仮面ライダー鎧武 新章 〜幻獣の樹海〜   作:ダイタイ丸(改)

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こんにちは!ダイタイ丸(改)です!
自分は悩みとか抱え込むタイプかも…
ストレスフリーで生きていきたい。


第14話 悩める竜希、龍の導き

ヨルムンガルドの総力を尽くした真奈奪還作戦から一週間。

 

クラックの出現は観測されず、十馬は徐々に元の平穏な生活を取り戻しつつあった。

 

 

ーーーーー

 

 

朝6時、自宅で寝ていた十馬は窓から差し込む朝日に照らされて目を覚ました。

 

意識が徐々にはっきりしてくるのに比例して、布団の中が妙に暖かいことに気づく。

 

ん〜?と布団の中を見てみると、白い人の手が十馬に絡みついていた。

 

「うひゃあ!?」

 

驚いて布団から這い出ると布団がモゾモゾと動き、中から少女が顔を出す。

 

「はわ〜・・・あ、十馬・・・おはよ・・・」

「オ、オハヨウゴザイマス」

思わずカタカナで喋ってしまう。

 

というか何で十馬はこの少女・・・藤井真奈と同衾しているのだろうか。

 

「お前何で俺の布団にいるの?」

「寒かったのと、寝ぼけてたのと・・・あとは・・・わかんない」

「・・・やっぱりキッチンで寝るべきだったか」

 

現在、十馬はこの幼馴染の真奈と同棲している。

 

事情は色々あるのだが、とにかく無防備すぎるのがこの少女の難点だ。

 

「・・・む〜、ねむい〜」

「寝てていいぞ?飯は作るからさ」

そう言って再び夢の世界に船出した真奈に苦笑し、キッチンに立つ。

 

 

昨日スイッチを入れたご飯が炊けているのを確認し、冷蔵庫から大根、ブロッコリー、アスパラ、卵、鮭の切り身、そして味噌を取り出す。

 

水を入れた小鍋に火をかけ、沸騰したらブロッコリーとアスパラを入れる。

そして茹で上がるまでの間に大根をいちょう切りにしてもう一つの鍋に投入、味噌汁を作る。

 

十馬はこう見えて料理は得意だ。

高校に入り、自炊を始めたためレパートリーは非常に多い。

ちなみに得意料理はチンジャオロースである。

 

「よしっ!こんなもんかなっと」

卵を焼いている間にグリルに投入した鮭の様子を見て満足げに頷きながら、ちゃぶ台に食事を並べ始める。

 

今朝のメニューはご飯に大根の味噌汁。焼きじゃけにブロッコリー&アスパラ。目玉焼きである。

 

 

美味しそうな匂いに反応したのか真奈がもぞもぞ布団から出てきて席に着く。

 

眠気覚ましに出されたお茶を飲み、二人で手を合わせていただきますをする。

 

 

これが、ここ何日かの龍崎家の日常風景だった。

 

真奈は紘太たちとは違い、味覚を感じ取れるようだ。

おかげで十馬も腕を披露する相手が出来て嬉しかったり。

 

美味しいと笑顔で味噌汁をすする真奈に、こぼさないよう注意をする十馬。

 

新婚さんみたいだった。ただし、立場は逆だが。

 

 

 

ーーーーー

 

食事を終え、制服に着替えた十馬は朝のショッピング番組に夢中になっている真奈に声をかける。

 

「よし、そろそろ学校行ってくるわ。練習もあるから早く行かないと」

「うん!私も頑張るね」

「一緒に踊れないのは残念だけどな・・・」

二人が話しているのは芽吹高校で行われる音楽祭の事である。

 

十馬が通う芽吹高校には様々なイベントがある。

 

春は体力測定(イベントとしてカウントするのはどうかと思うが)に始まり、夏は体育祭に球技祭、秋の文化祭に演劇祭といった具合にである。

 

そして今回のイベントは音楽祭といい、生徒がバンドを組んだり合唱したりしてステージを回す物だ。

 

今年、十馬はクラスの男子たちとバンド『スタッグズ』を組み、ドラゴンロンドと共同ステージをする予定だ。

 

「お前も皆と練習しとけよ?」

「・・・う、うん。頑張る」

 

実は今回の共同ステージが真奈の初ステージになるのだ。

基本を覚え、難しい動きにも挑戦している彼女のがんばりは十馬も知っている。

だから十馬も見ているだけというわけにもいかず、バンドで音楽を担当することにしたのだ。

ちなみに十馬の担当はボーカルである。

 

「じゃ、行ってくるわ。鍵、よろしくな!」

「うん!行ってらっしゃい」

 

見送りの言葉に笑顔で返し、十馬は通学路を歩き出した。

 

 

ーーーーー

 

 

その頃、ヨルムンガルドの地下施設内にある自室で貴虎は始末書の山を片付けていた。

 

前回の作戦時にスラム区とはいえ被害を出してしまったからである。

 

特にビルの倒壊は痛かった。

業者の手抜き工事というわけにもいかないので老朽化ということで話をつけたが瓦礫の撤去作業に人件費がかさんでしまったのだった。

 

「ふぅ・・・これで、最後か」

と最後の書類にサインと印鑑をして、視線をあげるとデスクに缶コーヒーが置いてある。

 

そして壁に背を預け缶コーヒーを啜るのは貴虎の実の弟、呉島光実だ。

 

「お疲れ兄さん。これで全部だよね?」

「ああ、すごく肩が凝ったな・・・」

書類の山を台車の上の段ボールに詰めながら苦笑する光実にこちらも苦笑をこぼす貴虎。

 

現在、光実は貴虎の部下として復興局に所属している。

短大を出た後、直ぐに局に入り自分の手伝いをすると言ってくれた弟に貴虎は誇りを持っていた。

日常での会話も増え、今では夕食を食べながら談笑するのも日課となりつつある。

 

「変わったな・・・お前は」

「え?何?兄さん」

「いや、なんでもない・・・さてと、ようやく休めるな」

「そうだね、久々にゆっくりしなよ。あとは僕がやっておくから」

「大丈夫か?意外と量はあるが・・・」

「戦えない分、こっちでサポートしなきゃだからね。目が治るまでは事務係かな?」

そう言って、左目を覆う眼帯に触れる。

 

失明は避けられたが完治まではまだかかるという弟の左目。

射撃を持ち味とする龍玄にとってかなりの痛手だった。

 

「すまんな・・・だが、藤井真奈の力があれば・・・」

「ダメだよ。あの子は自分が人じゃないことをすごく気にしてる・・・だから、あまり力は使わせたくないんだ」

「・・・そうだな。すまない、気遣いが出来ていなかった」

「ううん。それより、久しぶりに息抜きしなよ?たまにはいいじゃない?」

「ああ、そうさせてもらおう」

 

そう言って貴虎は部屋をあとにした。

 

 

ーーーーー

 

 

出口に向かう途中、司令室を通るとそこにはこたつを甲羅のようにして眠る亀・・・もとい葵の姿があった。

 

コンセントを抜き、みかんを剥いて二つを鼻に、残りを口に詰める。

 

数秒後、「ぶはぁっ!?」と呼吸困難に陥った葵が葵が跳ね起きた。

 

「な、何をするんだい貴虎!ノーオキシジェンノーライフ!人間の基本だよ!?」

「いや、これくらいしないとお前は起きんだろうに」

「そのうち殺されるんじゃないかな・・・」

 

南無阿弥陀仏と手をあわせると葵のドロップキックが飛んできた。

 

それをひらりとかわし、出口へと向かう。

 

そんな貴虎にみかんを食べながら葵が声をかける。

 

「あ、そういえば健康診断受けてね?君、ただでさえサボりがちなんだから」

「仕事が忙しいだけだ。サボりではない。それに、体調管理くらい自分でできる」

「でも、受けないとダメだよ?自分じゃわからないこともあるんだからね?」

 

念を押してくる葵にわかったわかったと応対して貴虎は司令室をあとにする。

 

 

「・・・わかっているさ、自分の身体のことくらい・・・」

そう、閉まった扉の前で小声で呟いた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

その日の午後、大半の生徒が音楽祭の準備をしている時に竜希は一人屋上で考えていた。

 

「どうすれば十馬さんの負担を減らせるかな・・・」

呟いたあとにハァとため息を吐く。

 

竜希の心配事、それは十馬の負担のことだった。

 

十馬が訳あってアーマードライダーとして戦っているのは以前、呉島という人から教えてもらっていた。

だから、少しでも負担を減らすためにステージも淳吾の指示に従いきっちり行ってきた。

 

だが、先日十馬が怪我をしたと聞き、自分のやっていることは意味がないのではないかと思い始めていたのだ。

 

「十馬さんが戦わないようにすればいいんだけど、説得は無理かなぁ・・・」

 

少なくとも、自分の知っている龍崎十馬はそういう人物だ。

誰かが傷つくくらいなら自分が傷つく。

そんなことを真顔で言う人間なのである。

 

「あのベルトがあれば僕も戦えるのかな・・・」

言ってから自分で苦笑する。

 

ベルトを手に入れたところで自分は自分。戦えるわけもない。

きっと、足がすくんで動けなくなるだろう。

素の竜希は基本的にビビりなのだ。

 

「現実的じゃない・・・でも・・・」

 

空を見上げてみても、胡散臭いくらいに青い空は何も教えてはくれなかった。

 

 

ーーーーー

 

 

そして音楽室では、十馬が所属するバンド、スタッグスが猛練習をしていた。

手慣れたその手つきは熟練者だと主張している。

耳をすませば、廊下にも彼らの声が伝わってくる。

 

「おい!ベースそこで間違えんなよ!」

「ドラム!音薄いよ!なぁにやってんのぉ!」

「時間がないと言ってるだろぉ!」

 

見た目に反して、余裕がないようだった。

 

 

「はぁ・・・思ったよりもキツイな」

とボーカル担当、十馬が座りながら目の前で喧嘩しだすメンバーを見やる。

 

このバンドはクラス内で楽器ができる人間を集めて作られた即席チームだ。

しかも、この間二股疑惑をかけられた村八分状態の十馬に発言権などゼロなわけで。

 

「お前らもっとロックに行こうぜ!逃げた奴に戦う資格はないんだぞ!?」

「うるせぇ!お前こそさっきから音が震えてんだよ!誰かに会いたいのか!?」

「期待が!期待が重すぎるんだって!理解を拒むな!憎しみに変わるぞ!」

 

もう3時間はぶっ通しで練習しているためか、若干変なテンションで言い争いしている。

 

そんなメンバーを見て十馬は一言。

 

「悲しいけどこれ。学園祭バンドの典型例なのよね・・・」

 

音楽性の違いによる解散。それが目前に迫っているように感じた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

その頃、ドラゴンロンドのガレージでは真奈がダンスのレッスンを受けていた。

 

「いい?最初はちょっと難しいけど慣れれば簡単だからね?不安がることないのよ?」

「・・・は、はい!頑張り、ます!」

「じゃあいくよ?せーの、ワンツー、スリーフォーファイ、ワンツー、スーリーフォー・・・」

と熱心に教えてくれているのはビートライダーズに所属するペコの実姉、アザミだ。

 

元は十馬が基本を教えてもらおうと呼んだのだが真奈のやる気に惚れ込み、いまでは付きっ切りで教えてくれているいい人である。

ちなみにザックにダンスを教えたのも彼女であり人に教えるのには手慣れているように感じた。

 

「あ、あの・・・ここの踏み込みってどうすればいいですか?」

「ここはね、重心を浮かさないように・・・」

 

そう言いながらゆっくり何度も教えてくれるアザミ。

真奈もそれに頑張って付いていく。

 

 

それのすぐ隣ではドラゴンロンドの面々が練習している。

 

 

皆、やる気満々だった。

 

だが、一人だけ足りない人物がいた。

 

この話を持ちかけた張本人、竜希が顔を出していなかったのだ。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

その頃竜希は呉島邸の前に立っていた。

 

インターホンを押すも、返答はない。

 

「やっぱ留守か・・・ま、しょうがないしょうがない。土台無理な話だったんだから・・・」

そう諦めて帰ろうとした時。

 

 

「あの、家に何か御用ですか?」

 

後ろから突然声をかけられ振り返る。

 

そこには医療用の眼帯を付けた元チーム鎧武メンバー、呉島光実が立っていた。

 

 

 

 

 

「なるほど、兄さんに用事があったんですね」

立ち話もなんだったので中に招き入れ、紅茶を出しながら光実は言う。

 

「すいません・・・わざわざ入れてもらっちゃって」

「いいですよ、十馬くんのお友達なら僕の友達みたいなものですから」

そう笑う光実は、まるで自分と同年代かのように思えるほど屈託のない笑みを浮かべていた。

 

 

その笑顔に少し緊張をほぐされ、竜希は今日ここを訪ねた理由を光実に話すことにした。

 

「光実さんは・・・アーマードライダーなんですよね」

「そうですね・・・今は怪我してるんで前線からは引いてますけど」

と言いながら左目を指差す。

 

光実には、大体彼が言いたいことがわかっていた。

 

「・・・どうやったら、アーマードライダーになれますか?」

 

ほら来た、と思いながら光実は冷静に言う。

 

「アーマードライダーに形だけなるのなら、ベルトとロックシードがあれば十分です・・・でも、それだけではダメなんです」

「な、何が必要なんですか?」

「・・・それは・・・」

 

言いかけて、言葉を止める。

 

かつての自分もこうだったのではないだろうか。

 

憧れの人がいた。

 

力になりたかった。

 

だから、意味など考えず不用意に力に手を出してしまった。

 

 

あの時、こうなるとわかっていれば考えたであろう事を、目の前の少年に考えさせるために。

 

光実は言う。

 

「必要なのは・・・覚悟です」

 

「覚悟なら、できています。傷ついたっていい。僕は十馬さんのために・・・」

 

「それは覚悟ではないですよ。覚悟というのは、自分だけのことじゃないんです・・・力を得るということは、必然的に責任を持つということです。君は力をうまく使えないかもしれない。その結果、多くの人を犠牲にするかもしれない。その重圧に、耐えられますか?」

 

かつての自分に、今伝えたいことを話すような気持ちで光実は語る。

 

「一度、力を手にしてしまえば責任は消えません。それでも力を得る勇気が、覚悟が、君にありますか?」

 

その言葉に、竜希は頷けない。

 

覚悟はしているつもりだった。

 

意志も、固かった。

 

けれど、実際に戦っている光実の言葉にはそれらを吹き飛ばしてしまうほどの現実が、厳しさが含まれていた。

 

 

うつむく竜希の肩に手を置き光実が優しく言葉をかける。

 

「今日1日で考えられることではありません・・・ゆっくり、時間をかけて答えを出してください。後悔だけはしないように」

 

そう言って、光実は部屋を去っていった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

その頃、ヨルムンガルドの地下施設では葵が作業を進めていた。

 

 

「・・・よし!これで後はドライバーを仕上げて終わりかな」

そう言って葵がデスクの上にロックシードを置く。

 

赤い透明なパーツの目立つロックシードだ。

 

識別番号のところには『E.L.S-07』と刻印されている。

 

「ドラゴンエナジーロックシード・・・この力は僕たちに何をもたらすのかな」

 

そう呟いてから葵はもう一つの作業に取り掛かる。

 

 

「さて、こっちの解析も進めなきゃ」

ディスプレイに映し出されているのは戦極ドライバーだ。

 

これは以前、曽野村が使用した未知のドライバーである。

 

「塗料や材質から出処が分かればいいのだけど・・・まったく、こんな時でも人間は一枚岩になりきれないんだね」

 

そう言いながら解析を進めていく。

 

 

まだまだ、このベルトの謎は解けそうになかった。

 

 

ーーーーー

 

 

呉島邸から帰る途中、竜希は肩を落としながら歩いていた。

 

「誰かを傷つけることへの覚悟か・・・十馬さんはそれでも戦うのかな・・・」

 

力を手に入れれば誰かが傷つく。

 

その事実が、竜希にとって衝撃だった。

 

 

守ると言えば聞こえはいいかもしれない。

 

でもそれは、敵と呼べる誰かを傷つけると宣言しているようなものだ。

 

そんなことが、自分にできるだろうか。

 

 

「どうすればいいんだろう・・・」

 

呟き、道を照らす電灯をぼんやり見つめる。

 

 

 

「迷っているんだね?自分にできることが見つからなくて」

 

いきなり後ろから声をかけられ、驚いて振り向く。

 

 

そこには、白の少年が立っていた。

 

白の貫頭衣風のローブを着た、白髪の少年だ。

 

年齢は十馬と同じくらいだろうか。

 

けれど、その佇まいは何百年も生きる大樹のような、畏怖にも似た何かを感じさせる。

 

 

「戦いはしたくない、ということかな?」

「あ、あの・・・誰ですか?」

 

突然現れ、質問をしてくる少年を怪しみながら竜希は問う。

 

 

「僕かい?僕は・・・シャオロンって言うんだ。それより、君も質問に答えてほしいな」

「シャオロンさん・・・って、なんで僕が戦いたくないって思うんですか?」

聞き返す竜希にシャオロンは笑って答える。

 

「だって、君は怖がってるから・・・誰かにとっての悪者になる事を恐れてるからだね」

 

そう言われ、竜希は黙り込む。

 

まさにその通りだ。

 

自分は誰かとぶつかりたくない。

 

傷つけたくないからではない。

 

自分が傷つきたくないからである。

 

「僕は確かに、誰かとぶつかって傷つくのが怖い。でも、それでいいじゃないですか」

「そうだね、僕もそう思うよ・・・生物にとって、傷つくのを避けるのは本能だ。でも、傷ついてもなお自分の信じる道を進む人間を君は知っているんじゃないかな?」

「・・・十馬さんのことですか?」

 

なぜそう思ったのかはわからない。

 

だが自分の中では彼が、そんな強い人間の代表だった。

 

彼の事は尊敬している。

 

憧れもしている。

 

けれど、どこかであんな風にはなれないと諦めている自分がいる。

 

「僕には、あの人のように強くはなれないですよ・・・僕は戦う覚悟なんてできてない」

 

「そうかな?彼は決して強くはないよ」

 

「なんでそんなことがわかるんですか!?あなたにあの人の何がわかるんです!?」

 

「わかるよ。だって、ずっと”見てきた”もの」

 

そういうシャオロンを見つめて、竜希は初めて彼が異常な存在だと気づいた。

 

 

白い肌に白い髪、全てが白い彼の要素の中で唯一。

 

その瞳だけが、綺麗な赤をしていた。

 

 

人間であれば、決して持ち得ない色の瞳。

 

それに気付き、警戒心をにじませながら竜希は数歩後ずさった。

 

そんな竜希の反応に、少し寂しそうな表情を浮かべ、すぐまた微笑に戻ってシャオロンは続ける。

 

「彼はね、ずっと戦っていたんだ。負けそうになる弱い自分と。でも、彼は勝てた。なぜかわかるかい?」

「・・・強かったから、じゃないんですか?」

 

「いいや、違う。彼は自分が弱いとわかっていたんだ。だから、弱い自分も飲み込んで進むことができた」

 

シャオロンの言葉に、竜希の心の奥で何かが響いた気がした。

 

「・・・認める、弱い自分を・・・」

「そう、自分の根幹の部分はどうあがいたって変えられない。だから、それを踏まえた上で目指せばいいんだ」

「・・・どこを目指すんですか?」

彼は答えを与えてくれる。

そう思って竜希は聞き返した。

 

だが、シャオロンの言ったことは竜希の予想と反していた。

 

「本当はもう、わかってるんだろう?殻にこもるのもいいけれど、そろそろ自分で踏み出してみなよ」

 

そう言って優しく微笑み、シャオロンは光とともに姿を消した。

 

 

 

その後も、竜希はその場所を動けなかった。

 

だが、しばらくして顔を上げた。

 

その瞳に、揺るぎない意思を込めて・・・

 

 

 

 

 




第14話でした。
小学校からのリア友がなんかバンド組んですごいらしいんですよ。
準優勝?とかしたらしいんですよ。
やっぱスゲえよ……

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