仮面ライダー鎧武 新章 〜幻獣の樹海〜   作:ダイタイ丸(改)

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どうもダイタイ丸(改)です!
今回は木の実組パワーアップ企画の第2弾!ナックル編です。



第9話 ナックル、受け継ぐBARONの意志!

前回までのあらすじ

 

新たに仲間に加わった昴、そんな彼が使用した新たなランクのロックシードが葵によって披露される。

そんな中、新たに開発されたランクA+ロックシードの一つであるイガグリロックシードを所望する城乃内。

だが、そんな彼を凰蓮が止める。

そして十馬は昴の父親との確執、凰蓮の自分たちを心配する気持ち、そして城乃内が戦う理由を聞く。

そしてその後、ショッピングモールにて暴れる黒影トルーパーを撃破し、その正体だった曽野村をインベスから守る城乃内に凰蓮が預かっていたロックシードを渡す。

そして、新たにイガグリアームズとなった城乃内・・・グリドンは見事、インベスを倒した。

だがそんな事件の背後で、何か大きなものが動き出そうとしていた・・・

 

 

ーーーーー

 

 

城乃内の戦いの翌日、司令室に集まった十馬たちは今回の事件について整理していた。

 

「今回の件には明らかに何者かの介入が認められる。」

そう貴虎が言う。

「まず、曽野村は記憶喪失状態だ。これは十馬達が目撃した”ベルトから出た電流”が原因だろう・・・葵。」

「はいは〜い!じゃ、説明するからスクリーンを見てちょ。」

と貴虎が促し、葵がスクリーンにベルトの画像を映し出す。

 

「まず、このベルトは僕が作ったものじゃない。このベルトは特殊でね。一見、量産型に見えるけれどプログラム自体にはイニシャライズシステムが付いている。曽野村君が着けて発動しなかったのは・・・まぁ、彼の力不足かな?」

と肩をすくめてみせる葵。

「ってことは、このベルトを作ったのは・・・!」

「そ、ウチ以外の組織ってわけ。個人の仕業って線は薄そうだよ?」

と十馬が言い、葵が答える。

「また、十馬君達が見た電流の正体は、恐らく記憶消去のためのものだろう。その証拠に曽野村君の海馬の機能はほぼ、破壊されている。・・・全く、ひどい連中だよ。」

と憤りを隠さず葵が言う。

 

「我々以外の組織か・・・星崎博士は心当たりが無いそうだが。」

と貴虎が言う。

「ただ、ベルトの設計図はウチから出たものだろうね、ユグドラシルと戦極凌馬の研究データは全てコッチにあるし。」

「え?それってつまり・・・」

「ヨルムンガルドの中にスパイがいる・・・そういうことだろうな。」

と十馬が言わんとしたことを貴虎が代わりに続ける。

 

「ま、有り体に言うとね・・・正直、誰も疑いたくないけど。」

「そうだな・・・私も疑いたくはない、だがそいつ等の正体や目的が何であれ曽野村にしたことは許されるものではない。」

と葵が言い貴虎が答える。

「・・・でも、お互い疑ったままじゃ良いチームとは言えないからね。今の話は頭の隅にでも置いといてよ。で、次に・・・」

と葵がデスクからロックシードを取り出す。

 

「この新作のA+の錠前、フルーツトマトロックシードを誰が使うか決めようか。」

と葵がロックシードを掲げ、言った。

「そのロックシードもきっと凄いぜ!俺でもあんなに強くなれたんだから!」

「そうね、でも使いこなせたのは坊やの実力の証よ。さっすが私の弟子ね!」

と少し興奮した様子で言う城乃内の肩を叩き、声を弾ませる凰蓮。

 

そんな師弟を見て

「あの二人・・・まさかとは思うけどコッチじゃないよな?」

「・・・どうだろうな、城乃内はともかくオッサンはマジな方かも・・・」

と冷めたやりとりをする俺と紘太さん。

 

「話をそらさないの!で、誰にするの?」

と葵がせかす。

「ん?待て葵。確か前にエネルギー回路がどうとか言ってなかったか?」

と貴虎が聞くと、

「・・・や、やってみなきゃ分からないよ?」

と目をそらしながら葵が言う。

「やはり完成してないじゃないか!?」

と珍しくリアクションする貴虎を尻目に葵がもう一度、皆に向けて聞く。

 

すると、手が挙がった。

今まで黙っていたザックだ。

 

「なら、俺が使わせてもらうぜ。」

「いいのかい?・・・先に言っておくけどリスクはあるよ。」

と言うザックに葵が聞く。

すると

「ああ、そんくらいのリスクを気にしててもしょうがねぇ、やってみなきゃ分かんないんだろ?」

とザックが答える。

「・・・分かった、これは君に託すよ。」

と観念した様子で葵がザックにロックシードを渡す。

 

「ああ、ありがとな。それじゃ、もう行くぜ?」

「最後に、一つ言っておく・・・焦りは禁物だよ?」

と踵を返すザックに葵が呼びかける。

 

それには答えぬまま、ザックは司令室を出て行った。

 

 

「焦り・・・?それってどういう事だ?」

とザックがいなくなった司令室で俺は葵に聞く。

すると

「多分、俺のせいだ・・・」

と代わりに城乃内が答える。

「え?何で?」

「ほら自分で言うのもあれだけど、俺って前まで弱い方だったじゃん?それが急にパワーアップしたもんだから・・・」

と少し気まずそうに城乃内が言う。

「そっかぁ・・・大丈夫なのか?」

「まぁ、あいつも強い奴だ。きっと大丈夫だと思うぜ?」

と心配する俺に紘太さんが言う。

 

「とにかく、こちらでも第三勢力の事は調べておく。君たちは休める時に休んでおけ。」

と貴虎が解散を促し、皆が司令室から出ていく。

 

 

そして、その後の司令室にて貴虎と葵は話し合っていた。

 

「第三勢力からのスパイか・・・何か心当たりはあるか?」

と葵に貴虎が聞く。

「そうだね・・・あえて言うとすれば”例のグループ”じゃない?」

と葵が含みを持たせて言う。

「・・・あそこか。確かに怪しくはあるな。」

と貴虎が腕組みしながら答える。

「ま、それなら今日にでも探りを入れてみるべきだね。例のお姉さんも日本にいるみたいだし。」

「そうだな、なら早速行ってくる。オーバーロードが出現したら連絡してくれ。」

「ほいほ〜い・・・あ、お昼寝の時間だ。」

と布団に包まりだす葵。

「頼むからもう少し緊張感を持ってくれ・・・」

それを見て呆れるように言ってから、貴虎は司令室から退室した。

 

 

 

ーーーーー

 

 

そのころ・・・

 

司令室を後にしたザックはある場所にいた。

「戒斗・・・俺はやっぱりまだまだなのかな?」

と目の前の墓標・・・『駆紋家』と刻まれた墓石の前でザックが呟く。

 

あのメガへクスの事件の後、なんだか戒斗に会える気がして時々ここに来るのだ。

 

「城乃内が強くなって・・・嬉しいはずなのに、何か妬ましいと思ってる自分もいてさ・・・お前ならどう言うんだろうな?」

と言ってから想像してみる。

きっと『他の奴が強くなったのなら、それを超えれば良いだけの話だ!』とか言うんだろう。

それほどまでに、強い心の持ち主だった。

 

「いつになったら、追いつけるんだろうな・・・」

とため息をつく。

すると

「そんな風に悩むの、お前らしくないぜ。」

と後ろからよく知った声が聞こえてきた。

 

「よぉ、ペコ。お前も戒斗に?」

「ああ、たまにはと思ってさ。」

と持ってきていた花束を墓にそなえるペコ。

そしてザックに向き直り、

「なぁ、ザック。お前、悩んでたりするか?」

と唐突に聞いてきた。

 

「!」

と驚きを隠せないザックに「図星か。」と笑うペコ。

 

そういえば、この男は人の感情に何かと敏感なところがあった。

さすが、ナンバーツーと思いつつ

「ああ、実はな・・・」

とザックは話し始めた。

 

「・・・と、まぁこんなとこだ。」

と話し終えたザックに「お前も大変だな。」と言ってから、ペコが言う。

「でもさ、お前は十分頑張ってるよ。あんまし焦りすぎると大事なもんを見失うかもだぜ?お前は今、自分に出来る事をやっていけばいいんじゃないかな?」

とペコが笑いながら続ける。

「それに戒斗さんがいなくなってから、お前が皆をまとめるために頑張ってるのは知ってるしな。・・・だから、コッチは任せとけ。

お前は今やるべきことを、思う存分やってくれ。」

 

「はぁ・・・やっぱ戒斗みたいにはいかないな。」

とその笑顔に笑い返した後、ザックが少し自嘲ぎみに言う。

思えばあの男を心配した事などほとんど無かった。

それは多分、彼が自分たちに心配させないように振る舞っていたからではないだろうか。

ある意味、紘太と同じように優しすぎた彼だからこそ。

「まぁ、でもそれでいいんじゃないか?戒斗さんは戒斗さん、お前はお前、それで十分だと思うけど。」

とペコが励まし、それに笑うザック。

 

そのとき

 

ザックの携帯から着信を知らせる電子音が鳴る。

「もしもし、十馬か・・・っ!クラックか!?分かった、すぐ行く!」

と言って通話を切る。

「わりぃペコ、俺行くわ!」

と言うなり走り出すザック。

「ちょ、俺も行くって!」

そんな彼の後をペコが追いかける。

 

 

 

そして誰もいなくなり、静まり返った墓地に光が生まれた。

 

その光は徐々に人の形を作っていき、収まった時にはそこに一つの人影があった。

 

「ふぅ、彼も大変なんだね・・・」

と呟くのは先ほど光から現れた人物・・・以前、十馬にバイクを渡しザックのことを見ていた少年だった。

 

そして、先ほどまで二人が話し込んでいた墓の前まで移動し、墓石に手をあてる。

「・・・おや?ここにはいないのかな?・・・なら、きっとあそこかな?」

そう言って外套の裾を翻す。

 

次の瞬間には彼の姿は墓地から消えていた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

そのころ、沢芽市の中心部では・・・

 

「くそっ!一体どこにいやがる!」

と俺は走りながら毒づく。

 

端末にクラック出現の旨が送信されてきたため現場のビルに向かったが、既にクラックは閉じ、周囲にはインベスのものと思われる破壊痕があったため、こうして走りながらインベスを捜索しているというわけだ。

「せめて屋外ならバイクを使えるんだけどな・・・」

と言いながらも走る速度は変えない。

 

すると、右側の通路から人の叫び声が聞こえた。

 

「っ!そこか!」

と悲鳴の聞こえた通路に飛び込む。

 

すると通路に三人、人がいた。

いずれも顔を真っ青にし、目の焦点もあっていない。

「大丈夫ですか!?怪我は?」

と一番近くのサラリーマンらしき人に声をかける。

すると

「・・・やめろ、やめてくれ・・・こ、子供だけは・・・子供だけは・・・」

と何やらうわ言のように呟き続けていて、こちらが声をかけても全く反応しない。

他の二人も同様だ。

「何だってんだ?これもインベスの仕業?」

と考えているとポケットの携帯が震える。

 

『十馬か?今どこにいる?』

とザックの声が聞こえる。

「ザックか!何か良くわかんねぇけどインベスに襲われた人達がいるんだ!場所を転送するからそこに救護隊を頼む!」

そう言って通話を切り、通路のさらに奥を睨みつける。

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか・・・」

と呟き、通路の奥へと進んでいく。

 

 

そして通路の先にある階段を下っていき、一階の大ホールに到着する。

 

そしてその中心に何かの姿を捉えた。

 

「テメェか!もう逃がさねぇぞ!」

とベルトとロックシードを構える。

すると、相手も反応しこちらに身体を向ける。

 

それは醜悪なインベスだった。

背中にはコウモリのような一対の羽があり、手足には鋭いかぎ爪、そして頭はタコのように丸く触手らしきウネウネが。

十馬は知らないが俗に『クトゥルフ』と呼ばれる空想生物に酷似している。

 

それを見て、

「・・・きんもぉぉぉぉ!!何だコイツ、キモ過ぎるだろぉ!!ええい、さっさとくたばれ!変身!」

と叫び、ロックシードを解錠して変身する。

 

「いくぜ!」

とデュークⅡに変身した俺はソニックアローで奴に斬り掛かる。

すると形容しがたい叫びをあげ、奴が口にあたる部分から光弾を放ってくる。

それを避けずに、むしろ的確な剣さばきで撃ち落としていくデュークⅡ。

(これも特訓の成果かな?)

と思いつつ、奴に肉薄し斬撃を見舞う。

 

するとダメージを受けたらしく、奴が羽を広げ、飛んで逃げようとする。

 

「させっか!」

とベルトからロックシードを外し、ソニックアローに装填する。

そして狙いを定め、飛行している奴に目がけ放つ。

すると、矢の通るルートにレモンの輪切りのような模様が幾つも並び、それをくぐるたび矢の威力が上がっていく。

そして強化された矢の一撃が奴の翼に命中し、バランスを失って落下する。

 

「くっ!外したか!」

と言いながら落下地点に急ぐ。

 

 

 

落下したと思われる広場に到着すると、そこには片方の羽を失いよろけるクトゥルフインベスの姿があった。

 

「はぁはぁ、もう逃がさねぇぞ!」

とソニックアローを構える。

 

すると、奴は頭部の触手を伸ばし、俺に攻撃を加える。

だが、攻撃にしては遅い。

 

(撃ち落とすまでもないか・・・)

そう判断した俺は迫り来る触手を紙一重でかわしつつ、奴との距離を詰めていく。

そして、奴の懐まで一気に潜り込む。

(もらった!)

そう思った時、

 

突然、奴が口の辺りから黒い煙のようなものを吐いた。

 

「うわっ!な、なんだこれ!?」

と急に悪くなった視界に対応しきれず、その場で止まる。

 

そして煙が晴れる。

 

「くそっ!逃がすかっ!」

ととにかく前に向かって駆け、煙から抜け出し、光に思わず目を細める。

 

 

 

 

そしてーーーーー

 

 

「っ!こ、これは・・・」

と目を開けると、そこは先ほどの広場ではなかった。

 

どこか住宅街のような場所にある公園に俺は立っていた。

辺りにインベスがいない事を確認し、変身を解く。

 

「ここは・・・まさか、そんな・・・」

そう言いながら公園を出て、道に二つの人影を見つける。

 

二人の子供だ。

片方は男の子でもう片方は女の子。

なにやら喋り、ときおり楽しそうに笑いながら手をつないで歩いている。

 

「これは”あのとき”の・・・なら、きっと次は!」

そう悟り、急いで二人の元へと走る。

 

すると、急に二人のいる辺りがまぶしく光りだす。

 

「くっ!」

それに思わず目を閉じてしまう。

 

 

 

まぶたを灼く光が消え、目を開ける。

 

すると今度は深い森の中に俺は立っていた。

 

「何だってんだよ・・・ここはまさか!」

と言うなり走り出す。

 

そして走っていくとなにやら遺跡のような場所にたどり着いた。

 

さらに奥に進んでいくと開けたスペースがあった。

 

そこには・・・

 

血にまみれた、少女が倒れていた。

 

「あ、あぁ、そんな・・・っ!くそっ!」

恐れていた光景を前に俺は膝から崩れ落ち、拳を何度も地面に打ち付ける。

 

結局、救えなかった。

今まで何のために生きてきたのか。

 

それ等の怒りとも悲しみともとれる感情を抱えたまま、俺は慟哭した。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

広場では奇妙な光景が展開されていた。

 

何故か変身を解き、うずくまったまま動かない龍崎十馬。

そしてそれをただ眺めるクトゥルフインベス。

 

 

 

そんな光景をビルの屋上から眺めながら、ファフニールは隣に立つ仲間に声をかけた。

「どうです?私が自ら作り上げたインベスは?」

そんなファフニールに嫌悪の眼差しを向け、ダハーカは言う。

「ふん、お前らしい汚いやり方だな。人の恐怖を操るインベスなどただの卑怯者に過ぎん。」

そんなダハーカに苦笑し、ファフニールが言う。

「でも、今なら龍崎十馬を簡単に倒せますよ?」

「この程度でやられる奴など、こちらから願い下げだ。」

と言い残し、クラックを開くと先に帰ってしまった。

 

「やれやれ・・・彼を利用するのはそろそろ止めますかねぇ・・・」

そう呟き、手に持った槍の柄を足下に打ち付ける。

 

次の瞬間、残響と共に屋上から彼の姿は消え去っていた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

その頃、ザックはようやく広場に到着した。

ちなみにペコには途中で倒れていた人の救護をまかせてある。

 

「っ!ここか!・・・と、十馬!?大丈夫か!?」

と広場に着いたザックは真っ先に目の前でうずくまる十馬に駆け寄る。

しかし

「・・・そんな・・・俺は、俺は何のために・・・」

とうわ言のように十馬が言い続ける。

 

「おい!しっかりしろ!・・・途中の人達も同じようになってたな・・・ってことはあのインベスの仕業か!?」

とこちらを眺め続けるインベスを睨みつける。

 

「よくも俺の仲間を!許さねぇ!変身!」

と言い、ロックシードを解錠、アーマードライダーナックルへと変身を遂げる。

 

「おらぁ!」

と手につけたクルミボンバーでインベスに殴り掛かる。

すると相手は頭部の触手を伸ばし、攻撃してくる。

「ふん!遅いぜ!」

と迫る触手をかわし、あるいは撃ち落とす。

 

「よし、そこだ!」

とがら空きになった相手の胴めがけ、拳を打ち込もうと振りかぶる。

 

 

その時、インベスが口にあたる部分から黒い煙を吐き出す。

 

「うわっ!何だ!」

と慌てて煙を振り払う。

 

 

 

そして、煙が晴れるとーーーーー

 

 

先ほどの広場とは違う、街のどこかにザックは立っていた。

 

「っ!ここはどこだ?・・・インベスはどこに!?」

と辺りを見渡そうとしたとき、

「ザッ・・・ク・・・」

と後ろから、か細いペコの声が聞こえた。

 

「ペコ!?どうし・・・!」

と振り向いたザックの目に凄惨な光景が映った。

 

崩壊し、がれきの山になった沢芽市。

そしてそのがれきの上に倒れふす、アーマードライダーの仲間達と一番手前にはペコの姿もある。

だが、その目は既に閉じられ、二度と開く事は無い。

 

しかし、それらよりも更に目を引いたのはそのがれきの頂点に立っている者の姿だった。

 

死んだはずの、駆紋戒斗だった。

 

「戒斗!?・・・まさかコレ全部お前がやったのか!?」

と変身を解き、戒斗に向かって叫ぶ。

「ああ、そうだ。強き者が弱い者を搾取する、それがこの世界だ!」

とザックの問いに平然と答える戒斗。

それにザックは驚愕する。

「違う・・・お前はこんな事をするような人間じゃない!目を覚ませ!」

と必死に訴えかけるも戒斗は聞く耳を持たない。

「貴様を俺は高く評価している・・・どうするザック!俺と共に来るか、そいつ等のようになるか!」

と決断を迫る戒斗。

ザックは自分の腕を掴む・・・震える腕を。

今、こうして対峙した時のプレッシャー、仲間達の亡がら、いずれもザックの恐怖を極限まで高めるものに違いない。

けれども、そんな彼を真っ向から睨み、ザックは言い放つ。

「昔の俺ならただお前に付いていった・・・でも今は違う!お前のいるその場所まで、自分で這いつくばってでもたどり着いてみせる!」

そう、宣言した。

 

その時、

 

『そうだ!それでこそ、俺が信頼する男だ!』

と辺りに声が響き渡る。

 

それと同時、目の前を光が満たし、まぶたを灼く光に思わず目を閉じてしまう。

 

 

 

そしてーーーーー

 

 

目を開けると、そこはもとの広場だった。

 

そして、目の前に一人の男の背中があった。

 

「あ・・・」

と間抜けた声が、意志と関係なく漏れる。

 

そして呼ぶ、男の名を。

 

「戒・・・斗?」

 

それに男が振り返る。

 

「よく戻ってきたな。やはり、お前は強い奴だ。」

そう答える。

 

ザックの目指す男、どこまでも強くあろうとした優しき男が。

 

駆紋戒斗がそこにいた。

 

 

「戒斗・・・どうして?」

「なにやらうるさい奴に叩き起こされてな・・・だが、今は良い。それよりザック。」

とザックを真正面から見て言う。

「今ここで、お前の強さを証明してみせろ・・・俺もつきあってやる。」

 

「フッ・・・ハハハハ・・・そうだな、じゃあやろうぜ。俺達二人でな。」

と笑いながら片目をつむってみせる。

「あいつの仕掛けの種はもう分かってる・・・あとはこいつが使えるかだな・・・」

とインベスを睨みながら、新たな錠前、フルーツトマトロックシードを取り出す。

 

「それを貸してみろ。」

と戒斗が言う。

「え?あ、あぁ・・・」

と言われたザックは大人しく、錠前を差し出す。

 

錠前を受け取った戒斗は目を閉じ、集中する。

 

すると、フルーツトマトロックシードが輝き、黄色から熟したようなイタリアンレッドに色を変える。

 

「何をしたんだ?」

「この錠前は力のバランスが悪かったからな・・・そこに俺の力を注いで安定させた。これで使えるはずだ。」

と説明し、ザックに錠前を放り投げる。

 

「おっと!・・・そうか、ありがとな。」

「礼はいらん・・・いくぞ!」

 

「「変身!!」」

 

『バナナ!』

『フルーツトマト!』

 

『『ROCK ON!』』

 

『バナナアームズ!ナイトオブスピアー!』

『フルーツトマトアームズ!ブレイジングハート!』

 

次の瞬間、アームズを装着したザック達はそれぞれのアーマードライダーに変身した。

 

「すごいなこれ!」

と堪らずザックが言う。

 

イタリアンレッドのアームズがナックルのベースカラーである黒、

そしてロングコートのようなマントと相まってチームバロンを想起させる姿になっていた。

 

「浮かれている暇は無いぞ!」

と戒斗の変身したバロンがバナスピアーを構える。

 

すると、インベスが触手で攻撃してくる。

 

「ハッ!この程度の攻撃・・・」

「待て戒斗!それは俺が!」

とバナスピアーで薙ぎ払おうとする戒斗を下がらせ、逆に一歩前に出る。

 

そして拳に意識を集中させる。

 

すると手につけた手甲型のアームズウエポン、ガントマトレッドの真ん中にはめ込まれたブレイズシグナルが光り、拳に炎を纏わせる。

 

「はぁぁぁ!!」

そして炎を帯びた拳を地面に叩き付ける。

 

するとナックルの前方に壁のように炎が立ち上がり、触手を全て焼き尽くす。

叫びを上げ、悶えるインベス。

 

それを尻目にバロンが問う。

「何故、わざわざ焼き払った?」

「ああ、あいつの能力、人に恐怖を見せる能力の発動にはあの触手が大事だからさ。

幽霊とかの正体はススキとかの不自然な動きが暗示されるからっていうだろ。それと同じさ。複雑に触手を動かして暗示をかけてたんだ。

それにあの煙みたいなガスの効果を合わせてより、解けにくいようにしてたって訳さ。」

とナックルが解説する。

 

その時、ようやく落ち着いたらしいインベスが口から光弾を放ってくる。

 

「だがこれからだ!油断はするな!」

とバロンが言い、バナスピアーを振りかざしながらインベスに迫る。

 

光弾を弾き、時には避けながら距離を縮める。

 

「俺も負けてらんないな!」

とナックルもトマトフルーツアームズならではの素早さで光弾をかわして迫る。

 

「「ハァッ!」」

と二人の声が唱和し槍の先端が、そして拳が炸裂しインベスが吹き飛ばされる。

 

「「まだまだぁ!」」

と吹き飛んだインベスに追撃する。

 

時にはバロンが牽制しナックルが本命の一撃を食らわせ、時にはナックルが炎を飛ばしそこにバロンが追撃。

 

今までの2年のブランクを感じさせない見事な連携でインベスを追い詰める。

 

「さて、仕上げだ!」

「ああ、いくぞ!」

と二人は目配せをしてインベスに向かって走る。

 

そしてバロンが二回、ベルトのブレードを倒す。

 

『バナナオーレ!』

 

さらにエネルギーを纏ったバナスピアーを地面に突き刺す。

 

するとインベスの足下からバナナの形をしたエネルギー体が幾つも飛び出て、インベスの動きを封じる。

 

「行け!ザック!」

とバロンが叫ぶと同時、ナックルもベルトのブレードを三回倒す。

 

『フルーツトマトスパーキング!』

 

「ハァァァ!!」

と高く飛び上がり、そのままフルーツトマトの形のエネルギーを纏いキック技『ブレイジングスマッシュ』を決める。

 

 

「ギョバァァァァァ!!」

と断末魔の叫びを上げ、クトゥルフインベスが爆散した。

 

 

 

ーーーーー

 

 

変身を解いたザックは、同じく変身解除した戒斗と向き合っていた。

 

すると戒斗が踵を返し、歩き始める。

 

「もう、行っちまうのか!?」

とその背中にザックが声をかける。

「ああ、俺はもう死んだ人間だ。いつまでも留まっているわけにはいかない。」

そう答える戒斗。

そんな彼に、ザックは宣言する。

「俺はいつか、お前の所まで登ってみせる!・・・だからそれまで待っててくれ!俺がお前と並んで立てるように!」

 

そんなザックに振り返り

「ああ、楽しみに待っているぞ。」

と笑みを浮かべた。

 

初めて見る戒斗の笑顔。

それは優しく、そして不敵な彼らしい笑みだった。

 

 

そして再び去っていく戒斗。

 

その背中をザックはいつまでも見送っていた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

そして、ザックと別れた戒斗は今の自分の依り代である御神木の元へやってきた。

 

「お前には礼を言っておく・・・」

と目の前の白の少年に言う。

 

「ふふ、どういたしまして・・・やっぱり、君は優しいね。」

と御神木の前に立っていた白の少年が微笑む。

 

「それじゃあ、僕はもう行くね。これからもやることがあるから。」

と白の少年が姿を消す。

 

 

そして、雲の切れ間から差し込んだ陽光が御神木を照らす。

 

その一瞬後には、誰もいない静かな森に戻っていた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

その頃、貴虎は沢芽市にある屋敷の中である人物と対峙していた。

 

「つまり、第三勢力に関しては何も知らないと。」

「ええ、そうよ。アテが外れて残念だったわね。」

と自嘲気味に貴虎と対峙する女性が言う。

 

琥珀色のロングヘアーと少し日に焼けた肌が印象的な美女だ。

服装は和装をアレンジしたようなもので、腰の帯には何と刀が収まっている。

その凛とした声と相まって、女剣士のような凛々しさを感じさせる。

 

「ならいいんだ。それにそろそろ君の事も皆に紹介したいんだ、蜜華美鈴。」

と言う貴虎に鋭い視線を投げかけ、

「あら、今は仕事の話をしているのでしょう?ならH・B(ハニー・ベリー)と呼んでくれないと。」

と女性・・・蜜華美鈴は言った。

 

「では、失礼する。話に付き合わせて悪かったな。」

と言い、貴虎は屋敷を後にした。

 

 

 

ーーーーー

 

 

本部に帰る車の中で、貴虎は思案していた。

 

「蜜華グループでもないとなると一体誰なんだ・・・」

と呟く。

 

「まだまだ、調査が必要だな。」

そう結論付け、貴虎は帰路を急いだ。

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい!と言う訳で第9話、いかがでしたか?
ちなみに描写しきれなかったフルーツトマトのアームズはどんな感じかと言いますと。
まず、スタンダードなトマトが降ってくる。(ヘタとかはカクカクしてます)
次に皮がめくれて中身のアームズが見える。
最後に中身のアームズが鎧になり、皮の部分は腰から伸びるマントになる。

こんな感じ。イメージしにくいですよねぇ(汗)

今回のフルーツトマトロックシードはカンタさんから、さらに最後にでてきた美鈴はUHW・Dさんから頂いたアイデアになります。
お二方、本当にありがとうございました!
美鈴は本格的な参戦はかなり後ですが一応、レギュラー予定。


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