仮面ライダー鎧武 新章 〜幻獣の樹海〜   作:ダイタイ丸(改)

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今回は本編前のプロローグとなります。
オリ主は次回でお披露目です。




プロローグ
失楽園~パラダイス・ロスト~


あたり一面にひろがる緑にたくさんの鳥や動物の鳴き声がこだまする。

紘太と舞がヘルヘイムと共に移り住んだ未知の惑星は、今や命に満ちあふれた楽園となっていた。

 

「もうあの戦いから一年も経つのか…」

生命の満ちる森を歩きながら、今やこの世界の長となった『始まりの男』である葛葉紘汰は呟いた。

「そうだね。私たちもミッチたちもそれぞれが新しい道を歩んでる…守れてよかったね。私たちの故郷をあのメガへクスって奴らから」

隣を歩くのは紘汰と同じく人の身を捨て、『始まりの女』になった高司舞である。

 

彼らは約一年前、故郷の地球で金属生命体メガヘクスと戦った時の事を思い出していたのだ。

 

「あの時は大変だったよな。いきなりこの惑星に来たと思ったら舞がさらわれてさ」

「うん、正直ダメかもって思った。でも紘汰やミッチ、他にもいろんな人が助けてくれたから…」

「確かにな。地球にはアーマードライダーの皆やトップギアな刑事さんもいることだし、しばらくは大丈夫さ。どんな奴が相手でもきっと俺の代わりにがんばってくれるよ」

遥か彼方の故郷にいる頼もしい仲間たちの事を想いながら二人は歩みを進めていく。

 

そうしてしばらく行くとなにやら妙な物を舞が見つけた。

拾い上げてよく観察してみると、それはヘルヘイムの果実に似ていた。

だがヘルヘイムの果実が赤紫と紺の二色なのに対してその謎の果実は血のような赤と鮮やかな青がまだらになった毒々しい色合いをしていた。

 

「これヘルヘイムの実?でも色が違う…」

「変種かもしれない。念には念だ。持ち帰って調べよう」

 

 

そうして紘汰はその果実に触れた……否、触れてしまった。

 

 

「何っ!?」

 

紘汰が触れたその瞬間、果実から猛烈な勢いで植物が飛び出し果実を中心として爆発的な勢いで森を覆いつくしていく。

 

 

「な、なんだってんだ?」

「わかんないけど大変!このままじゃこの星が覆い尽くされちゃうよ!」

狼狽えている間にも植物の侵略は止まらない。

 

全てを呑み込み、侵し、塗り替えていく。

正にそれは地球で見たヘルヘイムの侵略と同じだった。

 

「させるかぁ!」

紘汰は森の植物を操り謎の植物の侵攻を抑えようとした。

 

しかし

 

「な、何っ!」

謎の植物の侵食スピードはとても速く、ヘルヘイム植物よりも遥かに強力だった。

迎撃に出た植物も皆、謎の植物に飲み込まれ同化していく。

 

「何なんだ!一体どうしてこんなことに!」

「紘汰!それよりアレ!」

舞が指差したその先、そこには植物が集まり次元の裂け目のようなものが出現していた。

とはいえクラックのようにスムーズなものではない。

まるでこじ開けるかのように植物が蠢き、その間に別の空間が出現しているのだ。

 

「何だよ…一体何が来るっていうんだ!?」

 

そしてその空間から黒い何かが飛び出した。

 

“それ”はインベスのように見えた。

だが違う。

あれはインベスなどではない。

インベスが、本能のみで生きる動物が、ここまで冷たく理性的な殺意を向けるはずがない。

 

「何のためにこんなことをする!答えろっ!」

言葉が通じるかは分からないが紘汰は叫ばずにはいられなかった。

 

自分はいい。

自身を犠牲にする覚悟はとうの昔に決めている。

新たな一歩を踏み出して間もないヘルヘイムが、この星が、何よりも舞が。

何故こう何度も理不尽な目に合わなくてはならないのか。

 

紘汰の問いに“それ”は反応した。

ゆっくりとこちらを向き、言葉を紡ぐ。

 

「何故かだと……?決まっている。待っていたからだ。

永かったぞ……この日をどれほど待ちわびたと思う?なぁ、始まりの男」

 

「何だって……」

紘汰は驚きを隠せずにいた。

相手は地球の言葉を話せる上に自分のことまで知っていたのだ。

 

「お前、何故俺のことを…いや!そもそもなぜ言葉を話せる?お前もオーバーロードなのか!?」

「答える必要は無い…何故ならお前はここで死ぬからだ!」

 

そう言って奴はいつの間にか手にしていた巨大な鎌で俺に斬り掛かってきた。

 

「そっちがその気なら!」

その攻撃を間一髪かわすとベルトを出現させ、極ロックシードをカチドキロックシードの鍵穴に差す。

 

「変身っ!」

 

 

『ROCK OPEN!!』

 

『極アームズ!大、大、大、大、大将軍!』

 

 

次の瞬間、鎧が装着と同時に弾け飛び、葛葉紘汰はアーマードライダー鎧武 極アームズへと文字通り『変身』した。

 

「さぁ、ここからは俺のステージだ!」

鎧武は無双セイバーと大橙丸を振るい、敵を迎え撃つ。

 

「逃げずに来るか…ならば、ここから先は死地と知れ!」

一方、黒のオーバーロードも鎌を振るい、その攻撃を受け止める。

 

 

命あふれる楽園は、熱風渦巻く戦場と化した。

 

鎧武とオーバーロード、二人の戦士は一進一退の攻防を見せる。

 

だがしだいに鎧武の方に戦局は傾いていく。

もとより黄金の果実のパワーを差し引いても、鎧武には歴戦の猛者たちと戦い抜いた経験がある。

 

「このまま決めてやるぜ!」

そう言って鎧武は新たに召喚した火縄大橙DJ銃を無双セイバーと合体させた。

 

両手持ちの大剣となった火縄橙DJ銃を構え、ベルトのブレードを二回倒す。

 

 

『極オーレ!!』

 

 

「セイハァー!!」

 

渾身の力を込めた斬撃『アブソリュートチャージ』が放たれる。

 

しかしこの技は振り下ろす間際、胴体ががら空きになる。

そして鎧武はその隙を敵が狙っていたことに気づかなかった。

 

「詰めが甘いな!始まりの男よ!」

奴は素早い動きで懐に飛び込むと鎧武のベルトを鷲掴みにした。

 

「グッ!しまった!」」

「これはもらうぞ!」

奴はベルトから極とカチドキ、二つのロックシードをむしり取った。

 

 

身体を急激な脱力感が襲う。

ぽっかりと穴が開き、そこから自分を構成するモノが流れ出すような感覚。

 

次の瞬間、変身が解けて崩れ落ちたのは『始まりの男』ではなく『人間』の葛葉紘汰だった。

 

 

一方、勝者となった黒のオーバーロードは手にした二つのロックシードを感慨深そうに眺める。

「やっとか……本当に永かったな……」

 

その足に、縋りつく手があった。

もはや何の力もないどころか、急激な身体の変化により瀕死であるはずの紘汰だ。

それはもはや狂気にも似た執念だ。

失うのは自分だけでいい。

だが、この怪物はこれからもっと多くのモノを奪い続けるだろう。

今手にした、紘汰の力を使って。

そんなことは許さない。

それを許してしまったら、信じて送り出してくれた地球の仲間たちに申し訳が立たない。

 

なにより“あいつ”に顔向けできない。

 

その思いが、紘汰に最後の力を与えていた。

 

 

だがそれをあざ笑うように、あるいは敬意を表すように。

黒のオーバーロードは全力でその身体を蹴りつけた。

 

「ぐふっ!?」

紘汰は枯葉のように吹き飛ばされ、近くの大木に叩きつけられた。

 

「紘太!!」

「に、逃げろ舞……お前だけでも……」

駆け寄ってくる舞に言うが彼女は聞こうとしない。

紘汰に自分の持つ黄金の果実の力を分け与えようとしているのだ。

 

だが、その背後から黒い影がゆっくりと迫ってくる。

 

「始まりの男、その執念と意志には敬意を示そう。だが、もう終わりだ」

舞のすぐ後ろに立ち、奴は鎌を振り上げる。

 

そして高らかに宣言した。

 

「俺の名はシュバリヤ!幾星霜の時を生き、青き惑星に新たな始まりをもたらす龍の王だ!」

 

 

その言葉を聞いて、紘汰と舞は戦慄する。

「そんな!地球まで侵略するつもりなのか?」

 

三度、母なる星に災厄が及ぼうとしている。

仲間たちの平穏が、また侵されようとしている。

 

「そんな……そんな事させない!」

舞が力強く叫ぶと彼女の瞳が赤い輝きを放った。

 

すると彼女の声に呼応したように周囲のヘルヘイム植物がシュバリヤにからみつき、その動きを止めた。

 

「チッ!無駄な抵抗を!」

シュバリヤは振りほどこうとするが間髪入れずに絡みつく植物に苦戦する。

 

 

「紘汰!今のうちに!」

舞に促されるまま紘汰はクラックを開き、舞と共に飛び込んだ。

 

 

行先は地球だ。

 

早く仲間たちに、この新たな脅威を伝えなければならない。

 

「頼む……間に合ってくれよ」

 

 

こうして葛葉紘汰は再び地球へと舞い戻ることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか。

面白かった!とか、はぁ?なにこれツマンネ、とかでもいいので感想を頂けると嬉しいです。



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