ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く   作:始まりの0

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EP76 神って何だろう?

 ~高天原 天照の神殿~

 

 先のロキの起こした事件から数日が経った。そして日本の神々の世界高天原は事件の影響も殆どなく、何時も通りだった。高天原の中心にある太陽神の神殿。そこには最高神である天照大御神、その人が住んでいる。

 

 

「ぜろ~、オムツを変えましょうねぇ~」

 

 その天照はと言うと、赤ん坊(1歳くらい)の零【半身】のオムツを換えている。

 

 零は先の事件の際に現れた原初世界の女神ルシュカスとの戦いの影響で、2人に別れ子供になってしまったのだ。天照はそれを連れ帰り面倒を見ている。

 

 始めの数日は苦しむ【分身】と【半身】を見て慌てていたのだが、苦しみは無くなった様で2人?は元気に遊んでいる。

 

 

「はい、綺麗にしましょうね~」

 

 

「あ~う~まぁ~」

 

 

「はいはい、母でしゅよ~」

 

 赤ちゃん言葉で話しながら、手際よく零【半身】のオムツを換えていく。流石は零を育てた母と言うべきだろう。今までで一番活き活きとしているのは気の性だろう。

 

 

「ははしゃ……おにゃかしゅいた」

 

 そう言ったのは5歳ほどの子供になっている【分身】の方だ。【分身】の方は綺麗な着物を着せられ、子供用の小さな椅子に座らされている。

 

 

「直ぐに作ります、待って居て下さいね」

 

 

「はぁ~い」

 

 素直に返事をする【分身】。天照は【半身】の方のオムツを換え終えると、【分身】のご飯を作る為にその場を離れた。

 

 

「零さん、可愛いですぅ」

 

 

「あーしあねぇちゃん……だっこぉ~」

 

 

「っ~……もぅ死んでもいいです」

 

 子供に抱っこをせがまれて顔を真っ赤にして倒れるなど、駒王学園では清純金髪美少女、天使と言われ彼女にしたいランキング上位に居るアーシアに有るまじき絵だ。多分、鼻から出ている赤い液体は幻覚か何かだろう。

 

 

「ご主人様、私が抱っこするにゃ~、はぁはぁ」

 

 いうまでもなく黒歌だ、こっちは完全に発情してる。眼はグルグルと周っており、顔は茹蛸の様に赤い。とても冷静な判断が出来る様な状態ではないだろう。

 

 

「姉様、今のその状態で近付かないで下さい」

 

 

「ぐほっ!……しっ白音……酷い」

 

 

「例え姉様でもご主人様に危害を加えるなら許しません……」

 

 興奮し息を荒げながら怪しい手つきで近付く黒歌(変態)の鳩尾に渾身の一撃を放ち床に沈めた。

 

 

「………零、可愛い」

 

 

「はわぁ……天王理先輩可愛いですぅ」

 

 気が付けば【半身】を抱っこしていたオーフィス、そして赤ん坊の【半身】を眺めているギャスパー。

 

 

 《ドドドドドドドドドドドドド》

 

 

「「「「「???」」」」」

 

 此処にいる全員が謎の騒音に首を傾げている。その音は入り口から聞こえてきた、皆は揃って入り口の方に視線をやる。

 

 

 《ガッ!ガッ!ガッ!》

 

 誰かが扉を開けようとしているが、天照が小さい零が外に出てしまわない様にと閉めて行ったのだ。

 

 

『クソあかねぇ!姉上のやろう、結界張ってやがる!』

 

 

『姉上め、小さい零を……2人になった零を1人じめなんてずるい!ぐぬぬぬぬぬっ』

 

 

『姉上、退け!扉は結界ごと叩き斬る!!!どせぇぇぇぇぇっぇぇい!』

 

 ピシッ!という音と共に扉がバラバラになってしまった。

 

 

「零~お姉ちゃんがきたぞ!」

 

 

「零!父だぞ!!」

 

 そこにいたのは勿論、親バカその2、その3……もとい月読と素戔嗚だった。

 

 

「?」

 

 

「ぁ~ぅ~」

 

 2人の零の至っては何が起きたのか分かっていない様だ。

 

 

「てっ………天使だ」

 

 

「おぉ……楽園は此処にあったのか」

 

 2人の零を見た、月読と素戔嗚は長年の旅の末に楽園を見つけた旅人の様な顔をしていた。だが、2人は此処が何処なのかを忘れて居る様だ。

 

 

「ぁ~きゃぅ~」

 

 

「つ~ねぇ~、す~お~」

 

【分身】と【半身】は月読と素戔嗚の姿を確認すると、手を伸ばしている。本人達は神の威厳はどうしたと言うぐらい、デレデレな顔をして歩を進めようとした。

 

 

「ははしゃ」

 

 

「まんまぁ~」

 

 

「「……………………」」

 

 その言葉を聞いて、月読と素戔嗚の顔から血の気がさぁー引いた。2人の周りだけ、氷河期が来た様に温度が下がる。そしてギギギギッと錆びついたブリキ人形の様な動きで振り返ると、そこには2人が最も恐れる存在が居た。

 

 

「月読……素戔嗚……貴方達何をしているんですか?」

 

 

「いやあの……その……あっ姉上様」

 

 

「そのあの………これはなんといいますか」

 

 

「仕事はどうしてのです?それよりも結界が張ってあったと思うのですが………何故、扉がバラバラになっているんです?」

 

 ニッコリと笑っている天照。その手には零の食事の乗ったお盆がある。天照は妹・弟の間を抜けると、部屋の真中にある大きな机の上に置いた。

 

 

「はぁ~い、零……ご飯でしゅよ」

 

 

「ははしゃ……まんま、まんま」

 

 母の登場に喜んでいる【分身】、健気に手を伸ばしている。天照は【分身】に近付くと抱き上げて食事のある机まで向かった。

 

 

「「…………(こっ此処は一時的に……戦略的撤退だ!くっ!零、許せ!)」」

 

 と考えながらその場から逃げ出そうとしていた。流石の彼等も命は惜しい様だ。

 

 

「月読、素戔嗚」

 

 

「「はっはい、姉上」」

 

 優しい声で声を掛けられたが逆にそれが途轍もなく怖い。

 

 

「扉、直して下さいね」

 

 と言っている天照は椅子に座り、【分身】を膝に座らせている。この時、危機的状況にも関わらず2人はこう考えていた。

 

 

((何故だ!何故、自分はあそこにいないんだぁ!?))

 

 天照の位置に何故自分がいないのかと考えていた、此処まで来ると親バカも極まっている。

 

 

「何を考えているかは知りませんが……直してさっさと仕事に戻りなさい」

 

 完全に怒っており、表情も誰が見ても怒っているのが分かる様なものだったが、それを見せまいと【分身】の目を自分の手で覆っている。【半身】の方は背の方にいるので見えないのだ。

 

 

「だっ…だって!姉上だけズルい!小っちゃい2人の零を1人締めなんて!」

 

 

「そっ…そうだ!そうだ!俺達だって小っちゃい零を愛でたい!」

 

 そう抗議する月読と素戔嗚、本当に神なのかと言いたくなる。こんな所、他の者達には見せられない。

 

 

「ホホホ、相変わらず騒がしいのぅ」

 

 

「「「ゲッ……」」」

 

 

「ゲッとは何じゃ!ゲッとは……」

 

 その声の主はオーディンだった。この主神もまた零を見に来た様だが、三貴士達は露骨に嫌そうな顔をしている。

 

 

「じぃーじ、じぃーじ」

 

 

「ホホホ、零、久し振りじゃのぉ……ほれっ土産じゃ」

 

 

「月読!素戔嗚!その変態を排除なさい!そうすれば此処に居ていいです!」

 

 

「よしっ!」

 

 

「爺!覚悟!」

 

 小さい零に変態を近づけさせまいとする三貴士VSただ孫を可愛がりに来た北欧神話主神の戦いが今、始まろうとしている。

 

 

「ただ孫に会いに来ただけなのになんじゃこの扱いは!?」

 

 日頃の自分の行いが悪いのがいけないのだが、本人は気付いていない。

 

 

「「「己の日頃の行いを考えろ!」」」

 

 天照は【分身】を目覚めたアーシアに渡し三種の神器を、月読は刀を、素戔嗚は天羽々斬を、オーディンはグングニルを装備し今にも戦闘を始めそうな勢いだが、予想外な事が起きた。

 

 《とてっとてっ》と可愛らしい足音で両者の間に現れたのは、【分身】だった。その後ろには【半身】が這い這いしてやって来た。

 

 

「「「「零?(可愛いなぁ~)」」」」

 

 

「ケンカ、メッ!」「たぃたぃ」

 

 喧嘩を駄目だと言いに来たらしい。ケンカの原因が止めに来るとは予想外である。

 

 

「きりゃい!」「りゃい!」

 

【分身】と【半身】がそう言って頬を膨らませ、プイッとそっぽを向く。端から見れば小さい子供の事なので可愛いなぁと終わるのだが……。

 

 

 天照[level:100(Max)、種族:神、HP:9999]

 

 月読[level:100(Max)、種族:神、HP:9999]

 

 素戔嗚[level:100(Max)、種族:神、HP:9999]

 

 オーディン[level:100(Max)、種族:神、HP:9999]

 

 零【分身】&【半身】[level:1、種族:神・人、HP:10]

 

 

 

 

「「「「がはっ!!!」」」」

 

 零Loveの親バカ・爺バカの当事者達にはかなりのダメージの様で、吐血までしている。

 

【分身】&【半身】の「嫌い(言葉)攻撃」。

 

 天照、月読、素戔嗚、オーディンに9999のダメージ。天照達は何とか踏ん張った。

 

 

 天照達[HP:1/9999]

 

 

「ぜっ……零?」

 

 

「きっ嫌いなんて……嘘だよな?」

 

 天照と月読は震える手を零達に伸ばした。

 

 《ペシッ》

 

【分身】は天照と月読の手を叩いた。天照・月読に99999のダメージ、OVER KILL。

 

 

「ぜっぜろ……がくっ」

 

 

「きらわれ……た……がくっ」

 

 天照と月読は戦闘不能となった。

 

 

「ぜっぜろ……うそだよ…な?」

 

 

「じぃじぃが嫌いなんて……嘘…じゃよな?」

 

 

「りゃい(嫌い)」

 

【半身】の追い打ち、素戔嗚とオーディンに99999のダメージ、OVER KILL。

 

 

「がふっ……」

 

 

「ぐぅ……」

 

 素戔嗚とオーディンは戦闘不能となった。

 

 

 -GAME OVER―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~その頃、人間界では~

 

 

「大変だぁ!突然、皆既日食が!」

 

 

「温度が氷点下に!?」

 

 

「あんなに綺麗だった満月が消えた!?」

 

 

「海の魚たちが!」

 

 

「もの凄い竜巻が来るぞ!」

 

 太陽神・天照と月の神・月読が倒れた影響で、地球を照らす太陽の光は閉ざされ、夜を照らす月の光まで無くなってしまった。その性で、地球の温度が低下し、植物は枯れ、動物達も騒ぎ出している。海を統べる素戔嗚が倒れた事で海はその力を失い、生命が生きる事ができなくなり、オーディンが倒れた事で世界が異常気象に見舞われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~高天原 天照の神殿~

 

 高天原もその光を失っていた。

 

 

「ぜっ零さん、そんな事言ったらダメですよ。お義母様達が哀しみます」

 

 と言うより死んでいるのだが……。

 

 

「あーしあねぇちゃん、でもケンカする人…きりゃい」

 

 

「ケンカをしなければいいですよね?」

 

 

「ケンカしにゃい?………ケンカしにゃいははしゃ、つ~ね~、す~お、じぃじはしゅき!!」

 

 

「ちゅき!ちゅき!」

 

 その時、奇跡は起こった。【分身】と【半身】の言葉で天照達は復活した。

 

 

「零!そうですよね!ケンカは駄目ですよね!母が悪かったです、許して下さいね!」

 

 

「お姉ちゃんが悪かった!ケンカなんてしないからな!」

 

 そう言って、【分身】に縋り付いている太陽神と月神………人々が見れば信仰を失いそうだ。

 

 

「ケンカしにゃいならいい、ははしゃ、抱っこ!つ~ね~、ごはん!」

 

 

「「ぶはっ!……胸が……胸がキュンキュンします(する)。我が子(弟?)にこの様な感情を抱いては……ぶつぶつ」」

 

 完全に母性本能をやられ、越えてはいけない一線を越えそうな太陽神と月神……本当に神としてのプライドは何処に行ったのだろう?

 

 

「ははしゃ!つ~ね~だっこ、だっこ……ごはん!ごはん!」

 

 

「そうですね!ご飯にしましょうね!母が抱っこして上げます!(だくっだくっ」

 

 

「お姉ちゃんが食べさせてやるからな!(だくっだくっ」

 

 鼻血を流しながら【分身】を抱え、机に向かう太陽神と月神。【分身】にかからないのは神の力だろう……そう言う事にしておこう。

 

 

 

「零!父ちゃんが悪かった!だから許してくれ!」

 

 

「じぃじが悪かったのじゃ!許しておくれ!」

 

 揃いも揃って赤ん坊に頭を下げている神々。

 

 

「きゃぅ~」

 

 頭を下げている素戔嗚とオーディンの頭を撫でている【半身】。2人は顔を上げると満面の笑みを浮かべている【半身】。

 

 

「父を許してくれるのか!お前はなんて優しい子なんだ!」

 

 

「儂の孫はなんて優しいんじゃ!儂の孫は世界一じゃー!」

 

 と【半身】を抱き上げ、叫んでいる素戔嗚とオーディン。もし零が何時も通りなら恥ずかしさのあまり、2人を問答無用で沈めているだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~人間界~

 

 太陽と月が復活し、海は平穏を取り戻していた。以前よりも、穀物の実りや瀕死状態の人々や動物達が元気になったのは不思議な現象として少しの間、話題になったが原因は不明である。


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