ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く 作:始まりの0
~零side~
「ウオオオオォォォォォ!!」
零は大剣とは思えない程の速さで剣を振るい続けている。
「アハハハハハハハ!!!」
ルシュカスも零と同じか、それ以上の速さで大鎌を振るい続けている。2人の剣と鎌がぶつかり合い、火花を散らし続けている。零の頬には大鎌で斬られたのか血が出ていた。
「(そろそろか。まだやり足りないが……前の様に世界を壊す訳には)【ソウルコード:スカサハ・ゲイ・ボルグ】」
「神殺しを捨て、槍を蹴りあげて一体何を?」
零はそう呟くと、大剣を放り投げ紅い槍を取り出した。一旦距離を取ると、槍を軽く投げ、ゲイ・ボルグを足で蹴り上げる。零もそれを追い、飛び上がった。
【お主が自分の都合で本気の殺意を放つとは……滅多にないことじゃな】
「俺だって感情はある、喜び、悲しみ、怒るんだよ………だから此処で穿つ!」
【良かろう……その様なお主も悪くない、儂も力を貸そう!加減はせぬぞ!】
零はその身に宿るスカサハと会話を終えると、槍に追い付いた。零の右眼が、一瞬輝くと1本だったゲイ・ボルグが10本になっていた。
「【メモリーコード:ザ・ワールド!】」
零はザ・ワールドを使用し時間を停止させる。ギャスパーの魔眼は聖剣や魔剣、神に近い存在の時間は停止する事はできないが(正確にはそれ相応の力を持てば可能になる)、ザ・ワールドは
「【
オーバーヘッドキックで槍をルシュカスの方に向かい蹴り出した。凄まじい勢いで蹴り出された槍は幾本にも分裂しザ・ワールドの効果で停止する。ほぼ一瞬で10本を蹴り終えると、ゆっくりと地面に降りた。
「そして時は動き出す……穿たれろ、塵芥」
「まさか時を止めて……(流石にこの数を捌き切るのは……唯の槍なら未だしも零様の力が篭った魔槍、簡単に消す事はできない)」
零がそう言うと、ザ・ワールドの効果が解け時が動き出した。百…千…万…億を越えるゲイ・ボルグがルシュカスに降り注ぐ。ルシュカスは一瞬で状況を理解し、次にどう動くかを判断した。
「フフフ……ウフフフ、そこまで本気で私を殺そうと……今の貴方の中は私を殺す事で一杯……私で満たされている。フフフ…アハハハハハ!良いですわ!捌き切ってみせま『ガシャン』えっ?」
ルシュカスが大鎌を振るおうとした時、鉄の音がして身体の動きが止まる。ルシュカスが視線を落とすと空間の歪みから鎖が出ており、ルシュカスの身体を拘束していた。
「【メモリーコード:
ルシュカスが視線を上げた瞬間、その視界は深紅に染まった。
「くっ……ククク…アハハハハハハハハハハ!!ハハハハハハハハハハハハハ!!!」
零が笑いながら右手を上げると、離れた場所に突き刺さっていた神殺しの大剣が脈動を打ち、主の元に飛んだ。跳んできた大剣を受けると、軽く振るう。そしてゲイ・ボルグによって蜂の巣状態のルシュカスの方へ歩を進める。
「どうだ、串刺しにされる気分は?」
「ぅ……ぐぅ……っあ」
「喋れぬほど痛いか?クハハハハハハハハ!いい様だな」
零の全身の紋様と両目の瞳が光っている。そして狂気の笑いを続けている。それに呼応する様に神殺しの刃がゆっくりと廻り始めた。
「っう………(これは違う、零様ではない)きさ……ま…なにも…のだ?」
「ぁあ?我は我以外の何者でもない」
「ち…がう……違う!お前は零様ではない、一体なにも……ぐぅ」
壊れた様に笑う零に向かい、何者かと問うルシュカス。ルシュカスの眼には……いや原初の神の1人のルシュカスだからこそ、今の零がこれまでの零とは違う事に気付いた。
「フン……貴様が知らぬだけだ。この我の、さっきまでの俺も……何も変わらぬよ。今すぐにでも貴様の存在を消してやりたいが……母様達の許可のない以上、消す訳にはいかない。だが最高神の許可なく可能性の世界に介入した罰は受けて貰う」
零はそう言い、神殺しを地面に突き刺した。突き刺した神殺しから黒い鎖が放たれルシュカスの身体を拘束する。
「ぁああああああああ!」
鎖はルシュカスの身体に溶ける様に消え、身体には黒い紋様を残した。紋様が火の様に赤くなると、ルシュカスに激痛が襲いかかる。
「苦しむがいいさ………」
「ぐぁ……っ……何故……何故!?今まで神殺しを……」
「使わなかったか?……俺は貴様の様に私怨で世界を壊すつもりはない。今回は条件が揃っていたんでな、遠慮なく使わせて貰っただけだ。そろそろ貴様の顔を見るのも胸糞が悪い、さっさと原初世界に還れ、クソアマ。さてそろそろか」
零はそう言うと、グングニルの方向を見た。
~一誠side~
一誠は巨大化したミョルニルを持ちながら、零が放り投げたロキのグングニルに向かい歩いていた。
「ぐおぉぉぉぉぉ……このハンマー重たい、それだけじゃねぇ……なんか見えない何かに押しつぶされそうぉぉ……ぜぇぜぇ」
一誠は途中で支えきれなくなったのか、ミョルニルを地面に落とす。完全な禁手化した一誠ではあるが、辺りに漂うのは零とルシュカスの神の力……神気ともいえる。常人では神気に当てられただけで全身を硬直させ、呼吸すらできなくなり死に至るだろう。例え神の使いの天使や戦乙女と言えど、気を失うだろう。悪魔にとっては毒にも等しいが、一誠には二天龍と謳われたドライグが宿っている影響か死にはしないだろう。
しかし鍛えたとは言え、濃い神気と殺気の充満したこの場では殆ど動く事ができない。ミョルニルを引き摺りながらも歩けているのは気合いだろう。
「あともう少し……少しなのに……もぅ……気がとお…く……」
一誠はグングニルの元まで十数メートルの所まできたが、限界が来たのか倒れそうになる。
「おい!赤龍帝の小僧!気をしっかりもて!」
その声で一誠は沈みかけた意識を持ち直した。そして身体が少しだが軽くなった事に気付き横を見た。
「アンタ……なんで」
「奴に負けた以上、世界に終焉を齎すのはまだ先だ。それまでに世界が破壊させるなどさせん……私とて神だ、誓った以上は守るさ。それよりも赤龍帝の小僧!貴様こんな所で倒れるつもりか?」
「クッ……こんな所で倒れてたまるか……でも身体が」
「これだから身の程も弁えぬ輩は……ん?オーディン?」
ロキの耳元に魔法陣が現れ、そこからオーディンの声が聞こえてきた。
「何の用だ!老いぼれ!」
『誰が老いぼれじゃ!お主といい、零といい皆、儂を年寄り扱いしおって!』
「それよりも何の用だ!?唯でさえ、神気と殺気に満ちてるこの場は一瞬も気を抜けんと言うのに!!」
『用があるのは儂ではない!リアス姫じゃ……』
オーディンがそう言うと、続いて声が聞こえてきた。
『『『イッセー(君)!』』』
聞こえてきたのは、リアス・朱乃・裕子の声が聞こえてきた。どうやらリアス達がどうにかして一誠に連絡する手段はないかと考えオーディンに頼んだのだろう。そこに偶々一誠を助けたロキが現れたので、ロキに連絡を入れたのだろう。
『イッセー君!それをやり遂げたら私がどんなプレイでもしれ差し上げますわ!』
「ほっ本当ですか!?朱乃さん!」
『ぼっボクもちょっと恥ずかしいけど……頑張るよ!イッセー君!』
「きっ木場……」
『イッセー!頑張りなさい!がっがんばったら……私を……好きにしていいわよ』
「部長……すっ好きにしていい……なんて素晴らしい言葉なんだ。おぉぉぉぉぉぉぉ!しゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
《Welsh Dragon Over Drive!》
赤龍帝の鎧の各部の宝玉が眩い光を放ち、背の翼が1対増えた。そして全身からは深紅のオーラが立ち昇っている。
《相棒!この状態なら、この場で動ける。しかし保って10秒だ!さっさと終わらせろ!!!》
「おう!でも凄く身体が重いんだが…これは何とかなんないの!?」
「例え赤龍帝の力と言えどこの力は何ともなるまい。私の力も分けてやる、さっさとしろ」
ロキがそう言うと、一誠の背に触れた。ロキの手から凄まじい力が一誠に流れ込んだ。
「ッ!!!なっなんだ……すげぇ力だ」
「当たり前だ、貴様等は神を甘く見過ぎだ。今、貴様に渡した物など本来の1000分の1だ」
「こっこれで1000分の1!?嘘だろ!?」
一誠は流れ込んできた凄まじい力が、1000分の1と聞き驚いている。
「フン……そんな事より、さっさとしろ!本当に世界が壊れるぞ!」
「あっ……よっしゃあ行くぞ!うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
《Transfer》
一誠はロキにそう言われると、背の4枚の翼を羽ばたかせ飛び上がった。そして、ミョルニルを振り上げ自分の力とロキから貰った力を譲渡した。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
巨大化し放電している戦神の大槌は一誠により、グングニルに振り下ろされた。グングニルとミョルニルが衝突し凄まじい光が辺りを覆い尽くした。