ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く 作:始まりの0
EP82 現れた悪魔の貴公子
~駒王学園~
ロキの事件………朱乃と朱璃の再会から少し経った頃、夏休みも終わり二学期が始まった。一誠もどうやら生き残った様で登校していた。
零や日本神話と悪魔側との関係は悪い方向に進んでいるが、零自身は転生悪魔である一誠や朱乃逹とは事を構える気はないらしい。零本人は純粋な悪魔……リアス達を嫌っているが、それは個人に対してだけか、悪魔と言う種族に対してなのかは未だ不明である。
そんな中で転生天使となった紫藤イリナがこの駒王学園へと転入してきた。美少女が転校してきたので、一時的に騒ぎになった。特に一誠は幼馴染と言う事で、クラス中の男子達に嫉妬と羨望の眼で1日中睨み続けられた。
放課後になると、一誠の家に集まっていた。
零は行くつもりはなかったものの、アーシアがイリナとどうしても話をしたいと言う事で着いてきたのだ。
「えっとそう言う事で、転生天使の紫藤イリナです。悪魔の皆さんとは色々とあったけど、これからも仲良くして下さいね」
と挨拶するイリナ。天使側も悪魔と堕天使と協定を結んだので争う事はない様だ。だがそんな事は零にとって関係ない。
「さて……紫藤イリナとか言ったか、コカビエルの事件の時は色々とアーシアの事を侮辱してくれたっけ」
零は以前にイリナとゼノヴィアがアーシアの事を異端や魔女などと言った事を覚えていた。イリナとゼノヴィアは笑顔の零の方に視線を向けた、完全に目が笑ってない。
「えっと……アーシアさん!あの時は本当にごめんなさい!!!」
イリナはアーシアに言った事を思い返し、直ぐにアーシアに謝罪した。
「どうする、アーシア?お前が許せないなら、俺が八つ裂きにするけど」
《アーシアたんを侮辱したって!?アーシアたん、俺様がそんな天使倒す!》
アーシアの髪の中から小さくなったファーブニルが出て来た。彼のドラゴンもイリナがアーシアを侮辱したと聞いて出て来た様だ。
「ぜっ零さん!ファーちゃん!私は気にしてませんから!イリナさんも顔を上げて下さい」
ファーちゃんと言うのはファーブニルの事の様だ。
「アーシアがそう言うなら……おい、トカゲ!何処から出て来てんだ!」
零はファーブニルを掴み上げると、アーシアから引っぺがした。
《ぁ~!楽園から離さないで、死ぬ!?アーシアたんの匂い嗅いでないと死んでしまう!》
零の手の中でそう叫びながら、もがいているファーブニル。
《その声……その力、まさかお前ファーブニルか!?》
一誠の左手の甲が光り、ドライグの声が聞こえてきた。この小さなドラゴンが五大龍王のファーブニルだと聞いて、零達以外はかなり驚いている。
《あっドライグ、久しぶり》
《なんで、お前そんな姿に》
《アーシアたんと契約した》
《はぁ?!あの財宝以外にあんまり興味のなかったお前がなんで!?》
ドライグもかつてのファーブニルからは考えられない行動だったらしく驚いた。
《始めは人工神器を作るからって言うアザゼルと宝と引換えに契約していたけど………酒・煙草臭いおっさんより、金髪超絶美少女の方がいいじゃない、だからアーシアたんと契約した。因みに対価はアーシアたんのパンツ……その場で脱いだ脱ぎたてが良かったけど、この銀髪がうるさいから譲歩したけど》
《パンツだと!?おっお前、そんなキャラだったか?!》
《ドライグ、俺様は真実に辿り着いた事で変わった。金髪美少女のパンツこそ世界で最も尊い至宝だと………ドライグだって、変わった》
《心外な!俺は変わってない!》
《でも聞いた……確か【おっぱいドラゴン】だっけ……後【乳龍帝】》
《うわぁぁぁぁぁっぁん!その名で呼ぶなァァァァァァァ!!》
【乳龍帝】とは、乳を揉んだり、突いたりしてパワーアップしている一誠についた名である。また悪魔世界では一誠をモデルにした【おっぱいドラゴン】と言う名のキャラが作られた、歌まで在り、その制作にアザゼルやサーゼクスまで関わっている。正直言うと、子供には悪影響を及ぼしそうだ。
かつて【赤龍帝】【赤き龍の帝王】と畏れられたドライグにとって、不本意過ぎる名前である。その名の性で、精神的に追い詰められているドライグ。更に旧友の変貌ぶりを見て更に苦しむ事になった様だ。
「まぁいい。アーシア、そろそろ帰るぞ。今日は買い出しに行かないといけないからな」
「あっそうでした、今日は私と零さんが当番でしたね……じゃあ皆さん、失礼します」
零とアーシアは買い物の為に家から出ていった。
「ご主人様も居なくなったし、私達も帰るにゃん。白音、ギャスパー」
「そうですね、此処にいる意味ありませんしね……帰ろう、ギャーちゃん」
「えっあっ……うん」
この場には黒歌、白音、ギャスパーもいた。ギャスパーは未だリアスの眷族悪魔である、ギャスパー自身もこのままではいけないと思っている。転生悪魔でいるか、転生悪魔を止め吸血鬼に戻るか……しかし未だその答えはでない。零からすれば転生悪魔であろうと、なかろうとどちらでもいいと考えているが……できれば吸血鬼に戻って欲しいと本心では思っていたが、ギャスパーの意志を尊重しこのままでいる。
ギャスパーは家から出る前に一瞬、リアスの方に視線を向けた。ギャスパーにとって、リアスも苦しんでいた時に助けてくれた恩人で在る為に、二つ返事で眷族悪魔を止めるとは言えないのだ。
「ギャスパー……私は」
リアスはギャスパーに手を伸ばそうとするが、零の言葉を思い出し手を止めた。かつて自分が彼女にしていた事は、彼女の為と思ってしていた事だがそれが彼女を苦しめていた。リアスの行動がギャスパーを護る為とはいえ、彼女の成長を止め、
「部長……ごめんなさい、ボクは未だ決められません。でも何時か必ず答えを出しますから」
「ギャスパー……貴女」
そう言ったギャスパーの眼には今までの彼女にはなかった強さがあった。それを見て、ギャスパーがこんなにも力強い目した事に対する驚きと、その強さを与えたのは自分でない事に無力感を感じた。
「えぇ……分かったわ。貴女がどんな答えを出したとしても……私はそれを受け入れるわ」
リアスの言葉を聞き、ギャスパーは一礼するとその場から去った。リアスは哀しい感情が沸いてきて、それが顔をに出ていたのか、朱乃や裕子、一誠、ゼノヴィア達が心配そうに見ていた事に気付いた、リアスは直ぐに表情を戻し笑みを浮かべた。
~駒王街 商店街~
「零さん、今日は何にするんですか?」
「何にしようか………昨日はカレー、一昨日は生姜焼き、その前は………」
「確か、オーフィスちゃんの要望で肉じゃがでした」
「そうだったな……カレーはオーフィスと白音が食い尽くしてないし……そうだな、《ご主人様、メールです》」
零の持つスマホからそう音声がなる。因みに音声は白音に吹き込んで貰った物である。白音の声である。
「重要だから二回言いましたが、何か?」
「どうしました?」
「いや何でもない………何々……『今日は新月で暇なので遊びに行きます、愛しの姉より』月姉……母様と叔父上は神無月の用意で忙しいから来れないのに、アンタだけ来たら後で大変な事になるだろうに」
零はそう考えて、返信の分を打ち込んだ。
「『後で母様達にバレたら面倒なので来ないで下さい。と言うか、新月とは言え仕事あるでしょう?仕事を放ってくるなら、今度の(子供姿での)お出かけは無しで』送信っと」
送信して数秒も経たない内に、メールが返って来た。
『我慢して、仕事します!なので子供の零とお出かけしたいです!』
メールの文にも関わらず必死なのが伝わってくるのは、神だからだろうか?
取り敢えず、月読が来る事が無くなったので安堵した零はスマホを仕舞う。
「月読お姉様も大変みたいですね……」
事の次第を横で見守っていたアーシアはそう呟いた。因みに、アーシア、黒歌、白音、オーフィスは天照を母、月読を姉、素戔嗚を兄と呼んでいる。
「いや、神様がそう簡単に地上に来るのが問題だよ」
「そうなん……あっ」
アーシアが段差に引っ掛かり転げそうになった。零は直ぐに動き、アーシアを受け止めれる位置に移動した。アーシアを受け止めようとするが、何者かがアーシアを後ろから抱き留めた。
「大丈夫かい?」
「あっ……はい、ありがとうございます」
アーシアを助けたのは緑色の髪の優しげな雰囲気の青年だった。
「お前は………」
零はアーシアを助けた青年を睨み付ける。
「待ってくれ、僕は別に戦いに来た訳じゃないんです。伝説の戦士よ……僕は彼女に会いに来たんです」
アーシアを助けた男、人間ではなく純血悪魔だった。
その名もディオドラ・アスタロト。ソロモン72柱のアスタロト家の次期当主だった。そして、かつてアーシアがその力で助けた悪魔で在った。アーシアが教会から追放され、魔女・異端者などと呼ばれる様になった原因でもある。
しかしアーシアはそれについては後悔していない様だ。今回は先の協定の場でアーシアを見かけ、かつて助けられた事に対する礼を言いに来た様だ。
だが零はディオドラに対して何とも言えない、不安を感じていた。
~???~
何処か真っ暗な空間に零は居た。その向かいには小さな人影がある。
「あの男……どうにもキナ臭いな」
『そうですね……どうにもあの笑顔の裏に何かありますね。昔、見た事があります』
「それはお前の経験か?」
『えぇ、私はこれでも星のトップ。取り入ろうとしてくる輩もいましたよ……』
小さな影は笑いながらそう言った。
「もしもの場合に備えてアレを取りに来たんだ。まぁこの力まで使う必要があるかどうかは分からんが……俺の身内にッ手を出す事がどう言うことか世界に示さないといけないからな」
零が小さな影の後ろを見ると、1人の男性が立っていた。
『私は君の行動を信じよう』
男は零に近付いてきて、自分の首に掛かっていたペンダントを零に渡した。
「ありがとう……【 】も、もしもの時は頼むよ」
『えぇ、任せなさい』
零はその言葉を聞くと、その場から消えた。この空間には小さな影と男が残った。
『それにしても、まさか貴方と再びこうして顔を合わせる事になるとは……』
『それは此方もだ、まぁ過ぎた事を言っても仕方ないだろう』
『ですね……では呼ばれるまで私達も準備をしておくとしましょう。彼がアレを使う時は、怒った時ですからね』
『あぁ……そうしよう』
2つの影は会話を終えると、そのまま消えてしまった。