仮面ライダー鎧武 新章 〜幻獣の樹海〜   作:ダイタイ丸(改)

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ダイタイ丸(改)です!
梅雨…それはジメジメとひたすら戦うマイワースト季節…
結構ジメッとしてきましたねぇ。
今年は早くも暑さに屈服し冷房をガッツリ使っています。
ちなみに除湿のほうが冷房より電気代かかるそうです。


第18話 巨龍を討て! ライダー全員出動!

その男は、誰よりも高潔だった。

 

 

弱きを守り、悪を倒す。

 

そんな概念を彼は生まれつき持ち合わせていた。

 

 

そんな人物が行きつくのは本来であれば正義の執行者。警察やら検察、弁護士であっただろう。

 

 

だが、彼の生い立ちがそれを許さなかった。

 

 

家の宿命に捕らわれ、理由なき世界の悪意にさらされた彼は傷つき、悩んだ。

 

 

だが、彼は出来る範囲で自らの信念を貫こうとした。

 

 

 

弱きを助けるは強者の務め。

 

 

高貴なるものの定め、ノブリス・オブリージュ。

 

 

 

どんなに傷ついても、それを支えに彼は何度も立ち上がった。

 

 

 

 

友に裏切られ、家族に妬まれ、それでも彼は戦い続けた。

 

 

 

自分の限界など、とうに超えていたにもかかわらず・・・

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

微睡みの中、光実は目を覚ます。

 

 

無理な姿勢で寝ていたためか、顔を上げると首が少し傷んだ。

 

 

そして視線を、目の前のガラスに向ける。

 

 

 

ガラスの奥、白い部屋の中でいくつもの管や電極に繋がれた兄がそこにはいた。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

龍の王シュバリヤを筆頭としたオーバーロード達の侵攻から丸一日が経過していた。

 

 

 

シュバリヤは重傷を負いながらも十馬が変身した新たな戦士カルラが撃退に成功。

 

彼の撤退と同時に出現していた複数のオーバーロード達も姿を消した。

 

加えてオーバーロードの内の一体の行動により生体サンプルも入手に成功した。

 

 

だが、それと同時に大きな痛手も負った。

 

 

呉島貴虎の昏睡という痛手を。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

最初に感じたのは両手を包むほのかな温かさだった。

 

 

心地よさに思わず二度寝しそうになる思考を何とか制し、意識を覚醒させていく。

 

 

 

ゆっくりと目を開け、身を起こすと目の前には二人の少女がいた。

 

銀髪と黒髪の少女はそれぞれ十馬の手を握り、自分にかかっている布団に半身を埋めて眠っている。

 

まるで絵画のように様になっており、いつまでも見ていたい思う。

 

 

すると十馬が起きたのに気付いたのか黒髪の少女、真奈が目を開けた。

 

 

「・・・っ!十馬!よかった・・・」

「真奈・・・俺、どうして?」

心底ホッとしたように表情を崩す真奈に、事情を把握できていない十馬は聞く。

 

 

「シュバリヤと戦って怪我したの。十馬、丸一日眠ってたから心配で・・・」

「そっか・・・多分、ずっといてくれたんだよな。心配かけて悪かった。それとありがとうな。イリスも」

そう言って、こつんと寝続けるイリスの額を小突いてやる。

 

 

するとふぇ?とイリスも目を覚まし、自分と十馬を見比べた後、一拍置いて顔を真っ赤にしながら悲鳴と共に去っていった。

 

 

「ど、どうしたんだあいつ?」

「十馬、乙女は大変なんだよ?ちゃんとそういうとこ、わかるようにならないとダメだよ?」

「は、はい・・・ごめんなさい」

 

何か理不尽を感じながらも十馬は頭を下げるのだった。

 

 

 

 

 

数分後、寝癖を直したのか髪を部分的に湿らせたイリスが帰ってきた。

 

 

「うぅ~。すみません。だらしない寝癖&寝顔を見られた恥ずかしさのあまり逃げ出してしまいました・・・」

「いや、なんというか俺も悪かった。すまん」

 

本当はレアなイリスが見れて少しラッキーと思っていたのだがそれは言うまい。

 

 

 

「で、状況が知りたいんだけど・・・痛っ・・・」

「あんまり無理しないでください!骨に皹が入ってるんですから!」

胸に走る痛みに思わず声が出てしまう。

 

 

そんな十馬をベッドに寝かせ、真奈が説明しようとした時。

 

 

病室のドアが開き、そこから包帯やガーゼを張った少年が入ってくる。

 

 

「十馬!起きてたんだね。・・・で、いきなり両手に花かいこの色男」

 

そう軽口をたたきながらも安心したようにボロボロの昴が笑う。

 

 

「昴!お前は大丈夫か?」

「まぁね。アキレス腱が片方断裂したけどすぐ直ったし」

「すぐ直るようなものじゃないですけど・・・」

「気合かな?」

 

そう言いながら部屋に入って、一言呟く。

 

 

「よかった・・・君まで目覚めなかったらどうしようかと思った・・・」

 

 

その一言を、十馬は聞き逃さなかった。

 

 

 

「俺まで・・・?それどういうことだよ?」

思わず身を乗り出して、また走る痛みに顔を歪める。

 

慌てて真奈とイリスが体を支え、心配そうに表情を暗くする。

 

 

そんな十馬を見ながら、昴は口を開く。

 

 

 

「貴虎さんが・・・倒れた」

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

30分後、十馬は貴虎がいるというICUを訪れていた。

 

 

 

 

ガラス越しに見える、白で埋め尽くされた部屋に彼はいた。

 

 

腕の点滴をはじめとし、電極や酸素マスクなど様々な機械に繋がれた貴虎は静かに眠っている。

 

 

それを一瞥してから十馬は廊下のベンチに座りうなだれる光実に声をかける。

 

「・・・悪い。貴虎がああなったのは俺のせいだ」

「十馬くんのせいじゃありません・・・兄さんに頼ってばかりで体調を気にしてあげられなかった僕のせいです」

「でも、俺がもっとしっかりしてれば・・・」

 

そう続けようとする俺に立ち上がって光実が叫ぶ。

 

 

「自分のせいにしたって兄さんが目を覚ますわけじゃない!悲劇の主人公ぶるなよ!」

 

 

 

自分で言ってからハッとなり、すぐにまたうなだれる。

 

「すみません・・・取り乱しましました・・・」

 

 

そんな光実に何を言えばいいか分からずにその場で押し黙ってしまう。

 

 

すると通路の向こうから昴がやってきて光実に言う。

 

 

「光実くん・・・それなら僕も同罪だよ。もっと早くサポートに行けばよかった」

「やめてください・・・そんな言葉をもらっても何も変わりません」

 

変わらずうなだれる光実に昴は近づく。

 

 

そしてその襟首をつかみ、無理矢理彼を立たせた。

 

 

「いつまでそうしてしょげてんだよ呉島光実・・・!君が今言ったとおりだ!こんなとこでぼやぼやしてたって何も変わらない。なのに何故何もしようとしない!?貴虎さんの事を思うなら君は何をするべきだ?貴虎さんなら何て言う!?」

 

そう険しい顔で光実を発破する。

 

 

 

発破をかけられた光実は感情が高ぶるのを感じた。

 

 

お前に何が分かる。

 

他人ごとだと思って。

 

 

そんな怒りが湧き上がってくる。

 

 

その光実の目を見て、昴は鼻を鳴らす。

 

「いいじゃないか・・・そっちの方がさっきよりか全然マシだね」

「うるさいんですよ・・・!言われなくたってやってやりますよ!兄さんが戦えないならその分僕がやればいい!それだけのことでしょ!」

 

 

そして感情のまま、光実はICUを後にした。

 

 

 

 

残された十馬は昴に少し非難するように問う。

 

「なぁ昴。あれで本当によかったのか?」

「ああ。ああいう時こそ、強めに当たった方がかえって立ち直れるものさ」

 

そう言って、昴も光実の去っていった方へ歩いていく。

 

 

「さぁ司令室に行こうか。まだまだやることはありそうだしね」

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

ICUを後にした光実は白で塗りたくられた廊下を一人、歩いていた。

 

 

 

頭の中には先ほど昴に言われた言葉がフラッシュバックし、拳をきつく握りしめる。

 

 

 

怒りがこみ上げる。

 

昴に対してではない。

 

思わず声を荒げてしまった情けない自分自身に怒っているのだ。

 

 

「こんなんじゃ昔と変わらない・・・いつになったら僕は」

 

結局成長したつもりでも子供のままの自分がふがいなくて、悔しくて。

 

 

感情のまま廊下の壁を殴りつけ、再び歩き出す。

 

 

 

 

すると前方に一人の少女が立っていた。

 

真奈だ。

 

 

「どうかしました?」

 

そう問うと、真奈は何かを決意したような目で自分に近づいてくる。

 

 

そして目の前で止まると光実の目を見据えてこう言った。

 

 

「光実さん・・・貴虎さんは私が治します」

 

 

その言葉に、光実は愕然とした。

 

 

 

「だめだよ藤井さん。兄さんはそんなことは望まない」

「でも!私にできることはそれくらいしか・・・」

「大丈夫。兄さんはそんな簡単にくたばるほど柔じゃない。それに・・・」

「それに?」

 

続きを促す真奈の瞳を真っすぐ見つめ返して光実は言う。

 

「戦うのは僕たちの役目です。君がやるべきなのは十馬くんを支えてあげることです。だから、僕たちは大丈夫。君は君のやるべきことをやってください」

 

 

その言葉に、少し間を置きながらも真奈は頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

昴と十馬が司令室に着くと、そこには同じく身体の各所に包帯やガーゼを付けたザック、城乃内、凰蓮、竜希、そして光実の姿があった。

 

 

部屋に入るなり竜希が安堵したように顔を緩めて話しかけてくる。

 

「十馬さん!もう大丈夫なんですか?」

「ああ、なんとかな。お前も無事そうで何よりだよ。ザックたちもな」

「何、こっちは城乃内が頑張ってくれたからな。おかげで助かったぜ」

「何言ってんだよ。お互いさまだろ?」

「それでも頑張ったのは本当なんだから胸を張りなさい!さすがは私の弟子ね!」

 

 

いつものように賑やかになりはじめる一同を見ながら十馬は少しホッとする。

 

 

 

個性あふれるアーマードライダー達を纏める司令塔だった貴虎の不在による皆の精神的不安が気がかりだったのだ。

 

 

だがさすがは歴戦のアーマードライダー達といったところか。

 

いくつもの修羅場を潜り抜けてきた彼らの強さを十馬は改めて思い知る。

 

 

 

「やっぱすごいな、皆・・・俺も見習わなきゃ」

 

そう呟く隣で、竜希が思いつめたかのようにうつむいているのに十馬は気付くことができなかった。

 

 

 

 

話も一段落したところで十馬は肝心な人物の不在に気付いた。

 

 

「あれ?葵はどうしたんだ?」

 

そう言われて皆もはたとそれに気づく。

 

 

貴虎が不在の現在、ヨルムンガルドの司令塔はナンバーツー的な立ち位置にいる(と思う)葵が担うはずだ。

 

だが葵はまだ姿を見せてはいない。

 

 

するとディスプレイの前のコンソールが光ったかと思うとそこからヘビロボットと呼ぶべき姿をしたマスコットキャラクターが立体映像として現れる。

 

 

なんだこれと一同がいぶかしんでいるとそのマスコットがコミカルな動きと共に喋りだす。

 

『やあ!こんにちわ!ボクは正式名称NAI007、愛称は『ナーガくん』だよ!』

 

 

ポカーンとする一同を意に介さずナーガくんが続ける。

 

『ボクは開発者の水池葵に皆さんのナビゲートを任されてるんだ!というわけでこれからの事について葵さんの代わりに説明するよ!』

そう言ってつぶらな瞳でウィンクなんぞして見せる。

 

 

 

その言葉に、一拍置いてから「はぁ!?」と全員が叫んだ。

 

 

「どういうことだ?葵は?」

『葵さんは睡眠中だよ!あと5時間は起きないと思うよ!』

「あの腐れニートとうとうAIに仕事代行させ始めた!」

 

思わず突っ込んでしまった十馬にも朗らかに返答するナーガくんが少しかわいそうに見えてきた。

 

 

「で?何を説明するのさナーガくん」

『うん!今から話すね!まずはこれを見て!』

 

冷静に聞く昴にナーガくんが言うとディスプレイに映像が映し出される。

 

 

その景色に竜希以外のメンバーは見覚えがあった。

 

 

「ここって・・・この間の再開発地区よね?」

「そのはずだけど・・・あれはなんだ?」

 

ザックが言う通り、その景色は見覚えがありつつも記憶とは異なっていた。

 

 

 

以前戦った大通りに巨大な球状の物体があったからだ。

 

物体の表面は赤黒い色をしており、血管のようなものが走り、時折脈打っていた。

 

 

 

「これは・・・」

 

そう呟いてから、十馬は最後の去り際にファフニールが言った言葉を思い出す。

 

 

「こいつも置き土産ってことかよ・・・!」

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

一方、本部に作られた研究室では葵が布団にくるまって眠っていた。

 

 

この緊急時だというのにかなり熟睡している様子である。

 

 

左手には電極が張り付けられており、そのコードは何故か黒電話に繋がっていた。

 

 

するとその電極で葵と繋がった電話がけたたましく鳴り、同時に葵があぎゃあ!?と跳ね起きる。

 

 

電流が走っているようで、数秒の間ビリビリしていたがその後すぐに電極と右腕に付けられていた点滴を外して電話に出た。

 

 

「・・・もしもぉーし」

完全寝起き、且つ不機嫌そうな声音だった。

 

すると相手側が嘆息して話し始める。

 

「相変わらずね貴方は・・・事態は聞いているけれどよくもまぁのんきに寝ていられるわね?」

「こーゆー人間なもんでねー・・・で、緊急用の回線で何を連絡したいんですか会長様?」

 

その一言に、電話の相手が不敵に笑う。

 

 

「今、そちらに向かってるわ。それまでに依頼していたものを用意して。あと、仕事の時はH・Bと呼びなさい」

 

 

その言葉に、めんどくせーと呟いてから葵は電話を切った。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

数分後、アーマードライダーの面々は謎の物体を調査すべくそれぞれマシンに乗り込み、走っていた。

 

 

 

「あの物体・・・本当にオーバーロードが残したものなのかい?」

「ああ、最後にファフニールは置き土産って言ってたんだ。きっとアレがそうだと思う」

 

そう言いながら愛車、フェンリルを走らせる十馬にその後ろに座っていた竜希がふと素朴な疑問を口にする。

 

「そういえば十馬さんってバイクの免許持ってたんですか?」

 

その言葉に、十馬の表情がピシッと固まった。

 

「・・・ちょっと?」

「い、いや!小型二輪は取ってあるし!」

「それどう見ても大型だよね・・・終わったら免許センター通いだね」

 

 

そんな気の抜けた会話をする十馬達に、前方を指さしながらザックが言った。

 

 

「見えてきたぞ。再開発地区だ」

 

 

 

そびえたつ廃ビルの群れはまるで伏魔殿のような妖しく恐ろしい雰囲気を醸していた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

再開発地区の大通りにソレはそびえていた。

 

 

妙にツヤのある表面といいその上を脈打つ血管といいホラゲに出てきそうな外観をしている。

 

 

「知ってるぞコレ。ナ〇シカに出てきた巨〇兵の卵だ」

「似てるけどさ・・・ま、オーバーロードの遺物だしね。ロクなもんじゃないさ」

 

目の前の物体を眺めながら十馬と昴が初見を言い合っているその横では光実が近くの調査員から物体の詳細報告を聞いていた。

 

 

「物体はおよそビル三階分の大きさで外側は軟質。ですがその分弾力があって一部を切り取るのは不可能でした。表面の血管状のモノも何なのか不明で・・・」

「そうですか・・・ありがとうございます。引き続き調査をお願いします」

 

調査員に頭を下げ、十馬達のところに光実がやってくる。

 

 

「十馬くん、昴さん、どう思います?」

「だから巨〇兵の卵だって!孵化させるとまずいぞ!ビーム出すぞビーム!」

「ま、でも卵ってのは合ってるかもね。心臓の鼓動みたいに等間隔で脈打ってるし」

 

確かに、表面の血管状の組織は一定のリズムで脈動している。

 

案外十馬の勘というかふざけているようにみえる意見が一番現実的だ。

 

 

「卵だとしたら何が生まれるんだろ?」

「だから巨〇兵がだな!」

「普通に考えるとインベスでしょうね。ただ、この大きさのインベスは今まで見たこともないですけど」

 

 

そして光実は調査班の班長を呼び、退去を進言した。

 

「これが卵であった場合、中から出てくるインベスは今までに確認された最大個体を優に超える大きさです。僕たちが戦いに集中するためにも、皆さんには退避していただきたいんです」

「わかりました。総員直ちに退去させます」

 

 

思いのほか素直に光実の言うことに従い、調査班が次々と撤収していく。

 

 

 

その様子を眺めながら光実は目の前の物体を改めて見上げた。

 

 

そして、ある事に気が付いた。

 

 

「脈動のリズムが速くなってる?」

 

先ほどは一秒に一度くらいのペースだったのが今はその倍の速さだ。

 

 

 

「まさか・・・」

 

そう呟く間にもリズムはどんどん加速していく。

 

 

 

「皆さん!離れてください!」

 

 

そう光実が叫んだ瞬間。

 

 

 

 

物体・・・卵が破裂し、中から蒸気が立ち上る。

 

 

辺り一面を覆う蒸気が晴れると同時に、卵があった方向から巨大な何かの叫び声がとどろいた。

 

 

 

 

そこには巨大な一頭の龍がいた。

 

 

鉛色の鱗に身を包み、柱のような四本の足で大地を踏みしめる。

 

そして巨大な翼を広げたその姿はまさしく伝説上の生物『龍』そのものであった。

 

 

 

「くっ!何だこいつデカいぞ!?」

「そりゃ、あれだけ卵が大きけりゃね・・・来るよ!」

 

昴が言うと同時に巨大インベス・・・ニーズヘッグインベスが尾で地面を薙ぎ払ってくる。

 

 

それを躱し、距離を取って十馬達はそれぞれベルトとロックシードを取り出した。

 

 

「皆さん!いきますよ!」

 

その光実の号令と共に戦士たちはその言葉を叫んだ。

 

 

「「「変身!!」」」

 

 

各々ロックシードを開錠して素早くベルトに装填し変身する。

 

 

そして、十馬が変身した紅のアーマードライダーの姿に皆驚いたようだ。

 

「十馬くん!?その姿は・・・?」

「ああ、新しい俺の力だ。行くぜ!」

 

ソニックアローとガルーダクロージャーレイピアモードを構え、紅蓮の騎士が叫ぶ。

 

「一片の欠片も残さず・・・焼き尽くしてやるよ!」

 

 

ライダーたちの、闘争が始まった。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

一方、ヨルムンガルドの地下施設では葵が一心不乱に作業をしていた。

 

 

その手元のキーボードは先ほどから凄まじい速度で叩かれ、隣のアームも休まず作業をしている。

 

アームは台に置かれた三つのロックシード・・・L,S+03と刻印された赤紫の錠前と既存のロックシードとは一線を画すデザインをした白いロックシードの調整をしている。

 

 

十分ほど経つと作業が終わったのか機械から手を放し、デスクの引き出しからブランクの戦極ドライバーを取り出す。

 

 

「そろそろかな・・・」

 

そう呟くと同時、部屋のドアが開かれ黒服の男性と和装をアレンジした装束の女性が入ってくる。

 

 

「や、久しぶりだね会長さん」

「仕事で来ているのだからH・Bと呼びなさい。例のモノは?」

「できてるよー。はいこれがラズベリーロックシードでこっちがドライバー。でも、ホントに前線に出るの?責任持てないよ?」

「そう簡単に死ぬほどヤワではないわ。それじゃ、早速向かうとしましょうか」

 

そう言って立ち去る女性に葵は「忘れてた!」と声を上げ、慌てて引き留める。

 

 

「何かしら?」

「これ、十馬くんって子がいるから彼に渡して」

 

そう言いながら女性に葵は二つの大型のロックシードを差し出す。

 

「これは・・・ロックビークル?なぜこれが必要なの?」

「ああ、つまりこういうこと」

 

葵が言うと同時に部屋のスクリーンにニーズヘッグインベスとそれに立ち向かうアーマードライダー達の映像が映し出される。

 

 

「これは・・・!」

「今までの最大個体を軽く超えるインベスの登場。それは秘密兵器なんだよ」

「何故龍崎十馬なのかしら?彼はまだ子供でしょう?」

「彼しか使えない設定なの!ほら早く行った行った!」

 

そうせかすと女性はハァとため息をついてから部屋を後にする。

 

 

「蜜華グループ会長であるこの私が・・・まさか便利な宅急便扱いされるとはね」

「いいじゃん。ミツバチヤマト、グループ傘下にしてるし」

「・・・今回だけよ?次やったら予算半分にするから」

 

こめかみをピクピクさせる女性・・・ヨルムンガルドの大手スポンサーの一つ、蜜華グループ会長の蜜華美鈴は足早に司令室を立ち去った。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

美鈴が去った後、司令室に一人きりになった葵はふと、横のディスプレイを眺める。

 

そこには先ほど美鈴に持っていかせた二種類の白いロックビークルの設計図が映し出されていた。

 

「全く・・・出所不明のベルトといい不可思議なことばかり起きるねぇ最近は」

 

そう呟いてディスプレイを指で弾く。

 

 

昨夜、突然送られてきたこの設計図には既存のロックビークル、チューリップホッパーの改良版と思われる図面ともう一つ未知のロックビークルの図面の二種類があった。

 

さらにメッセージの末尾には『リュウザキトウマ二ワタセ』とカタカナで記されており、怪しさ満点だった。

 

 

だが、貴虎というストッパーが不在の今、葵の好奇心を止められるものは誰もいなかった。

 

メッセージの送り主を調べようとはしなかった。

 

そもそも秘密組織のヨルムンガルドの機材には全て、世界最高峰のセキュリティが掛けられているのでそれをかいくぐる人物が証拠を残すとは思えない。

 

何より時間の無駄だ。

 

葵の頭にあったのはこの図面のロックビークルを完成させ、その性能を見る。

 

ただそれだけだった。

 

 

そして僅か半日も経たずに葵は図面のロックビークルを完成させてしまった。

 

純粋なる探求の徒となった葵は常人の数倍の集中力と作業能力を持つ。

 

だが、その反動としていつも以上に長い睡眠を体が求めてしまう。

 

要するに副作用付きのブースト、トラ〇ザムみたいなものである。

 

それで今日のブリーフィングにも参加できず、せめて緊急時くらいはと電極を貼って眠っていたのだ。

 

 

「さて、どんなモノなのかなあのロックビークル」

 

そう呟くその瞳は無邪気な好奇心と狂気を内包していた。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

戦闘開始からおよそ30分。

 

 

再開発地区は激戦の真っただ中にあった。

 

 

現れたニーズヘッグインベスの外皮は硬く、さらにはその巨体のせいで接近戦に持ち込むことが難しい。

 

さらに時折放ってくるブレスも強力であり、避けるのも一苦労である。

 

 

だが、それだけの要素なら百戦錬磨のアーマードライダー達がここまで追いつめられることはなかっただろう。

 

にもかかわらずここまで追いつめられている理由。

 

 

それは思わぬ伏兵の存在だった。

 

 

 

 

「ちっくしょ!なんなんだこいつら!」

周りに群がる怪物たちを倒しながら城乃内が変身したグリドンが叫ぶ。

 

他にもブラーボ、ナックル、北斗が同様に周囲にたむろするインベス達を相手にしている。

 

 

大量の敵・・・パラサイトインベスは皆、滑りとした質感の黒い皮膚に牙が並んだ円形の口を持っていた。

 

 

あの巨大インベスが出現したすぐあと、その鱗の間から這い出てきたこの寄生タイプのインベス達は一体一体の強さこそ大したことはないがとにかく数が多い。

 

何より、見た目が気持ち悪い。

 

 

 

「一気に焼き払う!皆構えろ!」

 

そう言ってナックルはクルミロックシードをベルトから外し、フルーツトマトロックシードを開錠。

 

素早く装填しブレードを倒してアームズチェンジを果たす。

 

 

「行くぜ!合わせろ十馬!」

拳に炎を纏わせ、向こうで巨大インベスと戦うカルラに叫ぶ。

 

 

ニーズヘッグインベスの背中にいたカルラがそれに反応し跳躍、ナックルの隣に着地する。

 

 

そして同時にブレードとレバーを操作し、拳と剣にエネルギーが集中していく。

 

 

 

エネルギーが臨界を迎え、輝きを放った瞬間。

 

 

ナックルとカルラは背中合わせの状態から振り返り、拳と剣をクロスカウンターのようにぶつけ合わせた。

 

 

 

赤と青、二つの炎が反発し、融け合い、波動として周囲に放射される。

 

 

炎の旋風が吹き荒れ、収まるころには周囲のパラサイトインベスは皆消滅していた。

 

 

 

「ったく・・・ファイヤーコンビ威力高すぎっしょ」

「あぶねー・・・昴サンキュー」

「ありがとねエトワールの坊や。助かったわ」

 

そう近くの建物の陰からパティシエコンビと北斗が顔を出す。

 

 

ナックルの警告からカルラが着地するまでの間に北斗は光年歩を限定的に発動し、ブラーボ&グリドンを建物の陰に避難させていたのである。

 

あれほどの一撃を食らっては、さすがのアーマードライダーもひとたまりもなかったことだろう。

 

 

 

「っ!まだまだ数いるじゃねえか!」

「デカブツも倒せてないってのに!」

 

そう毒づきながら目の前のインベスの群れに敢然と立ち向かっていくアーマードライダー達。

 

 

だが圧倒的数の差に押されていく。

 

 

 

しかし、この状況下にあっても運命は彼らを見捨てなかった。

 

 

 

 

 

「やれやれ・・・どうせ苦戦しているとは思ったけれどここまでとはね」

 

 

その声のした方を向くとそこには一人の女性が立っていた。

 

 

和装をアレンジしたかのような特徴的な格好にモデルのようなスタイル。

 

そして透けるような琥珀色のウェーブがかかった髪が特徴的だった。

 

 

「誰だあんた・・・?」

 

そう聞くカルラを見ながら、女性は懐から見覚えのある機械、戦極ドライバーを取り出した。

 

 

「私は蜜華美鈴・・・そして、今日からはアーマードライダーよ」

 

そう言ってベルトを装着し、ロックシードを掲げ闘争を宣言する。

 

 

「変身」

 

 

『ラズベリー!』

 

『ROCK ON!』

 

『ラズベリーアームズ!クイーン・オブ・ブレード!』

 

 

 

頭上から落下してきた赤紫の鎧が彼女の体を包み込み、光を放つ。

 

 

そして光が収まるとそこには見たこともないアーマードライダーが立っていた。

 

動きやすそうな軽装の鎧に手にしたサーベル。

 

まさしく女剣士といった風貌だ。

 

 

 

「これがアーマードライダー・・・そうね。アーマードライダーフランでどうかしら」

 

そう呟き、女剣士・・・フランが目の前のインベスの群れに突撃していく。

 

 

剣舞のような動きで敵の攻撃を受け流し、さらにその流れのまま攻撃を仕掛ける。

 

 

まるで一つの旋律のように、途切れることなく攻撃をしていく。

 

 

そして周囲のインベスをサーベルからの電流で麻痺させたところでベルトのブレードを二回倒す。

 

「まだるっこしいのは嫌いなの・・・終わらせるわ!」

 

 

『ラズベリーオーレ!』

 

 

周囲に円形に斬撃を放つ『緋赤ノ閃』を受け、周囲のインベスが爆散しその余波を受けてさらに後ろのインベス達も消滅した。

 

 

圧勝、まさにその言葉がふさわしい戦いぶりだ。

 

 

 

 

「すげぇ・・・」

「なんて動きだ・・・あの人、タダモノじゃないよ」

「美しい・・・けど何かこういけすかないわ!メロンの君の方が断然素敵よ!」

「それって同族嫌悪?」

「言うな城乃内・・・にしても本当にすごいな」

 

それぞれ勝手に突然現れたアーマードライダー、フランへの感想を言っていると唐突に彼女がこちらにやってくる。

 

 

「龍崎十馬・・・あなたがそうね?」

「え?ああ、そうだけど・・・」

「年上への敬語が成ってないわね・・・まぁいいわ。葵からの贈り物よ」

 

そう言って、フランがカルラに2つの錠前を渡す。

 

 

「これは・・・?」

「ロックビークルよ。あなたはそれであの巨大インベスを倒しなさい。露払いは請け負うわ」

 

そう言い残し、フランがパラサイトインベスの群れに突撃していく

 

「よし!俺はあのデカいのを倒す!皆はサポートを頼む!」

 

そしてカルラたちは再び戦いを始める。

 

 

 

 

一方、インベスを倒しながら前線の龍玄達の所にフランは到着していた。

 

龍玄はマスカットアームズとなり、同じ部分を連続して攻撃しているもののダメージらしいものは与えられていない。

 

 

「あなたは・・・もしかして蜜華さん?」

「光実君かしら?目を負傷しているというのによく狙撃用アームズ使えるわね」

「ブドウは機動力が優れているので竜希くんに渡しました。スイカは先日使用したのでまだ・・・」

 

そう言って視線を向けるとブドウアームズとなったバハムートがニーズヘッグの足元に入り込み、腹を銃撃している。

 

それを一瞥してフランは援軍の情報を伝える。

 

「今、龍崎十馬が新兵器を持って向かっているわ。それまで耐えるわよ!」

 

 

そうして話しているとカルラが白の大型バイクに乗ってインベスの群れを蹴散らしてやってきた。

 

その後ろには北斗の姿もある。

 

そして先ほど受け取った錠前を掲げる。

 

「光実!これどう使うんだ!?」

「普通に開錠してください!それで大丈夫です!」

 

 

 

 

言われた通り、錠前を開錠しようとすると突然バイクのハンドル部分が変形し、ロックシードを装填するためのスロットが出現した。

 

 

「お!ここにセットしろってか?でも一個しかないな・・・じゃあこっちを開けて」

 

 

大型の方の錠前を開けるとそれは巨大化し、太い足を持つ不思議な機械に変形した。

 

チューリップホッパーの進化版ともいえるロックビークル、ホワイトリップホッパーである。

 

 

「こっちを装填してと・・・」

 

もう片方を装填すると呼応するかのようにバイクとホッパーから音声が鳴る。

 

 

『ROCK ON!』

 

『ボタンディフェイザー!』

 

 

『STAND BY!』

 

『ホワイトリップホッパー!』

 

 

 

そしてホッパーが二つに分割し、それぞれバイクの前後に足として装着される。

 

同時に頭上にクラックが開き、そこから大量に現れる金属製の花びらがバイクを覆いつくしていく。

 

 

最後に、バイクの前部が変形し、牙をむく獣の顔となった。

 

 

 

姿を現したのは純白の獣だった。

 

巨大な体を四本の足で支え、全身は大量の花びらがまるで毛皮のように覆っている。

 

狼を思わせるその姿はその名の通り、北欧神話の大氷狼フェンリル!

 

 

 

唖然としている一同を一度見やった後、フェンリルがその凄まじい脚力で持って跳躍し巨大インベスに飛びかかった。

 

 

牙を突き立て、爪でえぐり、巨大インベスにダメージを与え続ける。

 

 

ただ荒々しい、完全に野性的な戦い方だ。

 

 

 

「・・・なぁ、何よあれ?」

「十馬くんこそ。あのバイク君のでしょ?なんで変形してるんですか?」

 

唖然としながら間抜けな会話をしていると後ろからグーで後頭部を殴られた。

 

「少しは緊張感を持ちなさい!私たちも行くわよ!」

 

 

何でお前が仕切ってんだよと思いつつソニックアローを構えなおし、ニーズヘッグの下に向かおうとした時。

 

 

 

頭上から火炎弾が降り注ぎ、辺り一帯を焦がした。

 

 

何とか炎を操作しバリアを作って防いだがその威力は強大だ。

 

 

空を見上げるとそこには巨大なインベスがいた。

 

 

ニーズヘッグほどではないにしろ背中の翼が大きく、翼長だけでも10メートル以上ある。

 

また人に似た手足を持っているが顔は鳥のものだ。

 

 

その姿はまさにニーズヘッグと対をなす北欧神話の巨人、フレースヴェルグだ。

 

 

 

フレースヴェルグインベスは旋回しながら炎弾を次々に放ってくる。

 

 

それをバリアで受け流しながらカルラは他の二名に戦術を問う。

 

「どうするあれ!?飛べる奴とかいないのかよ?」

「ダンデライナーなら可能かもしれませんが・・・今は持ちあわせが」

 

 

するとバリアの中に入ってきた鎧武が先日十馬がシュバリヤから奪った大型の錠前、カチドキロックシードを取り出して策を伝える。

 

「カチドキの必殺技ならあいつを打ち落とせる。ただじっとさせられれば・・・」

 

 

やはり飛ぶことが必要だとわかるとカルラが俺がやると言う。

 

「十馬!?本当にできんのか?」

「さっきのバリアで炎の操作ができるってわかったからな。手から噴射とかできんだろ」

「不確実ですけど・・・今はやるだけやってみましょう!」

 

 

 

 

炎のバリアで炎弾が防がれ続けるのにしびれを切らしたフレースヴェルグインベスは急降下し直接攻撃をしようとした。

 

 

だが急降下中、下から突然すごい勢いで赤い人影が飛ばされてきた。

 

先ほどまでバリアを張っていたライダー、カルラである。

 

 

カルラはその速度と「ぎゃああああ!!」という悲鳴でフレースヴェルグインベスの注意を引くことに成功した。

 

 

吹っ飛ぶカルラを追ってフレースヴェルグが上昇し始める。

 

(さて・・・これで姿勢制御できれば御の字なんだが)

 

そう念じながらイメージするのは飛行する自分。

 

自らの力で風に乗り、空を自在に飛び回る自分の姿を想像する。

 

 

「よし・・・見えた!」

 

そう言うと同時、ベルトのロックシードが輝いたかと思うと背中のマントが大きく広がり翼となる。

 

さらに翼の突起部分からは炎が噴射され、姿勢も安定した。

 

 

「おお!やっぱ飛べるじゃん!これなら!」

 

そう言って180度方向転換し、フレースヴェルグインベスに迫る。

 

 

そしてすれ違いざまにソニックアローとガルーダクロージャーで敵を切り付け、姿勢を崩す。

 

 

苦悶の声を上げるフレースヴェルグインベスにエネルギーのこもった武器を突き刺し、背中のジェットを噴射して地面に向かって高速で落下し始める。

 

 

「頼むぜ!紘太さん!」

 

 

そう通信すると遥か下の地上でオレンジ色の光が瞬いた。

 

 

 

 

 

 

地上ではカルラからの通信を受け、鎧武がアームズチェンジをするべくロックシードを開錠した。

 

 

『カチドキ!』

 

『ROCK ON!』

 

『カチドキアームズ!いざ出陣!エイエイオー!』

 

 

上空から降ってきた大型のアームズを身に纏い、二本の旗を翻すその姿はまさに先陣切る猛将。

 

アーマードライダー鎧武 カチドキアームズ!

 

 

「いくぞ!ミッチ!」

「はい!」

 

合図を龍玄に送り、自らは手に持った大型両手銃、火縄橙DJ銃にカチドキロックシードを装填し狙いを定める。

 

 

一方の龍玄はベルトのブレードを二回倒し、エネルギーを集中させていく。

 

 

そしてエネルギーが十分に溜まったところでトリガーを同時に引いた。

 

 

 

『カチドキチャージ!』

 

『マスカットオーレ!』

 

 

巨大な砲身から放たれた『灼天凱火砲』と収束ビーム砲『雷龍豪咆』が狙いたがわずフレースヴェルグインベスを撃ち抜き、爆発四散させた。

 

 

 

だが、まだ終わらない。

 

 

鎧武の目には上空から落下しながらニーズヘッグインベスに向かって急降下するカルラの姿がはっきりと捉えられていた。

 

 

 

 

 

爆発寸前でインベスから離れたカルラは次のターゲット、ニーズヘッグインベスに狙いを定めていた。

 

 

「こんだけの速度があればアイツの鱗も貫ける・・・ただ一撃で倒せるのか?」

 

そう不安を捨てきれずにいると北斗からの通信が飛んでくる。

 

「大丈夫!僕に任せて。君は僕の剣を後押ししてくれればいい」

「剣?・・・よくわからんがわかった!頼むぜ!」

 

そう返事をし、ベルトのレバーを二回押し込んだ。

 

『ドラゴンエナジースパーキング!』

 

 

すると周囲に炎が吹き荒れ、さらに進行方向にいくつものドラゴンフルーツの断面のような模様が生まれる。

 

 

「行くぜ!」 

 

さらにスピードを上げ、降下すると突如、地面から巨大な剣が出現した。

 

刃渡りおよそビル3階分。

 

人間の使用を想定していない規格外の武器だ。

 

 

「無茶するなあいつ・・・人のこと言えないけどね!」

 

 

 

 

 

 

地上では北斗が巨大化させた七星刃をかろうじて支えていた。

 

 

「重っ・・・!こんな機能よくつけるねぇ!」

 

 

この巨大化はアームズウエポン、七星刃の効果によるものだ。

 

七星刃には七つの特殊効果がある。

 

現在発動しているのは巨門星の力『メラクギガント』であり数分だけ、武器を任意の大きさに変えられるというものだ。

 

これを使い、北斗はこの超大剣を出現させたのである。

 

 

「さて!決めるよ十馬!」

 

通信から「おう!」という元気な返事を聞き、北斗はベルトのブレードを三回倒す。

 

 

『スターフルーツスパーキング!』

 

 

刀身にエネルギーを込め、全身のばねを使って跳躍。

 

 

ニーズヘッグインベスの脳天に全力で叩きつけた。

 

 

だが、鱗を砕きはしたものの、とどめを刺すには威力が足りない。

 

 

すると上空から迫るカルラに呼応するかのようにニーズヘッグの尾にかじりついていたフェンリルがジャンプ。

 

体を丸め、高速で回転しながらインベスの背中に体当たりをした。

 

 

たまらず苦悶の声を上げるニーズヘッグインベスは怒りの咆哮を天に向かって放った。

 

 

 

その瞳に映ったのは、空の彼方より飛来する赤の流星。

 

 

そして剣の重さで強制的に下を向かされた次の瞬間。

 

 

カルラが放ったキック『ドラゴンダイブ』により後押しされた七星刃が頭頂部から尾に至るまで、インベスの体を真っ二つに切り裂いた。

 

 

 

叫びと共に爆散するインベス。

 

 

それをバックに北斗、着地したカルラ、そして勝利の雄たけびを上げるフェンリルが並び立つ。

 

 

 

二人は自ずから近寄り、そして右手を互いに打ち合わせた。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

インベスが爆散するまでの様子を自室でリアルタイムで見ていた葵は興奮しきった様子だった。

 

 

「あっははははは!!すごいよ皆!特に昴くん!あそこまでロックシードの力を引き出すなんて計算外!ありえない!でもそこが最高ぉ!」

 

一人でエキサイトする葵を机上にホログラムとして投影されたナーガくんが無表情で見守っていた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

インベスを倒しきった数分後。

 

 

 

全員が変身を解き、勝利を喜び合う中、美鈴は十馬に歩み寄っていた。

 

 

十馬は疲れ切った様子で大の字に倒れており、口元には微笑が浮かんでいる。

 

 

そんな十馬のわき腹を、美鈴はヒールで思いっきり踏みつけた。

 

 

「ぐふっ!?」

「全く・・・無茶をしすぎね。どうせ怪我も完治してなかったんでしょうに」

「だからって・・・ヒールはないだろヒールは・・・」

 

もんどりうって倒れる十馬に、嘆息してから美鈴は続ける。

 

「・・・でも、貴方の残した結果は評価するわ。いつか死にそうな戦い方だけれど」

「ま、勝ったからいいじゃん?」

「そういうわけにもいかないわ。今日、はっきりと確信した・・・」

 

 

そして一拍置き、冷たい目で美鈴は言い放った。

 

 

 

「貴方にはもう戦わせるわけにはいかない。今すぐベルトとロックシードを渡しなさい」

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

その頃、とある場所の駐車場を一人の男が歩いていた。

 

 

「やれやれ・・・オーバーロードもとんでもないものを出してきますね。それにしても龍崎十馬はともかく昴さんは予想外でしたねぇ・・・博士の思惑通りかな?」

 

 

そう呟きながら歩いていると目の前に突然、三体のパラサイトインベスが現れる。

 

 

牙をむき、すでに臨戦態勢だ。

 

 

だが男は慌てない。

 

それどころか口元には笑みさえ浮かべていた。

 

 

「取りこぼしですか・・・まぁいいでしょう。テストもできるしサービス残業といきましょうか」

 

そう言って取り出した装置・・・戦極ドライバーを腰に巻き、懐からロックシードを取り出す。

 

 

「変身」

 

 

『ヒマワリ!』

 

 

 

光が駐車場にあふれ、全てを覆い隠した・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後

 

 

 

男はハンカチで几帳面に手を拭きながら歩みを進めていた。

 

 

インベスの姿はない。

 

代わりに何かが爆発したような焦げ跡と炎の残滓が三つ残されていた。

 

 

 

男は携帯を取り出し、数回のコールの後出た相手に結果を報告する。

 

 

「もしもし・・・テストは成功です。量産体制に入りましょう。・・・ええ、例のモノもよろしくお願いしますよ」

 

 

 

男の行く手には、闇が大口を開けた怪物のごとく広がっていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




今回は合体ビークル、フェンリルを登場させた回です。
ウィザードラゴンとかキマイラとかそういうイメージで書きました。

そして以前にもこっそり登場していた読者さん発案のオリキャラ。
『蜜華美鈴』を変身させました!
今まで出せずにすいませんでした氷蒼・Eさん!
アイデアをもらって約一年、ようやく話に絡ませることができました!
今後も活躍というかレギュラーの一人としてガッツリ話に関わってもらいます!

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