ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く   作:始まりの0

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EP87 破壊神VS魔王

「えっと……アーシアさん?」

 

 

「あぅぅ……」

 

 助けられたアーシアは零にキスをしたまではいいが………耳まで茹で上がった蛸より赤くなっている。

 

 

「なんでキスされたんだろう?」

 

 当の本人は何故キスされたのか分かっていない様だ。

 

 

「相変わらず鈍感ですね、貴方は」

 

 

「どういうこと?」

 

 零に話し掛けたのはアベルだ。白音達は完全にフリーズしている。

 

 

「この鈍感、いい加減にしなさい。乙女が好きでもない相手にキスなんてする訳ないでしょう」

 

 

「あぁ……そうか、俺も好きだぞ(家族として)」

 

 

「貴方の好きと乙女の好きは意味が全然違うんですよ」

 

 

「どう違うんだ?」

 

 アベルは「駄目だこりゃ」と言う様な顔をしている。

 

 

「貴方と言う人は……その鈍さで私を含めた何人の女性を泣かせてきたんですか?」

 

 

「俺は女を泣かす様な事をした覚えはないんだが……」

 

 

「いぇ、御主人様は女泣かせだと思います……」

 

 

「同感にゃ……」

 

 

「えっと……ボクもそう思います」

 

 

「零は……女泣かせ?」

 

 アベルの言葉に同意する白音、黒歌、ギャスパー。オーフィスは良く分かっていない様だ。

 

 

「はぁ……訳が分からん。まぁ取り敢えずそれは置いといて……だ」

 

 零はその場から這って逃げようとしているディオドラに目を向けた。

 

 

「ひぃ?!」

 

 ディオドラは零に見られた事で情けない声を上げ、急いで逃げようとする。

 

 

 ―ドスッ―

 

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁっぁ!」

 

 逃げ出そうとするディオドラの両腕、両足に剣や槍が突き刺さった。

 

 

「アーシアが無事なら俺が生かして帰すと思った?」

 

 

「ひっ!?いっ命だけは……どうか命だけは」

 

 命乞いするディオドラ。しかし零は絶対零度の眼でディオドラを見降ろしている。

 

 

「アハハハハハ………殺す。【天叢雲剣】」

 

 

「ひぃ!?」

 

 零は右手に剣を呼び出した、神剣:天叢雲剣。三種の神器の1つであり、素戔嗚が八岐大蛇の尾から取り出した剣だ。この剣を此処に来る前に天照に渡された物だ。ガタッガタッと震えるディオドラ、戦いが始まるまでの威勢は何処に行ったのやら。

 

 

「まっ待って!」

 

 リアスが零を止めた。この状況で何故、零を止めたのだろう?止めれば確実に自分にも危害が及ぶ可能性があるのに。

 

 

「彼は現魔王の血筋の者よ!テロリストと関係があったとはいえ、勝手に裁く事は許されないわ!」

 

 そうディオドラは現魔王、アジュカ・ベルゼブブを出したアスタロト家の悪魔だ。テロリストと関係が在ったとしても、本来は情報を聞き出したり、悪魔の法律により裁かなければならない。リアスの言う事は正論だ。

 

 

「バカか?その下種がアーシアを攫った時点で、これは日本神話と悪魔の問題になっている。この意味、理解できるよな?アーシアは我が母、天照大神の加護を受けた巫女。それを純血悪魔……それも現魔王の身内が誘拐した。これはれっきとした日本神話への宣戦布告も同じ」

 

 零は言う事は当然の事だ、現にアーシアは天照の加護を受け正式に日本神話体系の一員……加えて天照に直々に加護を受けており、息子である零が家族と認めている以上、天照にとっても身内も同然。そんな者を誘拐すると言う事は、悪魔が日本神話側に対して戦争を吹っかける様な物だ。

 

 

「だが今回はテロリストが関係している……故にそれの命とペナルティのみで勘弁してやろう」

 

 ディオドラの命と内容は分からぬがペナルティのみで、事を済ませると零が言った。現在の零の言葉は天照の言葉でもある、その零が断言したのならまず間違いないだろう。

 

 

「?!」

 

 

「本来であれば、日本神話とは関係なしに………この俺が悪魔を全滅させている所だ。今の俺はあくまで母様の子として此処に居る。貴様ならこの意味は分かるだろう?」

 

 悪魔としてのルールを重んじてディオドラを護り日本神話との関係を悪くし最悪戦争に発展するか、ディオドラを見捨てペナルティを受けてでも日本神話との関係を維持するか。

 

 

「それとも……今此処でそれと一緒に死ぬかだ。早く決めろ」

 

 天叢雲剣から凄まじい神気が溢れる。既に零の心は決まっている、今の彼を止めれる者など居ない。その表情も殺意に満ちている。

 

 

「ぜっ零さん!」

 

 アーシアが天叢雲を持つ零の腕に抱き着く。

 

 

「アーシア……大丈夫だ、直ぐに終わらせる。見たくないならはなr「今の零さんの顔は怖いです!そんな零さんの顔、見たくないです。だからやめて下さい!」……」

 

 零は天叢雲剣の刀身に映る自分の顔を見た。殺意に満ちており、誰が見ても恐怖を感じるだろう。

 

 

「だが此奴はお前を不幸にした張本人だ、今回の事にしても……昔の事にしても」

 

 

「確かに辛い事も、悲しい事もありました。でもお蔭で白音ちゃんに、黒歌さんに、オーフィスさんに、多くの人に出会えました。何より零さんに会えました……私は今、それでとても幸せなんです」

 

 零はそれを聞き、少し殺気が収まった様に見えた。

 

 

「零、貴方の負けです。貴方はその子が哀しむのは分かっていて、それを殺す事はできないでしょう」

 

 アベルは零にそう言う。零はそれを聞くと溜息を吐き、天叢雲剣を消した。

 

 

「はぁ……アーシアの勝ちだ。分かった、分かった。殺すのは止めるよ……アベル、周りの戦況はどうなっている?」

 

 

「そうですね……成程。旧魔王と現魔王・堕天使総督が交戦中、他の場でも戦いは続いてます。このまま行けば数十分で此方の勝利になるでしょうね」

 

 アベルは一瞬目を瞑ると現在の状況を説明した。

 

 

「魔王……全く、どいつも此奴も。母様は言ってたが、悪魔共に誰を怒らせたら一番怖いか教えてやる。アベル、頼んでいいか?」

 

 

「えぇ、構いませんよ。この身は貴方に救われた身です………来なさい!J-002!」

 

 アベルが空に向かい、そう叫ぶ。空に穴が開き、巨大な白い戦艦が現れた。

 

 

「一応、テロリスト以外は攻撃するなよ。後々面倒だ」

 

 

「クスッ……了解です。ではまた後で」

 

 アベルはそう言うと、光だし白い戦艦の方へ飛んで行った。白い戦艦はそのまま、戦場の方に向かい凄まじい速度で飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……出てきたらどうだ、魔王さんよ?」

 

 零が玉座の方を見てそう言うと、玉座の上に男がいた。軽鎧とマントを羽織い、冷たい空気を放つ男は此方を見降ろしている。

 

 

「アレ?どっかで見た様な……」

 

 

「シャルバ・ベルゼブブ……零と我が初めて会った時に居た」

 

 そんなのも居たなと言う様な表情をしている零。

 

 

「オーフィス……我等の元に戻れ、お前の目的はグレートレッドを倒す事だろう?我等と共にいれば、奴を倒す事も不可能ではない」

 

 現れた魔王ベルゼブブの言葉に驚いているリアス達。

 

 

「シャルバ、我はもうグレードレッドに用はない。我が帰るべき場所はもう見つけた」

 

 

「なに?」

 

 

「我の帰る家……零や白音達のいる所、此処には【次元の狭間】に無かったものがある」

 

 

「降らん……お前の様な力を持つ者のいる場所などこの世界にはない」

 

 シャルバはそう言う。それを聞いてアーシア達は心配そうにオーフィスを見るが、当の本人は首を横に振る。

 

 

「我の帰るべき場所は……我自身が決める。だから我はお前達と共にいない」

 

 

「……おのれ、伝説の戦士」

 

 シャルバは零の方に視線を向ける。

 

 

「よくもオーフィスに余計な知恵を与えおって……以前の時にしても邪魔ばかり。貴様は確実に我等が障害となる……此処で消し去ってくれる!」

 

 シャルバは零に向かい手を翳すと、ディオドラの掌にも浮かんだオーフィスの紋章が浮かび上がった。

 

 

「オーフィスの蛇……アーシア、直ぐに終わらせる。だから下がってろ」

 

 

「はい」

 

 アーシアは零から離れ、オーフィス達の元に戻った。

 

 

「本日2回目の【ソウルコード:ジェネシック・ガオガイガー】」

 

 再びジェネシック・ガオガイガーを展開した。アーシア達(ついでにリアス達も)はオーフィスが張った結界内にいるので、心配はないだろう。

 

 

「行くぞ!【ガジェットフェザー】!」

 

 ジェネシックの背中の翼が展開し、シャルバと同じ高さまで上昇する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「始めようか」

 

 

「フン、たかが極東の神如きg「シャルバ!助けてくれ!僕等が力を合わせれば……旧魔王と新魔王が」五月蠅い」

 

 今にも戦いを始めようとしていたのだが、ディオドラに会話を中断された。シャルバはディオドラに手を向けると、光が放たれディオドラの胸に巨大な風穴が開いた。

 

 

「えっ……」

 

 

「限りあるオーフィスの蛇を別けてやったのに、この体たらく。所詮貴様はその程度だ……失せろ」

 

 シャルバが手を払うと、ディオドラに光が降り注ぎそのままディオドラの身体を消滅させた。

 

 

「うん、それに関しては同意だな。オーフィスの蛇を使ったのにも関わらずあの程度とか……アーシアが止めなかったら俺が産まれてきた事を後悔する程の苦しみを与えて殺してやるところだったのに」

 

 

「フン……あの様な小物、我等にとってはどうでもいい存在……では受けるがいい!我が裁きの光を!」

 

 シャルバが光を放つ、その直撃を受けるが全くの無傷のジェネシック。

 

 

「やはりこの程度では全く効かぬか……ならば」

 

 無傷だったのは予想内の事だったらしく、シャルバは懐から瓶を取り出した。

 

 

「薬?」

 

 

「これは限りあるオーフィスの蛇を有効に使う為に禍の団(カオス・ブリゲード)が開発した、【無限活性剤(ウロボロス・ドーピング)】というものだ。これを使えば一時的に体内の蛇を活性化させ、肉体・魔力を爆発的に上げる薬だ……デメリットとして命を削るがな」

 

 シャルバは何故か丁寧に薬の効果を説明した。

 

 

「何故、その様な事を俺に説明する?」

 

 

「貴様が何者であれ、この力の前では無力だからだ」

 

 シャルバは薬を飲み干すと、瓶を放り投げた。

 

 

「ヌオォォォォォォォォ!!感じるぞ……このオーフィスの無限の力の一端を!!!!」

 

 突如シャルバの身体が倍の大きさに膨れ上がり、また魔力も先程の数倍になっている。大きさ的にはジェネシック・ガオガイガーを纏った零と同じくらいだ。

 

 

「この力で貴様を消し去ってやる!」

 

 肥大化したシャルバは零に向かい、先程の光よりも巨大な光を放つ。

 

 

「へぇ……ならっ【ガジェットツール・ウィルナイフ】!おらぁぁっぁ!!」

 

 ガジェットガオーの頭部のパーツが外れ、右手に装着されると緑色の刀身が展開される。刀身は零の意志に呼応し、茜く染まる。零は向かってきた、光をウィルナイフで空間ごと切断した。

 

 

「なぁ……馬鹿な!?ドーピングした我の一撃をこうも簡単に防いだだと!?」

 

 

「あの下種よりはマシだが……所詮はこの程度か」

 

 

「あっ……ありえぬ!このような事があって堪るか!我はベルゼブブだぞ!ルシファーよりも偉大なベルゼブブが、ウロボロスの力まで得、意地を捨てドーピングまでした我の一撃が何故効かぬ?!」

 

 どうやら、零を倒す為に自分のプライドを捨てドーピングらしい。その一撃が効かない為にシャルバは動揺している様だ。

 

 

「なんで効かないか……簡単な話だ。貴様は自分ではない力を使いながら1人で戦っている、我が力も紛い物ではあるが1人で戦っている訳ではない。我が力は戦友との絆………戦う時も俺は戦友達と共に戦っているんだ」

 

 零の身体に、無数の人影が被って見えた。そしてGストーンが輝き始め、零の身体が……ジェネシック・ガオガイガーが緑色に染まる。

 

 

「1人で戦っているお前が!共に戦っている俺達に勝てる筈がない!うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 Gパワーが溢れだし、辺りを吹き飛ばしながら天を貫く光の柱になる。

 

 

「なっ……なんだ、この力は」

 

 

「どりゃあぁぁぁぁっぁ!!」

 

 ガジェットフェザーを使い、茫然としているシャルバに接近し右ストレートを放つ。

 

 

「ぐわぁ!?」

 

 

「貴様等が同族で何をしようが構わん!だがそれに俺の身内を巻き込むな!」

 

 殴られ吹き飛ばされたシャルバを胸倉を掴み、引き寄せ頭突きをくらわせた。

 

 

「それに!貴様等、悪魔が滅びようとして生き残る為に他の種族を巻き込むんじゃねぇ!」

 

 シャルバを地面に向かい、投げ飛ばした。シャルバは直ぐに体勢を立て直そうと、翼を出し飛ぼうとするが零に踏まれ起き上がれないでいる。

 

 

「貴様等、悪魔の性で!黒歌の、白音のいた妖怪の里は滅ぼされた!」

 

 

「ちょっと待て!それは私の性でh……ぎゃあぁぁっぁぁぁ!!」

 

 シャルバは自分の性ではないと言おうとするが、翼を引き千切られ叫ぶ。

 

 

「悪魔の駒はベルゼブブが作ったって聞いたぞ!……ん?翼が再生している。これもオーフィスの蛇の恩恵か……ますます許せん!」

 

 再生したシャルバの翼を見ながら、オーフィスの蛇の事を思い出した事で零の怒りは更に増した様だ。

 

 

「ぐおぉぉぉ……この…化物がぁぁぁ!!!」

 

 魔力の暴風を吹かせ、零を吹き飛ばすと立ち上がり、辺り構わず光を降り注がせる。

 

 

「チッ!【ガジェットツール・ボルティングドライバー】!」

 

 ガジェットガオーのパーツが左手に装備された。

 

 

「【ジェネシック・ボルト】!」

 

 

【ガオォォォォォ!】

 

 ギャレオンの口からボルトが放たれ、ボルティングドライバーの先に装着されると、ドライバーが高速回転を始め、ドライバーの先から高密度のジェネシックオーラが放たれた。そのジェネシックオーラにより、シャルバの光が全て破壊された。

 

 

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁ!この様な事が在って堪るかぁぁぁ!このシャルバ・ベルゼブブがこの様な遅れをとるなど!在って堪るかぁぁぁ!こうなれば、我が命を賭してでも貴様を抹殺してくれる!」

 

 完全に自分の力が全く通用せず、自棄になったシャルバは無限活性剤(ウロボロス・ドーピング)を10本取り出し、瓶ごと飲み込んだ。

 

 

「ふっ……フハハハハハハハハハ!流石の貴様もこれで終わりだ!私も意識をなくし、怪物なるが貴様を倒れるなら何でも構わん!ぐげっ?!ごはっ!?」

 

 ―ボコッボコッ―と音を立てながら、シャルバの身体が膨れ上がっていく。零は膨れ上がっていくシャルバから一旦距離を取り、オーフィス達の元に向かう。

 

 

「オーフィスあれは?」

 

 

「あの薬で我の蛇を暴走させたみたい……多分、魔力の暴走と細胞の無限増殖が起きる」

 

 

「一気に終わらせろって事か……皆を連れて少し離れてろ」

 

 オーフィスはそう言われると頷き、皆と共にその場を離れた。零はそれを確認すると、シャルバの前にゆっくりと降りた。

 

 

「【ガジェットツール】!」

 

 両手を広げると、ガジェットツールが分解され両手を覆う保護グローブへと変形した。

 

 

「【ヘルアンドヘヴン】!」

 

 右手が茜く、左手が黄色く発光する。そして両手を合わせる様に手を近付けるが、右手と左手のエネルギーが反発しているのかバチッバチッと音を立てている。

 

 

「ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……フン!」

 

 呪文を言い終えると、反発し合っていた力が1つとなり両手が合わさった。それと同時に、零を中心に緑色の風……ENトルネードが肥大化をしているシャルバを拘束した。

 

 

「ウィータァァァァァ!!!」

 

 ヘルアンドヘヴン・アンリミテッド……ジェネシックオーラにより無限の破壊力を得た必殺技だ。

 

 肥大化するシャルバに直撃し、眩い光が辺りを包み込んだ。




・無限活性剤(ウロボロス・ドーピング)

 オーフィスが禍の団を抜け、蛇を得られず数が限られた為に開発したドーピング剤。体内に宿したオーフィスの蛇を活性化させる効果があるが、デメリットとして命を削る事になる。

 蛇が活性化させると、肉体と魔力が数倍以上に膨れ上がる。後半でシャルバはこれを多用し暴走状態となり、無限細胞増殖と魔力の暴走が起った。

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