ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く 作:始まりの0
~教会~
「なっなに……何よ!アレ?!」
堕天使レイナーレと黒服達は教会の地下空間の天井に空いた穴から、空に浮かぶ蒼い龍を見ていた。近くに居た筈のアーシアは居らず、目の前にいた零も居ない事に気付く。
「アーシアがいない………
先程まで手に在った筈のアーシアの神器・
「まさか!?」
レイナーレは天空に浮かぶ龍を見た。そして龍の頭の上に乗る零をみた。零の腕にはアーシアが抱かれており、
鋼鉄の蒼き龍の頭の上に乗っている零は教会が在った所を怒りが篭った目で見降ろしていた。教会は零の乗っている龍が出現した時に吹き飛んだようだ。
「愚かな堕天使と
《ガアァァァァァァァァァ!》
応龍皇と呼ばれた鋼鉄の龍は全身から蒼い雷を放ち始めた。すると先程まで星が見えていた筈の空が暗雲に覆われる。
「【龍王雷槍】」
零の言葉と共に応龍皇の眼が紅い光を放つと、空を覆う暗雲から蒼い雷が教会に落ちた。それは一瞬の内に起こった事で在ったが、教会の在った場所には巨大なクレーターが出来ていた。
応龍皇はゆっくりと地上に近付いて降りていくと、身体を地面に降ろし頭を地面に付けた。零は応龍皇の頭から降りるとアーシアを地面に降ろした。
「【
零がそう呟くと、光が現れそこからボロボロのレイナーレが姿を現した。
「ぐっ…かっはぁ」
レイナーレは今にも死んでしまいそうだ。だが教会が消し飛びクレーターが出来る程の雷を受けて生きていられるはずがない。
「ぐぅ…なんで(確かにあの時に死んだ感覚はあった、なのに何故?)」
レイナーレは自分が生きている事が不思議に思わない訳がない。
「残念だが、此処は
「なっ!?」
レイナーレは先程死んだ時の事を思い出した。死ぬという恐怖とこれまでに感じた事のない痛み、それが目の前の人間が許すその時まで繰り返されると思うと一気に血の気が引いた。
「やれ…」
短い言葉と共に応龍皇の目が再び光ると先程とは規模が小さくなっているが、蒼い雷がレイナーレに落ちる。そして再び結界の効力により蘇える。また雷が落ち、蘇える。
それを数度繰り返すと、レイナーレは恐怖のあまりに涙を流す。
「ごっごめんなさい、ゆっ許して…おねg」
零はそんなレイナーレに冷たい眼を向けている。
「フン………」
「「「待て!」」」
声と共に3人の黒い翼を持つ堕天使が現れた。
「仲間か………なら序でに消しておくか?」
「ッ!私達はどうなってもいい!だからレイナーレ姉様は見逃して欲しいっす!」
「我等ではお前には勝てない、ならば我等の命と引き換えに」
「レイナーレ様を見逃して貰いたい!」
ゴスロリ服の少女の姿をした堕天使、女性の堕天使、コートを着た男性の堕天使の順にそう言った。
「ミッテルト、カラワーナ、ドーナシーク」
レイナーレは自分の部下達が自分を庇っているのに気付き、3人の姿を見た。
「………貴様等にも仲間意識と言うものがあったか(さて……どうするか、此奴等を此処で見逃して他の者に被害が出ても困るな)」
『これはどういうこと!?』『なっ何がどうなってますの!?』『しかもさっきのデカい龍がいるぞ!?』『でっデカい』
声をした方向を見ると、リアス達が居り教会が在った場所に出来ているクレーターを見て驚いていた。
「遅い……まぁいい。見逃せか……本来で在れば見逃すつもりはないんだが……貴様等に免じてそこのレイナーレとかいう堕天使はこの場は許そう。しかし(パチン」
零はリアス達を無視すると指を鳴らす。レイナーレ、ミッテルト、カラワーナ、ドーナシークの前に紙が現れる。
「それは【
「「「「!?(ゾクッ」」」」
4人の堕天使はこれまで感じた事のない恐怖に襲われる。
「嫌なら断ればいい。その代わりレイナーレ、貴様を見逃す代わりにその3人の誰かが死ぬ事になるがな」
「っ!分かったわ……だからこの3人は見逃してあげ…下さい」
レイナーレは零に向かい土下座する。プライドの高い彼女は、絶対に頭を下げないと思っていたのか零は少し驚いている。
「それはできん。何故なら、貴様がそれにサインしても、他の3人を使えばこれまで通りに誰かを傷付ける可能性があるからな。全員にサインして貰うぞ、嫌なら全員消す」
《グルルルルル》
応龍皇が唸ると、堕天使達は脅える。
「わっ分かったわ」
全員が応龍皇に睨まれた事で脅えながらも、自分達の血で誓約書に名前を書いた。名前を書き終えると、誓約書が光り出し4人の胸の所で消えた。4人は胸の所を確認してみると、何かの紋章の様な物が出来ていた。
「それは誓約の印、決して消える事はない。先程も言った様に、破れば消すからな……おい!リアス・グレモリー!!」
零はリアスを呼んだ、リアス達は驚き過ぎて困惑していたが零の声で我も戻った。
「貴方は、天王理 零!?これは貴方の仕業なの!?どういうつもり!?」
「どういうつもりも、こういうつもりもない。お前の管轄地で起きた事だろうが、ちゃんと始末しやがれ」
零は向けていた視線を既に息のないアーシアに見た。
「アーシア?!」
一誠がアーシアに気付き、近付き安否を確認する。
「アーシア?……アーシア?!どうしたんだよ!?」
息絶えているアーシアからの返事はない。
「どう言う事だよ……どう言う事だよ!レイ!ッ!!」
一誠は零を見るが、零から溢れ出る力を身で感じ押し黙る。
「一誠、少し黙れ。後邪魔だ、退いていろ」
一誠にそう言うと、零はアーシアの近くにしゃがみ込んだ。
「さぁ……お前はこの結末をどうみる?俺は嫌だな……こんなに心の優しい子が罪もないのに死ぬのは」
零がそう言うと、アーシアの胸に掛かっている金色の十字架が光り始めた。
「やはり……お前もこれを受け入れぬか…ならば、【ソウルコード:・・・・・・・・】」
零の右眼が光り始めると、それと共鳴する様にアーシアの十字架も光を強くする。
「もしもの為に渡していたものだが……こうも早く使う事になるとは予想外だったがな」
~アーシアside~
アレ?此処は何処でしょうか?何故、私はこんな真っ暗な所にいるのでしょうか?
アーシアは現在、真っ暗な空間に居た。
『こんにちわ』
私は声がした方向を見てみると、綺麗な金髪の女性が居た。何故か鎧の様な物をつけ剣と旗を持っていたが、とても優しい感じがする。そして何より彼女から放たれる光は暖かかった。
「こっこんにちわ。あの此処は何処なのでしょうか?」
『此処は貴方の精神の世界。私は一時的に貴方の精神に干渉しています、アーシア・アルジェント』
「何故私の名前を?」
『フフフ、私は貴女を見ていました。他者に否定され泣いていた事も、否定されても変わらぬその心の強さも』
「どっどうして?」
『強いて言うなら貴女の目指すものは、私が目指す物と同じだったから』
「えっ?」
アーシアはどう言う事か、尋ねようとしたがアーシア自身も光に包まれた。
『さぁお帰りなさい。未だ貴女にはやるべき事が残っています』
「あっあの!貴女は一体!?」
遠ざかる女性にアーシアはそう尋ねた。
『アーシア、貴女は生きなさい。生きて貴女の為すべき事をなすのです』
その言葉を最後にアーシアの視界は光に包まれた。
~零side~
「……戻ったか」
アーシアの指に嵌められた
「あれ……私…」
「目を覚ましたか。気分はどうかな?」
零はアーシアに尋ねた。
「えっ…あっはい……とってもいい気分です。アレ?さっきの女性は?」
「そうか……彼女に会ったか。やはりそれはお前が持つべき物だったらしいな」
そう言って、金の十字架に触れる。
「ふぅ………疲れた……ん?何か大切な事を忘れている様な?」
何かを忘れている様な気がしていたが、一先ずは目の前の事に集中する事にした。
「零さんが助けて下さったんですか?」
アーシアは身を起こし、零に尋ねる。すると零はアーシアの頭を撫でた。
「いや俺じゃない、何処かの聖女様が助けてくれたみたいだ。俺はその手伝いをしただけだ」
そう言って立ち上がると、面倒そうな表情をしてリアスの方を見た。
「堕天使達はそっちで任す。何とかしてくれ、俺は少し疲れた………」
「ちょっとこれはどう言う事か、教えて貰えないかしら?特にこの龍の事とか」
《グルルルルルル》
応龍皇がリアスを睨む様に唸る。そして全身から雷を出している。
「おいおい、止めろ。此奴等には危害を加えるな」
《ウゥゥゥ(コクッ》
応龍皇は零の言葉に頷くと、雷の放出を止めた。
「わぁ……凄いです、この大きなドラゴンさん。凄く大きいです」
「まぁ此奴は超が付くほどデカいからな。取り敢えず、コレ直さないと駄目だよなぁ?」
そう言いながら、自分が応龍皇に攻撃させた事で開いたクレーターを見て呟いた。
「仕方ない。丁度、結界は張ったまんまだし……(パンッ」
零が手を叩くとクレーターが消え、教会が元通りになる。すると大きな溜息を吐いて、疲れた表情をしている。
「えっ……なっ何が起きて」
「どうでもいい話は置いておいて(パチン」
零が指を鳴らすと天に浮かぶ魔方陣が消えた。すると辺りは普段通りの景色に戻った。近くに居た応龍皇の姿も既に消えていた。
「さて………あぁもぅ朝か、帰って朝飯の用意しないと」
零は朝日が昇り始めているのを見ると、朝食の心配をし始めた。
「ちょっと待ちなさい!この堕天使達の事は私の方で預るけども、まずは貴方の事を説明して貰わないと私達も承諾できないわ」
「面倒な………あんまり遅いと大変な事になるけど?」
「大変なこと?どう言う事だよ、零?」
「家の子達は寝起きが超悪い。それに朝飯を食べさせないと、更に機嫌が悪くなる。結果、この街は火の海になるけど?」
「「「「はぁ!?」」」」
全員は零の言葉に訳が分からない様だ。寝起きが悪く、腹が減っていると確かに機嫌が悪くなるだろう。しかし何故、それが街が火の海になるのかが分からないからだ。
「俺自身の力を説明してもお前等の頭じゃ理解できないだろうからな。元来、俺には説明する必要なんざないんだが………まぁいい。説明してもいい、簡単にだけど。だがまずは家に帰って飯を作り始めないとアイツ等が不機嫌になるから、今日の所は帰らせて貰う。アーシアは、取り敢えず此奴等の指示に従えばいい。なに悪い様にはしないだろうから。じゃ!」
零は本当に急いでいるのか、その場から消えた。
「はぁ……訳が分からない事だらけだけど……取り敢えずはこの堕天使達ね」
リアスは一先ず堕天使達をどうするかを思案し始めた。