ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く 作:始まりの0
~駒王学園 2年教室~
机に伏して真っ白になっている零。
「レイ、大丈夫か?」
今までにない零の姿を見て、流石に心配になった一誠達も声を掛ける。
「この程度大した事ない」
「なんか、レイとアーシアが二人三脚の練習で(色々と)大変みたいだけど」
「何が?」
「いや凄い(骨の折れる)音とか……」
「あぁ……アレ位は問題ない。骨折なんて数秒で完治する、俺が疲れてるのは………癒しが無いからだ」
「「「はぁ?」」」
一誠、元浜、松田が零の言葉に首を傾げる。
「朝から学校、夕方からはあっちに呼ばれ、こっちに呼ばれ……夜中まで呼び出しだ。この数日真面に寝れてない。寝れてないのは問題ないが、オーフィスや白音を愛でれないのが辛い!!!寝顔すら拝めない日々が続いてるんだ!!!」
「「白音ちゃん……ってあの塔城白音ちゃんか!?と言うか、寝顔を見れないだと!?まさか一緒に住んでんのか!?」」
「あぁ、そうだけど……」
「「ななななななな……なんだと?!」」
一誠は知っていたが、元浜と松田は知らなかった為驚いている。と言うよりクラスの男子全員がその話を聞き付け、殺気だった眼で零を見ていた。当の本人は「ぁあ……しまった。まぁいいか」と呟いている。
「なぁ、レイ、その呼び出しってもしかして」
「あぁ、
「おいおい……」
零と一誠は小声で喋っているが、話しの内容が物騒すぎる。
「そういや、今日はお前等がゲームだったな」
「あぁ……ってなんで知ってるの?」
「情報なんて得ようと思えば得られるのさ。さてと……アーシア、今日は俺の用事があるから練習はなしだ。スマンが先に帰ってくれ……何もないと思うが気を付けて帰ってくれよ」
零は後ろの席のアーシアにそう言うと、鞄を持って席から立ち上がる。
「今日は何処か行かれるんですか?」
「母様達に呼び出しだよ」
零はそのまま教室を出て行こうとする。周りのクラスメイト達は今にも襲い掛かりそうな勢いだが、毎回一誠達がやられているのを見ているのと、基本的に女子の味方である零に襲い掛かると必然的にクラスの女子達にも嫌われる事になるので堪えている男子達。もしそんな事をしようものなら女子達だけでなく、アーシアからも嫌われるのが一番の理由だ。
「あれ……零さん、そんなペンダントしてましたか?」
アーシアが零が首から掛けているペンダントに気付いた。
「あぁ、これか……久しぶりに出してきたからな、付けてみようかと思って。じゃあアーシア、気を付けて帰れよ」
零はそう言い教室を出て行った。
「あっ………今……気の性でしょうか?」
アーシアは一瞬、零のペンダントに嵌められている緑色の宝石に何か文字の様な物が浮かんだ様な気がした……しかし気の性だと思い深く考えなかった。
~高天原 天照の神殿~
「それで各地の悪魔の動きですが……零、報告を」
「はい……京都の方は日本妖怪達のお蔭でそれ程被害はありません。関東の方もぬらりひょんのお蔭でそこまで大きな被害は出てません。しかし……大妖怪の支配していない地、特に小さな妖怪の里には被害が出ています。悪魔に出した条約以来、全滅した妖怪里が10以上、半壊の里が50以上、攫われた妖怪が10以上……どうやら主に特殊能力を持つ妖怪達……特にその子供が狙われた様です。全滅した里以外は日本神話の神の庇護下へ移しました。攫われた妖怪達については8人は俺の方で助け出しました、今は親許に戻してます。残り2人の内、1人は残念な結果に……残り1人は捜索中です」
天照に言われ、そう説明した零。それを聞き、月読、素戔嗚を含めた神々にざわめきが起こる。
日本神話が出した条約に対して、日本各地で反乱を起こした日本にいる悪魔達。
その被害は全滅した妖怪の里が10、半壊した里が50、負傷者が多数、攫われた特殊能力を持つ妖怪達10人の内、1人は現在捜索中、もう1人は……。
零が動いていなければ、恐らくもっと被害が出ていただろう。これまでにも同じ様な事は幾度も在ったが、条約を出してからは特に悪魔が活発に動いている。
「犯行に及んだ悪魔は捕獲しましたが、殆どが転生悪魔で主の命令で強制的にやらされたそうです。中には主である悪魔に命令されて同族を手にかけた者もいた様です」
「クソ、このままじゃ被害が増える一方だ」
「しかも性質が悪い事に、転生悪魔達には失敗した際には自害する様に命を出している様です。それを止める為にも、少し強引に悪魔の駒を摘出しました。それにより、3~7日昏睡する事になってますが目覚めた後は良好です」
「零、ご苦労様です」
「はい……ですが母様、このままでは被害が増える一方です。やはり少しばかり強引な手を使ってでも」
「零、貴方の気持ちは分かります。ですが、力で押さえつけても反感を買います。そうすれば悪魔側もこれまで以上の反抗を見せるでしょう」
「………分かりました。母様がそう仰るなら……!?」
零は突然、右眼を抑える。右眼は赤い光を放っている。
「「「零!?」」」
天照、月読、素戔嗚が零に駆け寄った。
「ジャンヌ?………アーシアの身に何か在ったのか?」
零は直ぐに立ち上がると、スマホを取り出し自分の家に電話を掛ける。
『もしもし、天王理です』
「オーフィスか?俺だ……アーシアは帰っているか?」
『零……アーシア、黒歌達と帰って来た。でも出掛けた』
「何処に!?」
『えっと……白音、アーシア何処行った?………分かった、ランニングに行ったって言ってる』
「ランニングに……もしかして、ファーブニルは部屋に居たりするか!?」
『うん、アーシアのベッドで寝てた。そう言えば十字架も置いてた』
「それでか……」
『零、何かあった?』
「アーシアが攫われた、多分攫ったのはあの野郎か………」
『?!……零、我もアーシア助けに行く』
「あぁ、直ぐにそっちに戻るよ」
零は通話を切ると、天照へと顔を向ける。天照も事を察したのか直ぐに頷く、それと同時に零は駆け出した。
~数十分前~
「はぁはぁ……」
アーシアは帰宅すると、体操服に着替えてランニングに出掛けた。
「はぁはぁ……こんなんじゃ、また零さんの足を引っ張っちゃいます。頑張らないと」
アーシアは二人三脚で零の足を引っ張らない為に、自らランニングをしていた。
「アーシア」
「えっ……貴方は…確かディオドラさん」
「そうだよ、アーシア。今日は君を迎えに来たんだ」
「どういうことですか?」
「アーシア……君には私の妻になって欲しい」
突然、アーシアに求婚してきたディオドラ・アスタロト。ディオドラはアーシアの手を取り、手の甲にキスをした。
「えっあっ……その私……」
アーシアは何故か、ディオドラから悪意を感じた。それが何故悪意だと思ったのか、アーシアにも分からなかったがそう直感した。
「ッ……ごっごめんなさい、私」
アーシアは手を振り払い、直ぐにその場から逃げ出そうとする。しかしディオドラに腕を掴まれ、突然気が遠くなっていく。
「全く………この僕から逃げようなんて……大丈夫だよ、アーシア。伝説の戦士とは言え、たかが極東の神の1人。この僕が葬って、忘れさせてあげるよ。ククク……アハハハハハハハハハ!」
醜悪な笑いを響かせて、アーシアを抱え何処かへ消えてしまった。
~次回予告~
攫われたアーシア。
禍の団と協力している事が発覚したディオドラ。彼の自信の裏には何かがある事だろう。
しかし、零は止まる事はない。
零はアーシアを助けるべく、冥界へと降り立った。例えどんな罠があろうとも、その歩みを止める事はない。
アーシアを助けるべく、ディオドラの前に立った零。緑の宝石を携え、その怒りを、命を燃やす。
次回……EP85 降臨、破壊神
「緑の宝石……これが勝利の鍵だぁぁぁぁぁ!!!」