仮面ライダー鎧武 新章 〜幻獣の樹海〜   作:ダイタイ丸(改)

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はい!ダイタイ丸(改)でございま〜す。(某国民的アニメ風に)
ガッチャマンクラウズに今更ハマるの巻。
ラジオ面白いよ。



第10話 アメミトVSデュークⅡ! 魂の交差!

前回までのあらすじ

 

第三勢力について考えを巡らせる一同。

そんな中、一人焦るザックにA+のロックシードが渡される。

そしてクラックと共に謎のインベスが出現し、十馬とザックに悪夢を見せる。

しかし、それを強い精神力で破ったザックは何故か現れたかつての友、駆紋戒斗と共に新たな力でインベスを撃破した。

 

 

ーーーーー

 

 

ザックの戦いから2週間後・・・

 

沢芽市の中心部にあるビジネス街に、人々の悲鳴が響き渡っていた。

その原因はすぐに知れた。

逃げ惑う人々の後ろからあちこちを破壊して回るインベスの群れだ。

 

そして怯える人々に向け、先頭のリーパーインベスが水弾を放つ。

 

「「「うわぁぁぁ!」」」

と逃げ惑う人々に容赦なく水弾が襲いかかり・・・

 

反対方向から飛んできた光の奔流にかき消された。

 

 

「よしっ!ギリギリセーフだな。」

と光の奔流が飛んできた方向から声がし、マントを翻した青と黄色の人影がインベス達の前に立ちはだかる。

 

「アーマードライダーデュークⅡ参上ってか。皆さん早く逃げて!」

と言うと同時、十馬が変身したデュークⅡはベルトを操作し刃にエネルギーを集中させる。

そして気合と共にエネルギーの刃を放ち、群れの前方の集団を空間ごと両断する。

 

「た、助かった。ありがとう!」と声をかけてくる人々に避難を促し、改めて目の前のインベス達を睨む。

 

「さて、そろそろ頼むぜ、貴虎。」

と通信で繋がった味方に合図する。

 

すると上から滝のように大量の光の矢がインベスの群れに降り注ぎ、群れの大半が消滅する。

 

「エネルギーを初めから使いすぎだ。少しは温存しろ。」

と上から声がし白のアーマードライダー、斬月・真がデュークⅡの隣に着地する。

 

「あんたが遅いからだろ。それに敵の頭数もかなり減らせたしさぁ。」

「それは結果論だ。もし群れの中にオーバーロードがいたらどうする。」

と口論する二人のアーマードライダーの周りを残ったインベス達が取り囲む。

 

「まぁいい・・・行くぞ!」

「はいはい・・・さて、いっちょやりますか!」

と二人の戦士は背中合わせにインベス達に向き合う。

 

そしてほぼ同時に、目の前の敵に二人は駆けた。

 

時には斬撃を浴びせ、時には矢を放ち敵を次々消滅させていく。

 

「そろそろ終わりにしようぜ!」

「ああ、そうだな。」

と二人は言葉を交わし、ベルトのレバーを一回押し込む。

 

『レモンエナジースカッシュ!』

『メロンエナジースカッシュ!』

 

するとエネルギーが刀身に集まり、輝く。

 

「せいやぁぁ!」

「ハァッ!」

と気合と共に放たれた斬撃は残っていたインベスを全て爆散させた・・・

 

 

「よし、任務完了か・・・」

と斬月が変身を解き、呉島貴虎の姿に戻り、隣の仲間に声をかけようと視線を向けると・・・

「よし、それでは本部に・・・十馬?・・・おいどこだ!?十馬!」

いつの間にか、十馬の姿が消えていた。

 

 

ーーーーー

 

 

その頃、十馬はビジネス街を走っていた。

 

 

「くそっ!さすがにもう閉じてるか・・・」

と一度立ち止まり、その場で毒づく。

 

そう俺は今、クラックを探していたのだ。

 

「はぁ・・・やっぱ、焦ってんな俺・・・」

 

焦りの原因は分かっている。

この前のインベスに見せられた悪夢だ。

 

(あんなの幻だ・・・と、思いたいけどな・・・)

 

その悪夢は確実にあり得る一つの可能性であり、十馬にとって最悪の可能性だった。

 

(今は、できることをやるだけだ!後悔しないように!)

そう決意し、再び走り出そうとしたその時・・・

 

目の前に突如光が生まれ、声をあげる間も無く俺は光に包まれた・・・

 

 

ーーーーー

 

 

 

目を醒ますと、そこは光の溢れる不思議な空間だった。

 

少なくとも先ほど走っていたビジネス街の通りでは無い。

 

「初めましてだね。龍崎十馬くん?」

と戸惑う十馬の目の前に立っていた人物が声をかける。

 

神秘的な雰囲気の少年だ。

髪は白髪で両目は赤く、白地に金の装飾のローブのようなものを着ている。

 

だが、その目からは敵意が感じられず、むしろ親愛の情すら感じられる。

 

「あ、あんた誰だ?」

「僕は・・・そうだな、この世界に馴染む名前なら・・・そうだ、シャオロンとかでどうかな?」

と目の前の少年、シャオロンが人懐っこい笑みを浮かべる。

 

「どうかなって言われても・・・つーかココどこだ?貴虎とかもいんのか?」

とシャオロンに聞く。

 

「まず、ここは僕が作った君と話すための空間だ。どの世界軸からも独立してるからクラックは開かないよ。あと、ここにいるのは君だけ。呉島貴虎は今頃探し回ってるかもね。ただ、秘密にしてくれると嬉しいな。」

と笑みを浮かべながら口に指をあて、イタズラっぽくシャオロンが答える。

 

(あちゃー・・・帰ったら説教だなこりゃ)

と思い、慌ててかぶりを振る。

 

何というか、そんなことを考えられるほど目の前の少年からは敵意が感じられないのだ。

 

「・・・あ!もしかしてあのバイクをくれたのって!」

「そう、僕からのプレゼント。気に入ってくれたなら良かった。人にプレゼントをするのは1000年ぶりくらいだったから。」

と思い立って聞く十馬にシャオロンが笑顔で答える。

 

「いやーセンス良かったぜ!1000年ぶりにしてはなかなか・・・ん?1000年?」

と言いかけ、首をひねる。

「えええええ!!1000年ってどういうことだ!?明らかに外見年齢越えてんだろ!?」

というか十馬も1000年生きた人間に会ったことはないのでよくわからないがとにかくありえない。

 

「ああ、もう僕は年取らないからね。とは言っても僕の生きていた世界の時間と君たちの世界の時間感覚は違うから、正確には500年くらいかな?」

とシャオロンが笑顔を浮かべたまま平然と言ってのける。

 

「って、それより話ってなんだ?貴虎が探してるってんなら帰んないと。」

と少し急かすように言う。

「ああ、話といっても大したことじゃないんだ。単に君と話したかっただけだから・・・そうだよね、君にとっては迷惑だよね。」

と目を伏せ、少し寂しそうにシャオロンが言う。

 

「それじゃ、今日はここまで。また会おうね。」

とシャオロンが笑う。

 

それと同時、先ほどと同じように光が満ち、思わず目を閉じてしまう。

 

 

 

そしてーーーーー

 

 

 

目を開けると、そこは先ほどまで走っていたビジネス街の通りだった。

 

「お、おい!・・・ハァ、なんか最近こういうの多いな。」

とため息をつく。

 

すると、後ろから「十馬!」と呼ぶ声が聞こえる。

 

「貴虎、わりぃ。ちょっと気になることがあってさ。」

「急にいなくなるからどうしたのかと思ったぞ。まぁ、見つかったからいいが。」

と謝罪する十馬に貴虎が安堵したように言う。

 

「さて、帰るぞ。これから作戦会議もあるからな。」

「ああ、行こうぜ。」

と二人は帰路についた。

 

 

ーーーーー

 

 

そして、本部についた俺たちはここ2週間のクラックの増加傾向についての会議に参加していた。

 

「さて、ここ2週間でクラックの発生件数は増加している。

それだけでなく、今日貴虎たちが遭遇した群れが示しているのはクラックの安定化だ。」

と司令室の真ん中の椅子に座った葵が言う。

 

「クラックの安定化?何故そんなことが言える?」

「今回、君らの遭遇した群れはおよそ50体ほどのインベスからなるものだった。

それだけのインベスが通過できるほど、長い間クラックが開いていたということだよ。」

といぶかしむ貴虎に葵が説明する。

 

「安定化・・・」

と葵の言葉を反芻し、何やら考え込む十馬。

 

「?・・・まぁいいや。つまりこれからの戦いはもっと大変になるってこと!以上!」

と十馬を少し不審に思いつつ、葵が会議を締めくくるように言う。

 

「よし、とにかく各自、警戒をおこたるな。群れに遭遇したら無理せず仲間に連絡するように。」

と貴虎が注意事項を伝え、皆が解散し始める。

 

「よ〜し、俺も行くか・・・」

と十馬も出て行こうとする。

すると「待て、十馬。話がある。」と貴虎が止める。

 

「なんだよ?」

「さきほど、戦闘の後に姿が見えなくなったのは何故だ?」

と十馬に貴虎が聞く。

 

「いや、怪我してる人いないかな〜って。」

「そうか・・・心配なのは分かるが単独行動はなるべく控えろ。」

とごまかす十馬に訝しみながらも貴虎が注意する。

 

「おう、じゃあな。」

「ああ、気をつけろ。」

と言葉を交わし、十馬は司令室を後にする。

 

 

「貴虎、そろそろ十馬くんの過去のことを調べたほうがいいかもしれない。」

と十馬の去った司令室で葵が貴虎に言う。

「何故、今なんだ?」

と不審に思った貴虎が葵に聞く。

「いや、何だか嫌な予感がするんだ・・・」

とモニターに目を向けたまま、葵が不安げに呟いた。

 

 

そのころーーーーー

 

 

ニヴルヘイムの遺跡の一角に二つの影があった。

 

「おい、ファフニール。いつまで待たせる気だ?」

苛立った声をあげるのは大柄な体躯の男、テーバイだ。

「もう少し我慢してください。下手に動いて困るのはあなたですよ?」

とそんなテーバイをなだめるようにもう一人の人影・・・知的な印象の男性、ファフニールが言う。

 

「ああ、くそぉ!はやくぶっ壊したいんだよぉ!何もかも!それでしか俺は満足できないんだよぉ!」

と我慢の限界にきているのか、辺りの岩や崩れかけの壁を壊し始める。

「落ち着いてください。どうせ壊すなら手応えがあったほうがいいでしょう?」

とファフニールがなだめるように言いつつ結界を張り、遺跡へのダメージを最小限に抑える。

 

「では、こうしましょう。あと一週間以内に指示を出します。そうしたら彼と戦ってもいいですよ。」

と仕方なく提案する。

「一週間か・・・まぁいい、いつまでもダラダラ先延ばしにされるよりマシだ。」

とそれを渋々と言った表情でテーバイが了承する。

それを横目で確認し、ファフニールがほくそ笑む。

「・・・さて、それでは・・・」

と次なる計画のため、ファフニールはその場を後にした。

 

 

そのころ、沢芽市のある通りではーーーーー

 

 

「ふんふんふふ〜ん♪」

と鼻歌を歌いながら歩くイリスの姿があった。

 

「え〜と、卵と牛乳とバターは買ったから後は・・・」

と抱えた紙袋の中身を確認していく。

「ジャムにメープルシロップ・・・よし、全部ありますね!」

とガッツポーズをしようとした拍子に紙袋を落としそうになり、慌てて抱え直す。

 

「十馬が元気になれるように頑張らないとですね!」

と再び歩き出そうとした時、

 

後ろから突然何者かに組みつかれ、額に指を当てられる。

 

すると急に意識が遠のき、イリスは路上に倒れた。

 

 

ーーーーー

 

 

「はぁ・・・」

とため息をつきながら十馬は先ほどのビジネス街を歩いていた。

クラックが安定化してるってんなら同じ場所に出現ってのもあるよな、と思い、来たが収穫はゼロ。

 

「でも、諦めるわけにはいかないよな・・・」

そう、自分が諦めれば”彼女”の命は無いに等しいのだから。

 

「よし、もう手当たり次第探すか!次に端末に反応が来るまで適当に探そう!」

と決意し、バイクの停めてある場所に行こうとしたその時、

 

ポケットの電話が鳴った。

 

「ん?誰だ・・・ってイリスか。どうしたんだろ?」

と電話に出る。

「もしもし、イリスか?」

 

すると

 

『と、十馬ぁ・・・』

と今にも泣きそうなイリスの声が聞こえた。

 

「ど、どうした?何があった!?」

と聞くと

『はい、そこまで。』

と若い男の声が返ってきた。

「な、何だお前・・・誰だ!?」

『フフフ・・・以前お会いしたファフニールという者です。』

と男・・・ファフニールが名乗る。

 

「ファフニール・・・オーバーロードか!イリスをどうする気だ!?」

『まぁまぁ、落ち着いて。

彼女を助けたければベルトとロックシードを持って三丁目の廃工場に来てください。』

とスラスラとファフニールが言ってのける。

 

「ふざけんな!どうせ二人とも殺す気だろ?」

『でも、そう言って見捨てるあなたではないでしょう?』

とファフニールがあざ笑うように言う。

 

「ちっ!わかった、わかったから行くまでイリスには何もするな!」

『いいでしょう。あなた一人で必ず来てくださいね?』

と言い残し、ファフニールが一方的に通話を切る。

 

 

「くそっ!ベルトを渡すわけには・・・でも、イリスを見捨てるわけにも・・・

ああ、ちくしょう!とにかく行かなきゃ!」

と頭をかきむしり、急いで走りだす。

 

(ここから三丁目までならすぐだ。バイクを取りに行くまでもないな!)

と考え、十馬はひたすら走り続けた。

 

 

ーーーーー

 

 

そして、しばらく走るとなにやら開けた場所に着く。

 

「ハァハァ・・・くっ!あと、もうちょいか・・・」

と一度、息を整え再び走りだそうとする。

 

するとその時、十馬の足元に突然謎の攻撃が着弾し、足を止めざるをえなくなる。

 

「うわっ!?・・・な、何だってんだ今度は?」

と慌てて辺りを見渡すと、いつの間にか目の前に一人の男が立っていた。

 

「よぉ久しぶりだな、龍崎十馬。」

とその男・・・ダハーカが不敵に笑う。

「だ、ダハーカ!?くっ!なにしに来た!?」

「何って?決まってんだろ、戦いにだよ!」

と言って、ダハーカがベルトを取り出す。

 

「今はテメェに構ってる暇はねぇ!どけ!」

と叫び、俺はダハーカに殴りかかる。

 

しかしダハーカはそれを余裕でかわすと、お返しとばかりに腹部にパンチを見舞う。

 

だが、それを読んでいた俺は左足を高く上げ、奴の攻撃を防ぐ。

 

そして、そのまま左足を踏み込み、奴の顔めがけ蹴りを放つ。

 

が、それも奴には躱され、カウンターで放たれた裏拳が俺の顔にヒットした。

 

 

そしてその勢いのまま転がり、体制を何とか立て直す。

 

「くっ!」

唇が切れ血がにじむ口元を拭い、立ち上がる。

「なかなか、キレのある動きだな?心得でもあるのか?」

とダハーカが聞いてくる。

「別に・・・拳法どころか少林サッカーすら見たことねぇよ。」

おそらく貴虎との特訓で培われた動体視力と、ダンスで鍛えた瞬発力のおかげだろう。

 

「少・・・?まぁいい、なかなか良い動きだ。これはまだまだ楽しめそうだな。」

と楽しげに言いながらダハーカがベルトを取り出す。

 

「ちっ!お前、やっぱりファフニールの差し金か!?

俺から力づくでベルトを奪って、イリスも殺す気なんだろ!?」

とダハーカに向かって叫ぶ。

すると

「何のことだ?イリスとは誰だ?」

とダハーカが訝しんだように言う。

「とぼけんな!お前もファフニールと一枚噛んでんだろ!?」

「だから、何のことだ?そしてイリスとは誰だ?」

とダハーカが首をかしげる。

 

「本当に何も知らないのか?・・・お前の仲間のファフニールってオーバーロードが俺の仲間をさらったんだ。前にお前が倉庫で襲おうとしてた銀髪の子だ。」

と、ダハーカを睨みながら説明してやる。

 

「あの時の娘か・・・ファフニールめ、卑怯な真似を・・・」

とダハーカが全身から怒りのオーラを出しながら表情を険しくする。

「なら、貴様に構っている場合ではないな。」

と言い、十馬が向かおうとしていた方向にダハーカが歩き出す。

 

「おい!どこに行く!?」

「ファフニールの今回の策はあまりに卑劣だ・・・だから、奴を止めに行く。」

とダハーカが言った言葉に俺は驚愕した。

(あいつ・・・悪い奴じゃないのか?)

と一瞬思い、慌てて首を振る。

(いやいや、あいつは一度イリスを襲おうとしてる・・・なら、何で助けようと?)

そして、閃いた。

 

 

「おい!待てよ。」

とダハーカに言う。

すると奴が振り返り、「何だ?」と聞いてくる。

 

「俺に・・・協力してくれないか?」

と奴に提案する。

「フッ、舐められたものだな。貴様の力など借りん。」

と案の定、断られる。

 

だが、それで引き下がるわけにはいかない。

 

「頼む!イリスは大切な俺の仲間なんだ!一人でも欠けるのが耐えられない、俺の大事なチームの仲間なんだ!」

と必死に頭を下げ、訴えかける。

 

 

 

(何故、この男はそこまで出来る?)

 

目の前でひたすら頭を下げ続ける十馬を見ながらダハーカは思っていた。

 

(何故、敵である俺にここまで頼ることができる?自分を落としてまで、仲間を助けようとする?)

 

渦巻く疑問の中、不意に記憶の中の誰かと十馬が重なった。

 

「・・・似ているな、・・・に。」

とダハーカが呟く。

 

そして、頭を下げ続ける十馬に言う。

 

「いいだろう、今回は利用してやる。」

 

「ほ、本当か!?」

と頭を上げた十馬に不敵に笑い、

「ただし、全て終わったら勝負してもらう。それが条件だ。」

と言う。

 

 

「ありがとう・・・本当にありがとう。」

と十馬はダハーカにもう一度頭を下げ、そして表情を引き締める。

「いい顔だ・・・行くぜ。」

とダハーカが言い、二人は廃工場目指して走り出した。

 

 

ーーーーー

 

 

そのころ廃工場には柱に植物で縛り付けられたイリスと大量の初級インベス、

そしてファフニールの代行であるベルゼブブインベスの姿があった。

 

「っ・・・もう!離してください!」

と言うイリスに、ベルゼブブインベスを中継としてファフニールが話しかける。

『少しは静かにできませんか?うるさくしても逃がしませんよ。』

「っ!いいですもん!十馬は来てくれますから!」

『アハハハハハハハ!!そうですねぇ、来てくれないと困るんですよ。』

と強がるイリスにファフニールが笑いながら言う。

 

「それってどういうことですか?」

『言う必要はありませんよ。さて、そろそろかな・・・』

とファフニールがつぶやいた時、

 

廃工場に駆け込んでくる二つの人影が見えた。

 

「イリス!大丈夫か!?」

と縛られたイリスを見て、十馬が言う。

 

「十馬!」

とイリスがそれに答える。

 

『おや?ダハーカ、どうしてあなたもいるんです?手助けですか?』

「ふざけるな!こんな卑劣な手段を用いるなど、誇りを忘れたか!」

とベルゼブブインベスから聞こえるファフニールの声にダハーカが返す。

 

『誇り、ねぇ。私の邪魔をするんですか?』

「ああ、少なくとも貴様の邪魔だけは、絶対するぞ。」

と敵意むき出しでダハーカが言う。

 

『そうですか・・・なら、手加減はしないですよ!』

とファフニールが言い、周りのインベスが二人を取り囲む。

 

 

「いけるか?龍崎十馬。」

「ああ、さっさと蹴散らしてやろうぜ!」

と背中合わせに立ち、ロックシードを構え、叫ぶ。

 

「「変身!!」」

 

『レモンエナジー!』

『ヨモツヘグリ!』

 

『『ROCK ON!!』』

 

『レモンエナジーアームズ!』

『ヨモツヘグリアームズ!冥界!黄泉・黄泉・黄泉!』

 

そしてそれぞれデュークⅡ、アメミトとなった二人は同時にインベスの群れに駆け出した。

 

 

デュークⅡはソニックアローを振るい、多彩な剣技でインベス達を蹴散らす。

 

また、アメミトはブドウ龍砲で牽制し、その隙にキウイ逆鱗で一気に敵を倒していく。

 

そうして、全ての初級インベスを掃討した二人はベルゼブブインベスに向かっていく。

 

「龍崎十馬!奴を俺が引きつける間に娘を助け出せ!」

とアメミトが言い、アメミトバイトを振るいベルゼブブインベスに猛攻を加える。

 

「ああ!すまない!」

と礼を言い、イリスの元に駆け寄って植物を切ってやる。

「十馬!・・・ありがとう・・・怖かったです・・・」

「わりぃ、遅くなった。お前は向こうで隠れてろ!」

と抱きついてくるイリスに隠れるよう言い、自分もベルゼブブインベスに向かっていく。

 

 

「くっ!たかがインベスに俺が手こずるとは・・・気をつけろ!こいつはやるぞ。」

とアメミトが言ってくる。

「ああ!確かになっ!」

とソニックアローを振り抜き、ベルゼブブインベスを工場の外の採掘場に吹き飛ばす。

 

「行くぞ!」

「おうよ!」

と工場を出た二人はお互い合図し、共にインベスに向かっていく。

 

アメミトがブドウ龍砲で援護し、デュークⅡが切り込む。

 

さらにそこにアメミトがキウイ逆鱗を投げ、追い打ちをかける。

 

攻撃を受け、よろけるインベスを前に俺たちはベルトを操作する。

 

『レモンエナジースパーキング!』

『ヨモツヘグリスカッシュ!』

 

そしてデュークⅡが矢で張った結界に、アメミトがキウイ逆鱗で結界を重ねがけする。

 

そして、ジャンプし、二人同時に放つ合体キック『デッドエンド』をインベスに叩き込む。

 

二人の合体技をまともに食らったインベスは断末魔の叫びを上げ、爆散した。

 

 

 

「よし、やったな。」

とデュークⅡがアメミトに言う。

「フン!さぁ、余興は終わりだ!」

と言い、アメミトバイトを構える。

 

「やっぱりやるのか・・・まぁ、約束だしな。」

と少し残念そうに言いデュークⅡもまた、ソニックアローを構える。

 

「ただ、うだうだやるのもつまらねぇ。一撃で決めようぜ。」

「いいだろう、それで倒れなかった方が勝ちだ。」

とデュークⅡが提案し、アメミトも承諾する。

 

 

そして、デュークⅡはロックシードをソニックアローに装填し、刃にエネルギーを纏わせる。

 

それに対し、アメミトはブレードを二回倒し、アメミトバイトにエネルギーを集中させる。

 

 

二人の持つ武器のエネルギーが臨界を迎え、輝いたその瞬間、

 

全く同時に駆け出した二つの影はそのまま交差し、そしてほとばしる閃光に包まれた。

 

 

光が収まり、採掘場が元の明るさに戻った時、そこには二つの人影があった。

 

一つは変身が解け、ボロボロになり、それでもしっかりと立つ龍崎十馬。

 

もう一つは武器を振り抜いた姿勢のまま、微動だにしないアメミト。

 

 

そして、膝を折ったのは・・・アメミトだった。

 

「クッハハハハハハ・・・最高だ、強くなったじゃねぇか。」

と変身を解いたダハーカが笑いながら十馬に言う。

 

「よく言うぜ・・・あんたも十分強いじゃねぇか。」

「いや、お前からは決意が感じられる・・・もはや狂気じみたものをな。」

とダハーカが苦笑する。

 

そんなダハーカに十馬は傷の痛みに耐えながら聞く。

「一つ、質問だ・・・ニヴルヘイムに、”人間”はいるか?」

それに意味深な笑みを浮かべ、ダハーカが答える。

「ああ、いるさ。”人間”なら。」

 

 

そしてダハーカが傷を抑えながら歩き出す。

 

「・・・もう、行くのか?」

「ああ、ファフニールに聞くことも沢山あるんでな。」

と聞く十馬にダハーカが振り返らず答える。

 

そして、最後にダハーカが言う。

 

「お前の強さ、確かに見させてもらった・・・だが、次は俺が勝つ。首を洗って待っていろ。」

 

そして、夕日を背に浴び、歩き去っていく。

 

 

その姿が見えなくなるまでその背を見つめ、十馬がふと、呟く。

「ああ、楽しみに待ってるよ。ダハーカ。」

 

そんな十馬にイリスが駆け寄ってくる。

 

今にも倒れそうなボロボロの身体をなんとか立たせ、イリスに歩み寄る。

 

そして、イリスは十馬を支えるように、十馬はイリスを守るように、お互いを抱きしめた。

 

そんな二人の足元から伸びる一つの影を、夕日が美しく照らしていた。

 

 

ーーーーー

 

 

そのころ、ニヴルヘイムに戻ったダハーカは森の崖沿いを一人、歩いていた。

 

「くっ!・・・せめてシュバリヤにはファフニールの事を伝えないと・・・」

とボロボロの身体を引きずり、遺跡を目指す。

 

すると、頭上から声が降ってきた。

「おやおや?どうしたんですダハーカ。そんなにボロボロで。」

と声の主はダハーカの前に着地すると、優雅に一礼してみせる。

 

まるで、満身創痍の自分を馬鹿にするかのように。

 

「ファフニール・・・!テメェ、よくもあんな卑劣な事を!」

と目の前の男、ファフニールに噛み付く勢いでダハーカが叫ぶ。

 

その剣幕に眉をひそめ、ファフニールが言う。

「いや〜お疲れ様でしたぁ。あなたの役目は無事、果たされました。”壁”としての役割がね。」

 

「”壁”?テメェは何を企んでる!?」

「知る必要はありません。言ったでしょう?役目は終わりだと。」

そう言うなり、持った槍の先から光弾を放ってくる。

 

「グハァ!?」

と満身創痍のダハーカは容易く吹き飛ばされ、ベルトとロックシードがファフニールの足元に転がる。

 

「おっと、これも回収しなければ。あなたの命を吸いまくって熟したロックシードを。」

とファフニールが足元のロックシードを拾い上げ、笑う。

 

「なにぃ?」

「だーかーらー、あなたの役目は二つ。”壁”とこのロックシードを育てる事です。」

とファフニールが続ける。

「そもそも、先ほどたかがインベスごときで手こずったのを、おかしいと思わなかったんですか?」

「まさか・・・命を限界まで吸われていたから・・・なのか?」

「そのとーり!いやぁ、ありがとうございました。後はゆっくり、おやすみなさい。」

と言うと槍の先にエネルギーが集まり、大きな光弾を形作っていく。

 

「お前は一体・・・何が目的だ・・・」

とダハーカが問いかける。

 

するとそれに笑みを浮かべ、ファフニールが答える。

 

「私は、守りたいだけです。”居場所”をね。」

 

 

そして光弾が放たれ、吹き飛ばされたダハーカは崖の下へと落下していく。

 

「さようなら、我が家族の一員。ダハーカ。」

そう言ってファフニールはその場を後にした。

 

 

そして、崖の下ではーーーーー

 

 

目を開けると、仰向けに倒れているのがわかった。

全身の痛みは既に麻痺へと変わっている。

視界には木々と、その間から見える星空があった。

 

「俺は・・・強い奴を見たかったのかな・・・」

あの一際輝く星のような、輝きを持つ者を。

 

「悪いな・・・再戦は、無理そうだ・・・十馬。」

 

そう言って、星空に手を伸ばす。

 

「済まない・・・見届けてやれないようだ・・・ごめんな、シュバリヤ・・・」

 

彼の目から、雫がこぼれた。

 

そして手が力を失い、全身が淡い粒子となり、消えていく。

 

 

月明かりの中、ダハーカは安らかに眠りについた・・・

 

 

ーーーーー

 

 

そんな場所からさらに離れた遺跡の奥。

 

花が咲き、月明かりが照らす空間で、”彼女”は泣いていた。

 

「もう・・・やだよ・・・会いたいよ・・・十馬・・・」

 

 

月は全てを、静かに照らしていた。

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 




はい!というわけで10話、いかがでしたか?
いい奴っぽい敵キャラは仲間になるフラグをへし折ると死ぬというジンクスがあってな…

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