ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く   作:始まりの0

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EP72 赤龍帝、覚醒。一誠はやっぱり一誠だった。

 ~オーディンside~

 

 

「拙いのぅ」

 

 再び開始した零とルシュカスの戦いを見て、大神オーディンはそう呟いた。

 

 

「どういう事ですか、オーディン様?」

 

 朱乃はオーディンにそう尋ねた。彼等には一体何が起きているのか、理解できないまま放置されていた。

 

 

「このままでは本当にこの冥界が崩壊するぞぃ……零も怒りで我を忘れておるし、もしかしたら冥界だけでなく世界の崩壊も在り得るかも知れん(しかし、まだ理性は完全には飛んでおらんのぅ。前に比べれば冷静かの)」

 

 

「そっそんな……そんな事させる訳には」

 

 リアスやソーナ、一誠達が考えたのは、家族の事だった。そして学園での日々のこと、大切な日常のこと。そしてリアス達は無意識の内に身体が動いていた、何とかして零達を止めようする為に。

 

 

「止めい!」

 

 オーディンの声がリアス達を正気に戻し、リアス達は動きを止める。

 

 

「お主達が行っても邪魔になるだけじゃ……神でないお主等では結界から出たらそれだけで死ぬぞ」

 

 リアス達はオーディンが結界を張っている事に初めて気付いた。

 

 

「ッ……ですがこのままでは冥界が」

 

 

「まぁそれについては、零も考えておるんじゃろう。赤龍帝の小僧」

 

 

「えっ……俺?」

 

 

「儂はこの場に結界を張ってるから動けんからのぅ、このミョルニルでそこに突き刺さって居るロキのグングニルを封印せい。そうすれば奴は消えるじゃろう」

 

 そう言いオーディンは担いでいたミョルニルを地面に起き、零が放り投げたルシュカルが使用していたグングニルを指差す。しかし何故、一誠なのだろうか?

 

 

「なんで俺?」

 

 

「儂を除いて、この中でミョルニルを使えるのはお主くらいじゃろうからな。確か……禁手(バランス・ブレイカー)とやらならミョルニルを使える筈じゃ」

 

 

「でもそれなら、そっちの鎧の人達の方がいいんじゃ」

 

 

「こやつ等にはもしもの時の為に此処に残って貰わねばならん」

 

 一誠が言ったのはカノンやサガ達、黄金聖闘士ことだ。しかしルシュカスが万が一此方に来た場合はオーディンが対処する必要がある。そうなればアーシア達を護るのが難しくなるのでサガ達は此処で待機させておきたいのだろう。

 

 

「でも俺……完全な禁手(バランス・ブレイカ―)できないんだけど」

 

 

「なんと?」

 

 

「至る寸前で、何かが足りなくてできないってドライグに言われてるんだけど……何が足りないのか俺にも分からなくて」

 

 

「むぅ……困ったのう。完全な禁手に至っておらんと、此奴は使えん」

 

 ミョルニル、それは北欧神話の戦神トールの持つ大槌。伸縮自在のあらゆる物を打ち砕く槌。それを使うのは生半可な力では不可能、神または神に近い者でないと持ち上げる事さえできない。

 

 オーディンの見立てなら、完全な禁手の一誠ならばミョルニルを完全に使う事は出来なくても振るう事は可能なのだろう。だが一誠は完全な禁手に至っていない、もう少しで至れそうなのだが何かが足りない。

 

 禁手は神器が所有者と共に成長し想い・願いを糧に、世界の流れに逆らう進化を遂げる。一誠の場合は肉体的・精神的にも修行で成長しており、至る事は可能だろう。しかし想いが、願いが足りない。それだけが今の一誠には欠如していた。

 

 

「さて……どうしたものかのう……ムッ!皆、踏ん張れ!デカイのが来るぞぃ!」

 

 オーディンがそう言った瞬間、戦っている零とルシュカスの剣と大鎌が衝突した時、凄まじい衝撃波が放たれた。その衝撃波は辺りに広がり、周辺の物を吹き飛ばす。そして空間そのものを揺らし始めた。

 

 オーディンの張った結界は衝撃波を防いだが、空間そのものの揺れを完全に防げなかった。その揺れにより、結界内に居た、皆は膝を着いたり、武器を地面に刺す事で耐えたが……

 

 

「ぐへっ!?」

 

 匙は転んだ。地面とキスする形で。

 

 

「おっととととと……とととおわっ!『ぃゃん』『はぅん』えっ?」

 

 一誠は体勢を崩し、片足でバランスを保とうと飛んでいると、リアスと朱乃を押し倒す形で倒れてしまった。そして一誠の手は何故か2人の胸のスイッチを押すとなっていた。2人は顔を赤く染めているのは言うまでもない。

 

 

「いやあの……ぶっ部長、朱乃さん……これはその」

 

 

「もうイッセーたら」

 

 

「あらっあらっ、イッセー君ったらこんな時にいけませんわぁ」

 

 

「ごっごめ《いたったぁぁぁぁぁぁぁ!!!》」

 

 一誠が2人に謝罪しようとした瞬間、左手の赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)の宝玉が輝き始きドライグの声が響いた。

 

 

 《嘘だろ!こんな事で至るなんて………俺マジで泣いていいか!?》

 

 

「いや俺もこんな事で至るなんて思ってなかった……」

 

 ドライグは今にも泣きそうな声でそう叫んだ。一誠も予想外だったので唖然としている。

 

 

「若さよなぁ……まぁよい、何はともあれ完全な禁手に至れたんじゃ…ほれっ小僧、早くグングニルを封印するんじゃ!後5分もしないうちに冥界が壊れるぞ!」

 

 

「おっ応!行くぞ!ドライグ!」

 

 《くぅ……泣き言を言ってる場合じゃないか》

 

 

禁手(バランス・ブレイク)!」

 

 《Welsh Dragon Balance Breaker!!!》

 

 一誠の身体を赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)が装着される、背には竜の翼が生える。これは完全な禁手に至った証だ。

 

 

「よっしゃぁぁぁ!行くぞ!デカいハンマー!」

 

 《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

 

 一誠は限界まで力を倍加させ、オーディンからミョルニルを受け取り持ち上げた。

 

 

「クソ重い……でもこんな所で止まれるか!」

 

 《Transfer!》

 

 一誠は倍加した力をミョルニルに譲渡する。するとミョルニルはその大きさが一周り大きくなり、雷を放出し始めた。

 

 

「行くぞぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 一誠はオーディンの結界を越え、グングニルの元へと向かった。




 完全な禁手に至った一誠だが、神器の中のドライグはと言うと……。

 
 「何だよアレは!?乳を突いて禁手に至るなんてぇ!アルビオンの所の小娘といい、家の相棒といい、どうして今代の奴等はこうも欲望に忠実なんだよぉ!?

 俺には未来予知の力なんてないが、近い未来に二天龍の俺達が変な名前で呼ばれそうな気がする。それこそ、俺達の心を抉るような、喋れなくなるくらいのトラウマを植え付けられる様な名前を……気の性か!?気のせいであってくれぇぇぇ!

 相棒!この間まで、奴に倒れても立ち向かい、リアス・グレモリーを護るとか、凄く恰好良かったのに、最終的にはこれかよぉ!おぉぉぉぉぉぉぉぉん!」

 神器の中で1人寂しく泣いていたドライグであった。

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