新次元ゲイムネプテューヌVⅡ SSRと言う名のG(凍結)   作:藤和木 士

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どうも、皆様お元気でしょうか。先日、ネットで見かけたストロベリーノーツの寿々苗穂海が描かれたスリーブを見て、欲しい!と思ったけどネットだと少ししたので一度諦めたのですが、諦めきれず、あるわけないだろうと思いつつ名古屋のカードショップのスリーブ置き場を漁っていたら、まさかのそれを見つけて即買いしてました、藤和木弘です(*´ω`)

シエラ「いや……本当にあんた何者なのよ、藤和木弘……。っと、ど、どうも、皆様。最近藤和木が紫ジークフリードをネクロレイジャンヌなるデッキで使いまくってるから、わたくしの紫が全然活躍しないわ、シエラ・ムルセーヌよ」

レイ「ごめんね、シエラちゃん。でも私もあのフラッシュタイミングでの除去力と打点増加に心躍っちゃってさー!上手く回らないけど、回ったら爽快だよ!どうも、みんな!最近藤和木のテンションが上がったり下がったりだよ、レイ・オーバです!」

うん、幸せと不幸は常にバランスを保つように訪れるっていう理論は認めてるから、何も言わないよ……。まぁ、そのなかでもちゃんと投稿します。今回は第138話を投稿です。

レイ「ここはステマックスの忍術でプラネテューヌに戻ったところだね」

シエラ「悪夢、っていうのだけが気がかりね。何か嫌なことが起こりそうだけれど……」

さて、悪夢とは一体?それを見たのは?それでは本編へ!


第138話 戻った先で見たもの、悪夢の一部始終

 

 

 ステマックスの忍術「流宇羅の術」で無事プラネテューヌに帰還したネプテューヌ達。術の効果として出た煙が晴れ、すぐにプラネテューヌの状況を知る。だが、それは衝撃を伴う光景を見ることとなった。

 その惨状に、ネプテューヌは絶叫する。

 

「な、な、な……なんじゃこりゃあああああああ!」

 

 あまりにオーバーリアクションな叫び。しかし、それは決してノリで言ったり、冗談ではない。街は至る所が破壊され、更にその中心にいたのは、黒い禍々しい姿をした、大型のネズミ型モンスターであった。そのことから、この破壊の限りを尽くしたのはそのネズミであることが容易に想像できた。

 だがしかし、それだけではないことをネプテューヌ達は知らなかった。唸り声を上げるネズミ型モンスターに突如として砲撃が襲い掛かる。

 

「フシュー……フシュー……」

 

「喰らえ!」

 

「はっはぁ!!吹っ飛びなぁ!!」

 

 聞き覚えのある声と共に放たれた砲火は大型ネズミモンスターに直撃してダメージを与える。が、それでも攻撃に耐え、唸り声と共にモンスターは尻尾による攻撃を無差別に放つ。

 

「ぢゅうぅ……!」

 

よく見ると、その尻尾の先には金属製のパーツが備えられている。更に体の部分にも装甲と如何にもビームを発射しそうな砲口があった。それを見て、そのモンスターが武装化モンスターであることを知る。

 そのネズミ型モンスターの声を聞き、すぐに正体を察したステマックスがその名を呼ぶ。

 

「こ、この声……まさか、ワレチュー殿で御座るか!」

 

 ワレチューという名前を聞いて、衝撃が走る。あれがワレチューだということを信じられなかったからだ。

 

「ええっ!?あのおっきいのがネズミさんですか!?」

 

「はぁぁ!?何であんなラスボスじみた姿になってんの!?元からそういう変身能力が!?」

 

「いや、そんなことは聞いたことがないな……おそらく、猛争化……それに武装化か?」

 

「け、けどあんな姿見たことないよ!?」

 

「猛争化で、あそこまで姿が変わるっていうのか……?」

 

 コンパと鈴の言葉に、ローゼンがそう答える。敵側がそういうのだから、間違いないだろう。しかしネプテューヌはおろか、光樹すらもその姿に驚いている。2人ともあのネズミとはかなり、実際、そしてゲームで戦っているにも関わらず現在の見たことがなかったからだ。

 となればローゼンの予想通り、あれは猛争化した姿なのだろう。そして武装化した状態でもある。これまで襲撃してきた機械化モンスターの特徴を兼ね備えてはいたが、それ以前の姿をよく知っていたがゆえに、猛争化しているというのも含めて驚きも大きいものであった。アイエフもこの豹変ぶりに冗談ではないと告げる。

 

「そうよ、ありえないわ!どういう手品を使えばあのネズミがこんな化け物になるのよ!猛争化だってこんなことにはならないわよ!?」

 

 しかし、そこでネプテューヌがありえそうもない可能性をアイエフに説いた。

 

「はっ!まさか、失恋のショックが原因で……」

 

「そんなわけないでしょ!」

 

 ワレチューは先程、コンパに拒絶されたところだ。いくら窃盗犯を追う時間があったとはいえ、その心の傷を癒すには不十分すぎる。そして心の傷を抱えているうちに、心の奥底に眠っていた闇が体を侵食し、ワレチューをこの禍々しいネズミの化け物に変えてしまったのではないか。それがネプテューヌの考えた豹変の理由であった。

 ネプテューヌの中ではそれで完結していた。ところがそれはアイエフに受け入れられるわけもなくツッコミを入れられる。その様子には光樹達もネズミの方に気を向けつつも苦笑いする始末だ。

 しかしながら、驚くべきことはそれ以外にもあった。それはビーシャがそのワレチューが変異したモンスターと戦っている、ということであった。ビーシャは元々、モンスター恐怖症があり、ゴールドサァドの力がありながらも国の防衛に生かすことが上手くできなかった。だからこそ、モンスターの討伐をネプテューヌ達が担当していたくらいなのだ。

だが、ビーシャは今戦っている。DRXもまたビーシャと肩を並べて戦っている。その様子から、もうモンスターに怯えている姿はないように見えた。ビーシャの変わり様を見て、アイエフもどこか安心した様子を見せる。

 

「けど、まさか先にビーシャとDRXが駆けつけていたなんてね。いつモンスター恐怖症を克服したのかしら」

 

「きっと、モンスターに襲われる子どもたちを見て、トラウマを振りきったんだよ!それか子どもたちの危機に怯えたんだけど、DRXからの叱咤激励を受けてかな?ともかくさすが、ヒーローだね!」

 

「そう、なのか……?」

 

 怪訝そうな声でネプテューヌの言葉に光樹が返す。光樹だけではない、変身を解除していた鈴達ガンダム装着者達はこの状況を目を細めて、不安そうに眺めていた。

 どうしたんだろ、光樹達。せっかくビーシャ達が戦っているっていうのに……。ここはみんなで一斉に加勢しよう、っていうところなのにさ。特に光樹なら絶対に救援に向かおうとしているはずなのにさ。

 4人の疑いに首を傾げるも、それを気にすることなく、ネプテューヌは2人の加勢に向かう。

 

「よーしっさっそく加勢しちゃうよー!」

 

「!待ちなさい、ネプテューヌ!!」

 

 鈴の制止を振り切ってネプテューヌがビーシャの前に出た。だが、加勢しようとするネプテューヌの思惑とは違い、その姿を見るとビーシャとDRXが睨み付け、荒々しく声を上げる。

 

「新手!?」

 

「ハッハァーン!容赦しねぇぜ!!」

 

 ビーシャ達の持つ武器から攻撃が放たれる。間一髪の所でネプテューヌは避けることに成功するが、いきなりの攻撃に困惑した様子を見せる。

 

「ちょっ!危なっ!?もう、わたしは敵じゃないってばー!」

 

 命の危機を感じたものの、きっと高ぶる闘争心が収まらないんだろうと考えるネプテューヌ。とりあえず落ち着かせようと思ったが、後方から光樹の声が響く。

 

「待て、ネプテューヌ!」

 

「迂闊に近づいてはいけないで御座る!」

 

「へ?」

 

 切羽詰まった様子でステマックスも同じように制止をする。なぜ、そこまで2人が止めるのか、ネプテューヌには理解できなかった。そこまでして止めることなのだろうかと思っていたのだ。だが、続くローゼンと鈴の言葉で、その考えは覆ることとなる。

 

「我々は誤解をしていたようだ……この現状を」

 

「そうね。どうやらワレチューだけじゃなくって、あの2人にも何か起きてるみたいよ」

 

 何かが起きてる?ビーシャとDRXに?え、でもビーシャ達の外見には、何も起こっていないよ?姿だって猛争化とか武装化の兆候は見られないわけだし……。

 ネプテューヌと同じように状況を理解していなかったコンパがその言葉の意味を問う。

 

「ど、どういう、ことです?」

 

 2人は理解が出来ないまま、誤解をしている意味を理解するためビーシャ達の様子をよく確かめる。すると、その警戒する理由を知ることとなる。

 

「なに?また新手なの?けど、わたしの前ではモンスターなんかみんな肉塊にかえてやる!」

 

「さぁ、どいつからでもかかってきな、モンスター共!!」

 

 そう言ってビーシャ達は攻撃を放つ。だが、攻撃を放つ先にいたのは、モンスターなどではなくネプテューヌ達であった。容赦なく放たれる攻撃に驚きつつもネプテューヌ達は回避する。バズーカと指から放たれる光弾を回避すると、またもハイテンションな状態で、避けたことに対し言葉を吐き捨てる。

 

「オラオラ!逃げるだけかぁ?惨めだなぁっ!!ハッハー!!」

 

「ちっ!逃げるな!モンスターはぶっ殺す!ぶっ殺す!ぶっ殺おおおおおす!」

 

 バズーカの弾と光弾による攻撃が市街地を蹂躙していく。もはや言葉が届く状況ではなかった。あまりにも酷い暴言の数々に、流石のネプテューヌも引いてしまう。

 

「ちょっ!?完全にイッっちゃってるよ!?何あのブランもビックリな豹変ぶり!?」

 

「確かに……これブランよりも酷くないか……?」

 

 光樹の言う通り、この反応は最悪切れた時のブランよりも酷いかもしれなかった。行動とその口から繰り出される言葉はもはやヒーローの欠片もない。するとその様子を観察していたステマックスが今の2人に起こっていることを予測する。

 

「あの娘とロボットの言動から察するに、もしかして拙者たちがモンスターに見えているようで御座るな」

 

「そのようね。けど、もっと考えるなら、最悪他の人達も……」

 

「それって、自分以外のみんながモンスターさんに見えるってことですか!?」

 

「おそらくそうだろうな」

 

 自分以外がモンスターに見える、これほどたちの悪い状態異常はなかった。ゲームで言うところの混乱状態の味方への攻撃バージョンである。何とかして、ビーシャ達を助けなければならない。しかし、そう簡単に上手くいくわけではなかった。ステマックス達の発言を聞いていたアイエフが頭を抱える。

 

「と、なると結構面倒くさいわね」

 

「そうね。ビーシャとDRXがネズミと戦い合ってくれるなら一番いいんだろうけど、介入すればあたし達は襲われる。流石に3人との混戦ともなれば、戦いづらいったらないわ。暴走しているビーシャとDRXはお互いの姿を認識しているみたいだけど、それはおそらく、この状態にした犯人の嗜好なんでしょうね」

 

 続く鈴の話も良くない状況であることを示していた。流石の女神でも、それだけの強敵を相手に上手く立ち回るのは厳しいところであった。しかし、このまま傍観していても街の方はもちろんのこと、最悪民間人に被害が出るのは時間の問題だ。街を守る者として、ここで静観するわけにはいかなかった。

 となれば、最善策として取るべき行動はただ一つ。この3人を引き離してからどうにかするしかない。ステマックスも引き離すべきだと進言する。

 

「ならば、引き離すしか方法はないで御座るな」

 

 その言葉を受け、早速光樹達が動こうとする。が、肝心要のビーシャ達の状態異常をどう解くのかが明らかになっていなかったことをコンパが指摘した。

 

「けど、引き離してどうするです?原因がわからないんじゃ、3人を止められないです」

 

 一体どうしてこうなってしまったのか、それが分からないままでは止めるための行動に移せないのが事実である。もしこのまま戦ったとして、この状態が続けばとてもではないが一緒にはいられない。最悪の場合、特殊な機関に預けられてしまう可能性もあった。

 しかし、そんなことを進んで納得するネプテューヌではない。いくら国のためといえ、ビーシャへそのような仕打ちをするわけにはいかなかった。それを回避するためにも、問題となった原因を把握しなければならない。ところがネプテューヌの頭には原因となりえるものがモンスター恐怖症くらいしかなかったのが現状だ。

 

「……んーあるとすれば、モンスター恐怖症くらいかなぁ。けど、だからといってあんなにぶっ飛ぶとは考えづらいし、それどころかDRXの方は何が原因でああなったのか分からないし」

 

「一体、何が……」

 

 考え込む一同。すると、その八方塞がりの状況を打開するかのように彼らに声が飛んでくる。

 

「それは、あの女たちのせいでちゅわ!」

 

 その声の主は、ステマックス達の情報を教えてくれた中古ゲームショップの店長、チューコであった。

 

「チューコさんです!?それに鈴奈さんまで……こんなところにいたら危ないですよ」

 

 この状況の中現れたチューコに対し注意を呼びかけるコンパ。しかし、今のこの状況の中で気になることをチューコは発言した。そのことを聞き逃さなかった鈴達が聞き返す。

 

「あなた達、あの3人が豹変した理由を知っているの?」

 

「詳しく教えてくれないかしら」

 

 話の内容から、おそらくこの状態を起こした犯人の話についてなのだろう。ともかく聞く価値はあった。もしかすると、それを聞けば何か分かるかもしれない。2人の要請にチューコと鈴奈は頷くと体験したその瞬間について話し始める。

 

「……あの女……そして、あの機械の人間は、ワレチューを追ってやってきたんでちゅわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は遡り、ワレチューが逃げ込んできた場面。いきなり現れた「彼女ら」の姿を見て、警戒を持ちつつもビーシャが声をかける。

 

「あなた達は……?」

 

 自然と出た何者かを確認する言葉。だがそれに構うことなく、その者達は話を持ってくる。

 

「オレ達が誰かなんてことより君のモンスター恐怖症を治すのを手伝ってあげるよ」

 

『ただ、安全は保障出来ないかもしれないがな』

 

「……え、それってどういう……」

 

 ビーシャが疑問符を浮かべる。それを見ていたチューコは何か危機感を抱いていた。あまりにも不安感のある回答、それと同時にその雰囲気から発せられる、不快感のある空気にチューコは警戒を解くことができなかった。チューコだけではない、横にいた鈴奈もジャージの袖を引っ張る手が小刻みに震えていた。しかも、それが知らず知らずのうちに出ていることを鈴奈は口にする。

 

「あ……あれ?なんで、私……」

 

「鈴奈、どうかしたんでちゅの?」

 

「いや、あの……あの人達を見てたら、自然と震えが、止まらなくって……」

 

 鈴奈が怯えているんでちゅの?そのことにわたしは彼女達への警戒を強める。何かがある。何があるかまでは分からないでちゅが、ともかく、彼女達に関わるとまずいことは間違いないでちゅ。

 そんなチューコと同じ危機感を抱いたのか、ビーシャの前にDRXが即座に立ち塞がる。ビーシャを庇うように構えを取るDRXがその者達に言い放った。

 

「なんだか分からねぇが、ともかくビーシャには近づけさせはしねぇ!!とっととあっちに行け!!」

 

『これはこれは、心外だな。私達は君達の役に立とうというのに……。まぁいいさ。じきに分かる』

 

 完全に厄介者と判断されたことを受け、ロボットの方が肩を落とす。しかし、声からはあまり落胆しているようには見えない。それに加え、分かるのはすぐだという発言に、何やら引っかかる部分を感じる。まるでこれから、何かを起こそうとしているようだ。

 チューコの嫌な予感は的中した。ロボットの言葉への同意を含めた言葉と共に、女がほくそ笑みつつ行動を起こした。

 

「……本当だよ。オレ達の厚意は無駄じゃない。それを今から教えてあげるよ。まずは、君からかな。可愛いネズミさん」

 

 赤黒い靄を纏った右手がチューコに向けられる。一体何が起こるのか、分かっていないチューコの素っ頓狂な声がポツリと響く。

 

「え?」

 

「て、店長っ!」

 

「あ、危ないっちゅー!!」

 

 鈴奈の悲鳴が飛ぶ。それと同時に女、そしていつの間にか手を突き出していたロボットの手から赤黒い靄が同時に飛ぶ。しかしそれを浴びることはなかった。赤黒い靄が届く前に黒いネズミことワレチューがチューコを突き飛ばしたのだ。突き飛ばされたチューコは地面に倒れる。何とかチューコはその靄から回避することに成功する。が、伸びた靄はそのままワレチューを覆い、包み込んでいく。

 なぜ、先程追いかけてきた者達から逃げる立場であったはずのワレチューがチューコの危機を救ったのか。狙っていたのはチューコだったのだからそのまま逃げても良かったはずなのだ。しかしワレチューは助けた。それは同種族であるのと同時に、背負い込んだ面倒ごとを自分で何とかしようとしたからであった。

 靄に飲み込まれたワレチューはその影響故か、苦しむ声を上げる。

 

「ぢゅううううううううう!?」

 

 苦しみ悶えるワレチュー。苦しみながらその体は靄の拡散と共に大きくなっていく。何が起こっているのか理解できないまま、その様子をただただ見るチューコ達。やがて、靄が晴れると、そこに現れたのは異形の姿へと変貌したネズミの姿であった。

尻尾がいくつも生えその顔はもはや自分と同じネズミ系モンスターのものとは違った、敵意を感じさせる顔つきとなっていた。しかし変化は肉体そのものだけではなく、体に新たに追加された金属の装甲の有無にまで渡る。更にその装甲には砲門やコンテナのようなものもあり、更に尻尾の先には金属装甲が装着され、如何にも強化されている状態であった。

 民間人には未だ武装化についての情報を伏せられている。しかし、それを見たチューコ達にもその異常さは感じていた。そしてそれを起こしたのが、他でもない女とロボットの2人組であることも記憶にしっかりと焼き付けていた。一方姿の変貌したワレチューは不気味な声を上げる。

 

「ぢゅー……」

 

「キャー!?」

 

「ひぃっ!?」

 

 その不気味な咆哮を聞いてチューコ達は悲鳴の声を出す。変化前とあまりにかけ離れた咆哮を聞いて、すくんでしまったのだ。そして当然、影響はビーシャにも及ぶ。モンスター恐怖症のビーシャはいきなり現れた恐ろしい姿のモンスターを前に慌てふためく。

 

「も、モンスター!?どどどどどどうしよう!?」

 

「どうしたもこうしたもねぇ……。てめぇら、何が目的だっ!!」

 

 怒りを露わにしたDRXは女達と戦闘態勢に入る。が、それを見ても慌てる素振りすらも見せず、余裕の雰囲気を保ったままDRXに語り掛ける。

 

『目的、か。簡単だよ。俺達はただ君達の手助けをしているだけさ』

 

「手助けだと?モンスターを出しておいて、何が手助けだ!その悪行、俺が許さねぇ!!たぁぁぁぁ!!」

 

 そう言い放つと、DRXは機体のスラスターを吹かせてロボットに突撃をかける。手を拳の形にし、巨腕を振るった。人のサイズに対しての攻撃にしては少々オーバーキルになりそうな一撃だ。ところが、その一撃は敵に届くことはなかった。突き出された拳がピタッと制止する。空中で静止したのかと思ったが、よく見るとそうではなかった。その拳の先ではロボットの腕がDRXの巨腕を腕1本で受け止めていたのだ。

 あり得なかった。DRXの腕と比べればその腕は明らかに細く弱いものだと思っていた。にも関わらずロボットの腕は苦も無く大きな拳を受け止めている。攻撃を止められたDRXが驚愕を口にする。

 

「んな……!?」

 

『……やれやれ。礼儀がなっていないようだな。しかもこの程度とは……フン!!』

 

 DRXの行動に苛立ちを覚えたロボットは、荒々しさを出した態度で受け止めたDRXの腕を思い切り弾き飛ばす。巨体にも関わらずDRXはボールのように軽く弾かれてしまう。勢いのままに後ろに後退したDRXもその大出力に今一度驚きを露わにする。

 

「な、何て出力だ……!こいつ、光樹より強い……」

 

『フフフ……当然だ。なぜなら俺こそが……』

 

 右手に再び靄のようなものを停滞させるロボット。そして、その口から衝撃の事実が語られる。

 

『和藤光樹を記憶喪失に追いやったのだからなぁ!機械よ、絶望に飲まれよ!!』

 

 話を聞いていた者のうち、チューコと鈴奈は一瞬その言葉の意味に戸惑う。ネプテューヌ達と一緒にいる光樹という少年が記憶喪失であるという事実はまだ知っていなかったからだ。唐突に出会った少年が記憶喪失だという事実にも驚くが、同時にその原因を作ったのがロボット自身だという話にも衝撃を受けた。

 しかし、それを良く考える暇は与えられなかった。衝撃の事実を発した次の時には赤黒い靄がDRXを包む。靄は機械の体の隙間から内部に侵入していく。次々と入っていく靄の影響か、DRXも苦悶の声を上げる。

 

「ぐぅぁぁあああああ!?」

 

「R1っ!!?」

 

 ビーシャの悲鳴が響く。が、靄の影響で苦しむDRXは彼女に向かってチューコ達と共に退くことを指示する。

 

「ビー……シャ、にげ、ろ……これは……俺達の力では……ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「R1っ!!?みんな!!」

 

 しかし、その呼びかけも甲斐なく、DRXはゆっくりと立ち上がると、その豹変した様子を露わにする。

 

「……さぁ、モンスター共は全員俺が滅殺してやるぜぇ!!」

 

「な、なんてこと…………」

 

 凶変した様子を見て、鈴奈も恐怖を感じていた。先程のDRXからは予想できない言葉遣いだけではない。新たに発生した体を包むオーラも何やら不安感を煽る物だったのだ。暴走を起こしながらDRXは変貌したワレチューへと向かっていく。一方その様子をただ見ているだけであったビーシャはどうすればいいのか混乱に陥ってしまっていた。DRXの言葉通り逃げるべきか、それとも立ち向かうべきか。

 

「あ、あぁあ、R1……!そ、そうだ、逃げなきゃっ!け、け、けど、ここでわたしが逃げたら……」

 

 しかしこうして悩んでいる間にも、戦闘は勃発してしまう。化け物と化したワレチューとDRXが相対するとお互いの存在を認識し、それぞれが襲い掛かる。

 

「ぐおおおおおおおお」

 

「地獄に堕ちやがれええぇぇ」

 

 両者が激突すると辺りに衝撃波が起こる。衝撃波は風となってチューコ達に吹き、体を地面から飛ばそうとする。チューコは鈴奈の助けもあり何とか吹き飛ぶことはなかった。ビーシャの方も恐怖ですくんでしまった影響は飛ぶことはなかったものの、思い切り地面に背中を打つ結果となった。

 激しく打ち合うその光景にビーシャは悲鳴を上げる。それを見て女は機嫌を良くしたのかビーシャに語り掛けていく。

 

「ひいいい!」

 

「フフフ、怖いかい?」

 

「う、うん……」

 

 女からの問いにそう答えるビーシャ。その様子はもう怖いものに怯える子供そのものだった。弱音を吐くビーシャに今度はロボットの方がこの状況を打開するためにはどうすればいいかをスピーカーから出力して告げる。

 

『だが、ここで逃げてしまっては、今度は街中の人が恐怖に慄くだろうなぁ?それは君の望むところではないのではないかい?』

 

 その言葉は、まさに悪魔の誘いとも言える話し方で伝えられた。明らかに、何かを言わせようとしていた。その言葉に乗ってはならないとチューコは感じていた。しかし、チューコの願いとは裏腹に、ビーシャはその言葉に従うかのように今の自分の弱さに涙する。

 

「わ、わかってる……わかってるよ……。けど、足が……体が震えて……」

 

 どうしても力が入らない体は小刻みに震えたままだ。余程目の前の状況に恐怖しているのだろうということが分かった。チューコも早くビーシャを立ち直らせなければと思っていたが、それをさせまいと女がビーシャを諭すように冷淡な声で言葉をかける。

 

「……そうか。なら、もうひと押し、オレが手伝ってあげるよ」

 

 少しずつ、靄を体に纏わせた状態でビーシャに迫っていく。徐々に圧を加えて近づいてくるその危険な雰囲気を持つ人物に、ビーシャも一瞬のけ反る。

 

「ひぃ!」

 

 その様子をチューコ達はただ見ていることしか出来なかった。明らかにおかしな力を持った人物達に近づくのはかえって危険だと判断したのだ。この状況を打開できるとしたら、以前の事件を解決してくれたネプテューヌ、光樹達しかいないと感じたから。

 ともかく、今はこの状況を目に焼き付ける。助けることが出来ないのがもどかしいが、ここで無理に近づいて行って同じようになれば悪循環になってしまう。そして赤黒い靄が消え、女がビーシャから離れると、ビーシャもまた狂った様子で叫んだ。

 

「モンスターは……わたしがぶっ殺す!!」

 

「ビーシャ……」

 

「そ、そんな……」

 

 変わってしまったビーシャの様子に嘆きを呟く。その状況を見て女たちはその口角を上げ、笑みを作る。

 

「さぁ、ここからが絶望の宴だよ」

 

『この絶望、止められるというのなら、止めてみるのだな。まぁ、これくらいは出来るだろうがな』

 

 そんな声と共に女らは姿を消す。残ったのは暴走する3人とそれに怯えるチューコと鈴奈。攻防を行いつつ、3人は街の方向へと向かう。

 もうこれ以上、犠牲を出してはいけない。止めてくれるものに今の事を伝えるためにもチューコ達は何とか立ち上がり、ビーシャ達が向かうプラネテューヌの市外へと同じく向かっていったのだった……。

 

 

TO BE CONTINUED

 




今回もお読みいただきありがとうございます。さて、次回より暴走したワレチューとビーシャ、それにDRXとの対決が描かれていきます!

シエラ「少し前の話で不穏な場面だったのが、まさかこんなことになるとわね……」

レイ「うん!黒幕感満載なやつらだね!というかガンダムの方は、光樹君を記憶喪失に追い込んだって言ってるし!」

シエラ「そういえばそうですね。ってことは、この機体、プロローグに出てた敵機体?」

うん、そうだね。ただ、あの後武装設定に修正入ってるから、武装が若干違っています。

レイ「へぇ、そうなんだ。けど、その対決も気になるけど、最初のステマックスの術の名前はネタ?」

うん、某竜のクエストの便利魔法からだね。ちなみに名前の候補としては穴抜けの術、とか輝類保(てれぽ)の術とかあったよ。

シエラ「とりあえず、ここで元ネタに触れるのはやめておくわ。それで、次回からしばらく、タイトルが専用の物になるのよね?」

そうそう。女神&ガンダムサイドVSゴールドサァド&ソフツの対立を作りたいから、シリーズ的なタイトルとしてね。あ、ちなみにサブタイトルなどもちゃんと考えてるので、お楽しみに!さて、では次回の投稿日についてです。

シエラ「えぇ。次回は水曜日になるみたいよ」

レイ「それじゃあみんなー!また次回っ!!」

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