新次元ゲイムネプテューヌVⅡ SSRと言う名のG(凍結)   作:藤和木 士

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はい、どうも皆様、お元気でしょうか。無事専門学校の前期成績発表で補講に引っかからず、安心していたけど明日は学校に行かないといけないということを友人から聞き、危なかったと思った、藤和木弘です。

ジャンヌ「もうっ、完全に忘れていましたよね?ダメですよ、忘れていたら。もうすぐ社会人だというのに……。どうも、皆様。アシスタントはわたくしとレイさんだけでいいと思っている、ジャンヌ・ドラニエスですっ♡」

レイ「それ以外にも心のセミナーにも行かないといけないんだよね。どうも、みんな!そろそろ新しいアシスタントが来てもいいかなって思う、レイ・オーバだよっ!」

ジャンヌ「そんな……レイさんはわたくしのこと嫌いなんですか!?それとも藤和木が他の女と結ばれる結末が良いっていうんですか!?」

レイ「いやー、ジャンヌちゃんは友達として好きだよ?それに藤和木とジャンヌちゃんが結ばれてほしいとは思うよ?でも藤和木の言う通り、ちょっとここら辺がマンネリ化してる感じはするんだよね」

うん、そうだよね。多分読者の8割以上が思い始めてる気がするんだ。2人だけだと話の方向が少し狭まるっていうかさ。だから近くにその準備を……

ジャンヌ「けれど、わたくし以外の方に浮気した時の代償、高くつきますよ?」

というかむしろわざと浮気してジャンヌさんが嫉妬してる姿を見たいなぁと思うことは……あるんだよね

レイ「藤和木、そんな性癖は捨てた方がいいよ?」

レイさんに言われたよ……(´・ω・`)さて、今回は第126話をお届けします。

レイ「いよいよ、光樹君の過去語りだねっ!!」

ジャンヌ「わたくしに嫉妬させるなんて……藤和木も意地悪っ♡そうですね。タイトルからもかなりシリアスな内容になりそうです」

さぁ、鈴が語る形での光樹君の過去、総司令「和藤光樹」への道と記憶の片隅にいる少女の関係とは!?それでは本編へ!!


第126話 漆黒の不死鳥が目覚めた時

「それは、あたしたちが中学を卒業する年…「セントラルワールド」の2013年、3月のことだったわ」

 

「セントラル……ワールド?」

 

「何それ?世界の名前?」

 

 鈴の言葉に、光樹とネプテューヌが真っ先に質問する。光樹はGKSWAXPのことは少しずつ思い出してきているものの、すべてを思い出したわけではない。ネプテューヌの方は別の世界については同じような世界であるゲイムギョウ界系列しか知らないという話だったため、知らなくて当然だ。

 その一方でビーシャ達は頷いて理解を示している。完全には分かってはいないようだがそれでも世界の名前であることは分かっていた。質問を行った2人に、鈴は答える。

 

「まぁ、そうね。光樹やあたしが居る、本来の世界の名前よ。まぁ、あくまで簡潔に言えるように、そう名付けてるだけで、正式名称は古文書からは「リング・オブ・アルテリウス」っていうらしいわ」

 

 世界の名前についてはこれくらいでいいだろう。あたしはそれだけ伝えて、大元の語りを続ける。

 

「その年度……2012年度は、あたし達にとっても大きな年だったわ。SSRのADXシリーズ……偽りの神、「アルセウス・ダミー」のNPを使っていた時期、そして、中学卒業で、あたし達初代SSRメンバーと光樹が別れる時期でもあるわ」

 

「え!鈴達は光樹の組織から抜けてた時期があるの!?」

 

 その話に興味を示すネプテューヌ。ネプテューヌの言う通り、2013年の春、鈴達初代SSRマスターは中学の卒業を機に脱退していた。しかし、そうなったのも、今回話すことにつながりがある。

 

「えぇ。それもまぁ、今回話すことと関係があるから。……それで、ADXシリーズでの最終決戦から1週間後、あたし達に、上から指令が降りたわ。それは、とある武装集団の駆逐よ」

 

 武装集団の駆逐。私設武装組織として設立されたかつてのGKSWAXPことGKPが武装集団を駆逐する、というのはある意味抗争だ。だが、当時としてはよくあることであり、鈴達もあまり気にしてはいなかった。もちろん光樹もいつも通りのことだと思って、すぐに作戦に向かっていた。

 

「いつもと何も変わらない、普段の任務。光樹もあたし達も、目の前の敵を片っ端から倒していった。それで、光樹が敵の親玉の所に攻め入ったの」

 

「おお、結構スムーズなんだね」

 

 実際、その行動はネプテューヌの言う通り、スムーズに進んだ。いくらADXシリーズが封印されていた時期とはいっても、その相手はEFXシリーズの最終完成機、ブラッドゼロなどで十分なほどであった。

 当然、敵の親玉との戦闘でもその差は圧倒的だった。

 

「ADXは使えなかったけど、それでも十分制圧するのは十分だったから。幾度かの剣戟と銃撃を交えて、光樹も無事に敵のリーダーを倒したわ」

 

「その話の、どこがわたしに聞かせたいの?光樹がいつも通りに倒したってこじゃないの?」

 

「確かに……これじゃあ、その通りだぜ?」

 

 ビーシャとR1がその説明に文句をつける。あまり大きく動いていないから、じれったいと思っているのだろう。

 しかし、話はちょうどここからだ。鈴も全員の注目を集めるために、息を大きく吸ってからその話に触れる。

 

「ここまではね。けど、ボスを倒したところで、部屋に音が響いたの。その直前に光樹の方の確認のためにあたしもその部屋に入ってからだから覚えてるけど、明らかにあたし達のものじゃない音が、部屋の奥にあった机の裏から聞こえてきたの」

 

 普通なら、伏兵が隠れていたという場面を想定する説明だ。事実、鈴達も敵の伏兵を考え、警戒して接近していった。そして、十分近づいたところで、光樹と2人で回ったところで、彼らの目の前に、予想外の光景が目に入ったのだ。

 

「それで、気になったあたしと光樹は、両サイドから机の裏に潜む敵と相対した。けど、そこにいたのは、1人の少女だったの」

 

「少女……」

 

 光樹が、何か考え込む。心当たりがあるかのような表情を見せている。どうやら、光樹も少しずつ思い出し始めているようだ。当然だ。これは光樹自身の物語なのだから。思い出してもらえなければ、話す理由も見当たらない。

 光樹の反応で手ごたえを感じた鈴は、話を続ける。

 

「彼女は、光樹が倒した……いえ、正確に、正しい表現をするなら、殺したリーダーの娘だったの」

 

「こ、殺……!?」

 

「それもそうだが……殺した奴の娘が隠れてたのか!?」

 

「……」

 

 いきなり出た衝撃の単語に、ビーシャが驚く。殺人などの単語、ビーシャどころか、女神すらも長い間生きているとはいえ、特にネプテューヌには衝撃だろう。事実、ネプテューヌも「こ、光樹が人殺し!?」と驚いている。

 その一方で少女の方に注目したR1は話が分かっていて助かった。光樹も黙ってこそいるが、娘の部分で考え込んでいたところから、同じように脳内で引っかかっていることだろう。

 しかし、光樹が殺したのは事実だ。だが、それは任務。宗教上の罪であっても、国への被害を抑えていることを挙げれば、人殺しはたちまち英雄となる。

 が、その場面で、当時の光樹は違った。続いて鈴は当時の行動をなぞる。

 

「任務の内容は関係者の全滅。その少女も親の仇打ちとして光樹を狙ってきた。けど、光樹は彼女を殺さずに、捕虜として捕らえたの」

 

「捕虜に?関係者を全員殺すって任務の内容なのに?」

 

 ネプテューヌも光樹の行動に疑問をぶつけてくる。流石に女神のメンタルによって不吉な言葉への耐性はすぐに付いたようだ。躊躇いなくその単語を口にしている。ビーシャ達も気になって顔を寄せてくる。どうしてそのような行動に出ようとしたのか、気になるからだ。

 そう来るというのは鈴も承知済みだ。鈴は、当時の状況を自身の感想を含めて語る。

 

「最初は、あたし達も任務に反すると止めたわ。けど、光樹は彼女を当時のGKSWAXP……GKPに連れ帰ったの。彼女が拒否しても、「私も殺せ」と言っても、ね」

 

「親と一緒に死にたいってことか……?けど、どうしてその時の光樹は、お前らが反対しても連れて帰ったんだ?」

 

「簡単よ。あの時の光樹は、「迷っていた」の」

 

「迷っていた……?」

 

 R1から飛んだ質問への鈴の回答に、ネプテューヌは首を傾げる。それだけでは何に「迷っている」のかは分からない。鈴は迷いの原因を口にする。

 

「そう。ADXシリーズの決戦時、絵里奈が敵の構成員の少年に庇ってもらっていたの。元々、その少年は家族を当時のGKPの総司令「鳥門 轟火(とりもん ごうか)」、またの名を「ザ・フェニックス」に殺されていた。GKPに憎しみを持っていた彼が、絵里奈がビームに撃ち抜かれる代わりに……」

 

「……少し、思い出してきた。確かにそいつは絵里奈を守って……」

 

 光樹からも、ようやくその時の記憶が浮かび上がってきたようだ。頭を抱えて、必死に思い出そうとしている。光樹に注目が集まる中、話は続く。

 

「命尽きる前に、その彼が光樹に何か言ったらしいわ。その言葉を受けて、光樹は今のGKPのあり方……鳥門のやり方に疑問を覚えた。そして匿いながらも、光樹は戦争の中で生活してきた彼女を日常に戻そうとしたの。遊園地やショッピングに連れて行って、今時の子供らしくなれるように……」

 

「光樹……!優しいところはこの時からあったんだね」

 

 ネプテューヌは安堵の声を漏らす。普通なら、この行為は勝手な行動。軍法会議にかけられることが前提となる行動だ。ところが、光樹はそれも構わず命令違反を犯し続けた。彼女の笑顔を見るために。

 

「光樹の行動に、あんまり喜ぶ反応は見せていなかったけれどね。でも少しずつ、彼女の心を変えていたの。それに付き合ううちに、あたし達も心を動かされていったわ」

 

 鈴の中に当時の風景が残っている。あの時の彼女は見るもの全てに新鮮味を感じていた。荒野となっていた彼女の心が、草木育つ穏やかな平原へと変わっていったようだった。中でも、ショッピングで初めて女の子らしい服を着た時の羞恥は自然と頬が緩む。

だが、幸せは長くは続かず、決断の時が来る。

 

「けど、その時は来たわ。匿っていた少女の存在が見つかったの。そして「ザ・フェニックス」が直々に「処分」を下すことになったの。光樹には、謹慎を伝えて、その前に少女に光樹自らが伝えるっていう、趣味の悪い命令を下したわ」

 

「そんな……そんなのって!」

 

「……最低だな。当時のその総司令ってのは……」

 

 ビーシャ達の口からも、怒りのこもった言葉を吐く。彼らの怒りで、鈴も当時の気持ちが思い出される。鈴達の意見を全く聞くことなく、「惨殺し、見世物にする」という言葉と共に放たれた命令は、まさに外道の言う言葉。しかし、それでも当時の鈴達に、総司令の指揮するGKP全戦力と対峙する勇気はなかった。

 重い空気となる中、その先を言う。

 

「それに逆らうことが出来ず、光樹とあたしは、彼女にそれを伝えることになったの。そして、彼女に言った。「ザ・フェニックス」への怒りと、少女への悲しみを抑えてね。けど、そうしたら……」

 

『そうしたら……?』

 

 ネプテューヌ、ビーシャ、R1の声が重なる。一番重要な話だ。注目が一番集まるところだ。実際、ここからが光樹の……2代目総司令「漆黒の不死鳥(ブラック・フェニックス)」誕生の盛り上がりの始まりなのだから。

 それを言おうとしたところで、沈黙を黙っていた彼の口からその続きは紡がれる。

 

 

 

 

「「嫌だ……あたし、死にたくない……!」……そう言ったんだ」

 

「こ、光樹!?」

 

「まさか、思い出したのか!?」

 

 ネプテューヌ達の驚きが光樹に向けられる。唐突な口の開きが余計に彼らの驚きを大きくしている。話している人物とは違う人がいきなり話のことを喋りだしたのだ。無理もない。

 ほんっと、いきなり話に割り混んでいくんだから……。けど、直接聞いた本人からそれを言ってもらえるなんて。それ以外にも言ってたけど、その様子からしてそれ以降はまだ思い出せていないのね。でも話をする度に反応してるから、これはいけるかもね。

 光樹が思い出し始めている予兆を見て、笑みを浮かべる鈴。更に光樹が思い出すことを期待して、光樹の言葉に付け足していく。

 

「そう。彼女は生を……生きることを望んだの。「まだ死ねない。こんな楽しいことのある世界から、消えたくない!」、「光樹へ感謝しきれていない」。そう言ったの」

 

「そんな……」

 

「戦争の中で生きていた少女が、光樹の行動で変わったっていうのか……」

 

「ううっ……!!涙なしでは聴けない話だよ!」

 

 少女の言った言葉に涙を流す2人と感慨深く呟く1体。それだけ、絶望的状況で、儚く絞り出した言葉だったのだ。生への渇望を望む声に、当時の鈴達も心を大きく動かされた。そして、物事は大きく動く。

 

「彼女の願いに、光樹は応えたわ。「絶対にお前を死なせない」。そう言って、光樹とあたし達は、「ザ・フェニックス」指揮するGKP隊員総勢約4万5千人に対して4人だけで反逆したの」

 

 とんでもない数の差であった。明らかに無謀な反逆であることは誰の目から見ても分かる。ネプテューヌも無茶であることを指摘した。

 

「4万人対4人!?ガンダムの力があっても勝てるの!?」

 

 普通の戦力差では絶望的だ。相当な力がなければそれを突破することは出来ないのは明らかである。しかし、それでも鈴達は戦った。

 

「それでも戦えるのを可能にしたのがSSRシリーズよ。少女を安全な場所に隔離してから、あたし達は戦ったの。けど、それにも限界はあった。最初こそ優勢だったあたし達はたちまち追い詰められていったの」

 

「そりゃ、当然だよ……勝てるわけない……!」

 

「それで?どうやってその状況を突破したんだ?」

 

 ビーシャもその絶望的状況に恐れを感じていた。ネプテューヌもその額に冷や汗を浮かべている。

 しかし、R1の言葉通り、それを逆転させることが出来た。その方法を今度は明かす。

 

「簡単よ。あたし達は全回線で呼びかけたの。「変わろうとする少女を救うために戦う」ことと、「総司令への道を通す」ことをね」

 

「説得ってこと?……でも、そんなので突破できたの?」

 

 ビーシャが半信半疑になって聞く。が、それに答えたのはネプテューヌだった。

 

「難しいかもだけど……出来たんだよね?」

 

「えぇ。最初は聞いてもらえなかった言葉も、あたし達が向かってくる隊員の不殺を徹底して戦い続けることで、あたし達への攻撃の意思は弱まっていった。そうして最後まで残った四天王を、あたし達4人は突破して、「ザ・フェニックス」の元へたどり着いたのよ」

 

「なんてこった……本当に言葉で余計な邪魔を排除して、そこまで行ったのかよ……」

 

 当時の事の説明に、R1が驚きを隠せずに本音を吐く。信じてもらえなくても当然な状況だったが、それだけ当時の光樹への期待と信仰が集まっていたのも事実。それがなければ、突破は出来なかったはずだ。現在も光樹への忠誠は大きく、それもあって、今回の光樹行方不明には全隊員が全力で捜索、および柱を失ったGKSWAXPの運営に従事している。一番の頭を失っても、決して反乱なども起こらなかったのは、奇跡にも近い。

 話も半分を過ぎる。ここからはもちろん、「ザ・フェニックス」こと「鳥門 轟火」との決戦の話になる。

 

「とうとうあたし達は鳥門……当時の総司令「ザ・フェニックス」との対決になったわ。光樹とあたし、それに勇也と絵里奈で一斉に飛び掛かったの」

 

「おおっ!パーティ全員で突撃したんだ!」

 

「じゃあ、コテンパンにしたんだ!」

 

 状況から有利だったと感じ取ったネプテューヌ達の意見は、残念ながら外れていた。そう、SSRシリーズのガンダムではなくても、強力なNPは存在していた。それが、鳥門のあの機体……「ガンダム・フェニオン」だったのだ。

 

「いえ、4対がかりでも、性能ではあちらが数段上。1対4でも、総司令の名は伊達じゃなかった……コンビネーションも破られて、光樹以外は全員セットオフ……装着を解除されてしまったの」

 

「う、嘘ぉ!?どんだけ強いの!?」

 

「性能差が、戦力の決定的差だって言うのかよ……」

 

 ネプテューヌ達も、ザ・フェニックスの実力には驚いている。予想通りの反応ね。あたしだって、必死に戦っているのに攻撃が当たらなかったし、それに当たっても対して効かないって状況だし、どうやって勝てばいいのか、諦めるしかないという気持ちすら起きたぐらいだもの。

 だけど、この馬鹿……光樹はそれでも諦めなかった。それにガンダムも答えたんだから。あたしは光樹のした行動を言葉にして説明する。

 

「けど、残った光樹は奮戦したわ。変身が強制的に解除させられて、危険なあたし達を守るように戦った。旧式のブラッドゼロガンダムでね。どれだけ攻撃を受けても、どんなに攻撃が弾かれても、この馬鹿は必死に食らいついていった。そんな、諦めない心に、復活したアルセウスが厳重封印していた、ADXシリーズが、覚醒したの」

 

「厳重封印……そういや、そのADXシリーズってのは上位機体だって話だったよな?どうして封印されてたんだ?」

 

 R1から質問が飛ぶ。先ほど言われていなかったためスルーしていたのだが、説明する必要があるようだ。鈴はそれの話を手短に行う。

 

「ADXはSSRシリーズのデッドコピーのような機体なのよ。しかも、SSRの使用者を負荷で蝕む機能も付いていたから……だから、封印されていたの」

 

「ふぅん。デメリットが大きすぎたって感じか」

 

「そういうことよ」

 

 R1も鈴の説明に納得する。話を聞いていたネプテューヌ達も納得を示した。

 鈴もあれの負荷は覚えている。使うたびに段々と生気を奪われていくような感覚を、装着している間は感じていた。あれを積極的に使うように言ってきた、「パルキア・ダミー」こと「パルテーラ」は今でももう二度と会いたくない存在だ。けれども、この戦いでの彼らの救援とも言える「置き土産」は大変ありがたかったが。

 説明が終わったところで、話はまた光樹の活躍に戻る。

 

「それで、話を戻すけど……光樹の力を求める声に答えて、光樹はADXシリーズの最終機体で、この時期から少し前に終結した、中学3年の時の「XN事件」で駆った「ブラッドィアジークガンダム」を再び纏ったの。それも、デメリットを一切なくした、新たな仕様でね」

 

「えぇ!?デメリットなくなって!?」

 

「おぉ~!それはもう勝利フラグじゃないの!?」

 

 光樹が纏った後の流れは、まさしくネプテューヌの言葉通りだ。なんと、光樹はその力をフルに発揮し、今までの劣勢から優勢に逆転したのだ。

 

「その通り。まさに光樹は水を得た魚の如く、形勢を逆転していったわ。高速化した戦闘の中で、相手の攻撃を受けつつも、それ以上のダメージをガンダム・フェニオンに与えていった。その逆転する直前に言い放った言葉が、ネプテューヌとR1が聞いた、「ただの「自己満足」」って言ってた「黒き鋼の心宣言」よ」

 

「え!?あのやけにかっこよく言ってたあの言葉、この時にも言ってたの!?」

 

「あの時は調子に乗ってるって思ってたが……元々その外道に言った言葉だったんだな……。納得の言葉だぜ」

 

 2人も今日の出来事だったため、印象に残っていたようだ。特にR1は言われた側の立場だ。その言葉を聞いて負けていたのだから、余計に記憶……いや、この場合は記憶回路と言うべきか。ともかく、その記憶回路に残っていて当然だろう。

 そして、戦いはクライマックスを迎える。

 

「そして、戦いの果てに光樹はガンダム・フェニオン……ザ・フェニックスを撃墜。鳥門は拘束されて、この戦いは終結したの」

 

「勝てたんだね。それで、彼女はどうなったの?」

 

 一安心した様子を見せたのち、ビーシャがその後を聞いてくる。おそらく、ここまでで最も気になるところだろう。話さないと意味がないので、鈴も早速続きを話す。

 

「無事、新生GKPこと、GKSWAXPによって保護されたわ。でもまぁ、こう言った方が良いかしら。彼女は新しい名前をもらったの。その名は華南……和藤華南」

 

「え……!?」

 

「和藤って……」

 

「まさか、光樹の家族になったのか!?」

 

「そう、華南は光樹の義妹になったの。光樹が提案して、ね」

 

「……あぁ、そうだったような気がする」

 

 鈴からの説明に、光樹の方に視線が集中する。視線だけではない。光樹の行動に、質問攻めが起こる。

 

「えぇ~、光樹ってば、カッコいいこというじゃん!義妹なんて、一人っ子だから妹が欲しかったとか!?」

 

「それはまだどうだったか思い出せてないな……」

 

「けど、言われた華南はどんな気持ちだったんだろう……やっぱり、嬉しかったのかな?」

 

「そりゃもう嬉しいでしょ!泣いて頼み込んだんだよ?しかも光樹に頼み込んでたくらいだし……。まさしく、ヒーローって感じだよね!!」

 

「お、おいおい……あんまり騒ぐなって……」

 

 ネプテューヌとビーシャの盛り上がりを光樹が止めようとする。何度かこちらに救援を求めるかのように目を向けてきていたが、その様子の方が面白いと思い、気づかないふりをしている。

 話題はすっかり華南と光樹の関係に触れようとしていたが、ここでR1が思い付いたように鈴に聞いてくる。

 

「……なぁ、さっきの話とビーシャとの関係って……、まさか……「誰でも誰かのヒーロー」ってことを言いたいのか?」

 

「あら、よく分かったわね」

 

 意外そうに鈴はR1に返す。そう、鈴がこの話をした理由は、まさにその通りだった。ビーシャがモンスターと戦うのがダメだったように、光樹も迷いでどうすればいいのか分からなかった。けれども、きっかけ一つで誰かのためになれる。それにどちらも当てはまっていたがゆえに、鈴はこのタイミングで光樹に話すと同時に、ビーシャを元気づけようとしたのだ。

 その話を聞いていたビーシャが思わず聞き返す。

 

「それって本当なの?」

 

「えぇ。……どれだけ困難が……苦手なものがあっても、きっかけ次第できっと乗り越えられる。貴女の場合、それがまだなだけ。だから、今あることを精一杯やりなさい。それが、今の貴女に出来る、ヒーローであり続けるために必要なことなのよ」

 

 ビーシャの肩に手を乗せて、しっかりとした口調で話をよく聞かせる。心なしか、それを聞いて、ビーシャの顔にも最初の頃とは違って、笑顔が戻ってきていた。やはり心温まるエピソードが誰かの心の励みになるという考えに則って話したのは正解のようだ。……もっとも、この話をしたことを記憶の戻った光樹や華南はあまり心よく思わないだろう。普段も彼らはこの話をしようとすると素早く口を塞いで来ようとするのだから。彼らもその当時の言葉が恥ずかしすぎたという意識があるためだ。

 今のうちに事実を知った彼らの羞恥の表情を想像しようとする鈴。一方、それらの話を聞き切ったビーシャが顔を上げてやる気に満ちた表情で鈴達に宣言する。

 

「うん、わたしもわたしを必要としてくれている人のヒーローでいる!だから、これから頼らせてもらうね。ネプテューヌ」

 

 ビーシャからの頼みに、ネプテューヌが引き受けると同時に提案をする。

 

「もちろん!あ、そうだ。せっかくだから、ビーシャもわたしのこと愛称で呼びなよ。知らない仲じゃないんだからさ」

 

「いいの!じゃあ、これからはわたしも、ねぷねぷ、って呼ばせてもらうね!」

 

 ネプテューヌからの提案に快く了承するビーシャ。もうわだかまりは一切ないようだ。もう一方のR1の方も、鈴と光樹の方に少し頭を下げつつこれからの共同活動の始まりを確認し合う。

 

「悪いな、お前たちも一緒で……」

 

「俺は気にしないさ。むしろ、俺と同等の力を見せる存在が味方になって心強いくらいさ」

 

「あたしも同じくね。けど、あんまり単独行動はやめてよね?」

 

「ははっ、分かったよ」

 

 鈴からの指摘に少し声を高めにして答えるR1。

 2人の不安も完全に取り除いたところで、5人はイストワール達が待つ教会の方に足を向け、公園を後にした。

 

 

TO BE CONTINUED

 




今回もお読みいただき、ありがとうございます。少し足りない内容かもしれませんが、もしご好評なら、この話だけを特別枠で書くかもしれません。

レイ「わざわざ光樹君の思い出しとか鈴ちゃんの回想で書かなかったってことは、何か理由でもあるの?」

ぶっちゃけ言うと、この話、回想だけで8……いや10話くらい行きそうなんだよね。回想に8話も使えないからさ。

ジャンヌ「本編を優先する都合上、書けないのは残念ですね」

大元の話がオリジナルだから、多分そっちに集中すれば学生期間なら1か月で書けそうなんだけどね。社会人期間になると書くの難しいかも。

レイ「だけど、光樹君かっこよかったんだろうなぁ……!」

ジャンヌ「たった一人の、ただ任務で確保した捕虜の少女の為に過酷な戦いを突破し、最終的に組織の頂点まで上り詰める……。今の光樹さんでは考えられませんね!」

多分そこらへんが記憶を失う前の光樹君と記憶喪失の光樹君の狭間だろうね。だから、ここから光樹君の意志の強さや判断の良さが変わってくる……かも?さて、それでは今回はここまで!

レイ「次回は黒の館!月曜日に投稿だよ。それもかなり多く紹介するよ!なんと、今回話にでた彼女もっ!?」

ジャンヌ「それでは皆様。また次回、お会いいたしましょうっ!」

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