新次元ゲイムネプテューヌVⅡ SSRと言う名のG(凍結)   作:藤和木 士

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どうも、皆様、ご機嫌いかがでしょうか。明日から就職先の会社でのリクルート研修が始まります、藤和木弘です。

ジャンヌ「藤和木も少し緊張していますよね。わたくしもレイさんと同じアイドルになって初のライブの時は緊張しましたからよくわかります。でもそんな重みのある責任をちゃんと背負っていけるようになっていってくださいね?どうも、皆様。ジャンヌ・ドラニエスです」

ソニア「わ、わたしもグラン・ロロでライブがあるときは戻って活動していますけど、未だに緊張が抜けないです……。でもいろんな人が期待してくれているって思うと、すごく嬉しいです!どうも、皆様!最近は日本中で雨が降りましたがどうでしたか?こちらもかなり予定が狂ってしまいました、ソニア・A・ワスプです!」

ジャンヌ「そうなんですよねぇ……。本当なら藤和木が就職前に気分を整えるために名古屋の方に行こうって言っていたんですが……行けずじまいです」

そうなんだよなぁ……一応リクルート研修の時そこそこ早く帰れるのなら名古屋の方によって行きたいんだけども。

ソニア「でもそっちに集中してリクルート研修が疎かになっちゃダメですよ?今回は藤和木さん達新入社員の方々の初仕事的な物っていうらしいですし」

うん、気を付けるよ。さて、今回は第151話の投稿です。

ジャンヌ「それだけではありませんよ?今回からラステイションの女神、ブラックハートことノワール様の物語になります!」

ソニア「ノワールさんって、本当優秀な方みたいでしたよね!けど、タイトルがあの人からはとても感じられないようなものですね……誰に追われているんでしょうか……まさか、ネプテューヌ編でも言ってた、秘密結社でしょうか?」

ジャンヌ「そういえば、ネプテューヌ編でノワール様が指名手配犯とかどうとかで逮捕された的なことが上がっていたような……」

ソニア「し、指名手配!?」

そういやその頃はまだソニア達が来てなかったころだったっけな……ここからどうやってネプテューヌ編のアレに繋がってしまったのか?今回はその一連、そしてノワールに付き従うこととなる、今回の章に登場するガンダムサイドのメンバー2人が明らかになります。それでは、本編へ!


第3章 超次元編 ノワールSTORY ZONE OF YANDERE
第151話 追われる女神


 

 時は、女神達が自国の辺境に飛ばされて、しばらくした頃……。

四国家の1つ、ラステイションの山岳道を1人の少女がその道を駆けていた。黒髪のツインテールに、白と黒をメインに青色をアクセントとした短めのドレススタイルの服装を纏う少女は額に汗を浮かべ、何かから逃げるように後方にやけに目を向けていた。

 その少女こそ、このラステイションを本来治める存在、黒の女神「ブラックハート」こと、ノワールであった。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 しかし、走っていたためか、本来の彼女らしい冷静さが今はない。息を何とか整え、木陰に避難する。そもそも、何故彼女は逃げているのか、何から逃げているのか。その疑問はすぐに分かることとなる。

 ノワールが通って来た道の方から、男が2人程駆けてくる。どちらもきっちりとした制服を着ており、その手には機関銃を持っていた。ただならない様子の男達が辺りを見回しながら悪態を着く。

 

「クソっ……!あの女はどこに逃げたんだ」

 

「女一人に何を手間取っている。逃げられたら我らラステイション軍は笑いものだぞ」

 

 男達から聞こえてきた、「ラステイション軍」という単語。そう、彼らは本来、ノワール……ブラックハートに従うべき存在、ラステイションの国防軍に属する兵士なのだ。

 だが、今の彼らからは女神に従う姿勢が全く見られていない。それどころかノワールをただの少女と思っていた。兵士達は今後の動向について話す。

 

「しかし、少女とは思えないほどの俊敏さで……とても……」

 

「だとしても、やつとて限界はある。そろそろ体力も限界だろう。もっと、よく探すのだ。残りの予備兵力も全て投入しろ!なんとしても、捕らえるんだ!」

 

「了解!」

 

 短い会話を終えると、兵士達はその場からノワールの逃げたであろう方向へと去っていく。いなくなったことに安心しつつも、話を陰で聞いていたノワールは周りに気を付けつつも小声で文句を言う。

 

「く……しつこいわね!どこまで追いかけてくるつもりよ」

 

 しかしそこはしっかりとやる女神筆頭。今までと違う状況でも重要なことを理解し、兵が完全にいなくなったところですぐに場所を移動する。

 

 

 

 

 だがアクシデントは続く。木々の生える山道を急いで移動していたところで急にノワールは腹部を抑える。木々の枝が服に引っかかり、服の下の肌ごと切ってしまったのだ。

 

「痛っ!ああ、もう……この服、気に入ってたのに破けちゃったじゃない」

 

 やり場のない怒りがその口から吐かれてしまう。内心ノワールもこの状況に対し怒りを感じていたのだ。そして、その口から現在の状況について、こうなった理由を独り言として問いかける。

 

「はあ……なんでこんなことになったのかしら……」

 

 彼女が自国の兵に追われることとなったその理由。それはまた少し遡ることとなる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう……やっと次の街に着いたわね。ユニ、大丈夫?」

 

 少し腕を空に伸ばして、後ろを付いてきている自らの妹ユニに対し、声をかける。ノワール達は当時、ラステイションの首都に向け、街へ街へと移動を行っていた。

 やっぱり移動には少し不便ね。本当ならルートビルドで作った道を行きたいんだけれど、今は黄金の塔による影響に何があるか分からないから、不用意に使えないし、空を飛んでいこうにも、そっちはそっちで別の問題があるしで、陸上を歩いて移動しなきゃいけなかったわ。

 そんなことを心の中で思っていると、持っていた荷物を地面に下ろしてからユニは自らの姉に返事する。

 

「うん、アタシは大丈夫だよ。でも……前の街から結構、遠かったね」

 

 大丈夫、と答えつつも、ここまでの移動が遠かったことについて言及するユニ。ノワールもそれに対し頷く。

 

「そうね……早く教会に戻って今の状況を把握しないといけないのに、移動に時間がかかるのは歯がゆいわね」

 

「……だね。けど、どうしてこんなにシェアが下がったんだろ」

 

 女神ならば本来なら女神化で空を飛ぶことも出来る、だが、それが出来なかった。正確には出来ても短時間しか力を出せずにいた。その原因はシェアの不足だ。

 今まで確かに感じていたはずのシェアの力を今は少ししか感じられていない。シェアとは人々が女神を信仰して生み出されるエネルギー。それがなくなっているという事実はノワール達も困惑していた。

 

「……わからないわ。前に立ち寄った街じゃ、何故か誰も私たち女神のことを覚えていないみたいだったし……。本当ならすぐにでも飛んで教会に戻りたいんだけどなぜかシェアが少ないせいで短時間しか女神化できないんじゃ、たまったものじゃないわよ」

 

 歯がゆい状況に息を吐いて肩を落とすノワール。彼女達はこの街の前に立ち寄った街で、聞き込みをしていた。といっても、少し話しかけただけで、奥入ったことを聞いたわけではない。しかし現在の状況を知るのは、国のトップとして当然の事。情報を集めれば、何が起こっているかも分かると踏んでの事だった。が、そこで予想外の事が起こった。それは、女神という存在が人々から消えているということだった。

最初は、たまたま話しかけた人がこの4国家のある地方とは別の、海を越えた遠い地方の人なのだと思った。だが聞き込みを続けていくうちにその認識は変わっていった。誰も、女神が誰なのかというのはおろか、女神という存在が何なのかすらも知っていなかったのだ。このゲイムギョウ界で女神を知らない人間などほぼいないはず。明らかな異常だとノワールは感じていた。

 無論この時のノワール達は気づく余地もないが、この時のゲイムギョウ界は女神の存在が消し去られていた。シェアが少ないのも、そもそも覚えている人がいないためである。

 そんなことは知らず、出来ないことは出来ないとノワールは考えを切り替える。

 

「……と、愚痴ってても仕方ないわ。ユニと合流出来ただけでも運が良かったと思わないとね」

 

 自然と妹へと投げかけられる、再会できてよかったという言葉。しかしノワールにとって、自らの妹であるユニと早々に合流できたのはとても良いことであった。身内の無事もそうだが、今のよく分かっていない状況の中で、味方がいるというのは、戦力でも心理的にも心強い。それが妹であるならなおさらだ。

 けど、本当にユニと合流出来て良かったわ。後は情報だけね。私は一泊置いてから、ユニにこれからのことについて話す。

 

「――――さて、せっかくだし、この街で少し情報収集をしていかない?」

 

「情報収集は、基本だもんね」

 

「そ、わかってるじゃない」

 

「何度もお姉ちゃんに教えてもらったからね」

 

 ユニも姉からの提案にすぐに納得を示す。妹のスムーズな反応にノワールも口元を緩める。そんな様子は第三者が見れば、まさしく仲睦まじい姉妹と言えるだろう。とはいえ、話している内容は一般の姉妹が行うような会話ではないが。しかし、姉妹の形にも色々なものがあるのも事実である。

 早速ユニは聞き込みに良さげな店を指し示す。

 

「ねぇ、お姉ちゃん、あのお店なんてどうかな?人もたくさんいるし、ちょうど良いんじゃない」

 

 ユニの示したその店には確かに人が集まっていた。人が多ければ、周りの状況がよく分かっていない分、危険もあるがそれだけ集まる情報も多い。リスクを考慮しつつも、メリットの方が多いだろうと考えたノワールはそれを了承する。

 

「そうね。行ってみましょうか」

 

 

 

 

 そこは一軒の本屋であった。店内には棚いっぱいに本が並んでおり、棚の前には多くの人が手に取り内容を確認したりしていた。

 店に入った2人は手近な客に声をかける。ノワールが声をかけたのは1人の男性だ。

 

「こんにちは。ちょっと、いいかしら」

 

「なんだ、あんた。見慣れない顔だけど、何者だ?」

 

 見知らぬ人から声を掛けられた時の反応を、男性は取る。いたって普通の反応だ。女神という存在が忘れられているのなら、当然である。女神という存在が忘れ去られていることを心の中で痛感しつつも表情には出さず、一般人を装って言葉を返す。

 

「通りすがりの女神……じゃなかった。私たち、観光でこの街に来たばかりなの」

 

 少し本音が出かけていたものの、何とか持ち直す。男性の方もそちらには気にすることなく、観光客、という点に目を向けた。

 

「……観光客ねぇ。こんな辺境の街には珍しいな」

 

 男性が若干疑いの目を向ける。それを指摘されて、ノワールも小声で失態を口にする。

 

「うっ、確かにこの街は特に観光名所や特産品がないことで有名な街だったのをすっかり忘れていたわ……」

 

「お姉ちゃん!?」

 

 自国であるラステイションの事を辺境の街までよく知るノワール。いつもならそのことも考えて言い訳を考える。だが、そんな彼女も少なからず女神である自分の事を影も形も覚えていないことにはショックを受け、完全にそのことを失念していたのだ。

珍しい姉の失態に妹のユニも声を大にしてツッコミを入れてしまう。ノワールも慌てつつも失態の理由を述べる。

 

「し、仕方ないでしょ!私だって、ちょっと焦ってたんだから!?」

 

 ノワールとしては本屋ということで地図を探しに来た旅行客、というものを想定していた。更にその旅行客という設定にも、姉妹2人であちこちを回る旅人というものを考えていたのだ。

 が、男性からの女神を知らないという反応に対して、本来の反応が返ってこなかったことにまだ頭が追いついていなかったのだ。前の街でも女神の事を覚えていないということで困惑し、この街でも同じ反応が返ってくる可能性は考慮していたのだが、思考と口に混乱が生じてしまった。加えて、それを言い直すことに気を取られ、この街に有名なものがないにも関わらず旅行客という単語が頭に出て、そのまま言ってしまったのだ。

 先程の言葉に加えて、2人の焦る様子を見て、男性も疑いの目を強める。

 

「怪しいな……」

 

 まじまじと2人を見る男性。事を大きくしないようにと、ノワールは必死にごまかそうと言い訳を並べる。

 

「あ、怪しくないわよ。ほら、見ての通り姉妹水入らずの旅行なのよ。ねー、ユニ」

 

「うん、お姉ちゃん」

 

 姉からの唐突な振りを向けられるも、そこはいつも仲のいい妹。すぐに話に合わせる。とはいえ、その話し方はまだ先程の姉の失態への困惑が残っていて、あからさまに怪しい物ではあった。そして、その事を男性の側も指摘する。

 

「なんで、2人共声が引きつってるんだ……?」

 

 流石にこのままだと、嘘だとばれてしまう。何とかしてごまかしきるか、ボロが出る前に退散しないと……。ノワールの頭の中を、その2つの対応が巡る。

 だがここで状況が変わる。2人の顔を見て、男性が何かに気づいた。

 

「……ん?そういえば、お前らの顔、どこかで見覚えあるぞ。確か、えーっと……」

 

「え、それってまさか……!?」

 

 見覚えがある、そんな言葉にノワールは思わず食いつく。ノワールだけではない、ユニも男性の言葉に注目する。見覚えがあるということは、もしかすると女神の事を思い出そうとしているのかもしれない。最低でも覚えてくれているのなら、信仰によりシェアを取り戻せる。男性がどんなことを言うのか、2人の期待は強まっていく。

 だが、とんでもない言葉が、男性の口から飛んでくることとなった。

 

 

 

 

「そうだ、思い出した!最近、この国を騒がせている秘密結社の構成員だな!!」

 

 

 

 

『はい!?』

 

 一瞬耳を疑い、脳が言葉を理解しきる前にノワールとユニは同時に、まったく同じ反応をする。見当違いの反応ならそうなっても仕方がない。だが、あまりにも見当違いすぎる答えは2人には困惑しかもたらさなかった。

 ちょ、ちょっと、秘密結社の構成員!?私たちが!?何がどうなって、どうしてそんな聞いたこともない秘密結社のメンバーになっているのよ!?私はこの国の女神で、ユニは女神候補生よ?しかもこの国を騒がせているって、まるで悪人じゃない!

 だが、そんなノワールの考えも空しく、それらの言葉は周りにいた人々に伝播していく。

 

「お、おい。どういうことだ!?この子たちが例の秘密結社の一員なのか!?」

 

「そっちの小さい子は知らないが、こっちの大きい方は間違いねぇ。今朝の朝刊にチラシと一緒に挟まれてた、指名手配書とまったく同じ人相だ」

 

 勝手に進む話に、しばらく目を丸くしていたノワールも理解が追いついていないものの明らかな誤解だと感じ、それを否定する。

 

「ちょっと、私たちが指名手配ってどういうことなの!?何かの誤解じゃないの!?」

 

 しかしそんな弁解も思い出した男性の方は訝しんだ声で警戒しつつその事実を語る。

 

「誤解なわけないだろ。その黒髪のツインテールに、漆黒のドレス!間違いねぇ!間違いなくこいつは、ラステイション転覆を企んでいる、秘密結社アフィ魔Xのノワールだ!」

 

「はいぃぃ!?」

 

 無茶苦茶だ、とノワールは思った。なぜ女神である自分が指名手配犯なのかということや、自分の姿で指名手配の写真が載っていること、そして自分が馴染みのない、悪さを企んでいるのであろう秘密結社の一員に勝手にされていること。それら全てに対して、ノワールは困惑と焦りの中に放り込まれてしまった。

 そして、更なる事実がこじつけで作られていくこととなる。話に入って来た男性がユニの方を指し示して確認する。

 

「じゃあ、こっちの小さい子は?」

 

「おそらく、どこからか攫われてきたんだろう。だが、安心してくれ、お嬢ちゃん。今、俺達が助けてやるからな」

 

 ユニの事を勝手に自分が攫ってきた子だと断定する2人の男性。それらを含めたおかしな情報にノワールも流石に声を荒げる。

 

「ちょっと、待ちなさいよ。なんで、女神である私が自分の国を転覆させないといけないのよ!」

 

 ノワールとしては、女神である自分を侮辱されたことへの怒りから出た発言だ。だが、それは却って彼らの怒りを買うこととなる。

 

「こいつ、既にラステイションの支配者を気取ってやがる。しかも、この国の神ときたか……!」

 

 と、そこへ更に乱入者が来る。その人物が、この流れを更に悪くする。

 

「おい、なにを騒いでいる」

 

 

その場に現れたのは、ラステイションを守る、ラステイション国防軍の兵士であった。おそらく、この街を守る地方軍の者なのだろう。その国防軍兵士に対し、疑い深い男性の方がノワールの事を伝えた。

 

「おお、ちょうどいい所に!指名手配犯のノワールが現れたんだ!しかも、女の子を誘拐してやがる!」

 

「なんだと!?確かにこの人相はあの極悪非道の殺戮神ノワールだ!まさか、誘拐にまで手を染めているとは……」

 

「だから違うって言ってるでしょ!もう、どうして誰も信じてくれないのよ!」

 

 ノワールも対応が自棄になっていく。人質扱いされているユニも、状況について行けず、ただただオロオロとしていた。

 一方、ラステイション国防軍の兵士の方は騒ぐノワールに耳を貸さず、そのまま強引に連行しようとする。

 

「ええーい!問答無用!世のため、ラステイションのため、この場で捕まえてやる!」

 

 捕まえようと伸ばされる手。このままじゃ、無実のまま捕まっちゃう。けど、相手は私の国の兵士。敵ではない相手を倒すわけには今はいかないわ。こうなったら……出来るのはただ1つ!

 伸ばされた手を払いつつ、ノワールは未だ状況の飲み込み切れていないユニに一喝するように指示を飛ばす。

 

「もう、何がどうなってるのよ、もう!ユニ、逃げるわよ!」

 

「でも!アタシたちはなにも悪いことしてないのに。それにこんなやつら、アタシが返り討ちに……」

 

 しかし、ユニは聞こうとしない。むしろ、反撃をしようと手を開き、愛銃を手にしようとする。ユニとしては、自らの姉に掛けられた濡れ衣を晴らしたいという気持ちが高まっていたのであろう。だがしかし、それは最悪手だ。現在はノワールと一緒に行動しているものの、ユニの方には罪がかかっていない状況だ。もしここで攻撃すれば、ユニにも罪がかかってしまう。愛する妹にまで勝手な濡れ衣を着せられるのは、姉としては許せなかった。

 そして、それ以上に彼らがラステイションの国民であることが何よりも重要だった。彼らは今まで自分達の為に尽くしてきた、また自分達が守ってきた存在だ。どんな状況でも、完全な悪意を持って攻撃してくるのならまだしも、彼らは今女神の事を忘れているために、何らかの原因で敵対してしまっている。もしここで攻撃すれば、記憶が戻った時に問題となる可能性もある。お互いのためにも、ここで自分達から攻撃することは絶対に出来ない。そのことをユニにも伝える。

 

「ダメよ、例え私たちのことを忘れていても彼らはラステイションの住民なの。傷つけるなんて絶対にダメ」

 

「……っ!」

 

 悔しそうにしつつも、ユニはその言葉に従い、手を下げる。そしてユニの手を引いて、店から飛び出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 本屋から逃走することには成功したノワール達。だが、追ってくるラステイション軍兵士の追走を振り切ろうとするうちに、路地裏まで来てしまう。その道の先はフェンスで塞がれており、唯一とも言える逃げ道からは追いかけてきた兵士と男性達でいっぱいだ。

 もはや逃げ道はない。兵士達がノワールに対し捕まるように呼びかける。

 

「さあ、大人しくしてもらおうか!そして、まずはその子を解放するんだ」

 

「………………」

 

 その言葉に対し、ノワールは口を閉ざす。更に兵士の方を強く見つめていた。見つめられる兵士側も、緊迫した状況に表情をより硬くする。まさに一触即発の状況。だが、それを破ったのは、ノワールの側であった。

 

「………………わかったわ。ユニ、向こうに行きなさい」

 

「お姉ちゃん!?どうして!?」

 

 それは、ユニを渡す、ということであった。姉の唐突過ぎる別れを告げる発言に、ユニも困惑を隠せず、声を大にしてしまう。しかし、ノワールとしては、これが最も最善の策だと感じていた。ユニにも、これまでに理解が出来た状況だけを小声で伝える。

 

「あの人たちの話を聞く限り、指名手配されているのは、私1人。なら、ここは一度別れましょ。あなたまで、危険な目にあう必要はないわ」

 

 ノワールの言う通り、現時点での指名手配は自分だけ。先程も思っていた通り、妹まで犯罪者の仲間入りにさせるわけにはいかない。まだ逃げられる可能性があるなら、妹だけでも安全に逃がすのが、姉としての役目だろうと考えていた。

 とはいえ、それはつまりノワールが危険な目に遭うということ。当然ユニも理解し、そんなことを簡単に受け入れなかった。

 

「けど、それじゃあ、お姉ちゃんが……」

 

 しかし、そこは長年女神を経験し、更に姉として振る舞ってきたラステイションの女神。ユニを説得するべく、右手を腰に当てて、余裕を見せて答える。

 

「私は大丈夫よ。あなたとは年季が違うんだから。逃げ切ってみせるわ」

 

「でも……!」

 

 しかし、ユニは食い下がる。姉を置いて、自分だけが逃げるのが許せないのだろう。私に少し似て、強情なんだから、と思うノワールだったが、もう1つの考えをユニの耳元で吹き込む。

 

「それに、これは保険でもあるの。おそらく、私はラステイション全土に指名手配されてるわ。もし、私が捕まったら、頼れるのはあなたしかいないの。お願い、分かって」

 

 内容はシリアスだが、その頼み方は皮肉にもわがままを言う妹を窘める姉のようだ。また言い方もどこかお願いをするような声のかけ方であった。流石のユニも、それらの言葉の意味と気迫に押され、それを受け入れる。

 

「……わかった」

 

 その声と共に、ユニはゆっくりと兵士達の方へと歩いていく。その後ろ姿に、ギリギリ聞こえる大きさの声で、ノワールの別れの言葉が投げられる。

 

「いい子ね。気をつけるのよ……っ!」

 

 そう言うと同時に、ノワールは壁に向かってジャンプする。ジャンプした先で壁に足を着け、壁を蹴って更に飛ぶ。飛んだ方向にあったのはフェンスだ。だが壁を蹴って更にジャンプしたことと、女神自身の身体能力の高さで道を塞ぐほどの大きさのフェンスを越えて路地裏の通路を突っ切っていく。

 流石にこの行動を予測しきれなかったラステイション国防軍もすぐに追っ手を出す指示を飛ばす。

 

「クソ、逃げられた!追え!追うんだ!絶対逃がすな!」

 

 そんな声が響く中、ノワールは振り返ることなく走っていく。その目に少量の涙を流しながら。その涙の1滴は瞳から零れ、地面を濡らす。

 ダメだ、今泣いてはいけない。そう思ったノワールは走りながらも目元の水滴を服の端で拭く。また会えるはずだと信じて、街の外へと速度を落とさず走っていく。その後ろには、彼女を追うラステイション国防軍の兵士達の姿があった。

 そして、路地裏に残されたたった1人の妹は、欺かれた事実で人質となった自分を救出したことを喜ぶ男性達に声を掛けられる中で自身の弱さを感じた。そして、その光景を眺める、2人の機人が黒の女神を追っていく。その背部から、赤黒い粒子を放出しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここまでが、ラステイションの女神、ノワールの身に起こった、事の始まりである。その眼を閉じると、今でもあの時のユニの顔が思い浮かんでいた。怒られたように気分の沈んでいたユニの表情。それを思うと今どうしているのかでいっぱいになってしまう。自然と、その口から本音が漏れる。

 

「……ユニ。無事だといいんだけど……。けど、きっとあの子のことだし、大丈夫よね。さて、私も早いとこ追っ手を撒かないと」

 

 妹の事は気になるが、今は自分の身を考えなければならない。再び追っ手に気を付けて歩こうとする―――――――――――

 

 

 

 

「無事ですよ。妹さんなら……」

 

 

 

 

 唐突に響く、後方からの声にノワールは反射的に体を震わせる。明らかに自分に向けられた言葉だということは分かる。だがそれ以上に女神である自分がそれに気づかなかったというのは完全に失態だったからだ。すぐにノワールはその手に剣を持って戦闘態勢で相対する。だが、その相手は予想外の相手であった。

 

「誰っ!!…………その姿……まさか、あなたは」

 

 ノワールの目に映ったのは、2機の機動兵器だった。しかし、その姿は人型であり、またその大きさも人と同じサイズだ。ノワールが知っている兵器で、このような特徴を持つ存在は2つしかない。1つは、シェアプロテクター。このゲイムギョウ界を収める、4つの主要都市が合同で作り上げた、次世代の防衛機構。ここがラステイションであることを考えると、いるべきなのは自国ラステイションの機体である「ブラックプロテクター」だろう。しかし、目の前にいるのは2機、しかも色はブラックプロテクターの名通りの黒ではない。1機は赤をメインカラーにした機体、もう1機は翼の部分は黒ではあるものの、機体本体の色は白と黄色を主色としており、やはりブラックプロテクターと違う。

 そして、もう1つの存在、それはつい半年前にこの世界にやって来た少年と共に知らされた、未知の機動兵器群。その名前をノワールは呟いた。

 

 

 

 

「ノイズドプロテクター……ガンダム……!」

 

 

 赤のガンダム、その眼が光った。

 

 

TO BE CONTINUED

 




今回もお読みいただきありがとうございます。今回登場した光樹君と同じSSRシリーズと呼ばれる赤きガンダム、「ロートクウィーンガンダム」の性能はのちのち戦闘シーンと共に明らかになることでしょう。

ジャンヌ「それで、ノワール様の方についてですが、ここで見る限りは濡れ衣をかぶせられているような感じでしょうか?」

ソニア「あわわわ……赤いガンダムの人が大丈夫とは言ってしましたが、ユニさんも大丈夫でしょうか……?」

ジャンヌ「あと、ノワール様が逃げる時の動き、あれは実際に映像だったりであるんですか?」

いや、完全に想像です。ゲームからの音声でなんとなくこうかなと思ってこんな感じになりました。ただ、少しやり過ぎた感が……(;´・ω・)

ソニア「壁に向かってジャンプして、更にその壁を蹴ってフェンスを越える……すごい動きですよね……」

まぁ、そこは女神だから、ということで……。では次回の投稿日について発表しようか?

ソニア「分かりましたっ!次回の投稿日も、また金曜日になるようです」

ジャンヌ「やはり書くペースが落ちているようですね。けれど、これからまた更に忙しくなるので、これからもこのペースをなるべく維持して投稿していけるように参ります。それでは次回もお楽しみにっ」

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