仮面ライダー鎧武 新章 〜幻獣の樹海〜   作:ダイタイ丸(改)

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こんにちはダイタイ丸(改)です!
最近すっかり暑くなってきましたね。
我が家では早くも小型扇風機が大活躍しております。



第17話 龍の力! ドラゴンエナジーアームズ!

世界を侵食する森、ヘルヘイム。

 

 

この世界と我々人類の世界が繋がったのは何故だろうか。

 

世界各地の神話に存在する『知恵の実』。

 

それはエデンの果実とも、不死をもたらすアンブロシアとも呼ばれた。

 

 

つまり過去にもこの世界とヘルヘイムは繋がったことがあるのだろうか?

 

仮にヘルヘイムでなかったとしたらそれは何なのだろうか?

 

まさかまだ我々の知らない未知の森があるとでもいうのだろうか・・・

 

 

いや、憶測でものを言うのはよそう。

 

とにかく今は一刻も早く情報を集めなければならない。

 

 

今日は忙しく、何度も着信のある携帯すら見れていない。

 

 

そうだな・・・今週末には休みを取ろう。

 

久しぶりに家族と出かけるのも悪くない。

 

 

とにかく今は、目の前の作業に専念しなくては。

 

 

 

2009年7月7日 星崎慧の手記より

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

私の意識は、虚無の中で漂っていた。

 

 

そもそも自分の名も、姿も、一人称ですら分からない。

 

こうして漂い続けるか、やがて融け消えるか。

 

そう思っていた。

 

 

 

だがある時、虚無の空間に裂け目が現れた。

 

 

そこから伝わってくる情報の中であるものが私の心をとらえた。

 

葛葉紘太。

 

その青年の姿を捉えた瞬間、私の意識は色を帯びていく。

 

 

ああそうだ。

 

あの憎き鎧武者に変身した小僧。

 

我が運命の巫女を手に入れようとするのを邪魔し、あまつさえ我を葬り去った男。

 

 

憎い、恨めしい、叩きのめしたい。

 

 

その感情のまま、我は裂け目に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

あさつゆ児童院で院長に再会した翌日。

 

 

十馬はヨルムンガルドの地下施設にある実験スペースにいた。

 

 

周囲は白い壁に覆われ、目の前の強化ガラスがはめ込まれた窓からは貴虎と葵の姿が見える。

 

 

『よーし十馬くん。合図と同時に変身してみて?』

 

天井のスピーカーから聞こえる葵の声に首肯し、ロックシードを構える。

 

 

『3、2、1・・・ドン!』

 

そんな気の抜けた合図と同時に十馬はロックシードを開錠する。

 

「変身!」

 

『ドラゴンフルーツエナジー!』

 

 

そしてベルトに錠前をセットし、ロックを閉めてレバーを押し込む。

 

 

すると頭上に鋼の果実が出現し、ゆっくりと落ちてくる。

 

 

(よし!このまま順調にいけば・・・)

 

 

そう思った矢先。

 

 

今にも覆いかぶさろうとした果実から閃光が走り、そのまま盛大にスパーク。

 

さらにロックシードからも火花が散りはじけ飛ぶ。

 

 

結局十馬はというと、衝撃で弾き飛ばされ思いっきり床に頭を打ち付けた。

 

 

 

「いってぇ!」

『十馬くん!?大丈夫?』

 

数秒後、扉から葵と貴虎が慌てて駆けこんでくる。

 

 

 

「十馬!大丈夫か?」

「あたた・・・一応大丈夫だ。でっけぇたんこぶできたけど」

「また失敗かー・・・ロックシードの調整はもう十分だと思うんだけどなー」

 

 

今日は朝からずっとこうしてロックシードの調整を行っている。

 

葵がぶっつけ本番で何とかしようとしたドラゴンフルーツエナジーロックシードは案の定、なぜか変身できないというトラブルを抱えていた。

 

 

その原因を突き止めるためにこうして何度もトライ&エラーを繰り返しているのだが・・・

 

 

「あーもー!もう15回目の調整なのに何でうまくいかないのー!?」

「もしかするとベルトの方に問題があるかもしれんな。葵、次はそっちの路線で調べてみよう」

「わかったよ・・・じゃあ調整に時間かかるからそっちはそっちでどうぞ」

「頼むぞ。よし十馬、組手をやるぞ」

「おう!」

 

 

そう言って部屋の隅に立てかけてあった銃の上部から刀が生えたような武器、無双セイバーを貴虎が構える。

 

それを受け、十馬も同じくセイバーを構え対峙する。

 

 

ロックシードやベルトの調整は武器と違って時間がかかるそうなので空いた時間をこうしてトレーニングに使っている。

 

 

「このセイバーは刃も潰してあるし弾もゴム弾を装填しているから遠慮なくかかってこい」

「ていうかこれ、てっきりアームズウエポンみたいに変身しないと出てこないのかと思ってたぜ」

「これはクラックを研究して手に入れた転送技術が使われているからな。ベルトの帯やソニックアローが出現するのも同じ原理だ。とはいえ、さすがにこのサイズの無機物が限界らしいが」

 

貴虎の丁寧な解説になるほど~と納得する。

 

そのうち「説明しよう!」とか言ってどこからともなく出てくるんじゃないかな・・・

 

 

「ルールは簡単だ。先に戦闘不能になった方が負け。目潰しは無し。関節技も危険だから禁止だ」

「それ、普通にフルボッコにされるってこと?」

「そうだ。嫌なら勝て」

 

そう半目で聞く十馬に刀の切っ先を向けてから、貴虎が居合切りのような腰を落とした姿勢で止まる。

 

一方の十馬は普通に正面に両手で刀を持ち、剣道の模範的な構えをとる。

 

 

 

そして、一拍置いて二人の剣は激突した。

 

 

貴虎は居合切りの要領で下方からの切り上げ。

 

十馬は上段からの一刀だ。

 

 

激突の後も二人の剣は何度も交差し、その度に剣戟の音が鳴り響く。

 

 

「なかなかやるようになったじゃないか」

「片手しか使ってねぇくせによく言うぜ!」

 

十馬の両手で体重を乗せた斬撃を貴虎は片手で軽くいなしてしまう。

 

これが戦士としての力量の差かと改めて思い知らされる。

 

だが、これでへこたれるような十馬ではない。

 

「そらっ!」

「フッ!」

 

裂帛の気合と共に何度も貴虎に向かっていく。

 

 

 

そんな十馬を貴虎は冷静に分析していた。

 

以前特訓に付き合った時とはまるで別人だ。

 

一撃ごとの重さもさることながら、以前のような単調な攻撃パターンでなくこちらがリズムを崩すことを狙ってきている。

 

十馬は片手しかと言っていたが盾を主要装備としていた貴虎にとって片手での戦闘は最も馴染んだ戦い方であり、同時に最も得意な戦い方だった。

 

それをもってして互角。

 

いや、一撃に力を込めている分だけ十馬の方が勝っている。

 

(盾がないというのは言い訳にならないな・・・末恐ろしい奴だ)

 

だが貴虎も戦士としての矜持というものがある。

 

そう簡単には負けられない。

 

呉島貴虎という男は意外に負けず嫌いなのだ。

 

 

「次で終わらせてやる!」

「かかってこい!」

 

十馬は横にセイバーを構え、猛進。

 

一方の貴虎はそんな十馬に向け二発、ゴム弾を打つ。

 

それは十馬の肩口をかすめ、そのまま後ろに飛んで行った。

 

 

「射撃は苦手か?」

「まぁ人並みだ」

 

そして十馬の横薙ぎの一刀を貴虎が受け止め、鍔競り合いの形になる。

 

「どうだ!」

「やるようになったな・・・剣の腕だけだが」

「それどういう・・・ぶぇっ!?」

 

突然後頭部を衝撃が襲い、視界がぶれる。

 

よろめいた隙に貴虎が襟首をつかみ、見事な一本背負いを決める。

 

「ぐえっ!?」

「勝負あったな」

 

そう言って貴虎が手を差し出し、十馬は頭を押さえながらその手を取る。

 

 

「何やったんだよ?さっき後ろから何か飛んできたぞ」

「それは・・・これだな」

 

そう言って足元のゴム弾を拾い、十馬に見せる。

 

 

「これって・・・あー!もしかして!」

「そうだ。先ほど打った二発の弾が跳弾して当たったんだ」

 

こともなげに貴虎は言うが実際はとんでもない技術だ。

 

「何が人並みだよ・・・このスナイパー兄弟め」

「ま、そう簡単に私は越えられないという事だ。今後も精進するんだな」

「へーい」

 

説教臭くなってきたので適当にあしらい、葵のところへと十馬は赴く。

 

 

 

「葵。どんな感じよ」

 

すると作業のためか眼鏡をかけた葵が振り向き力なく笑う。

 

「・・・多分、大丈夫かな・・・」

「うわっ、完全に目が死んでる」

「そんなに大変だったのか・・・」

 

混沌とした瞳を向けてくる葵に同情の意を表してからデスクに置いてあるドライバーを手に取る。

 

 

「さて、じゃあ早速・・・」

 

 

そう言いかけた瞬間。

 

 

 

天井から耳障りなサイレンと共に赤い光が降り注いだ。

 

 

 

「な!?またレッドサインだと?」

「もしかして・・・」

 

感づいた様子の葵に頷き、十馬は天井のランプを睨みつける。

 

 

「シュバリヤ・・・」

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

その1時間前・・・

 

 

 

沢芽市中心のショッピングモールの中をイリスはうろうろ徘徊していた。

 

 

「はぁ・・・やっぱりどこもお休みですか・・・」

 

ため息をつき、近くのベンチに座る。

 

 

現在、沢芽市は街中で避難が促され、住民の3分の1が既に避難を終えている。

避難していない人はこの街に昔から暮らす人々、ダンサー達など皆沢芽市に特に愛着を持っている人々だ。

 

そんな状況なのでチェーン店の多い大型のショッピングモールも閉まっている店がほとんどである。

 

 

そしてイリスは何もただ散歩するためにこのモールに来たのではない。

 

あるものを買いに来たのである。

 

 

「・・・最近真奈ちゃんとべったりですからね・・・ここで一発挽回しないと!」

 

イリスが狙う一発逆転の目。

 

それはズバリ、『誕生日プレゼント』である。

 

 

きたる三日後、11月23日はイリスの恩人にして想い人、龍崎十馬の誕生日なのである。

 

だが最近の十馬は幼馴染の藤井真奈といつも一緒で危機感をイリスは感じてきた。

 

そこでこの誕生日という一大イベント(?)に目を付けたのである。

 

 

だが、十馬が欲しいものがいまいち分からず、いろいろなお店を回ってみようと思ってきたのだがこの有様だ。

 

 

 

「うーん・・・ここ以外で大きいお店は少し遠いですし・・・どうしましょう」

 

思わず頭を抱えて唸っていると頭上から声がかけられる。

 

 

「イリスちゃん?」

 

視線を上げるとそこには不思議そうに首をかしげる真奈の姿があった。

 

 

 

 

 

ばったり会った二人はそのままベンチに座り、お互いの事情を話していた。

 

「真奈ちゃんもお誕生日のプレゼントを?」

「は、はい・・・変かな・・・」

「そんなことないですよ!素敵だと思います」

 

どうやら自分と同じくプレゼントを選びに来て、同じ状態になったそうだ。

 

イリスは真奈の事を手ごわいライバルくらいには思っているがそれ以上に大切な友達と思っている。

 

蹴落としてやろうみたいなことを決して考えないのがイリスという少女のいいところだ。

 

 

「ただ、私もまだ良いの見つけられてないんですよね。真奈ちゃんの方で何か情報有りますか?十馬が欲しい欲しい言ってるもの」

「えーと・・・あ、最近寒くなってきて辛いなーってぼやいてた気がします!」

「なるほど・・・じゃあ防寒方向で考えればいいですね!good jobです!」

 

大まかな方向が定まったところでイリスはあるアイデアを思いついていた。

 

(サマンサおばあちゃんから教わった編み物の腕を披露するときですね!)

 

 

「真奈ちゃんは何をプレゼントしますか?」

「私は・・・コートとか?この間も服を買ってもらったから・・・」

「いいですね!一緒につけられますし!」

「一緒に?・・・何を送るつもりなんですか?」

「フフ・・・秘密です」

 

 

そうして二人はコート探しの旅に出るのであった・・・

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

レッドサイン点灯の5分前・・・

 

 

 

 

二ヴルヘイムの樹海ではオーバーロード達が一堂に集い、クラックの開放を待っていた。

 

 

「おいおい!まだ開かねぇのか!?早くしろよファフニール!」

そう怒鳴るのは粗暴な雰囲気の大男、テーバイである。

 

「うるさいですよテーバイ。多少のタイムラグは生じますから少々お待ちを」

言い返すのは知性を感じさせる痩身のオーバーロード、ファフニールだ。

 

「・・・地獄ってもんをみせてやる。ついてこい、弟」

「さすがだよ兄貴!かっこいいよ!俺どこまでもついていくよ!」

他にも暗い瞳を前方に向けるゲオルに心酔するようにはしゃぐギウスなど様々だ。

 

 

そして集団の最前列にいた黒のローブの青年、シュバリヤは手にした大鎌を掲げて宣言する。

 

 

「皆!今こそダハーカの無念を拭い去る時だ!今までのような手加減は必要ない!全力をもって戦うぞ!」

 

 

 

その宣言と同時にクラックが開き、余波にローブをなびかせながらシュバリヤは、オーバーロード達は進軍を開始した。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

レッドサイン発令後、十馬は貴虎と共にクラック発生ポイントである柱の並んだ駐車場のような所にやってきた。

 

 

 

「さて・・・どこから出てくるか・・・」

「貴虎、他のみんなは?」

「全員に招集をかけた。あと数分もすれば全員がそろうだろうな」

「そっか・・・なら安心だ」

 

背中を合わせ、辺りを警戒しながら言葉を交わす二人。

 

 

すると目の前の暗がりから光球が放たれ、とっさに躱した二人が今までいたところをえぐりとる。

 

 

暗がりを睨みつけ、十馬は抑えきれない激情と共にその名を呼ぶ。

 

「来たな・・・シュバリヤ!」

 

 

すると暗がりから幾人もの人影が姿を現し、その先頭の黒いオーバーロードがこちらに鎌を突き付け吠える。

 

「さぁ・・・今度こそ決着だ。龍崎十馬!」

 

 

 

身構えているとシュバリヤの隣にテーバイとファフニールが並びこちらに光球を何発も撃ってくる。

 

 

「十馬!」

「おう!いくぜ!」

 

 

「「変身!!」」

 

『レモン!』『レモンエナジー!』

『メロンエナジー!』

 

『ROCK ON!』

 

『ミックス!レモンアームズ!インクレディブルリョーマ!ジンバーレモン!ハハーッ!』

『メロンエナジーアームズ!』

 

 

即座にロックシードを開錠し、ベルトにセットして二人はそれぞれ琥珀の聖騎士、アーマードライダーデューク ジンバーレモンアームズと優雅なりし白夜叉、アーマードライダー斬月・真 メロンエナジーアームズに変身。

 

ファフニールの放った光弾を空中で両断し、内部の術式ごと葬り去った。

 

 

「シュバリヤには絶対に一人で挑むな!今は時間稼ぎだ!」

「わーかってるよ!」

 

貴虎に言われた通り、シュバリヤの強さは相対した自分が一番よく知っている。

 

あれほどの強さを振るってなお底が見えない相手と一騎打ちははるかに危険だ。

 

 

「ハァッ!」

 

斬月の研ぎ澄ました一撃がシュバリヤに迫る。

 

その後ろからはデュークの光矢も追撃。

 

 

だがその攻撃はシュバリヤに届く目前でテーバイに弾き飛ばされる。

 

 

攻撃を防がれた二人は瞬時に体勢を立て直し、ソニックアローによる遠距離攻撃に移る。

 

 

しかしそれもテーバイに薙ぎ払われ、ファフニールに至っては硬い外皮に傷一つついていない。

 

 

「相変わらず堅い防御だこと・・・」

「それにしても、今回はこの三人だけなのか?」

 

 

 

そう貴虎が呟くと同時、左右から新たなオーバーロードが現れ二人に襲い掛かる。

 

 

「いくぞ・・・弟!」

「兄貴となら誰でもぶっ飛ばしてやれるよ!」

 

そう言い、息の合った連携攻撃を繰り出す二人に徐々に劣勢になっていく。

 

 

「くっ!・・・こいつら!」

「連携だけじゃない・・・一撃一撃が重い」

 

片方は拳で、もう片方は脚打で十馬達を追い詰めていく。

 

 

 

それを遠巻きに見ながらファフニールは愉悦の笑みを浮かべる。

 

「まったく・・・普段やる気にならない奴ほど、本気になると怖いものですねぇ」

 

すると横にいるテーバイが「もう我慢できねぇ!」と参戦すべく走り出す。

 

相変わらずの直情さに苦笑しつつ、ファフニールはもう少しだけ傍観していることにした。

 

 

 

 

「よぉ!ぶっ殺しに来たぜぇ!?」

 

二体のオーバーロードの攻撃をかろうじて防いでいたデュークに突如、テーバイが拳を放ってくる。

 

 

完全な不意打ちに対応できず、腹部に強力な一撃をもらったデュークはそのまま吹き飛び向かいの壁に激突。

 

「かはっ・・・」

 

変身が強制解除され、崩れ落ちるように倒れた。

 

 

 

 

「十馬!くっ・・・どけぇ!」

 

怒りをあらわにし、斬月はロックシードをソニックアローにセット。

 

そのまま周囲にエネルギーのこもった斬撃『円月斬』を放って怯ませる。

 

 

その隙に十馬の下へと駆け寄り、体をゆする。

 

「十馬!おい十馬!」

 

するとゆっくりとではあるが十馬が目を開け、起き上がろうとする。

 

「耳元で言わなくたって聞こえてるっての・・・」

 

そう気丈に笑って見せるが全身に裂傷や内出血の痣が浮かび上がっていた。

 

 

「こんなところで・・・寝てられっかよ・・・」

 

 

そのつぶやきを最後に十馬は意識を失った。

 

 

 

「十馬!?くっ!急いで離脱を・・・」

 

十馬を担ぎ、急いでその場を離れようとする斬月。

 

 

だが、無慈悲にもオーバーロード達は近づいてくる。

 

一刀貰ったのにムカついたのかテーバイに至っては殺る気まんまんのようだ。

 

 

そして三体のオーバーロードが駆けだそうとしたその時

 

 

 

空の彼方から飛来した三つの砲弾がそれぞれに直撃。

 

 

戦艦の主砲が着弾したかのような轟音と共に三体を吹き飛ばした。

 

 

 

「ぐぁっ!」

 

苦悶の声を上げて悶えるオーバーロード達。

 

 

斬月は砲弾の飛来した方向を向き、新たな参戦者の名を呼んだ。

 

 

「光実・・・!」

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

一方、空に浮かぶ大きな浮遊体・・・スイカアームズジャイロモードの内部で光実の変身した龍玄は次なる標的に狙いを定める。

 

 

「やはりここは大将を落とすのがセオリーだよね・・・」

 

そう呟き、手に装着されたスイカビッグガンを構える。

 

すると目の前にスイカの断面を模したレンズディスプレイが出現し、ターゲットロックを行う。

 

 

アーマードライダー龍玄 スイカアームズ。

 

 

スイカアームズは大型インベス専用装備であるため、セットされたドライバーのデータを解析し、そのアーマードライダーにとって最適な武装を出現させる機能がある。

 

二刀流で戦う鎧武にはスイカ双刃刀。

 

槍の得意なバロンにはスイカランス。

 

拳一つで戦うナックルにはスイカグローブといった具合だ。

 

 

そして今回、射撃を持ち味とする龍玄に与えられたのは大口径の機関砲『スイカビッグガン』だ。

 

 

マスカットアームズでは複数を相手にする際、火力不足がいがめないがこのアームズならその気になればビルを丸ごと吹き飛ばせる。

 

 

ただし、今回はまだ左目が癒えていないため光実にとってもかなりリスクのある出撃となった。

 

狙撃手にとって、周囲が見渡せないというのはかなりの痛手だ。

 

以前、マスカットアームズを使っていた際は左側に周囲の空気の動きやカメラの映像などが表示されていた。

 

そしてこのスイカアームズも狙撃用のアームズである以上、同じ機能が搭載されているはずだった。

 

だが、今の光実には見ることができない。

 

 

慎重にディスプレイで狙いを定めていると耳元から声が聞こえる。

 

 

「ミッチ!左から来たぞ!避けろ!」

 

とっさにウィングから弾幕用のマイクロミサイルを発射し、急いで回避行動をとる。

 

すると先ほど滞空していた位置に光弾が迫り、ミサイルに激突して爆発する。

 

 

「ありがとう。助かったよペコ」

「お、おう!頼ってくれてうれしいぜ!」

 

通信機からの照れるような声に思わず笑みを浮かべ、再び狙いを定める。

 

今の自分には背中を守ってくれる仲間がいる。

 

その事を改めて実感し、光実は引き金を引いた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

何度も浴びせられる砲撃にうんざりしたシュバリヤはそばに控えていたワイバーンに命令する。

 

 

「ワイバーン。あのデカいのをつぶしてきてくれるか?」

「はい。了解しました」

 

するとワイバーンの背中から一対の翼が顕現する。

 

鱗に覆われた翼はまさに悪魔のそれだ。

 

 

そして風と共に龍玄の方へと飛び立つ。

 

 

しかし

 

 

「邪魔はさせませんよ!」

 

 

その声と共にワイヤーのようなものが彼女の足に巻き付いたかと思うと地面に思い切り引っ張られる。

 

 

地面に叩きつけられ、よろめきながらも起き上がるとそこには青い戦士の姿が。

 

 

未熟なりし昇り龍、アーマードライダーバハムート。

 

青龍刀型の武器、昇龍刃を振るいワイバーンに肉薄してくる。

 

 

ワイバーンも負けじと片刃の双剣を出現させて攻撃を受け止め、鍔競り合いの状態となる。

 

 

「皆さんの邪魔はさせません!」

「っ!どきなさい!ケガするわよ?」

 

お互いが慕う者のために戦う戦士たちの、闘争が幕を開けた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

一方、テーバイたちの方にも乱入者が現れていた。

 

 

「おらあっ!」

「さぁ!踊りましょう!」

「いっくぞぉ!」

 

アーマードライダーナックル、ブラーボ、グリドンの三人がテーバイに連続攻撃をくらわせ、テーバイを斬月と十馬から引き離す。

 

「貴虎さん!十馬を頼むぜ!」

 

そう言ってナックルはテーバイに向かっていく。

 

 

 

「またお前らか・・・まぁいい。少しは歯ごたえあるようになってんだろうなっ!」

 

テーバイが裂帛の気合とともに繰り出す拳。

 

それをかわし、今度はこちらの番だとナックルが鋭いパンチをお見舞いする。

 

さらに急に距離をとったかと思うと今度はブラーボとグリドンのパティシエコンビが斬撃を連続してくらわせる。

 

 

やれるか?

 

三人の胸中にそんな希望が浮かぶ。

 

 

 

「ははは・・・お前ら気に入ったぜ!」

 

だがテーバイの余裕の叫びにその希望は打ち砕かれた。

 

 

テーバイは大振りに振りかぶった拳を地面にたたきつけ、衝撃波を発生させ姿勢を崩させる。

 

その隙に強力な拳を打ち込み、三人を吹き飛ばす。

 

 

衝撃に耐えきれず変身解除してしまうザックたち。

 

そんな彼らをテーバイは挑発する。

 

 

「おいおいどうしたそんなもんかよ!」

 

 

だがダメージの大きいザックたちはなかなか起き上がれない。

 

 

「まったく・・・この程度で這いつくばるか!お前らが何を背負ってるって?この程度で吹き飛ばされるほど軽いもんにしがみついてるとはなぁ!」

 

 

その言葉は、ザックの頭に血を上らせるのに十分だった。

 

 

「軽くなんか・・・ねぇ!」

「ああ?」

「戒斗の命も・・・アイツの願いも・・・軽くなんかねぇ!」

 

そう叫び、よろめきつつもロックシードを構える。

 

 

そして再び爆炎の拳闘士、アーマードライダーナックル フルーツトマトアームズになり突っ込んでいく。

 

 

「立ち上がったのは褒めてやるぜ・・・けどなぁ!大口と実力が見合ってねぇんだよ!」

 

そう言い放ち、テーバイが放った拳を真正面から受け止めるナックル。

 

 

「うぉぉぉぉ!!」

 

ガントマトレットから炎が噴き出し、相手とナックル自身をも焦がしていく。

 

 

「俺は繋ぐ!・・・戒斗が願った世界を!もっと違うやり方で成し遂げて見せる!それまでは死ねないんだよ!」

 

その決意と、覚悟と共に放たれた拳がテーバイに突き刺さった。

 

 

「ぐおっ!?」

 

吹き飛ばされるテーバイ。

 

同時にナックルも膝をつく。

 

 

「はあっ・・・はあっ・・・こんなもんかよ俺は!」

 

悔し気に地面をたたくその手を止める者がいた。

 

 

「城乃内・・・?」

「悪いなザック。けど、お前のせいだからな?俺にも戦わせろ」

 

そう言って、一歩前に進み出る城乃内。

 

そして起き上がったテーバイに向けて不敵に言い放つ。

 

 

「よぉ筋肉野郎。お前言ったよな。俺たちのしがみついてるもんは軽いって・・・でもな、確かに虫けらみたいなもんかもしれない。俺たちの命なんか、この世界からみりゃ塵みたいに軽いもんだ。・・・でもな、その塵にも意地ってもんがあるんだよ!」

 

その声と共に、持っていたイガグリロックシードが変化した。

 

 

表面のパーツが左右に開き、中から質感のあるパーツが現れる。

 

まるで、栗の皮がむけたようだった。

 

 

「なるほど・・・一皮むけたってことかね?」

 

少しうれしそうに微笑み、新たな姿となったロックシードを開錠する。

 

 

「変身!」

 

 

『マロン!』

 

『ROCK ON!』

 

『マロンアームズ!根性!ヒートアップ!』

 

 

 

上空にイガグリのような鉄塊が出現したかと思うとその外側がパージし、大量の針が周囲に降り注ぐ。

 

そして新たな姿となった鎧が城乃内を包み込み、彼を戦士へと変貌させる。

 

 

彼こそは何度くじけても立ち上がる不屈の重闘士、アーマードライダーグリドン マロンアームズ!

 

 

手に持った大型武器、マロンハンマーを構えテーバイと対峙するグリドン。

 

まさに漢の背中ともいうべき頼もしいその姿にザックは一瞬、見とれてしまった。

 

 

「さぁいくぞ!」

「かかってこいよクソガキがぁ!」

 

 

ハンマーと拳のぶつかる衝撃音が辺りに響き渡った。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

その頃、斬月は二体のオーバーロードに苦戦していた。

 

 

シュバリヤは何とか光実が足止めしてくれているものの、息の合った二体の・・・恐らく兄弟であろうオーバーロードに追い詰められていく。

 

(だが、ここで退くわけにはいかない!十馬を守らねば!)

 

 

だが、現実はそう甘くはない。

 

 

一方が「縛れ」と呟いた途端、周囲から植物が伸び、斬月の手足に絡みつく。

 

 

「くっ!この程度で・・・がっ!」

 

だが、流石に消耗が激しく、普段なら破れる植物も今はビクともしない。

 

 

その間に二体のオーバーロードは十馬を抱え上げ、話し始める。

 

 

「なぁ兄貴。こいつどうすんの?」

「シュバリヤが戦いたがってるからな。奴のところまで連れていくぞ」

 

そう言って斬月の横を素通りして行く。

 

 

「くっ・・・させるかぁ!!」

 

そう叫び、手をレバーの横まで強引に持っていき何度も引き絞る。

 

 

するとロックシードのエネルギーが暴走し、スパークを起こして植物に引火。

 

変身の強制解除を代償に貴虎はツタから抜け出した。

 

 

 

「ぐっ・・・!」

 

強力な負荷がかかり貴虎の体は悲鳴を上げる。

 

 

心臓、肺にも強い負担がかかり、吐血する。

 

だが、止まるわけにはいかない。

 

 

「”俺”の仲間に・・・手を出すなぁっ!!」

 

 

『メロンエナジーアームズ!』

 

 

満身創痍となりながらも斬月・真に再び変身し、十馬を担ぐオーバーロードに一刀を浴びせる。

 

 

「ぐあぁ!」

「アージャ!」

 

吹き飛ばされたオーバーロード・・・ギウスに慌ててもう片方・・・ゲオルが駆け寄る。

 

 

 

「大丈夫か?」

「ごめん兄貴・・・足引っ張っちゃって」

「俺とお前は家族だ・・・お互いさまだろうが」

 

そう言ってギウスを助け起こす。

 

 

 

一方、斬月は十馬に声をかけ続けていた。

 

 

「十馬!しっかりしろ!目を覚ませ!」

 

すると苦し気なうめき声と共に、だがしっかりと十馬が目を開け、立ち上がる。

 

 

「わりぃ・・・心配かけた・・・」

「大丈夫ならそれでいい・・・いくぞ・・・」

 

そういう貴虎の声にも覇気がない気がした。

 

 

だが、それを気に留めている暇などない。

 

 

「変身!」

 

『ジンバーレモン!ハハーッ!』

 

 

ロックシードを再び装填し、デュークジンバーレモンアームズへと変身。

 

 

二人のオーバーロードに向かって突っ込んでいったその時。

 

 

 

「ようやくお目覚めか・・・龍崎十馬!」

 

突如、放たれた謎の鎖に巻きつかれ、そのまま円形の吹き抜けになった場所に引きずられる。

 

 

そしてその場所には因縁の黒いオーバーロード、シュバリヤが佇んでいた。

 

 

 

「さぁ・・・今度こそおまえを倒させてもらうぞ」

「へっ・・・そう簡単にできるもんならな・・・」

 

不敵に笑って見せるも今の十馬にそこまでの余裕はない。

 

 

テーバイにもらった一撃は骨を粉砕しており、呼吸をするたび激痛が走った。

 

さらに装備もエナジーロックシードの力を十全には使えないジンバー。

 

 

だが、だからと言ってあきらめる十馬ではない。

 

 

「今のお前は俺には勝てん。そんな身体と、貧弱な装備ではな」

「・・・ああそうだな・・・だが、これならどうだ?」

 

 

そう言って変身解除し、取り出したのはゲネシスドライバー。

 

 

葵が十馬に合わせた特製品だった。

 

 

さらに半透明の赤いロックシードを掲げる。

 

 

(失敗続きだったけど・・・今ならできる!いくぞ!)

 

 

「変身!」

 

『ドラゴンフルーツエナジー!』

 

『ROCK ON!』

 

 

紅鉄の果実が頭上から落下してくる。

 

 

そして十馬はレバーを押し込んだ。

 

 

『ソーダァ!』

 

 

鋼の果実が展開し、十馬の身を包む。

 

 

 

 

 

だが、やはり現実は非情だった。

 

 

 

展開し、十馬の体にかぶさろうとしたその瞬間に再びロックシードがスパーク。

 

 

そのエネルギーは周りの外壁にもおよび、ヒビが入る。

 

 

そして果実が吹き飛び、その衝撃で十馬も後ろの壁に激突。

 

 

崩れた壁に飲み込まれた。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

一方、砲弾を打つ龍玄も徐々に劣勢に立たされていた。

 

 

「早く十馬くんを助けなくちゃ・・・」

 

そう呟いた瞬間。

 

 

「ミッチ!避けろ!全方向から来たぞ!」

 

 

そんなペコの声が聞こえた次の瞬間、四方八方から飛来した光弾によりスイカアームズは大破。

 

龍玄も地面へと落下する。

 

 

「くっ!」

 

『ブドウアームズ!龍・砲!ハッハッハッ!』

 

 

かろうじてブドウにチェンジし、地面に着地すると目の前に槍を持ったオーバーロードの姿が。

 

 

「ファフニールか!?」

「覚えておいてくれて何よりですよ!」

 

その声と共に放たれた槍激に吹き飛ばされる龍玄。

 

 

「左目が見えていないのでしょう?よくもまぁそんな状態でのこのこと出てこれましたねぇっ!」

「ぐああ!!」

 

連続して放たれる槍に苦悶の声を上げる。

 

 

「愚かな奴は好みじゃないんです。消えてください」

 

そう言って、奴が最後の一撃をくらわせるべく槍を振り上げる。

 

 

だが

 

 

 

「そうはいかないね!」

 

突如、目の前に光を放つ人影が現れたかと思うと槍の一撃を手に持った剣でファフニールごと薙ぎ払った。

 

 

「くっ!・・・あなたは・・・」

「ああ。遅れて参上のヒーローって奴さ」

 

そう笑みを浮かべるのは眩き超新星、アーマードライダー北斗!

 

 

「ごめんごめん。遅くなっちゃった」

 

そう言って北斗が龍玄を起き上がらせる。

 

 

「昴さん!」

「光実くんは貴虎さんとこいってくれるかな?二対一で苦労してるっぽいし、こいつを今の状態で相手にするのは自殺行為だよ。サポート射撃に徹しなって」

 

ほら行った行ったと手をひらひらさせる北斗に頷き、龍玄は兄の下へと向かった。

 

 

 

 

そんなやり取りを見ながら、ファフニールは舌打ちをする。

 

 

「くっだらないですねぇ・・・あなたが相手だろうと私は倒せませんよ」

 

それに北斗も不敵に言い返す。

 

「悪いけど、僕今日めっちゃ機嫌悪いからさ。サンドバックになってよ」

 

 

そして一瞬置いた後、二人はお互いの急所めがけて一撃を放った。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

そこは、光にあふれる空間だった。

 

光の海に浮いている。

 

そう表現するのが一番正しいだろうか。

 

 

そしてあの時と同じように、光が収束し人の形を作る。

 

 

現れた白の少年が俺に問いかける。

 

 

「君は・・・何故、まだ戦おうとするのかな?」

 

 

それに俺は返す。

 

「真奈を守るためだ」

 

「でも、彼女を守ってもらうのならヨルムンガルドだけでもよくはないかい?いざというときの装備も、ジンバーで十分だろう?」

 

「・・・俺が、守らなきゃダメなんだ」

 

「何故?」

 

 

赤い瞳で見つめてくる少年、シャオロンに向かって俺は自分の思いを告げる。

 

 

 

「真奈を連れ戻したのは俺だ。あのまま二ヴルヘイムにいたらきっと真奈は不幸だった・・・でも、思ったんだ。あいつにもあいつなりに、向こうで幸せになる方法があったんじゃないかって・・・。でも、その可能性を潰したのは俺だ。だから、あいつをここに連れてきた責任をとるために、俺が真奈を守る」

 

 

そして最後にこう付け加える。

 

 

「それがきっと・・・大人になるってことじゃないのか?」

 

 

 

その言葉にシャオロンはうつむき、しばし目を閉じた後ため息をつく。

 

 

 

「はぁ・・・やはり、君も選ぶのか。戦いの道を・・・」

 

「ああ。どんな結末になっても後悔はしない。自分で決めたことだからな」

 

 

そんな俺にあきれたような顔をして、シャオロンが何かを放ってくる。

 

 

「これは・・・」

 

「ドラゴンフルーツエナジーロックシード・・・その力は危険だ。だから今まで僕が変身できないようにブロックをかけてきた。でも、君が望むなら僕ももう一度信じてみよう・・・君の可能性を」

 

 

そして優しく微笑み、言葉を紡いだ。

 

 

 

「どうか君が・・・かつての少年のような血塗られた道を歩まん事を・・・」

 

 

その言葉と共に十馬は急速に意識が遠のくのを感じた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

シュバリヤはがっかりしていた。

 

 

さっき瓦礫に埋まり、出てくるそぶりもない龍崎十馬。

 

 

この程度の相手にダハーカがやられたのかと疑問に思うほど、今の彼は弱かった。

 

 

 

「この程度か・・・つまらん」

 

そう言い残し、その場を去ろうとしたその時。

 

 

 

瓦礫が突如として爆ぜた。

 

 

 

そしてその中から一人の少年が立ち上がる。

 

 

全身傷だらけの満身創痍ながら、その目には強い意志が宿っている。

 

 

 

「ありがとう・・・この力、使わせてもらう・・・!」

 

 

そう叫び、手を掲げる。

 

 

そして叫ぶ。

 

 

闘争の始まりを告げるその文言を。

 

 

己の殻を破るための、その言葉を。

 

 

 

「変身!!」

 

 

『ドラゴンフルーツエナジー!』

 

『ROCK ON!』

 

『ドラゴンエナジーアームズ!!』

 

 

頭上から降ってきた果実が体を覆っていく。

 

 

全身に熱い力が流れる感覚。

 

 

そのエネルギーを気合と共に解き放つ!

 

 

「ハアッ!」

 

 

 

エネルギーは波動となり、辺り一面を炎で包み込む。

 

 

そして炎が青へと色を変え、その中からソレは姿を現した。

 

 

 

吉兆を呼ぶ鳳凰。

 

四聖獣の一角、朱雀。

 

灰の中から蘇る不死鳥、フェニックス。

 

 

そして、龍を常食する龍殺しの聖獣、迦楼羅。

 

 

 

古代より語り継がれるそれらを想起させる姿をソレはしていた。

 

 

シュバリヤは思わず、ソレに問うていた。

 

 

「貴様・・・何者だ!?」

 

 

ソレが言う。

 

仇の声で、静かに告げる。

 

 

 

「俺はもう・・・借り物の殻を纏う雛じゃない!」

 

 

さぁその翼に、その炎に、見惚れ惹かれ、希望せよ。

 

 

彼の者こそは、漆黒の闇夜を切り裂く夜明けの光。

 

 

龍を喰らいし竜鳥。

 

 

 

「アーマードライダー・・・カルラだ!」

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

その頃、ファフニールは北斗と高速の斬撃を繰り広げていた。

 

 

「この動きについてくるとは・・・やりますね!」

「はっ!この程度造作もないね!」

 

 

ファフニールは今、付与術式で自らの”時間”を早めることでこの動きを可能にしている。

 

 

そして北斗はスターフルーツアームズの技の一つ『光年歩』を使うことによりこの速さについていっている。

 

 

だが、さすがに生身の人間がこの速さで動くのには限界がある。

 

 

昴も余裕そうではあるが手足の筋肉が数本、断裂していた。

 

 

「そろそろ決めさせてもらいましょうか・・・」

 

 

そうファフニールが呟いた次の瞬間。

 

 

突如、向こうから灼熱の波動が押し寄せ慌てて防御の姿勢をとる。

 

 

「何だ一体!?」

 

「この波動・・・まさか・・・おもしろい!」

 

 

そう言うや否や、ファフニールは熱波が来た方向へと走り去ってしまった。

 

 

 

一人取り残された北斗は追いかけようとしたものの、走る激痛にもう光年歩に耐えられないことを悟る。

 

 

「なら・・・貴虎さんの方に行くかなっと!」

 

 

そう言って、彼は次なる戦いに赴いた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

シュバリヤに向かって名乗りを上げ、十馬は改めて自分の姿を見る。

 

 

デュークのものとは違う、煌びやかなアンダーウェアに深紅の鎧。

 

自分だけの力。

 

その実感が胸を熱くさせる。

 

 

 

「こけおどしだ!」

 

その数秒の隙にシュバリヤが鎌を振るい、カルラを切り裂こうとしてくる。

 

 

「それは・・・どうかな?」

 

そういうと同時、カルラは片手に持っていた武器・・・錫杖型アームズウエポン『ガルーダクロージャー』でその刃を受け止めた。

 

 

「何?」

「そらよっと!」

 

さらにもう片方の手に持っていたソニックアローでシュバリヤの腹に横薙ぎに切りつける。

 

 

「ぐはっ!」

 

苦悶の声を上げ、距離をとるシュバリヤに対し、カルラはガルーダクロージャーを変形させる。

 

 

上部の羽を反り返すように畳んだ鳥の形状をしたオブジェを柄に沿ってずらす。

 

するとたたまれた羽が鍔のようになり、レイピアモードへと移行した。

 

 

 

また、シュバリヤもおもむろに鎌に手をかけたかと思うと鎌の刃の部分が左腕に融合し、二の腕から刃が突き出たような格好になる。

 

そして鎌の柄の部分は先頭が鋭くとがった魔槍へと変貌する。

 

 

 

訪れる静寂。

 

 

全く同時に踏み込んだ二人は剣戟の音を響かせながら交差する。

 

 

ガルーダクロージャーとソニックアローで連続攻撃を放つカルラにそれを槍と刃でいなすシュバリヤ。

 

 

まさに一進一退、互いの命を削りあう戦いが繰り広げられる。

 

 

 

「お前は何故・・・何故そう何度も立ち上がれる!?」

「俺はあきらめない!例え一度燃え尽きようと、また舞い上がって見せる!この姿がその証明だ!」

 

 

交わされる言葉、魂の叫び。

 

その全てが彼らの力となる。

 

 

「ダハーカは・・・グウシェはお前のせいで死んだ!お前さえいなければ!」

「俺はあいつがなぜ死んだのかなんてわからない・・・でも!あいつの命の重みを背負って生きる!生き続ける!」

「ほざくなぁぁ!!」

 

 

全ては一瞬だった。

 

 

激情に駆られるまま、シュバリヤの黒の魔槍がカルラの心臓に向かって突き出される。

 

 

だがカルラはそれを避けなかった。

 

 

敢えてその切っ先の狙いだけは外し、それでもアンダーウェアを突き破って脇腹をえぐられた。

 

 

そして、その隙にエネルギーを貯めた二刀でシュバリヤを横薙ぎに切り裂く。

 

 

 

 

「ぐっ!?がぁぁぁぁ!!」

「がはっ!!」

 

 

自ら痛みに耐えながらもカルラはシュバリヤの傷口に手を伸ばし、内部にあった目当てのものを引き抜いた。

 

 

 

「きさまぁぁぁぁぁ!!」

「これは・・・返してもらうぞ!」

 

 

距離を取り、脇腹から流れる血をそのままに十馬は不敵に笑って見せる。

 

 

 

その手には、血にまみれたカチドキロックシードが握られていた。

 

 

 

カチドキロックシードを取られ、力が減退しているのかシュバリヤが膝をつく。

 

 

 

このまま押し切れるか?

 

 

そう思い、ソニックアローで光矢を放つ。

 

 

 

だがシュバリヤに矢が届く直前、結界のようなものがシュバリヤを包み込み矢が阻まれる。

 

 

「やれやれ・・・これだからあなたは」

 

そう呟きながら現れたのはファフニールだ。

 

 

「次はお前が相手か?」

「いえいえ、流石にリーダーがこれではね・・・というわけでお暇させていただきますよ」

 

そう言って、手から赤い光弾を上に放つ。

 

 

光弾は上空で弾け、光を辺りにまき散らした。

 

 

警戒しているとさもおかしいという風にファフニールが笑う。

 

「大丈夫ですよ。閃光弾みたいなものです・・・警戒すべきはこちらでしょう?」

 

 

そう言った瞬間、目の前にクラックが開き中からインベスらしき怪物が現れる。

 

 

 

「な!こいつは!」

「どうです?私が研究に研究を重ねて作り上げたインベスの極限個体の一つ、アキレスインベスです!置き土産の一つとしてご用意させていただきました。では、どうぞごゆっくり」

 

そして恭しく礼をすると影の中に融け消えていくように姿を消してしまった。

 

 

 

「野郎!ってうわっ!」

 

追いかけようとするとアキレスインベスが文字通り横槍を入れ、慌てて飛び下がる。

 

 

「ウゥゥゥ・・・」

 

そんな怨嗟にも似た声でこちらを睨み、槍による突きを何度も放ってくる。

 

 

だが、カルラはその全てを躱していた。

 

 

「その程度じゃ・・・今の俺に傷はつけられないな」

 

そして幾度目か突き出された槍を握り、相手を引き寄せレイピアで一閃。

 

 

苦しそうなうめき声をあげる相手に今度はソニックアローで連続射撃をくらわせる。

 

 

さらに距離を詰め、今度は錫杖型のロッドモードに戻したガルーダクロージャーに炎を纏わせ殴打する。

 

 

 

「そろそろ決めるか」

 

そう言い、まずはベルトのレバーを一回押し込みエネルギーを足に集中させる。

 

 

そしてその足でインベスを蹴り飛ばし、距離を置いたところでロックシードをソニックアローにセット。

 

さらにガルーダクロージャーの鳥のオブジェを展開し、羽を広げた鳥のような形にしてからソニックアローにあてる。

 

 

さながらそれは巨大な矢を構えているようだった。

 

 

ソニックアローと一体化したクロージャーの柄を持ち、引き絞るように後ろに引く。

 

 

するとアローの射出口にドラゴンフルーツの断面のような文様が現れ、そこにエネルギーが収束していく。

 

 

そしてエネルギーが臨界を迎え、ロックシードが紅く瞬いたその瞬間。

 

 

カルラは貯めていたエネルギーを一気に解き放った。

 

 

 

もはやそれは矢の形をしていなかった。

 

 

表現するならば光の柱。

 

 

直径1メートルほどの光の奔流がアキレスインベスを飲み込み、消滅させ、その先の壁などの障害物も全て円形の穴をあけてしまった。

 

 

 

敵が一欠けらも残さず消滅したのを確認すると、変身解除した十馬はその場に座り込んだ。

 

 

「もう限界・・・流石に寝てても怒られないよな・・・」

 

 

そう言って仰向けになり、十馬は静かに目を閉じた。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

そのおよそ数分前・・・

 

 

 

斬月は龍玄と共にオーバーロード、ゲオルとギウスの二人組と戦っていた。

 

 

 

「光実!タイミングを合わせろ!」

「わかったよ!兄さん!」

 

 

そう言って斬月はロックシードをソニックアローに装填、龍玄はブレードを一回倒してエネルギーを貯める。

 

 

そして兄弟息の合ったコンビネーション技『ドラゴニックボレー』でギウスを狙い撃つ。

 

 

「くそっ!」

「兄貴!?」

 

だが、それを受けたのはゲオルだった。

 

 

弟を身を挺して庇い、背中に直撃したエネルギーが皮膚をえぐり、赤い肉が見えていた。

 

 

「ぐはっ・・・」

「兄貴!しっかりしろよ!」

口から血を吐き、それでも弟を守ろうと退こうとしないゲオルにギウスが呼びかける。

 

 

 

「兄さん!チャンスだよね・・・」

「・・・ああ。わかってる」

 

そう言い、ソニックアローを構え矢を放つ。

 

 

それが届く寸前。

 

 

突如として飛来した刃がその矢を防いだ。

 

 

警戒していると上から彼は降ってきた。

 

 

先ほど矢を防ぎ、地面に突き刺さった刀を抜いて彼が斬月たちと対峙する。

 

 

長い後ろ髪を一纏めにした鋭い雰囲気の男だ。

 

その左目には縦に傷が走り、瞳を固く閉ざしていた。

 

 

「ゲオル、ギウス。ここは撤退するぞ」

「オロチ・・・」

「お、オロチ!助けてくれ!兄貴が!」

「わかっている・・・この場は見逃してもらえないだろうか。異界の戦士」

 

そう言って首を垂れるオロチと呼ばれるオーバーロード。

 

 

「どうするの兄さん?」

「・・・このチャンスを逃す手はない」

 

そう言って斬月はソニックアローを構える。

 

 

「私達はお前達を倒すために戦っている。この機会を逃すわけにはいかない」

 

その答えに、オロチは分かった・・・と呟く。

 

 

「つまり、戦力が削れればいいのだろう?・・・ならば」

 

そう言うなり刀を自らの左腕に当てる。

 

 

そして

 

 

「これなら・・・いいか?」

 

 

何のためらいもなく、その腕を切り落とした。

 

 

「なっ!?」

「ぐっ・・・っはぁ・・・」

 

 

鮮血と共に地に落ちた左腕は人間のそれと遜色ないものに見えた。

 

 

 

「これで・・・戦力は削れただろう?・・・もう・・・いいか?」

 

 

何も言わない斬月を肯定と受け取ったのか、オロチはゲオルを担いだギウスと共に自ら開いたクラックへと消えていった。

 

 

「・・・はっ・・・はっ・・・っておい!何やってんのさ貴虎さん!」

 

遠巻きに一部始終を見ていたのか、向こうから駆けてきた北斗が貴虎に詰め寄る。

 

 

「兄さん・・・流石に甘かったんじゃない?」

 

龍玄も先ほどの兄の行動に違和感を覚えたようだ。

 

 

だが、斬月は佇んだまま何も言おうとしない。

 

 

「おい貴虎さん!」

 

と北斗が背中を叩く。

 

 

 

その勢いに押されるまま、斬月が崩れ落ちる。

 

 

変身も解除され、硬く目を閉じた貴虎が冷たい地面に横たわる。

 

 

「た、貴虎さん・・・?」

 

「兄さん?・・・兄さん!」

 

 

 

何度呼びかけようと、貴虎が目を開けることはなかった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

to be coutinue・・・

 

 




いかがでしたでしょうかMy主人公ライダー。
カルラですってよ迦楼羅。

そして先日、5月16日をもちまして本作は一周年を迎えました!
グレートですよ…こいつぁ…
人間の子供でいうと首が座って、色々なことができるようになる時期ですかね。
自分の実力もまだまだですが一年も続けられたことに喜びを感じています。
今後もよろしくお願いしますです。

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