の塊が入っていた。

広げてみるとロングコートだという事がわかる。

 

「これなんだ?お前が着るにしては大きすぎないか?」

「違うよ!十馬にあげるの!」

「え?何で?」

「・・・もしかして忘れてる?今日は11月23日だよ?十馬の誕生日!」

 

そう言っておめでと~!と拍手してくる真奈に目を丸くしながら呟く。

 

「そっか・・・今日だったか・・・」

「最近寒くなってきたなーって言ってたからいいかなって。どう?」

「嬉しいよ。ありがとな真奈」

 

そう礼を言ってから着てみると真奈が「かっこいいよ!」と再び拍手。

 

そんな真奈を見ながら十馬は心の中で率直な感想を述べていた。

 

 

(ちょっとセンスがおっさん臭いけどな・・・)

 

 

 

 

 

そんな二人を物陰から見つめている人物がいた。

 

「どれどれ?青春してる?」

「なんでついてきたの・・・ストーカーのケがあるんじゃないの?」

「どっこいどっこいでしょ?」

 

野次馬二名こと美鈴と昴はお互いを批判しつつ、楽しげに笑う十馬達を見守った。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

しばらくのんびりしていると真奈が唐突に立ち上がって提案する。

 

「それじゃあ十馬!ドルーパーズに行きませんか?」

「ん?何で?」

「何となく!あ、もしかしてシャルモン派?」

「いや、別にそういうわけじゃないけど・・・急に何で?」

「いいからいいから!行こ!」

 

そう言って腕に抱きついてくるもんだからもう断れない。

 

「じゃ行くか」

「おー!」

 

 

 

一方物陰で様子をうかがっていた昴はもう全てを察していた。

 

「サプライズってことか・・・何であれで気づかないかな?」

「誕生日パーティーね。チームでやるのかしら?」

「多分他のチームも祝ってくれるんでしょ。さて、僕らも行きますか」

「ちょっと!何で私まで?」

「ついで」

「それだけ!?」

「ほら、つべこべ言わずに行くよ。それともアレ?リムジンとかじゃないとダメですかお嬢様?」

「・・・無性に腹が立つわね。まぁいいわどうせだから行ってあげる」

 

 

二人もサプライズパーティーに飛び入り参加するためにドルーパーズに向かうのだった。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

ドルーパーズまで向かう途中、ガレージを通りかかると真奈があ!と言う。

 

「どうした?」

「ガレージに忘れ物した!十馬鍵ある?」

「ああ、一応預かってるけど」

「ちょっと取ってくるね!」

 

鍵を取り出すとそれをマッハでひったくり、真奈がガレージに入っていく。

 

 

「せわしないやつだなぁ・・・」

 

苦笑しながら仕方なく外で待っていることにした。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

そんな十馬を監視していたのは何も美鈴達だけではなかった。

 

 

 

 

ガレージのあるレンガの建物の屋上にその監視者達はいた。

 

 

 

「今がチャンスかと」

 

「お、ホントだ」

 

「それじゃあちゃっちゃっとやっちゃおうよ~」

 

「まぁまぁ待ちな。今日の依頼はあくまで様子見だからね。錠前持ってる?」

 

「はい」

 

「もちろんさー!」

 

「よし、じゃあいきますか・・・」

 

 

そう言ってから彼らは手にしたロックシードを開錠した。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「お待たせ―!」

「おう、じゃあ行くか」

 

ガレージから真奈が持ってきた荷物を持ってやり、先を急ごうとすると背後で聞き覚えのある音がした。

 

振り向き、真奈をかばうように一歩前へ出る。

 

 

そこにいたのは三体のインベスだった。

シカ、ライオン、カミキリとそれぞれが上位個体であることを十馬は知っていた。

だが今は変身できない。

 

「真奈、俺が足止めしてる隙に逃げろ」

「え?でも今は・・・」

「大丈夫だ。約束はもう破らない。足止めだけだ、無茶はしない」

「わかった・・・気を付けてね!」

 

了承し、真奈が逃げるのを確認してから十馬は改めて目の前のインベス達と対峙する。

 

 

「キシャァァ!!」

 

叫び声をあげて突進してくるシカインベスを受け流し、ライオンインベスの拳を回避。

残るカミキリインベスの攻撃に身構えると急に足を引っ張られその場に転倒する。

 

見るとカミキリインベスの長いヒゲが足に巻き付いている。

 

「くそっ!離せ!」

そう言っても相手はインベス。言葉が通じるわけもなく残りの二体が迫ってくる。

 

 

万事休すと思われたその時。

 

 

突然放たれた4つの光弾がそれぞれシカインベスとライオンインベスを転倒させ、カミキリインベスのヒゲも切断した。

 

距離を取り、後方を見るとそこには銃を構える美鈴と昴の姿があった。

 

「昴!蜜華さん!」

「心配でつけてきたらやっぱこうなるか。君はトラブルメーカーだね」

「変身できないんだから下がってなさい。いくわよ星崎昴!」

「あいよ!」

 

そう言ってドライバーを付けた二人はロックシードを構え、開錠する。

 

 

「「変身!」」

 

 

『スターフルーツ!』

『ラズベリー!』

 

 

『ROCK ON!』

 

 

『スターフルーツアームズ!勝ち星!白星!大金星!』

『ラズベリーアームズ!クイーンオブブレード!』

 

 

閃光と共に並び立つは天に輝く明星、アーマードライダー北斗と優美たる女剣士、アーマードライダーフラン!

 

 

「さて・・・ラストダンスと行こうか!」

「下郎が!身の程を知りなさい!」

 

それぞれ叫びながら三体のインベスに向かっていく。

 

上級インベスは一体一体が手ごわい。

 

同じアーマードライダーでも、黒影トルーパー達なら数人がかりでやっと倒せるほどだ。

 

だがA+の錠前を持つ二人には脅威ではない。

 

 

空を飛べるライオンインベスにまず狙いを定め、その羽を切り裂く。

 

苦しみ悶えるインベスに北斗が攻撃し、フランは他の二体の相手をする。

 

フランは斬撃でシカインベスの角を破壊し無力化してからカミキリインベスに狙いを定める。

 

インベス達は格上に徐々に追い詰められていく。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

そんな状況を監視者たちが好むはずもない。

 

 

「あらら~結構やられてるねぇ」

 

「どうする?」

 

「アレを使ってみるのはどうだろうか?」

 

「あーいいね!じゃあやってみましょか」

 

 

そう言って監視者たちは腰にベルトを巻き、バックルにロックシードをセットした。

 

 

「さて・・・今度こそお手並み拝見といこうか」

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

動きが弱っていくインベス達に勝利を確信した北斗はとどめを刺すべくベルトのブレードを二回倒す。

エネルギーが足に集まっていく中、どこか不自然さを覚え相手を観察する。

 

そう、エネルギーを貯めている隙があるにもかかわらず攻撃してこないのだ。

棒立ちになり、まるで魂が抜け落ちたかのように微動だにしない。

 

フランの方も同様だ。

 

「一体何なんだ?」

「油断しないで!こういう時こそ集中よ・・・」

 

そう警戒しているとインベス達が同時に体を震わせた。

 

そして目を光らせ、再びこちらに向かってくる。

 

「ほら言ったでしょう!?さっさと片付けるわよ!」

「はいはい」

 

軽く答え、ライオンインベスに斬撃を仕掛ける。

 

 

すると、先ほどまでは通った刃をインベスは手で受け止めた。

 

 

「な!?」

「グルルゥ・・・」

 

そのまま凄まじい膂力でもって武器を放り投げ、連続して拳を打ち込んでくる。

フランと相対する二体のインベスも途端に動きがよくなり、連携攻撃を叩きこんでいる。

 

「なんだこいつら!急に強くなったぞ!」

「まずいわね・・・数が多い分あっちが有利よ!」

 

突如強くなるインベスに思わぬ苦戦を強いられる二人のライダー。

 

それを見ながら十馬は歯がゆい思いをしていた。

 

「俺だって・・・アーマードライダーの端くれだ!」

 

疾走し跳躍、体重を乗せた飛び蹴りをシカインベスに叩き込む。

 

「キシャァ!」

「こい!」

 

身軽な動きでインベスを翻弄しようと跳躍を繰り返し、隙ができるのを待つ。

 

だがその速度は異形の怪物であるインベスには遅すぎた。

 

 

途端に動きを読まれ、カウンターを食らって吹き飛んでしまう。

 

「ぐはっ!」

「十馬!」

「龍崎十馬!?バカじゃないの?」

 

フランからの罵倒に臆することなく十馬は答える。

 

「バカで結構!俺は真奈を守る。でもそれは力でだけじゃない。俺の全部をもってあいつを守る!俺だけが傷つけばいい!だから俺は戦い続ける!」

 

そう叫び、再びシカインベスに向かっていく。

 

何度吹き飛ばされても諦めずに立ち向かうその姿は滑稽なほど必死だった。

 

 

「十馬!これを使え!」

 

そう声のする方向を見ると真奈と隣に立つザックの姿が目に映る。

 

そしてザックが投げたドライバーとクルミロックシードをキャッチし、力を身にまとう。

 

 

「変身!」

 

 

『クルミ!』

 

『ROCK ON!』

 

『クルミアームズ!ミスターナックルマン!』

 

 

鋼の果実を身にまとって変身するその姿はアーマードライダー黒影トルーパークルミアームズ!

 

 

「即席だけど変身できればこっちのもんだ!」

 

そう叫んで両手に付けた巨大なグローブを振り回し、シカインベスに猛進していく。

 

グローブの重量とアーマードライダーの膂力が加わった拳は強力な武器となる。

 

殴るというよりは叩きつけるようにシカインベスに拳打を浴びせる十馬の姿に二人も感化されたようだ。

 

 

「Cクラスの錠前があそこまで頑張ってるんだから!やらないわけにはいかんでしょ!」

 

そう言ってライオンインベスの攻撃を受け、刹那の隙をついて拳を打ち込む。

 

「一対一になったのだから、私が勝つのは当然でしょう!」

 

フランも途切れることなく斬撃を浴びせ、反撃の隙を与えない。

 

 

「「「とどめ!」」」

 

三人は同時にベルトのブレードを倒し、それぞれのキック技を放った。

 

 

『クルミスパーキング!』

『スターフルーツスカッシュ!』

『ラズベリースカッシュ!』

 

 

トルーパーの『ヘヴィースタンプ』がシカインベスを。

 

北斗の『流星脚』がライオンインベスを。

 

フランの『ベリーヒールスラッシュ』がカミキリインベスをそれぞれ屠り、爆散させた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「ザック、ありがとな・・・ていうか何でここに?」

「真奈に助けてって言われてな。それより大丈夫か?」

「ああ、クルミって防御力高いんだな。見直したぜ」

 

ベルトとロックシードを返しながらそんな会話をする十馬に美鈴が歩み寄る。

 

「龍崎十馬」

「ああ、美鈴さんか・・・ごめんな。変身しちゃった」

「いいわ。むしろ、貴方が本当に救いようもないくらいバカだってことがよく分かったし」

「いくらバカでもそこまで言われるとへこむぞ」

 

不満げに言うと、今度はそっぽを向いて表情を見せないまま話を続ける。

 

「ゲネシスドライバーとロックシードは返却するわ。持っていた方があなたは安全かもしれないしね」

「マジで!?ありがとう!」

「ただし!まだ私は貴方を認めてないわ!これは貴方の安全のためよ!」

 

ふんと鼻を鳴らしてからその場を去ろうと歩き出す美鈴の背に十馬は呼びかけた。

 

「心配してくれてありがとう!でも、俺は俺なりに頑張るからさ!これからも頼むぜ!」

 

 

その声が届いたと、十馬は確信していた。

 

 

 

 

「じゃ、ドルーパーズ行くか。皆待ってるぜ?」

「へ?何で待ってるんだよ?」

「ザ、ザック君!秘密秘密!」

「あ!やべっ!」

 

思わず口走ってしまったザックとそれをごまかそうとする真奈の態度でようやく十馬も合点がいった。

 

「もしかしてサプライズ的な?」

「ほらバレちゃったぁ~!」

「す、すいません」

「ま、いいさ。その代わり、名一杯楽しませてもらうかんな!」

「うん!」

「まぁ本人がいいならそれもいいか」

 

 

そうして十馬は18歳の、最高の誕生日を迎えたのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「いやー強いなライダー!」

 

「不慣れなインベスの体ってこともあったけどねー」

 

「言い訳にはならない」

 

「まぁさ、このベルトの性能も証明できたし二人もストレス発散になったでしょ?」

 

「まーまーだね」

 

「同じく」

 

「しばらくは動けないからね。次を楽しみにしてましょうよ」

 

 

 

そうして監視者達は去っていく。

 

 

遠くない未来に、暗い暗雲が立ち込めていた・・・

 

 

 

 




結構デカいバトルが続いていたので小休止というかなんというか。
自分で書いといてアレだけどロングコートは男のロマン。
こう、バサッ!とさせたいよね。
次回は特別篇!電王とのコラボ回ですよ~!

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