ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く 作:始まりの0
零の
零は一誠と親子水入らずで話をさせる為にその場から離れていた。
「なぁレイ」
「なんだ?」
「なんで死んだ筈の朱乃さんのお母さんが?」
「俺が冥界から呼んだから……姫島朱乃にはどうしても父親であるバラキエルと母親である姫島朱璃の言葉が必要だからだ」
「どういうことだ?」
零の言葉が良く分からない一誠。
「お前には分からんだろうが………俺や姫島朱乃にとって父親や母親って言うのは本当の意味で味方なんだ」
「父さんや母さんは普通、子供の味方だろう?」
「はぁ……そうだな……だが俺達の様な存在からすれば……まぁ言っても分からんだろう。取り敢えずは見守ろう」
~零により作り出された朱乃逹の実家~
朱璃は戸惑っている朱乃とバラキエルの手を引いて家の中へと入って行く。朱璃は玄関に入ると、2人の手を離し振り返った。
「しゅ……り」
「かあ……さ…ま」
「朱乃……あなた…おかえりなさい」
それは昔と変わらない笑顔、朱乃とバラキエルが失ってしまった決して戻らぬ筈のもの。だが零の想いにより起きた奇跡により、この時だけ蘇えった。
「あぁぁぁぁぁ…朱璃!」
「母さま!」
2人は
「た…だい…ま。済まなかった……朱璃、私が……私がもっと早く……いやあの日、あの時、家に居さえすればぁ!!」
バラキエルの最大の後悔、朱乃と朱璃が襲われた日の事だ。本来なら、堕天使の仕事は休みの筈だったが急用であった為にアザゼル直々に呼び出しが掛かった。
あの時、自分がそれを是が非でも断っていれば朱璃を救える可能性があった。そして朱乃の心に深い傷を負わせる事もなかった………それだけ長い時を生きた中で彼の最大の後悔だ。
「あなた……私はあなたの事を恨んでなんていません。あなたがあの時、居なかったのは偶然です。あなたにはあなたの務めを果たした………それに私は後悔はありません」
朱璃にとっては、あの事件は起こるべくして起こったことだと考えていた。朱璃自身も朱乃を産んだ時から、何時かあの事件が起こると思っていたのだろう。朱璃の立場とバラキエルの立場を考えれば当然の事だろう。
「朱乃……ごめんなさい、貴女を残して逝ってしまって」
「違う!母さまは何も悪くない!悪いのは……悪いのは私……私がいたから…私が産まれたから」
今にも消えそうな声でそう言う朱乃。
朱乃は自分さえ、居なければ母が死ぬ事はなかったのではないかと考えていた様だ。
「いいえ、朱乃。そんな事はないわ……私は貴女を産まれて後悔なんてした事ない、だって貴女は私と私が愛したこの人との可愛いくて……愛しい娘なのよ。だからそんな事を言わないで」
朱璃はゆっくりと朱乃の頭を撫でる。
「貴女が私のお腹に宿った日…それを知ったこの人が泣いて喜んだこと…私のお腹を始めて蹴った日のこと……貴女が産まれた日のこと、初めて貴女が笑った日のこと、立った日のこと、私やこの人の事を父と母と呼んだ日のこと……貴女と過ごした日々は私にとっても、この人にとっても宝物よ。それに……私は貴女の母親……母親として貴女を守れたんですもの……後悔なんてないわ」
朱璃は母親として朱乃の成長を見届けたかっただろう………しかし彼女はその身を呈して愛する娘を守った。母親として娘の命と未来を守ったのだ、それに後悔があろう筈がない。
「朱璃…」
「母さま…」
「さぁ……入りましょう……私達の家に」