ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く 作:始まりの0
~冥界 荒野~
この世界に
周囲に満ちるのは神の力。その力は同じ神でなければ感じ取る事さえできない、故に先程リアス達がロキの力が消えたと勘違いしたのだ。
その様子を遠く離れた場所から見ていた黒歌達。
「ッ……何と言う力」
「これだけ離れていても」
「今にも押し潰されそうだ」
サガ達黄金聖闘士は零の力により実体化し、零の血を受けた黄金聖衣を纏っている為、神の圧倒的な力を身に感じ膝を地に着いた。
黒歌と白音、アーシアも零の力を受けているため神の力を感じる事ができる。それ故かガクッガクッと膝を震わせている。バハムート神式はそれを見て、皆を自らの尾で囲む。
「あっありがとうございます、ドラゴンさん」
《汝等……主ノ力もつ。主……認メし者……家族ニしか力ヲ渡サな位……なれバ我刃汝等を護ル。其処の蝙蝠共はついでダ》
バハムート神式はそう言うと、主の方を真っ直ぐ見た。
「さて始めるとしようか」
【
零は両方の篭手を衝突させると、手の甲の部分に嵌められている紫色の宝玉が輝きを放った。
「ムッ……ウロボロスの力か」
「コレが
「貴様……誰に向かって言っている?」
「音声はオーフィスだ!何故2回言ったか?重要だからに決まってるだろう」
「だから誰に向かって言っている!?」
「五月蠅いぞ。さて、行くぞ」
ロキの言葉を無視してそう言うと、その場から消えた。
「!?」
「遅いよ」
「まさかこの私が後ろを取られるとは……ウロボロスの力を持つ以上は油断は禁物と言う事か」
消えた零は後ろに居り、手を銃の形にしてロキの頭に向けていた。ロキは驚いていたが、直ぐに冷静さを取り戻し振り返る。
「何故撃たなかった?その力で在れば私を消し飛ばす事など簡単だったろうに」
現在の零の力は無限。油断していたロキの頭なんて簡単に吹き飛ばせただろう。だが零はそれをしなかった。
「邪神ロキ、お前は本気を出していないだろう?」
「フッ……権能を使う神だけは在ると言う事か。ならば見せよう……私の本気を」
ロキはゆっくりと零から離れる。すると先程までとは全く異なる力を放つ。先程までロキが放っていたのは純粋な神の力。しかし今放っているのは混沌とし、禍々しい力だ。
ロキの身を黒い光が包み込み、光が止むとそこには漆黒の刺々しい鎧を纏い、その右手には金と黒の装飾の槍が握られていた。
「成程……それが邪神としての本来の姿か。そしてその手に在るのは
「その通りだ、伝説の戦士よ。これこそはグングニル、オーディンの持つグングニルとは同じ存在であり相反する存在だがな」
「同じ…相反……成程……
「ほぉ……先程の私の言葉からそこまで推理するとは……その答えは正解だ。オーディンは己が力と同調し、力を増した魔槍を畏れ、負の部分を切り離し、その半分を私が譲り受けた」
オーディンは力を増したグングニルを何とかする為に、正と負に切り離した。ロキはグングニルの負の部分を手にしていた。
またロキの現在の姿は本来の姿である。神には正と負……2つの顔を持っている。
正の顔……人々に恩恵を与え、導き、正すと言う側面。負の顔……荒ぶり、人々に厄災を齎す側面。神はこの極端な二面性を持つが故に、畏れ、敬わなければならない。
現在のロキはその負の部分を全面に出した状態とも言える、そこに破壊・厄災を齎す負のグングニルが加われば………。
「いいねぇ……此処に来て蝙蝠共と戦う事はあっても、本気で神と戦う事はなかったからな。俺も少し本気を出せる!さぁ、神話の再現の始りだぁ!【ソウルコード・・・・・】」
零はソウルコードを発動させる、名称は聞こえなかったが両手に紅い槍が現れた。
「面白い!
零とロキは光に包まれると、そのまま衝突した。2人が衝突した瞬間、波紋の様な物が広がった。
「ウラァァァァァァァ!」
「ハアァァァァァァァ!」
零、そしてロキの槍が衝突する度に波紋の様な物が広がり続けている。
「ハハハハハハハハ!そらっ!そらっ!そらっそらぁぁぁぁぁ!」
「フン!セヤァ!ウオォォォォォォォ!」
零は笑いながら2本の槍を突きだし、ロキは右手のグングニルと左手の盾で槍を捌いていた。しかし零の槍を繰り出す速さが徐々にではあるがロキを圧してきている。紅い槍の切っ先がロキの身体を掠り始めた。
零が大きく槍を突きだした時に、ロキはそれを避け零の背を踏み台にしてその場から距離を取った。
「グッ……背中、思いっきり蹴りやg……ッ!危ねぇ!」
零が振り返ると、ロキが自分に見てグングニルの矛先を向けており、グングニルから放たれている黒い雷を見て直ぐにその場から離れた。次の瞬間にグングニルから黒い閃光が放たれた。零は回避したので何ともないが、黒い閃光は彼方に消え、数秒後には大爆発を起こした。
「流石は神槍……しかも権能があるから、質が悪い。ぁ~あ、あの爆発した場所今後数百年、草1本も生えねえぞ」
「問題はない。貴様を倒し
「世界崩壊となりゃ小さな事だな………まぁさせるつもりはないがな」
ロキはそれを聞くと、グングニルの矛先を下げた。零はその行動に首を傾げた。
「何のつもりだ?」
「少し聞きたい事がある。何故そこまで世界を守ろうとする?」
「はぁ?」
「人間は神への信仰を忘れ、自然を汚し、他の種族を狩り尽くし、自分達の事しか考えていない。神々も神々で人間に地上を与え、それを見て、弄ぶ。それに加え悪魔共は自分達が生き残る事しか考えていない。愚か者だかりだ……この様な醜い世界、総て一からやり直そうとは考えた事はないか、伝説の戦士よ?」
人間は自分達の利益の為に、自然を破壊し、動物を狩り幾つもの種を滅ぼした。そして自分達を救わない神を捨て、自分達が生み出した科学を発達させた。
一部の神を除いて、殆どの神は人間を見下し、玩具の様にしか思っていない。悪魔は自分達が生き残る為に他種族を無理矢理にでも眷族悪魔にするという暴挙を行っている。
ロキが今の世界を滅ぼそうとするのも分からなくはない。
「フム……お前の言う事も分からなくはない………だが母様の庭を荒らさせる訳にはいかん。俺的には人間がどうなろうが、神・悪魔がどうなろうが知った事ではないが、どんな世界であろうと可愛いものはある!可愛いは正義!可愛いは理!可愛いものがある限り、俺は世界を護る!」
「「「「「…………………………」」」」」
これには一同、沈黙してしまった。零としては、可愛いものがあるかどうかが重要という事らしい。もし可愛いものがなければ世界はどうなっているのやら。
「世界には未だ可愛いものが溢れている!可愛いを護る為にも此処で倒させて貰うぞ!」
零は両手に持つ槍を回し、構えを取った。
『全くアホらしい理由よのぅ……お主の戦う理由は』
「ハハハ!重要なことだ!行くぜぇ………『刺し穿ち、突き穿つ!』」
零はその場から一気にロキの元に翔けると、2本の紅い槍をロキの突き刺し凄まじい速度で空へと舞い上がった。
「ヌオォォォォォォォォォォ!こっこれは!!?」
穿たれたロキは何かに拘束された様に動けなくなった。それを確認した零は地上に降りると再び槍を出現させ、槍に力を注ぐと巨大な光の槍となった。
「【
ゲイボルグ……ケルトの英雄クーフーリンの持つ魔槍。その力は心臓を穿つと言う結果を決定付けてから槍を放つ因果逆転の力。発動し放てば余程の事がない限り回避が不可能である。
零が放った
その深紅に輝く神殺しの槍が邪神の身体を貫いた。
・無限龍神の鎧【ウロボロス・ドラグメイル】
零とオーフィスの絆の力。漆黒の装甲、両肩・両手・胸に紫色の宝玉が嵌め込められている。胸の宝玉には∞の印が浮かんでいる。両腕にはハーケンが装備されている。
第1能力【無限の解放】:両手の甲の宝玉を近づける事で『INFINITY』の音声と共に使用者の体力・魔力など各ステータスを無限にする。時間制限は使用者によって異なるが、零の場合は制限時間は存在しない。
第2能力【無限の暴食】:両腕に装備されている蛇に模したハーケンが対象に喰い付き『EAT』の音声と共に発動する。対象の体力・能力・魔力を奪う。一度強奪された力は使用者が返還する気がない限り、戻る事はない。
第3能力【無限の寵愛】:両腕の蛇を模したハーケンが対象に触れ『TRANSFER』の音声と共に発動し、一時的に自分の力を分け与える無限の暴食とは正反対の能力。また赤龍帝の贈り物と同じ能力であるが、無限の寵愛は対象の力を無限にする事も可能である。
以上3つの能力が存在するが、現在は【無限の解放】しか出て来ていない。音声はオーフィスである(零にとっては最も重要)。使用中もオーフィスの意志は存在し、会話も可能。
更に未だ奥の手があるらしいが現在は不明。
・ソウルコード【スカサハ】
クーフーリンの師匠である『影の国の女王・門番』・スカサハとの絆による力。今回はスカサハの槍のみを限定解放した。
限定解放した状態でもスカサハの各種能力を使用可能、また複数の槍を召喚する事もできる。
・神の正と負
神々には正と負の2つの顔があり、人間が語り継ぐのは殆ど慈愛などに満ちた正の側面。その反面、時に罰を与え、厄災を齎す負の側面も持つ。
今回、ロキが負の側面を解放し完全な邪神となった。
・邪神ロキ
【火】【ラグナロク(終焉)を呼ぶ】という権能を持つ北欧の神。
ロキが完全な邪神と化し、力を解放した時に見せたのは神の鎧とグングニル(負)。イメージは黄金魂のロキが纏っていた漆黒の鎧とグングニル。
グングニルはオーディンの持つ物と同じ物であり、グングニルの負の側面を切り離した物。【死】【滅び】という権能を宿している。発動時は黒い雷を放つ。
ロキの鎧の防御力は魔王が全力攻撃をしないと傷付けられない程のレベル。