新次元ゲイムネプテューヌVⅡ SSRと言う名のG(凍結)   作:藤和木 士

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どうも、皆様、お元気でしょうか。先程まで、歯医者に行ってきてました、藤和木弘です。

ジャンヌ「ちゃんと歯磨きしていないからこうなるんですよ?どうも、皆様。藤和木の歯医者の付き添いに行ってきました、ジャンヌ・ドラニエスです」

レイ「けど、その帰りに買ったZ/Xのパックで、ヒカル君が欲しいって言ってた子のカードが出るなんてね。加工は違うけども。どうも、みんな!レイ・オーバだよっ!」

ホントそれね。さて、今回は第124話の投稿になります。

レイ「今回は防衛戦終了後かな?」

ジャンヌ「2つの記憶と、ゴールドサァド達に関する謎が明かされると台本にはありますね。一体どのような話になるのでしょうか?」

それに関しては何話か使って確かめていきます。それでは早速本編へ!


第124話 防衛戦終結、記憶とゴールドサァドの謎

 

 

 パープルハートと光樹の渾身の一撃。それらは見事に決まり、ボスのモンスターである猛争・武装化モンスターを倒した。パープルハートは刀に入れていた力を抜いて息をつく。

 すると、見ていた防衛隊の生き残りが両手を上げて喜ぶ。

 

「やった!やったぞ!ネプテューヌ様が倒してくれたぞ!」

 

 その様子は見ていて気持ちのいいものだった。なじみ深い人以外からの声援に喜びの声は、女神としての役目を果たせた気がしたからだ。救援にきた直後はあれだけ消耗していながらも、その疲労は全く見えていなかった。

 そんな2人に、コンパが怪我の手当てについて聞く。

 

「みなさん、怪我はないですか?」

 

 すると彼らはすぐに姿勢を正して答える。

 

「はい、おかげさまでこのとおりです」

 

「ですが、向こうの方に、仲間たちが倒れています。手当ての方、お願いできますか?」

 

 自分達は大丈夫だが、離れたところに重傷の仲間がいるという知らせに、コンパはすぐに返答する。

 

「分かりました。すぐに手当てに行きますね」

 

「お願いします」

 

 言葉を交わしてコンパはすぐに手当てに向かう。と、入れ替わりに状況を見ていたアイエフと勇也がこちらに来て状況を語った。

 

「コンパは怪我人の手当てに言ったみたいね。早速だけど朗報よ」

 

「朗報っていうと……」

 

「あのボスクラスのモンスターの敗北が伝わったんだろう。街を襲っていたモンスターの群れがここから敗走していくのを確認した。防衛隊も徐々にこっちに集まってきてるみたいだ」

 

「本当ですか!?よかった。これでハネダシティは救われた」

 

 脅威の撤退に喜ぶ一同。パープルハートもその話を聞いて安堵する。これだけの大規模戦闘が無事こちらの勝利として終わったのも、自身だけでなく、みんなのおかげだ。特に光樹達ガンダム使いの力が大きいだろう。

戦闘の終了で緊張感の解けた輪の中で、パープルハートがふと自身を覚えていた防衛隊の2人に話を訊く。

 

「けど、驚いたわ。まさか、私を覚えてくれている人たちがいるなんて」

 

 すると、比較的冷静な様子で接する防衛隊の1人が当然のことのように話し出す。

 

「何をおっしゃりますか!例え世界がおかしくなったとしても、我らがパープルハート様を忘れたことはありません!」

 

 忠誠心溢れる言葉に、パープルハートも少し笑みをこぼす。それだけ自身に信仰を持ち続けていたことに感謝したのだ。

 すると、もう一方の、先程まではテンションの上がっていた方の防衛隊のメンバーがおずおずとこちらに手を差し出し言う。

 

「あ、あの!握手してもらってもいいですか?」

 

 少し手が揺れていたのを見る。どうやら緊張してしまっているようだ。しかし、求められたのなら、断るつもりはない。それに、彼らがあそこまで頑張っていたのだ。これくらいは当然のことだと思い、パープルハートは了承する。

 

「いいわよ」

 

 そうして出された手をこちらの左手でしっかりと握る。握手してもらった防衛隊の人は、目をうるうるとさせ、声を大にしてお礼を言った。

 

「か、感激です!」

 

「お、俺も俺も!」

 

 それを見ていたもう1人の方も同じく握手を求めてくる。しょうがないわね、と思いつつも、その光景をほほえましく思いつつ、握手に応じる。

 女神であれば、当然とも言える光景に絵里奈が息を大きく吐いて眺めていた。と同時に今までとは違うことに対する驚きを鈴達と話す。

 

「けれど、直接巻き込まれてた私達と、ネプちゃんと親しいアイエフちゃんとコンパちゃん、それに生まれが特殊なイストワール様以外に、女神様を覚えてるなんて、驚きだよねー」

 

「そうね。てっきり黒幕をどうにかしないと市民は思い出さないと思っていたんだけれど……何か共通点ある?っていうか……大丈夫、アイエフ?」

 

「あぁ、もう何で思い出す人が出るたびにこんな気分になるのよ……。本当は喜ぶべきことなのよ。けど、忘れてた自分にすごく自己嫌悪感がぁ……」

 

 絵里奈と鈴の意見には同感だ。こうして握手を求められるのも女神の記憶を覚えていたからこそ。他の人達が覚えているのに、なぜ彼らだけ?いったい何が関係してるっていうの……?

 けど、本当あいちゃんは考え過ぎね。結局は思い出せたんだから、いいじゃない。むしろ思い出してくれただけでも、わたしにとっては嬉しいことなんだから。

 そう思いつつも、パープルハートは話を本題の方に戻す。

 

「けど、どうしてあなたたちは、わたしのことを覚えてくれていたの?」

 

 すると、自信満々にしっかりとした口調で答える。

 

「それはもちろん、パープルハート様への愛に決まってます!」

 

「あ、愛……?」

 

 愛。その言葉に少し困惑する。予想以上の回答にどう反応していいか困ってしまう。困惑は鈴達にも伝播する。

 

「愛って……これまた大きく出たな。それだけパープルハートのことを思っていたってことか?」

 

「もちろんです!俺たち、パープルハート様の役に立とうと思って、この職についたんです!」

 

 勇也の問いにそう返す防衛隊の1人。そこから、彼らの過去語りが始まる。

 

「本当は教会に勤めたかったんだけど、俺たちバカだから試験に落ちたんです」

 

「けど、それでも女神様のお役に立てると信じてこの街で、この職についたんですが、まさかこんな形で報われるとは……」

 

「俺、生きててよかった!」

 

 話すうちに2人の目に再び涙が溢れる。その話に絵里奈と光樹も彼らの気持ちに同情する。

 

「あぁ、なんかいい感じだよねー……!憧れの人の近くで働いていたら、その人に気づいてもらえて感激するって話」

 

「確かに。憧れの存在であればあるほど、会えた時の感動がな。それでその人の元で修行するってのもよくあるような気がする」

 

 絵里奈達の覚えていた防衛隊の2人の夢が叶ったことに対する感慨深さ。しかしながら、流石にそこまで感激されるとどうすべきか困るパープルハートは呟く。

 

「そんな大袈裟な……」

 

 それでも彼らには届いていないようで、お互い感動を分かち合っていた。そんな様子を眺めつつ、アイエフが騒音の消えた街を一瞥して、教会への帰投を口にする。

 

「さて、どうやら他のモンスターも片付いたようだし、私たちは教会に帰りましょ」

 

 それにはパープルハートも賛成だった。ここでのことの報告は必要だが、それ以上にパープルハート自身が気になっていたことがあった。そう、序盤にどこかに行ってしまった、ビーシャとR1。ゴールデンプレストの行方だ。

 すると、その件に関してちょうどアイエフも怒りを見せて言及する。

 

「結果としてなんとかなったけど、ビーシャとR1だけは許せないわ。ゴールドサァドだかゴールドソフツだか知らないけど、とことん問い詰めてやるわ」

 

 同じように鈴も怒りを吹き返してアイエフの考えに乗る。

 

「アイエフの言う通りね。結局のところ、あの子達全然実力ないんじゃないの?モンスターにビビッて逃げるなんて、まともに戦えるわけないわ」

 

「そうね。イストワール様にも報告いれておかなくちゃね」

 

 2人とも普段から厳しいところがある故の同調だ。大事な場面で逃げたことが、余計に2人の怒りの炎を燃え上がらせていた。

 そんな一方、コンパがその時の状況を思い返しつつ何があったのかと疑問を呟く。

 

「ビーシャさん、どうしたんですかね?」

 

 コンパの言葉にはパープルハートも気にしていたところだ。そして、それは光樹も同じであった。

 

「……そういえば、イストワールの話とか、鈴が防衛戦の初めの頃に聞いた時に様子がおかしかったような……」

 

「そこが私も気になっていたのよ。何か事情があるのは間違いないわ。ともかく話をしてみましょ。どうするかはその後で。いいかしら、2人とも」

 

 パープルハートもビーシャの逃亡に怒りを覚えていた2人に言う。あの状況で自分のやるべきことを放り出すくらいなら、逆に何か理由があるとしか思えなかった。だからこそ、ビーシャを擁護するような形で、まずは話を聞いてからという姿勢だった。

 パープルハートからの提案に、少し納得がいかないような表情をしたものの、頷いて了承する。それを確認すると、変身を解いたネプテューヌ達はプラネテューヌに戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほどなくしてネプテューヌ率いるハネダシティ防衛戦援軍はプラネテューヌに帰ってくる。勇者の帰還、とはいかないものの、教会の職員からは注目を集めていた。既にハネダシティでの戦闘の結果がこちらにも届いているようだ。

 情報が早いな。まぁ、大方、ハネダシティの防衛隊の人とかがこっちに情報を挙げてきているんだろう。特にあの防衛隊長辺りが報告していそうだ。

 光樹が「シュバルト・ゼロ・ギャラクシー」で出した損害がイストワールを怒らせていないことを祈りつつ、勇也達は謁見の間へと入る。中には既にイストワールが待っていた。表情はいつも通り落ち着いている。

 早速ネプテューヌが帰ってきたことを宣言する。

 

「いーすん、たっだいまーっ!」

 

「おかえりなさい、みなさん。ハネダシティの方々から報告はいただきました」

 

 勇也の予想通り、既にハネダシティの方から報告は受けていたようだ。ルートビルドシステムを使ったとはいえ、少し時間がかかっているため、こちらに情報が来ているのもやはり当然のことだろう。

 さらにイストワールは言葉を続ける。

 

「すごい活躍だったらしいですね。特に光樹さん、話によれば70体以上のモンスターを一網打尽にしたとか」

 

 その言葉に光樹が反応する。その話が出てくるのは当然だろう。あれを突破しなければボスの所まで行けなかったのだ。それを聞かずしてモンスターの撤退を聞くことは出来ないのだから。

 が、イストワールの顔にはあまり怒りの表情は見られなかった。光樹もそれを見て、安心した様子でそれについて説明する。

 

「あそこは一気に突破しないといけないってことで、こっちの最大火力をぶつけたからな。けど、街の方も少し被害が出たし……」

 

「はい。攻撃の余波による被害の方も既に報告が上がっています。ですが、防衛隊だけでは突破出来なかったことということで、今回はハネダシティとプラネテューヌ双方、特に触れない形で決着していますので心配いりませんよ。肝心の被害の方も軽微でしたし、何よりネプテューヌさん達の救援活動が評価されていますから」

 

「よ、よかった……」

 

 光樹の安堵の声が響く。双方不問。それが光樹の放ったNFBに対する対処であった。イストワールの話も納得できる。マイナスよりも、プラスの方が大きいという判断なのだろう。それに加えて、今回の救助行動の積極性が加算されて、マイナス分はほぼなくなった、というわけであった。

 それを聞いて、ネプテューヌも自分達が頑張ったことに触れつつ、ハネダシティで起こった、1つの奇跡について話し出す。

 

「そうなんだ!でね、聞いてよ、いーすん。あの抹であった衛兵の人たち、わたしたちのことを忘れずに覚えてくれていたんだ」

 

 すると、イストワールは興味深そうにその話に注目した。

 

「本当ですか!?……まさか、わたしたち以外にもそういう人がいるなんて」

 

 その驚き様から、やはりイストワールももう覚えている人は自分たち以外はいないと思っていたのだろう。自分達ですら、いるとは思っていなかったくらいなのだから。

 ネプテューヌのことを思い出したのは防衛隊の2人、最初の方に助けたおじいさん、更に帰還する途中で寄った避難キャンプの方で自分達が助けた子供達もおぼろげながらネプテューヌがいたことを思い出していた。

 他にもネプテューヌの顔を見て思い出しかけている人も含めると約8人がネプテューヌの存在を記憶、あるいは思い出していた。そのことをネプテューヌ話に補足する形で鈴が細かく報告する。

 

「覚えている人だけじゃなくて、ネプテューヌを見た人が思い出すってパターンもありました。というより、その形の方で記憶している人が今は多い現状ね」

 

「なるほど……分かりました。こちらでも他にもネプテューヌさんのことについて知っている、あるいは思い出した人がいないかどうかも確認を進めますね」

 

「それがいいと思います。それと彼らに共通する点もあれば、調べておいてくれると助かります」

 

「そうですね。それも調査します」

 

 鈴とこれからの女神の記憶に関する対応を協議したイストワール。話が終わったところで、アイエフがハネダシティを離れる前に話題にしていた、ゴールドサァド達の行方についてイストワールに聞く。

 

「ところで、ビーシャとR1は帰ってきてますか?」

 

「ビーシャさんとR1さんですか?いえ、まだですけど……ご一緒ではないのですか?」

 

 キョトンとした様子で聞き返すイストワール。完全に知らない様子のため、どうやら教会にも帰ってきていないようだ。

 アイエフと鈴が頭を抱えつつ、その時の状況をまとめて説明する。

 

「それが、実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っていうこと、ですね」

 

「なるほど……そういうことがあったんですね」

 

 2人の説明を聞いて、イストワールも起きたことについて理解する。簡単に言ってしまえば、ビーシャが逃走して、それを追いかける形でR1も戦線を離脱した、ということだ。軍で言うなら軍法会議ものの規律違反である。

 とはいっても、勇也達のいるGKSWAXPでは、総司令である光樹もあまり重大すぎるかつ、仕方のないことであるならば、無事済めばあまり軍法会議は開きはしない。イストワールも比較的落ち着いた人物であるので、あまり問題にはしないのではないかと考えていた。

 それらの話を聞いて、更にイストワールは自身の考えていたことを呟く。

 

「張り切って正義のヒーローをしている手前、モンスターから逃げ出すようには思えないのですが……」

 

「所詮、「正義の味方ごっこ」なんでしょう。自身の行動に責任を持てないのなら、そんなことしない方がみんなのためってものよ」

 

 鈴から厳しい言葉が飛ぶ。まぁ、あの状況で逃げられちゃ、きつい部分もあっただろうな。流石に俺もフォローはしきれないかな。

 勇也も鈴の意見に頷く。だが、光樹と絵里奈が、それに意見する。

 

「……けど、少なくとも並大抵のモンスターを寄せ付けないだけの実力はあった。何か事情があったように俺は思うんだけど……」

 

「それは一理あるよね。ネプちゃんが前に言ってたように、様子がおかしかったってことは、何か重大な理由があったんだよー」

 

 光樹と絵里奈のそれぞれの考えに、勇也達も少し唸る。パープルハートの言っていた通り、イストワールからモンスターの討伐を依頼されたときの様子がおかしいのは分かっていたことだ。それに鈴からの話で、ハネダシティ到着後のビーシャの様子もおかしかったというのも聞いていた。

 それらを踏まえてみても、まだ結論を出すのは早いだろう。ハネダシテから出る際にパープルハートから言われたことも尊重して、鈴も考えを改める。

 

「……まぁ、さっきのネプテューヌの言ってたこともあるわ。とりあえず、2人を探さなくちゃいけないわね」

 

「そういうことだな。怒るのはその後でもいいだろう」

 

 勇也も鈴をなだめる。と、その話をした本人であるネプテューヌが、イストワールに手短に言う。

 

「いーすん、わたし、ビーシャ探してくる」

 

 唐突な発言である。話をすることは言っていたものの、まさかいないから即探しに行くというのは、あれだけの戦闘の後で言えるのは流石女神と言うほかない。

 とはいえ、普段から高難易度の任務に従事することの多い勇也達もまだ体力は有り余っていた。記憶を失っている光樹もまだ余裕が見えている。付いていくのが難しいのは、コンパだけのような気がする。

 しかし、勇也の予想は裏切られることとなる。急いで探しに行こうとするネプテューヌに同調した。

 

「いきなりですね、ねぷねぷは。じゃあ、わたしもお手伝いするです」

 

 2人で行くのなら、より簡単に早く見つけられるだろう。ところがネプテューヌは首を横に振ってそれを断る。

 

「ごめん、こんぱ。こればっかりは、1人で行かせてくれないかな?なんか後ろめたいことがある感じだったし、わたし1人だけの方が話しやすいかもしれないしさ」

 

 断りを入れるものだから、一体どのような理由なのか、と思ったが意外にも考えての発言であった。相手の当時の様子から、あまり人数が多いと話してもらえないかもしれないから1人で行くという、ネプテューヌの性格からは考えられないと勇也は思った。

 しかし、それは勇也の勝手な思い込みであり、それを見ていた光樹の方は、ネプテューヌらしい考えだと思っていた。

 と、そこで光樹が間に割って入る。

 

「……けど、俺も一緒に行かせてくれないか?あの場にはR1もいるんだ。あいつからも話を聞きたい」

 

「光樹……。うん、分かった!一緒に行こう!」

 

 光樹の考えを聞いて、ネプテューヌも快く了承した。これでビーシャを探しに行くメンバーが揃った……と思いきや、更に声をあげる者がいた。それも意外な人物……鈴だ。

 

「……ごめん、あたしもいいかしら?」

 

「鈴?さっきも言ってただろ?あまり人数が多すぎるのもダメだって……」

 

 これでは流石に人数が多い、と反対する光樹だったが、それを押し切って鈴はその理由を告げる。

 

「確かにこれ以上人数を増やすのはまずいかもしれない。けれど、その場で一応光樹に伝えておかなくちゃならないことがあるのよ」

 

「お、俺に伝えておかないといけないこと?何だよ、それって……?」

 

 若干光樹の表情が引きつる。少し目を挙動不審に動かしていることから、告白の類だと思っているのかもしれない。鈴の先程の発言から想像するには、それくらいしかない。

 が、当然そんなものではないことを勇也は予想していた。自身や光樹を徹底的に振った鈴から、よりを戻す類の言葉が出てくるわけがないと分かってのことである。そして当然、鈴から告げられたのは別のことであった。

 

「伝えるっていうか、教えておかないといけないことね。……前に言ってたじゃない。思い出した記憶の片隅にいた、銀髪の少女の事」

 

「……あ。そういえば……」

 

光樹がそれを聞いて気づく。同じく絵里奈、そして勇也も納得のいったように反応する。鈴はこのタイミングで「彼女」のことについて話すようだ。だが、まさか、と勇也も思う。

 何せ、「彼女」の件は今の光樹の地位を作るきっかけとなった案件だ。GKSWAXPでも今なお話題の取り扱いでかなり問題に上がるくらいだ。所謂裏事情の話だ。

 そんな面倒な話をわざわざ探しに行った先で話すのもどうなのかと思った勇也は少し考えるように説得する。

 

「落ち着け、鈴。その話結構な面倒話だぞ?逃げたやつに話を聞きに行った先でその話をするのか?」

 

 そう言われたものの、鈴は一瞬考えただけで考えを押し切る。

 

「そりゃあそうだけれども……けど、今を逃すと、もう話す機会ないわよ?むしろ光樹の話を聞かせて、糧にしてもらえる方にあたしは賭けるわ」

 

「な、なんだそれは……。無茶苦茶な考えだな……」

 

 勇也は呆れた様子でため息をつく。いつもなら冷静に行動する鈴だったが、今回はかなり大きく出ている。おそらくは鈴も早く光樹に記憶を取り戻してもらいたいのだろう。

 面倒な話をする鈴の発言を受けて、絵里奈も賛成の考えを出す。

 

「そうだね~。そろそろ言わないと、光樹君も気になってたかもしれないしねー」

 

「そんなに面倒な話ならいいんだけど……。けど、した方が良いっていうなら、してもいいんじゃないか、その話」

 

「光樹まで……まぁ、いいんじゃないか?多数決では話す方が多いしな」

 

 完全に説得を諦め、勇也は大きく息を吐く。それを気遣って、アイエフが声をかける。

 

「あなたも苦労人ね」

 

「普段はこうじゃないんだがな。やっぱり光樹が普段の調子じゃないと狂うな」

 

「光樹も早く記憶を取り戻すためにも、今回の話はしっかり聞いとくのよ?それが仲間のためってもんなんだから」

 

 勇也の気持ちを察してアイエフは光樹にそう伝える。光樹も頷いて勇也に声をかける。

 

「悪いな、勇也。俺も早く記憶を取り戻すよ」

 

「出来ればそうしてくれると助かる。前まで鈴達の愚痴をこっちが聞く形になっていたからな」

 

 2人の話が終わりを見せたところでビーシャを探しに行くネプテューヌ達に対し、応援の言葉をかける。

 

「それじゃあ、3人共、ビーシャさんとR1さんをよろしくです」

 

「それじゃ、すぐに戻るから待ってて!」

 

 ネプテューヌが告げたのち、3人は入って来た扉から外へ駆け出していく。3人を見送ったのち、アイエフがその間にすることを口にする。

 

「さて、それじゃあ、私たちはネプ子が戻ってくるまで、ネズミの事情聴取でもしてましょ」

 

 

 

 

「あーのーネーズーミー……!逃げやがったな!」

 

 牢屋に付いていきなり、アイエフの怒りが炸裂する。見ているコンパや絵里奈も反応に困り、苦笑いをする始末だ。

 何があったのか。それはいたって簡単。先程捕まえていたネズミが、救援活動をしている間にいなくなっていただけだ。言葉にしても違和感はないが、直球に言えば脱走だ。もっと言うなら「脱獄」であり、犯罪にもなる。しかし、それよりもアイエフにとっては、行動的にも物理的にも舐められたことで頭に血が上ってしまっていた。

 お約束と言えばお約束だが、まさかそこまで脱獄のスキルが高かったとは勇也も思っていなかった。教祖のイストワールも脱獄という事実に呆然としている。

 

「まさか、教会のセキュリティが破られるなんて……」

 

「それほどにまで、高いセキュリティを持っているのか?」

 

「もちろんです。ラステイションほどではありませんが、仮にもここは国を束ねる教会の牢屋です。逃げ出すのも一苦労なはずなんですが……」

 

 イストワールからの説明で、なるほどと頷く。よく見れば鍵は電子ロックに加えて錠前も付いている。ここから逃げ出すともなれば、かなりのプロでなければ難しいことが分かる。

 勇也が納得を見せる一方で、アイエフはもしもの可能性を口にする。

 

「やっぱり、あの時警察に引き渡しとくんだったわ」

 

「ごめんなさいです……。わたしのわがままのせいで……」

 

 原因の一端とも言えるコンパが謝罪をする。しかし、アイエフもそこでようやく落ち着きを取り戻す。

 

「コンパが気にする必要なんてないわ。せっかくかけてやったコンパの厚意を裏切ったアイツが悪いんだから」

 

 アイエフの言う通りだ。せっかく情けをかけてやってもこうなるのだから、これはコンパの責任ではないだろう。勇也もコンパに言葉をかける。

 

「そうだな。コンパが悪いわけじゃないと思うな。ここじゃなくても、もしかしたら警備を突破してどっちにしろ逃げられていたかもしれない。少なくとも、核心に繋がる情報のいくつかは聞けたことを喜ぶとしようぜ」

 

「そうだよー。コンパちゃんがあそこで引き取ってネズミにお願いしてなきゃ、警察に任せてたら、何も聞き出せていなかったかもしれないんだしっ!」

 

 2人のフォローもあり、コンパも笑顔を見せる。続いてアイエフも2人の言葉に納得を見せた。

 

「はいですっ!」

 

「確かに。あのネズミ、コンパが相手じゃなきゃ、話しそうになかったし。収穫ゼロよりもマシかもしれないわ。……今度、見つけたら、次こそ容赦しないわよ」

 

 今度会った時の誓いを口にするアイエフ。熱くなるのもいいが、少し落ち着かないとな。俺はやることがなくなった全員に休憩を勧める。

 

「まぁ、しばらくは光樹達待ちだな。あのネズミの再捕獲はゆっくりしながら協議しようか」

 

「さんせーい!あれだけの戦闘の後は休憩が必須だよー」

 

「じゃあ、私がお茶を入れるです」

 

「では、そうしましょうか。上のネプテューヌさんの部屋にでも……」

 

 気持ちを切り替え、5人は午後のティータイムを楽しむために牢屋を後にした。

 

 

TO BE CONTINUED

 




今回もお読みいただき、ありがとうございます。記憶の謎、それは女神の記憶と光樹君の記憶の謎だった、というわけです。

ジャンヌ「次回以降に光樹さんの記憶は明かされそうですね。銀髪の少女、彼女は既にツイッターで登場した「彼女」ですよ」

レイ「あー、あの子、今どうしてるかな?光樹君を探して放浪中なんだっけ?」

いや、あの後GKSWAXPに捕まって、お留守番中のはず。で、話も鈴の語り部となっているので、過去を知りたい人はお楽しみに!さて、今回はここまで!

レイ「歯が痛いから、もう早く終わらせたいんだってー。次回もまた月曜日っ!」

ジャンヌ「その翌日は藤和木の学校の研修があるそうですので、わたくしたちも同行しますっ!それでは皆様、また次回お会いしましょう」

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