新次元ゲイムネプテューヌVⅡ SSRと言う名のG(凍結)   作:藤和木 士

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どうも、皆様、お元気でしょうか。学校の卒業課題に追われています、藤和木弘です。

ジャンヌ「学校の卒業課題が終わるたびに、もうすぐ学生生活が終わる、というのをひしひしと感じますね。わたくしの事ではないのに、それはなんだか残念です。どうも、皆様。新年が明けて、未だに藤和木とバトスピショップバトルに行けていない、ジャンヌ・ドラニエスです」

レイ「そうなんだよねー。せっかく新しいデッキとか作ってるのに、藤和木全然行けてないんだよー!裏で「行きたいなぁ」っていうの何回も言ってるし。あ、でもそれらはある意味藤和木だからこその大切な理由で行けていないんだけどね。どうも、みんな!レイ・オーバだよっ!」

うん、すごくバトルしたい。魂が燃えてますよ。でもその前に今日の投稿はしないとね。今日は第144話の投稿です。

レイ「前はビーシャちゃん達を正気に戻したところだったね。後は、ワレチューをフルボッコにするだけだね!」

ジャンヌ「れ、レイさん、あくまで止めるのが目的ですよ?……でも、タイトル後半の力を託すという言葉……一体、誰が、誰に力を託すのでしょうか?そこが気になりますね」

力を託された者が強敵に対し、最強の布陣で立ち向かう、っ割と王道的なところあるよね。さて、それでは本編へ!


第144話 揃う布陣、力を託す

 

 

「ぢゅううう!!」

 

「くぅ!!速い!!」

 

「予想以上だな……っ!あぶなっ!?」

 

 猛争・武装化したワレチューの尻尾から放たれる刺突用装甲を生かしての物理攻撃を鈴と勇也は何とか回避する。しかし、それに追撃のように大型化した腕部に装着された複合防盾からビームの弾幕が襲い掛かっていく。

 それらの弾幕は回避しきれず、2人は防御兵装で防御する。しかし、敵の弾幕の威力が強く、1、2発当たっただけで2人の機体は大きく弾かれる。だがタダで押されるわけではない。勇也のR-ZEROは受け止めた攻撃のエネルギーを、シールドを構成するエネルギー体に乗算させてブーメラン状の武器に変えると、そのままワレチューの尻尾に目がけて放つ。

 勇也のガンダムの防御武装は少し特殊だ。腕部に搭載したシールド発生装置から展開するエネルギーシールドなのだが、受けた攻撃を受け止めてエネルギーをキープする。そしてその状態でエネルギーをブーメランのような投擲兵装の形に変えて攻撃として敵にカウンターを浴びせることが出来る。その名は「ANブーメランシールドユニット」と呼ばれている。

 自分達をこれほど弾く攻撃を受け止めてのカウンター攻撃だ。かなりのダメージが期待できると踏んだ鈴だったが、その予想は悪い意味で裏切られる。投げられたブーメランはワレチューの持つ尻尾に阻まれると、そのままワレチューの口でキャッチされる。そしてそのブーメランをワレチューが貪り喰らう。

 

「ぢゅ、ぢゅうううぅぅぅ……!」

 

「う、嘘だろ……!」

 

「ちょっと!攻撃を食べるなんて聞いてないわよ!?」

 

 予想外の行動に思わず素っ頓狂な声が漏れる。滅多に見ないその行動が2人の行動を鈍らせた。ワレチューの両腕部から圧縮されたビームが放たれる。迫る攻撃に、動けずにいたステマックスとローゼンの声が放たれる。

 

「2人とも、回避で御座る!」

 

「墜とされるぞ!!」

 

 2人は何とかギリギリのところで回避する。だがそれでも完全な回避行動ではない。R-EXEグレイガは右手のANファングクローシールドを、勇也は左肩部のANビームブーメランⅣと左背部のANショートレンジウェポンコンテナⅡの一部をそれぞれビームに飲み込まれる。それに伴ってそれらの武装が機体からパージされる前に爆発を起こす。

 機体近くで起こった爆発により、2人は舌打ちをする。

 

「くぅぅ!!」

 

「やっちまったか……!」

 

 何とか態勢は立て直すと2人はそれぞれ機体の状況をモニターで確認する。鈴のグレイガの方は右ANファングクローシールド喪失、爆発の影響で右ANソードカノンⅢが損傷、更に右ANビームメイカーにも不調と出ていた。既にDRX戦の時点で脚部のANブレイクスライサーⅡは機能停止、ANハウリング・シャウターもその開閉機構を封鎖していた。そしてそれ以前に両腰のANインパクトブレイカーユニットⅡもギラ・ズール部隊の自爆で喪失している状態であった。

 もうかなりの武装が使えない状態ね。スラスターも右肩は機能停止、他の部分もDRXから受けた念力攻撃の時点でリアスカートのは完全に使えないし……そしておまけに右腕部もさっきの爆発で肘の可動が悪い……。これで戦うのはかなり無謀ね……。

 鈴はこの状態を心の中で嘆く。まさかここまでとは、と。対する勇也の方も鈴と大差ない状況であった。先の2つの武装の喪失と同時に、左ANビームガトリングⅣCと左腕ANブーメランシールドユニットの破損とそれに伴う左腕部可動部の損傷で左手が全く動かない状態であった。その上でDRXの過剰なまでの攻撃で既に両腕・脚部のスラスター機能の低下が起こっていた。加えて同じタイミングで失っていたANエクサランスウイングアームズⅡとワレチューの進路を妨害する際に喪失したANランサーライフルビット……。

 もはや2人に戦う力は残されていなかった。辛うじて残っている武装もそのほとんどが高機動を前提とした格闘戦兵装ばかり。下手に近づくのは危険である。2人もこれ以上の戦闘は無理と判断し、自分達の防御を優先する。

 ゆっくりと、しかし着実に鈴達とステマックス達のいる方向へと向かっていく猛争・武装化ワレチュー。彼らの後ろにはまだ避難している人達がいた。ここで逃げては、民間人が危ない。

 

「っ。もう、ここまで……?」

 

「無念。まさか、これほどの力とは……」

 

 鈴とステマックスの諦めの言葉が響く。それに反論する形でローゼンが声を高くする。

 

「そんなわけにいくか!ここで退いては、か弱き民達が……」

 

「……けど、戦略的撤退、って言葉もある。退くこともまた戦略の1つだ……とはいえ、引けに引けないんだが」

 

 残念だけど、ここは勇也の意見を尊重したいところね。命あっての物種っていうのもあるわけだし。ここで私達がやられれば、それだけで戦況に影響が出るんだから。まぁ、残りたいっていうのなら、ローゼンだけ残して、撤退するって考えもあるわけだけど。何せ敵が1人減るんだから、楽になるんだから。もちろん、そんなことはさせないけどね。

 少しブラックな方向に考えを向ける鈴。だがしかし、先程鈴はあることを察知していた。それは鈴が真のイノベイタータイプの最適合者であるからこそ気づいたこと。戦場で膨れ上がった、人々の思い。暖かな人々の意志の光を感じ取っていた。ここまでの暖かな光、発することが出来るのは鈴が知っている中ではただ一つの機動兵器しかない。かつて鈴が装着していた、革命を起こす流星の王者。SSRシリーズのガンダム達だけだ。そしてそれを今この場で起こせるのはただ1人。

 もう向こうの戦場の音は聞こえない。停戦状態か、はたまたこちらの望む状況か。しかし、それが確認できるまでは油断は出来ない。お互いに武器を向けてけん制し合う。だがこちらは武装がほとんど使用不能。残ったわずかな武装をしっかりと持つことが精一杯だ。

 それでも4人は戦意を衰えさせない。むしろガンダム側は機体の損傷とは裏腹に、鈴達の戦意は高まっていた。あちらが終わりかけなら、ここで踏みとどまるのがセオリーだから。しっかりと彼らに引き渡さなければならない。この戦闘のバトンを。

 そして、それは果たされることとなった。互いに砲口を向ける緊張状態を、待ちかねた者達の声が破る。

 

「待たせたわね、ステマックス、ローゼン」

 

「ネプテューヌ殿!」

 

「ネプテューヌ……それに、光樹達もか。……ビーシャ達が来ているということは……」

 

「あぁ。無事に正気に戻してきた。……というか、酷い損傷だな、鈴、勇也」

 

「本当だよーっ!?鈴ちゃん、勇也君、大丈夫?」

 

 パープルハート達の帰還だ。とはいっても、近い距離を移動してきただけなのだが。だが、無事に暴走状態であったビーシャとDRXを正気に戻すことが出来たようだ。

 こちらの機体の損傷具合を見て、無事を聞いてきた光樹と絵里奈に、鈴は何とか大丈夫そうに立ち上がる。とはいえ今になって脚部の可動に負担がかかってきて、若干体の態勢を崩しそうになったが。ふらつく体をよそに、鈴は大丈夫であることと状況を伝える。

 

「問題ないわよ。これくらい。それより、ちゃんと足止めはしておいたわよ」

 

「大丈夫って……その損傷で!?」

 

「そうですよ!いくら光樹さんのガンダムと同じで、傷が体に反映されにくいって言っても、ボロボロじゃないですか!」

 

 その状態を見て、アイエフとコンパにも心配されてしまう。2人の指摘通り、こちらの機体はほぼ全損状態に近い。だが、鈴としては記憶喪失の、半端な状態の光樹に情けをかけられたくはなかった。例えSSRを身に纏っていなくても、かつて同じ戦場を駆けた者として弱いところを見せたくなかった。

 それを察したのか、勇也が話を取り持つ。

 

「まぁボロボロだが、最後の仕事くらいは出来る余力はあるからよ。なぁ、鈴」

 

「最後の……?……えぇ。まだ今のあたし達なりの戦い方があるから」

 

 いきなりの声かけに戸惑ってしまった鈴。何のことを言っているのかすぐには分からなかったからであったが、分かっていないことを指摘されるのを避けるため、鈴はすぐに答える。

 最後の仕事?何、遠距離から別の武装を転送して砲撃するの?それともまさか民間人の避難誘導ってこと?前者は光樹に頼らないといけないし、後者も納得は出来るけど、あんまり裏方を任せるってことはしたくはない。

 本当に何を指して言っているのか、心の中で未だに分からずにいる鈴をよそに、押しとどめていた者達にパープルハートが礼を言う。

 

「けど、あなた達が必死にネズミを食い止めてくれていたおかげよ。本当にありがとう」

 

「改めて言わなくてもいい。こうして間に合ったのだからな。それよりも今はワレチューの相手だ」

 

 素直に言われるのを嫌ったのか、ローゼンが優先すべきことを指し示す。そう、食い止めたとはいえ、あのネズミ……猛争・機械化状態のワレチューにはまったくと言っていいほどのダメージを与えられていない。

 尻尾の地面への突き立てと共に、ワレチューが咆哮する。

 

「ぢゅううううううう!」

 

「ひぃ!?」

 

 その声にビーシャが驚き、悲鳴を上げてしまう。やはり洗脳が解けたことにより、モンスターへの恐怖心が残っているようだ。まだモンスターとの戦闘には立てないと察したパープルハートが退くことを促す。

 

「ビーシャ、無理ならやっぱり……」

 

 この状態である鈴も、ビーシャを無理に戦わせるというのはどうかと思っていた。モンスター恐怖症のせいで戦う者達に迷惑をかけ、逆に危機に陥らせる原因にもなりかねない。戦場に覚悟のないものが出てくるな、という言葉もある。

 しかし、その鈴の考えは間違いであった。ビーシャはモンスターが怖いという気持ちこそまだあった。だが、その中に、戦うという覚悟がないわけではなかったのだ。ビーシャ自身の口からも、それが語られる。

 

「だ、大丈夫。突然だから、ちょっとびっくりしただけ。……それにしても、ほんと間近でみると大きいね、こいつ。これじゃあ、わたしじゃなくてもみんな怖いよね」

 

 怖い、と明言しつつも、その表情にはどこか落ち着いたものがあった。怖気づいていても、退かない姿勢。その姿に、鈴はかつて初めてNPで戦場に立った時の自分の姿を重ねる。

 それまで妖怪と言ったバケモノや妖術使い相手に対して戦えた鈴も、殺し合いが平然と行われる異常な世界で鈴は少し怯えていた。ガンダムのファンであった光樹ですら緊張していた中で、少女が戦場に立つというのは無理があったのだ。

 だがしかし、出撃前に光樹と勇也で決めたこと。「全員で生き残る」ことに必死になった時、目の前の現実に乗り越えていこうと無我夢中になった。それが今、ビーシャの中では「怖くても立ち向かう」ということに変わっているだけなのだ。

 

「ぐるるるるるる」

 

 少し前に出たビーシャに気づき、威嚇をするワレチュー。そしてビーシャが覚悟を決め、宣言する。

 

「でもね、わたしはもう逃げないよ。そして、このマスクにはもう頼らない」

 

 その手に握られていたマスクが捨てられる。それは過去との決別であった。

 

「怖い自分を隠すために、仮面を着けてヒーローを演じてた。けど、どんな仮面を被ってヒーローを演じても、黄金の力を身に纏っても、わたし自身が変わらなきゃ意味がなかったんだ!」

 

「ビーシャ……」

 

 DRXが呟く。しかしその声にはどこか感慨深そうに、まるで成長を見届ける親のような声音を感じられた。守ってきた大切な人が、大きく前に踏み出した姿に感動するように。

 そのビーシャの口から、2つの宣言が敵と味方、両方に掛けられる。

 

「だから、その一歩として、わたしは、お前から絶対に逃げない!……そしてDRX。わたしのことを守るべき対象じゃなくて、1人の戦友として、認めてくれる?」

 

「……あぁ。もちろんだ!!」

 

 目の前の壁に真正面から立ち向かう意志と共に発した、もう守られたくないという思いから発したと思われるその言葉。そんなビーシャからの問いに、DRXはためらうことなくしっかりとした口調で受ける。それはここに1組のチームが成立した瞬間であった。

 ビーシャの覚悟をチームの完全な成立を見届けてパープルハートもビーシャの思いを汲み取る。

 

「よく言ったわ、ビーシャ。なら、あなたのはじめの一歩、DRX、それにガンダムと共に踏み出しましょう!」

 

「女神とゴールドサァド、それに特機とガンダムの初の共同戦線と行くか!」

 

 光樹の言葉には少し文句を言いたくなったものの、間違ってはいないこととして、その立ち向かう姿を鈴は見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ゴールドサァドの方も戦う準備は出来ていることだし、俺らも力となるか」

 

 勇也が力強く言う。鈴が分かっていない状況の中、当然光樹もそれの意味は分かっていなかった。2人の損傷の具合は一目瞭然。最後の仕事が何なのか、光樹にもよく分からなかった。

 しかしそこは強情な鈴とは違い、どういうことか知りたいと思った光樹。勇也に対し説明を要求した。

 

「そういえば、最後の仕事ってどういうことだ?」

 

「そうね。あたしと考えていることが違うかもしれないから、答え合わせをしてみない?」

 

 光樹の質問と同じような問いを鈴が追加で求める。言い方は少し紛らわしくしているが、その言葉の意味は突き詰めると光樹と同じ質問であった。

 ……おい、鈴はさっき分かったって言ってたよな?つまり勇也と同じ考えってことのはずなんだよな?ならどうしてそんな質問をしているんだよ……。

 遠回しの分からない発言に勇也も苦笑を交えて指摘する。

 

「なんだよ……結局のところ、鈴も分かってないんじゃねぇか……」

 

「確かにー。それ、遠回しに分からないって言ってるようなものだよねー」

 

「う、うるさいわね!間違ってたら嫌だったのよ!で、結局何だったの!?」

 

 絵里奈からも指摘されてしまい、開き直る鈴。その姿はこの雰囲気を置いて、どこか面白おかしく思ってしまう。だが、今ワレチューを自然とけん制してくれているパープルハート、ビーシャ、DRXのためにも早く終わらせなくてはいけない。

 手短に済ませることを同じく考えていたのであろう勇也も、鈴をなだめつつもその最後の仕事の内容について話す。

 

「はいはい、間違ってた方も恥ずかしいよな。で、俺の考えだが……光樹、お前に俺達の全AN粒子を託す」

 

「そうか……え?」

 

 返事をするも、少しの沈黙ののち、思わず聞き返してしまう。AN粒子を託す、とは一体どういうことだ?そのままAN粒子を渡すにしても、AN粒子を放出しては集めることなどできはしないというのに……。

 だが、その言葉だけで鈴には理解できたようだ。意味を把握した鈴が、それが意味することを明確にする。

 

「要するに、AN粒子の転送ってこと!?それは確かにあたし達に出来る最後の仕事だけど……でも、よりにもよって今の光樹に!?」

 

 AN粒子の転送。つまり鈴達のガンダムのAN粒子を、ゴッドクロスに移し替える、ということだった。確かに転送に関係する装置が壊れていなければ、ガンダムで出来る「最後の仕事」ではあるだろう。つい先ほど勇也が言った「力になる」というのにも当てはまる。

 しかしながら、鈴はあまり乗り気ではないようだ。おそらくそれは、光樹が元の光樹ではないからだろう。しっかりとしていない分、不安感があるのか、それとも光樹という人物に貸しを作りたくないという、元々の関係からなのか。その両方とも取れる反応だった。

 とはいえそこは鈴と同じように戦い続けてきた勇也である。鈴に対し勇也が現状を強く伝える。

 

「そんなこと言ってられる場合じゃない。今戦えるのは光樹と絵里奈だけ、それも光樹はトランザムレボリューションバーストを使ったんだ、粒子は回復しているだろうが、それでも全力で戦うには不十分だろう。対してこっちはほぼ武装全損、だが圧縮粒子貯蔵コンデンサにはまだ十分粒子が残っている。……なら、光樹に賭けてみようぜ?」

 

「それは……分かってるわよ。渋って絵里奈に粒子を供給しても、哀しいけど、やつに有効打を与えられそうにはない……。なら、光樹に託すしかない……あたし達の粒子を、願いを乗せて……!」

 

 最初はまだ渋っていた鈴も、状況と自身の心を整理していく。何が今、重要なのかを自分の心に言い聞かせるようにして。そうして顔を上げた鈴が光樹の方に手を伸ばして気恥ずかしそうに言う。

 

「……光樹、後ろ、向きなさい……」

 

「鈴……」

 

「早く!とっとと終わらせるわよ!!」

 

 急かしを受けて光樹もガンダムの装甲の中で苦笑を浮かべる。恥ずかしがる鈴というものを、光樹は初めて見たような気がしたからだ。実際は鈴達とのチームを組んでいた時の記憶を思い出しつつあったので、そうではないのだが。だが、今の記憶喪失状態の光樹に対して初めて見せた恥ずかしがりではあった。

 鈴の望み通り、光樹は2人に背中を向ける。するとすぐに背中のバックパックにユニットに2人のガンダムの手が当てられる。同時に何かが接続するような軽めの音が響くと、ゼロのコンソールに粒子残量の画面が表示される。残っていた粒子残量が3種類表示され、そのうち2つの粒子残量が減っていく。だがそれに応じて、中央の粒子残量がすごい速度で回復していくのが分かった。

 15秒ほどの時間ののち、2人の手が離れていく。同時に後方でノイズの光が放たれる。振り返ると、装着を解除した鈴と勇也の姿があった。全部のAN粒子を託したことで、装着が解除されたのだろうか。その考えは正しく、勇也がこちらに言う。

 

「ガンダムの維持用のAN粒子も任せたんだ。こっちは避難誘導に回る。後は頼んだぞ、2人とも」

 

「あぁ。分かった」

 

「2人も気を付けてね」

 

 まさか、ガンダム状態を維持するまでのAN粒子まで託されるとは思わなかった。確かに戦えないくらいなら、その分のAN粒子まで託してもいいかもしれない。それ以上に、AN粒子のないガンダムを纏っていても、ただ重いだけなのだから、それもありだろう。

 ともかくそれだけの粒子供給のおかげで光樹のゴッドクロスのAN粒子残量は8割方まで回復した。2機のMPの粒子供給でも完全に回復しないというのには驚いたが、それだけあれば十分だろう。2人の意志を受け取って、光樹と絵里奈も2人に民間人の方を任せてパープルハート達の方へと向かう。その途中、鈴がこちらの背中に向けて言う。

 

「絶対……止めなさいよ!!」

 

 その言葉が心に沁みる。鈴からの嫌そうながらも向けられた応援の言葉に、光樹は背を向けたままはっきりと言う。

 

「……あぁ。任せてくれ!!」

 

 隣にいた絵里奈がその言葉を聞いて装甲下の顔に笑みを作る。2人の思いも引き継いで、2人は戦線へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「パープルハート、遅れてすまない」

 

「ちょっとエネルギー供給してもらってたよー」

 

 光樹と絵里奈が謝罪を上げつつこちらに合流する。それをパープルハートは快く迎える。

 

「いいえ、気にしてはいないわ。それよりも、力を託してくれた2人のためにも、全力で挑まないといけないわね」

 

 パープルハートも目線はワレチューに向けつつ、耳は光樹達の会話に向けていたため、状況は把握していた。

 無事な者に傷ついた者達のエネルギーを渡す。何だかゲームの最終決戦でありそうなシチュエーションね。けど、それもまたいいわ。むしろその方がストーリー的には熱く燃え上がるというもの。負ける気がしないわ。

 パープルハートからの激励に光樹と絵里奈が頷く。

 

「あぁ、そうじゃなきゃ、意味がない」

 

「だねー。……あれ、アイエフちゃんとコンパちゃんは?」

 

 ふと辺りを見渡した絵里奈がそれに気づく。2人は先程のことを聞いていないため、気づいていないのも当然だろうが、今回アイエフとコンパはこの戦闘には参加しない。

 というのも、2人ともビーシャとの戦闘でかなりダメージを負ったのと、機械化モンスターに有効打を与えるのが今は難しいためであった。これは2人の方から言われたことでパープルハート自身もそれを受け入れた。だが、それでも何もしないというわけではない。ダメージの治療と避難民の誘導をやってくれるという。特にダメージの回復はコンパの得意分野である。それをやってくれるというのなら、大いに助かる。避難民の誘導もアイエフなら慣れているだろう。それに先程までの話を聞いていると、鈴達も避難誘導をしてくれるようなので、3人もいれば間違いなくスムーズに避難させることが出来るだろう。

 そのことを光樹と絵里奈にも説明する。

 

「2人は後方支援よ。ダメージを受けたら、コンパの近くまで行けば回復してくれるはずだから」

 

「そうか。分かったよ」

 

「とはいえ、私達は傷が治っても、機体のダメージが大きかったらダメなんだけどねー。光樹君のガンダムは例外だけど」

 

 少し気になる発言が絵里奈のガンダムから出たけれど、それを今聞くのは余計に時間を取ってしまうことね。早く決着を付けなくちゃ。わたしはワレチューの方に目を向ける。けれど、またも遮る声が響いた。それも嬉しい方の予想外の者の声だった。

 

 

 

 

「お待たせしました、パープルハート様、光樹も大丈夫かしら」

 

 

 

 

 芯のある声が響く。その声の主をパープルハート達は知っていた。この世界で女神の姿であるパープルハートをそのような声で「パープルハート様」と呼ぶのはただ1人。その方向を向くと、そこにいたのは予想通り、光樹と同じように機械の装甲を纏う少女、海鳴海優であった。

 プラネテューヌの異変と言えば、やはり彼女が出てくるのは当然だろう。むしろこの危機に来ない方がおかしい。とはいえ、あの猛争・機械化ワレチューを攻略するのにこの増援は渡りに船であった。この場は数よりも実力が物を言う。以前マジェコンヌ達が繰り出してきた融合猛争・機械化モンスターのタイラントガーダーを光樹達と共に倒したことのある海優とパープルプロテクターなら間違いない。

 

「海優。来てくれたのね」

 

「はい。これだけの大型強化モンスター……止められるのは、あたし達だけでしょうから。けど、光樹のところの2人は?」

 

「鈴と勇也は機体破損で後退だ。けどその分、2人の機体のAN粒子をゼロに供給してもらったから、問題ない」

 

「そう?なら、とっとと相手をしましょうか」

 

 光樹から鈴と勇也のことを聞いた海優はその手にビームアサルトライフルを持ち、ワレチューに向ける。もう既に戦闘をする気は満々のようだ。

 これ以上長引かせるつもりのないパープルハートは正面に立ち、機械刀の先を向け、号令をかける。

 

 

 

 

「じゃあ行くわよ、みんな。……全員、突撃っ!!」

 

『了解!!』

 

 

 

 

 紫の女神の号令に一斉に反応し、猛争・武装化ワレチューとの戦闘が始まった。

 

 

TO BE CONTINUED

 




今回もお読みいただき、ありがとうございます。さぁ、次回よりワレチューとの決戦、ネプテューヌ編の最後の戦闘が始まります!

ジャンヌ「力を託す、は光樹さんのガンダムへの言葉だったんですね。でもまさか鈴さんが光樹さんに力を託すだなんて、少し驚きです」

レイ「だよねー。恥ずかしがってたのもなんだか可愛かったし!けど、最後の方でまさか海優ちゃんが来るなんて、まさに「布陣は揃った」だね!」

残念ながら鈴と勇也、それにアイエフとコンパは直接的には参加していませんが、それぞれサポート、およびエネルギーとして力を貸している形となっている総力戦を次回からお楽しみください!それでは今回はここまでです。

ジャンヌ「次回は木曜日の投稿になります」

レイ「最後に輝く笑顔を見せるのはどっちだ!それじゃあみんなー、また次回ッ!」

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