新次元ゲイムネプテューヌVⅡ SSRと言う名のG(凍結)   作:藤和木 士

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どうも、皆様ご機嫌いかがですか。先日はバレンタインデーでしたね。私の方はまぁ、リアルはお察し、こっちではジャンヌさん達に頂きました、藤和木弘です。

シエラ「はぁ、あれわざわざ作るの大変だったんだからちゃんと食べなさいよ?どうも、皆様。ソニアとレイさんの勢いと、ジャンヌさんからの要請で仕方なく藤和木にチョコを作ってあげたわ、シエラ・ムルセーヌよ。言っとくけど、本当に仕方なく、よ!」

レイ「あんまり強調しすぎると、「ツンデレ乙」ってきちゃうよーシエラちゃん。どうも、みんな!藤和木へのチョコはバトルスピリッツソードアイズで重要な役目をはたして、私やジャンヌちゃんと縁の深い12聖剣と裁きの神剣・真裁きの神剣を含めた、ソードブレイヴチョコを贈ったよー、レイ・オーバです!」

いやもうホントありがとう。多少就職関係で疲れた心に沁みますよ、本当に。さて、今回は第149話をお送りします。

レイ「前回でプラネテューヌでの決戦も終了!ネプテューヌちゃん達も光樹君も無事みたいだし、今回はどんな感じになるのかなー?」

シエラ「たぶん、状況報告とか、あと話を聞くんじゃないんですか?ワレチューに」

レイ「あー、そういえばそうだね。暴れまわったのワレチューだし」

シエラ「毎回逃げおおせているワレチューだけれど、今回も上手くいくかしらね」

ワレチューの運命やいかに!?それでは本編へー!


第149話 プラネテューヌ事変終結

 

 

 何とか無事、終わったみたいね。大分こっちも被害は出たけれど、それでも連戦を考えると、この被害で収まったのはまだいい方だと思うけど。

 パープルハート達に勇也と共に合流した鈴はそのように感じつつ、疲れと緊張から気を失ったビーシャを見守る。しかし、この勝利はある人物の奮起のおかげでもある。鈴自身最初は認めていなかった、「彼」の存在だ。そして、猛争に取り込まれたネズミを倒した、「彼」もそのネズミの尻尾を掴んでこちらに合流する。

 

「みんな、無事か?」

 

「光樹君!」

 

「光樹。えぇ。みんな無事よ」

 

「遠目から見ていたけれど、大活躍じゃない。これはプラネテューヌ勲章をもらえるくらいの戦果よ」

 

「はは。言い過ぎじゃないのか、アイエフ」

 

 自身が出した戦果に、少し遠慮がちな光樹。だが、鈴としても、今回の光樹がこの戦いに与えた影響は大きいと感じていた。むしろ、今回は光樹が居たからこそ勝つことが出来たとも思っていた。光樹無しでは語ることが出来ない戦果を、鈴は素直に認めていた。だからこそ、鈴は光樹の言葉を否定する。

 

「……いいえ。今回ばかりは言い過ぎじゃないと思うわ。あんたが居なかったら、多分勝てなかった。さっきまでの限界を超えた、あんただからこそ、勝てたんだから。……もっと自信持ちなさい」

 

「鈴…………ありがとう」

 

 光樹から出た、ありがとうという言葉に、鈴は顔を少し赤らめてそっぽを向く。記憶が失っているとはいえ、面と向き合って言われたのが気恥ずかしく思えたからだ。

 

「そ、そんな素直に言うんじゃないわよ……」

 

「ははっ。鈴、照れてんのか?」

 

「そ、そんなんじゃないわよ!勇也、いい加減にしなさい!」

 

 鈴の表情の変化を茶化す勇也を怒る。基本的に勇也にからかわれるのは嫌だったが、よりにもよって態度の変化に対して弄られるのが気に食わなかった。鈴は勇也に食って掛かろうとする。

 

「ちょっ!?鈴落ち着けって!?」

 

「ざっけんじゃないわよ!絶対許さないんだから!!」

 

「あはは……勇也さんとばっちりですね……」

 

 鈴と勇也の言い争いにコンパを始めとする女神組にも笑いが起こる。傍から見れば完全に八つ当たりだ。鈴もこうなった以上、勇也に当たらなければ後々光樹に付け入る隙を与えることになるため、ますます勇也に対する当たりを強くする。

 だが、それを収めたのは意外にも事の中心となっていた光樹であった。

 

「まぁ、あれが鈴の平常運転だからな、無理もない。GKSWAXPを、SSRのNPマスターからやめさせるのにも苦労したわけだし」

 

「平常運転ってな……ちょっと待って。何でその話が出てきて……まさか、記憶が!?」

 

 光樹からの発言に鈴は勇也に上げていた手を止める。鈴だけではない。鈴からの制裁を受けていた勇也、そして絵里奈が光樹の方に視線を向けていた。一斉に向けられる目線に少し困った様子を見せる光樹ではあったが、すぐに3人の問いかけとも言える対応に答える。

 

「……ああ。って言っても、高校に入る前の所までの記憶だけどな。とはいえ、日常の記憶は俺が記憶を失う前まで残っているわけだから、少しややこしい状況だけど」

 

「そうなんだぁ……記憶が戻って、良かったねー」

 

 絵里奈は記憶の思い出しに安堵した様子を見せる。鈴も内心喜んでいた。中学3年間だけとはいえ、そのレベルの戦闘スキルが蘇ったのだから、これは大きな戦力向上だからだ。……と言い聞かせるも、実際は自分達と戦った記憶を思い出してくれたことに喜びを感じていた。

 そんな鈴の気持ちを察してかは分からなかったが、光樹が主に鈴に対して、初代SSRメンバーへ感謝とこれからについて言う。

 

「そうだな。……けど、まさかGKSWAXPを辞めたはずが、まだ俺と共に戦っているなんてな。だけど、状況は一刻を争うみたいだ。……まだ戻り切ってはいないけど、これからも、俺と共に戦ってくれるか?」

 

「…………フン」

 

 ワレチューを掴む手とは反対の、差し出された手を鈴は払いのける。その行動には見ていた全員が驚愕する。しかし、鈴は戦うことを拒否したわけではなかった。別の事で苛立ちを感じたため、その手を払ったのだ。そして鈴は言い放つ。

 

「バカバカしいわね。あたし達はあたし達の意志で戦っているのよ。……そんなの、言わなくても分かるでしょ、今のあんたぐらいなら」

 

「……ふふっ。そうだな。訊くまでもないか。……ありがとう」

 

「……別にそんなこと言わなくていいわよ」

 

 鈴は背を向ける。そんな2人の会話に普段ならパープルハートことネプテューヌが「おおーっ、ツンデレだ!ノワールとおんなじだ!」とでも茶々を入れるのだろうが、そんな発言をする人物はいなく、本人であるパープルハートもその様子を微笑ましく見ていた。おそらく、言っていたならまた否定していただろう。

 光樹との互いの認識を経たところで、問題の人物が目覚める。いや、この場合、ネズミと言った方が良いだろう。そのネズミとは当然、暴れていた本人であるワレチューであった。

 

「……ちゅ?」

 

 光樹のゴッドクロスに尻尾を吊られ状態で目が覚めたワレチューは、未だはっきりとしていない意識の中で、頭を振って状況を確認する。

 

「……あ、あれ?オイラはいったい……。って、ななななななんでお前らがここにいるっちゅか!?というか、なんでオイラは尻尾を掴まれて宙づり状態なんだっちゅか!?しかもガンダムに!!」

 

「おい、ガンダムにってなんだ、ガンダムにって。お前も次元が変わっても相変わらずだな」

 

 唐突なガンダムへのディスりに光樹は不服を言う。同時に持っていた尻尾を離して、ワレチューの体を地面へと落とす。地面に頭から落ちたワレチューは地面に激突した部分を抑え、逆に文句を言う。

 

「な、何をするっちゅか!わけも分からない間にいきなり掴んでおきながら……」

 

「まぁまぁ、落ち着いてくださいです。……それよりも、記憶がないですか?」

 

 喧嘩を仲裁しつつ、コンパが状況の確認を行う。ワレチューもコンパからの問いを受けて、

状況を整理しようと記憶を辿る。そうして帰って来た問いは……。

 

「……記憶っちゅか?確か、変な女に追われて……。………………あ」

 

 ただ一言、呟く。加えて表情が一転して険しいものに変わる。その表情は如何にもやらかした、というものであった。アイエフも表情の変化を見逃さず、ワレチューに詰め寄る。

 

「どうやら、しっかり覚えているみたいね」

 

「ご、誤解っちゅ!これはあの女のせいで、オイラが暴れたくて暴れたんじゃないっちゅ」

 

 必死に弁明をするワレチュー。しかしながら、それをアイエフは許さず、自分の意志でやったのではと決めつけをする。

 

「そんな見え透いた嘘に引っかかるとでも思ってるつもり?」

 

「嘘じゃないっちゅ!クールガイなオイラの胸の奥から、暴れたい衝動が沸き上がってきたんだっちゅ」

 

 しかしながら、ワレチューもアイエフからの疑念と今までの恨みから来る怒りの問いかけに真っ向から反論する。如何にも犯人と刑事の取調室でありそうなやり取りだ。鈴もアイエフの、ワレチューを疑いたくなる気持ちは理解できる。これまで逃げられ続けたり、欺かれたり、挙句の果てにはまた逃げの弁解を通して、信じるというのは些か無理な話である。

 まぁ、ワレチューは今の今まで自分の自我を取り戻していなかったから、取り戻す気がなかったっていうのは言えているかもしれないわね。ビーシャとDRXは途中から自我を取り戻し始めたところで、光樹のトランザムレボリューションバーストで何とかなったけれど、ワレチューはその素振りすら見せなかったわけだし。嘘っていうのは間違ってはいないかもしれないわ。ワレチュー本人が思っていても、実際に何か影響したわけじゃないし。ここはアイエフの方に味方をするわ。

 アイエフに続き、鈴もワレチューの心の奥にあったであろう考えを突こうとする。

 

「へぇ。その割には、ネプテューヌ達を思いっきり拒絶してたみたいだけど?」

 

「あ、あれは……その……オイラの今までの女神に対する恨み、というか……」

 

「決定ね。もう一度牢屋に入れましょう。今度は絶対に逃げきれないようなやつで」

 

 ワレチューの失言にアイエフが流れでこの後の流れを語る。その言葉の発音から、絶対に逃がさないという信念が伝わってくる。これはアイエフもまた本気のようだ。アイエフの怒りと言う名のオーラがひしひしと周りの人物達にも感じられていた。当然、聞き手であったワレチューは身の毛もよだつほどの危機感を抱き、それだけはやめてほしいと嘆願する。

 

「そ、それだけは勘弁を……」

 

「では牢獄に入るかどうかの前に、先程の話、詳しく聞かせていただけますか?」

 

 すると、そんなワレチューに助け船とも言える発言が飛ぶ。それは幼さと大人らしい声質が合わさったような、補佐を行う秘書のような女性の声だ。その声を鈴達は聞いたことがある。忘れるわけがない。なぜなら、彼女は自分達が現在お世話になっている教会の職員の1人なのだから。

 声のした方角に視線を向けると、そこには本に載った小人サイズの女性の姿。間違いない。プラネテューヌの教祖であり、ネプテューヌのサポーター兼保護者であるイストワールだ。その隣には先程戦線を離脱したパープルプロテクターの装着者である海優と同じ防衛軍の隊員が警護のように同行していた。

 いきなり現れたイストワールにアイエフも怒っていた表情から改めピシッと背筋を伸ばして対応する。

 

「イストワール様!?どうしてここに!?」

 

 アイエフの驚きは当然だ。普段なら教会の方での仕事がメインの人物が、先程まで戦場であったこの場所にいつの間にかいるというのは虚を突かれる出来事なのだから。とはいえ、考えてみるとそれは当たり前の事であった。

 これだけの騒ぎが起きているのにも関わらず、女神が不在の状況であると思っているイストワールが、街中でのモンスター騒ぎが起きているというのを知れば、確かめる必要がある。最悪イストワール自身が前線で行動することも考えられる。それ以上に、プラネテューヌ防衛軍の一員である海優が来ているのであれば、防衛軍の代表から国の代表各所に通達が出ているはずだ。海優達がここにきているのが、何よりもその証拠だ。

 鈴も最初こそ驚いたものの、その事と結びつき納得していた。そして、イストワール自身の口からも同じような理由が語られる。

 

「街中からの騒ぎと防衛軍の方から話を聞いて、様子を見に来たのですが……。どうやら既に解決したみたいですね」

 

「えぇ。女神とゴールドサァド、そして、ガンダムにプロテクターという全戦力で食い止めることが出来ました」

 

「わ、私はあまり活躍出来ませんでしたが……」

 

 鈴の報告を耳にして、海優が気恥ずかしそうに自らの失態に気分を沈める。だが、そんな彼女を励ます。

 

「そんなことはないわ、海優。あなただって最初の流れを掴むっていう重要な役目を果たせたんだから」

 

「で、でも……」

 

「そうそう。俺や鈴はそもそも戦いに参加することすらも出来なかったんだ。むしろ戦えただけいい方なんだぜ?」

 

 遠慮しがちな海優に対し、勇也が自分達の例を挙げてよい方へと持っていこうとする。勇也の発言には鈴も少し引っかかったが、それは事実だ。自分達は光樹のガンダムにAN粒子を供給するだけで、直接戦うことは出来なかった。結果的にはそれで勝つことが出来たのだから良かったのではあるのだが、それでも少し心の中では心残りがある。

 しかし、戦場では心残りはあまりよくはない。対象を倒すことばかりに集中してしまうと、周りが見えなくなってしまうこともある。ただ生き残ることを第一に考えなければ、勝利は出来ないのだから。それを考えると勇也の発言は実例を交えた良い例えだ。

 しかしながらそれでもなお海優はそのことにこだわる。

 

「それはそう、だけど……」

 

 流石に鈴も聞いていてうっとおしくなってしまう。素直に受け止めればいいのにということを鈴は言い聞かせる。

 

「あんまり快く受け止めないのは良くないわよ。自分にとっても、相手にとっても、ね」

 

「あ……は、はい!分かりました」

 

 鈴のため息交じりの発言を聞いてようやく海優も状況を受け止める。まるで昔の自分を少し見ているような気分だ。とはいえ、今はそれに浸る暇はない。鈴は話が終わったのを見計らって発せられたイストワールの言葉に注目した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、確かワレチューと言いましたね。おそらく、あなたの姿を変えたのは猛争化現象、それに機械化現象と見て間違いないでしょう。最近、ゲイムギョウ界で発生したこの2つの現象は謎に包まれていましたが、もしかしたらその謎を解き明かすことができるかもしれません」

 

 イストワールの口から語られたのはワレチューが陥っていた状況についてのことだった。猛争化と武装化、そのメカニズムには未だ不可解な点が多い。例えば病気などは基本的に発症した人を調べて病気の原因などを探る。イストワールが言っていることも、猛争化と武装化が本来の生命体の状態を異常化するものだとしたうえでの協力要請であった。

 しかしながら、この場で言うのならそれは言い換えるならモルモットと言うべきものだ。謎を解明するための実験体とでも言うべきものだ。イストワールの詳しく聞きたい、という話が本当ならその心配はないものの、そちらの方を想像してしまったワレチューは、身体をガクガクとさせて怯える。

 

「ま、まさかオイラをモルモットにするつもりっちゅか!?同じネズミでも、ネズミ違いっちゅよ!?」

 

「ま、まさかいーすんがマッドサイエンティストな外道キャラになってしまったなんて!?ゲームでは唯一、この作品の中でも光樹達と並んで数少ない常識人がぁぁぁ!?」

 

 ワレチューの発言を聞いて、女神化を解除していたネプテューヌも話に流されて驚いていた。

 ……ネプ子、あんた本当にそう思ってるの?イストワール様がそんなことをする人じゃないっていうのは私達がよく分かっていることでしょうが。まぁ、私としてはどっちかっていうとお望みならしてもらった方がいいんだけど。だって今まで散々騙されたり嵌められたりしたわけだし。埋めるよりはまだいいと思うんだけれど?

 驚きの後に続いた発言については無視をすることにして、イストワールもネプテューヌの考えを否定する。

 

「外道キャラになんて、なっていません。猛争化と武装化解明の為に協力してもらうだけです」

 

「なーんだ、それならそうと早く言ってよ。てっきり解剖とかするのかと思っちゃったよ」

 

「イストワールがそんなことするわけないだろう、ネプテューヌ」

 

 光樹もツッコミを入れる。そうしてネプテューヌの誤解が解けたところでイストワールは問題の中心となっていたワレチューに対し返事を聞く。

 

「さて、ネプテューヌさんは置いておいて、あなたはどうですか?協力してくれれば、お礼として今まであなたが起こした事件や騒動を少しくらい許してあげることもできます。と、言っても、執行猶予くらいですが」

 

 情報提供の代わりにこれまで起こした事件などの罪を一部免除する。それはワレチューにとっては魅力的な話だろう。何せ、この騒動だけではなく、プラネテューヌ襲撃やゲーム機強奪の件も罪の免除に入るのだ。ここでまとめて清算すれば、もし、後々更生するという時にも楽だろう。

 しかしながら、ワレチューからの回答は、イストワールが望んでいるだろう答えではなかった。

 

「……だとしても、教会に協力だなんてオイラのプライドが許さないっちゅ。生まれついてのワルのオイラにはアウトローがお似合いっちゅ」

 

「え、こんな魅力的な話なのに、断るっていうのか?」

 

 ワレチューの発言に勇也からも問いかけが入る。しかしながら、今まで教会関係に対立していたワレチューから出てくる言葉としては、考えられることではある。

 ところが、それもイストワールは予測していたのであった。断られると、残念そうにしながらも淡々と現実を突きつける。

 

「そうですか。……では、今回の騒動の賠償として100億クレジットの請求と、身柄の拘束をしなければいけませんね」

 

「ひゃ、ひゃくおくっちゅか!?」

 

「100億て……」

 

「す、すごい金額出てきちゃったねー……払えるのかな?」

 

 唐突に出た、被害総額100億という金額にワレチューだけではなく光樹と絵里奈も驚く。ゲイムギョウ界でもそうでなくとも、100億もの巨額への驚きは同じだった。

 普通は払えない額ね。ワレチューでもそうでなくても払うのには一苦労なはずよ。これで払うって言ったらすごいと思うけれど、このネズミならまずありえないわ。となれば、教会や女神を嫌っているこいつなら、逃げるしかないわね。

 けど、果たしてこの状況から逃げられるかしら。いくらネプ子達に撃破されて体力は減ってる。しかもこっちは元々のメンバーに加えてプラネテューヌ国防軍の隊員達もいる。どこを向いても敵っていう状況から逃げることなんて出来はしないはずよ。

 更にイストワールは追い打ちを掛けるように言葉を続ける。

 

「……残念です。あなたが、協力してくれれば、その成果をもって、賠償はなし、これまでの事も執行猶予を与えようと思っていたのですが」

 

「うっ」

 

 それらの言葉にワレチューは躊躇いを見せる。一方アイエフ達もどうするべきか迷っていることを指摘する。

 

「傾いてるわね」

 

「傾いているわね」

 

「あからさまに金額を聞いてビビってるね」

 

「ビビッてそのまま泣いたりしねぇか、これ」

 

「それはないだろうけども……けどワレチューはどっちにしろ覚悟を決める必要があるな」

 

「ワレチューの明日の未来はどっちだー」

 

 もはやワレチューが賠償金を払えることは誰も思っていない。これまでの行動を顧みれば当然の事だろう。そしてトドメにイストワールは強烈な誘い文句を口にする。

 

「それに、今ならコンパさんが教会に住んでくれているので、三食、彼女の美味しいご飯が食べ放題ですよ?」

 

 その一言に、ワレチューは枷を振り切った。

 

 

 

 

「まじッちゅか!?」

 

 

 

 

 ちょろい。思わずその場にいた全員が思った言葉だ。そんな考えを知らずに、ワレチューはそのまま自分の願望の為にイストワールへ協力を申し出る。

 

「それなら、このワレチュー、ネズミの名にかけて全力で協力させてもらうっちゅ」

 

「ネズミのプライドって何だろう……」

 

 先程までの言葉を全否定するかのような発言だった。ネプテューヌはワレチューが先程まで大事にしていたであろうネズミのプライドというものに疑問符を浮かべている。同じように鈴もあまりにも切り替えの早いワレチューの思考に頭を抱える。

 

「ネズミのプライドなんて、所詮その程度ってことなのよ」

 

「ネズミならそんなもんか」

 

「頭小さいもんねー」

 

「ネズミで賢いのは、猫と仲良く喧嘩するってフレーズのあのネズミキャラクターくらいだろ」

 

 ガンダム組で行われるネズミのプライドへの罵倒討議にアイエフもそうねと思う。コンパのことを出せば、すぐにこのネズミは従うというのは今までも分かっていたことだ。嵌められた時だって、コンパの嫌いという言葉で落ち込んでいるのだから。

 しかし逆に考えると、ワレチューは、メンタルは強いのかもしれない。嫌いと言われたその日のうちに、コンパのご飯が食べられるという情報だけで立ち直れるのだから。もっとも、ワレチューの場合は嫌われたということを忘れたという方が正しいのかもしれない。絵里奈の発言通りに、だ。

 ガンダム組4人に気にすることなく、ワレチューは早く教会に連れていくように急かす。

 

「さぁ、さっさと教会に行って猛争化と武装化について研究するっちゅ!」

 

「な……!ま、待ちなさいよ!!すみません、追いかけるので失礼しますっ」

 

 凄まじい速度で教会の方へと走り出すワレチューを海優と国防軍隊員達が追いかける形で離脱する。ワレチューの影が小さくなっていくのを見て、アイエフはため息を漏らす。

 

「相変わらずの手のひら返しね」

 

「そうね。変わっていないっていうか……」

 

「そうだな。前の時と世界は違っても、考えることは同じだもんな」

 

 鈴と光樹もアイエフの言葉に続いて呆れと笑いを見せる。しかし、ワレチューの事について集中していたアイエフ達を、コンパが引き戻す。

 

「そういえば、忍者さんと騎士さんはどこです?さっきまでいたのに、何処にもいないです」

 

 なんですって?私はすぐに辺りを見回す。まさかと思ったけど、コンパの言葉通り、周りには忍者と騎士の姿は一切なかった。

 

「ホントだ。いつの間にかいなくなってる」

 

「まさか……逃げられたのか?」

 

 この状況、光樹の言う通り、どうやら逃げられたようだ。忍者という姿通り、まさに忍んでこのプラネテューヌ関係者のいるこの場から抜け出すことに成功したのであった。

 まさにしてやられた、というものである。ネプテューヌも逃げられたことをどこか楽しそうに悔しがる。

 

「戦闘のドサクサにまぎれて逃げるなんて、きたないさすが忍者きたない!ついでに騎士もきたない!」

 

 悔しいのはこの場にいた誰もが思っていた。その中でもアイエフと鈴が逃がしたことに人一倍怒りを燃やしつつも冷静にこの後の事を考える。

 

「捕まえられなかったのは悔しいけど、あいつらが秘密結社の構成員だってわかっただけでも十分よ」

 

「そうね。それだけでも、今回は良かったんじゃないかしら」

 

「お2人の言う通りです。それに実態がつかめれば、自然と打つ手は決まっていきます」

 

 イストワールも2人の発言に納得を見せつつ、今回の事をねぎらう。

 

「さて、みなさんも疲れていることでしょうし、わたしたちも教会へ帰りましょう。……みなさん、ほんとうにお疲れさまでした」

 

「あぁ。今日はみんなでお祝いだ!ゲーム機奪還とプラネテューヌの防衛成功、それに……ビーシャの初戦闘も含めてな!」

 

「おおっ!いいねぇ!!」

 

 教会への帰還ということで、今日の祝いをしようという光樹にDRXが同調する。その様子を見ていた鈴がため息交じりに呟く。

 

「全く、相変わらず人を巻き込むんだから……。まぁ、少しは戻ったような気がしていいんだけれど」

 

 どこか呆れと懐かしむ気持ちの合わさった様子を見せる鈴。そんな鈴に対し、アイエフはこれでもいいのではと言う。

 

「まぁ、いいじゃないの。今日は色々あったんだし」

 

「……それもそうね」

 

 その言葉に鈴は納得を示す。そうしてアイエフ達は寝てしまったビーシャの様子を気に掛けながら教会へと戻るのであった。

 

 

TO BE CONTINUED

 




今回もお読みいただきありがとうございます。次回のネプテューヌ編エピローグと総括の黒の館をもって、ネプテューヌ編が終了する予定になります。

レイ「いやー、長かったねぇ……前もジャンヌちゃんとか言ってたみたいだけど、本当に長いよ……。あと、ワレチュー軽すぎ」

シエラ「わたくし達が出てきたのが大体ネプテューヌ編の半分を少し過ぎたあたりですから……そこから数えるにしても結構長いですよね……。そうですね。あんな性格のやつは嫌です。」

まー光樹君が関わるから、多少光樹君に関連する事柄起こしているとこうなっちゃうよ。あとワレチュードンマイ!けれども、ノワール編とかでもNP装着者をメインとする話を考えてはいるけれども。

レイ「へぇ、そうなんだー」

シエラ「他のNP……っていうと、確か前に見たのだと、次はロートクウィーンとかいう機体なのよね?」

あんまり情報を先に開示したくはないけれど、まぁそうだね。シュバルトゼロ・ゴッドクロスとはフレームが共通した、同型シリーズの機体で、砲撃戦を得意とする機体だから、スピードより火力が見られるかな

シエラ「光樹よりはスピードが落ちた戦いになるってことかしら?」

んー、とはいえ並みのNPよりは機動性はあるよ。ゴッドクロスと比べると多少落ちるけども。まぁ、そこら辺は登場してからということで……。じゃあ、次回予告に行こうか。

レイ「りょーかい!次回は……えぇ、金曜日の投稿なの……?」

思った以上に作業が進みません……(´・ω・`)ごめんね。

シエラ「また書かせまくろうかしら。それじゃあ、次回もちゃんと見なさいよね」

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