ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く 作:始まりの0
リアスは自宅で何時も行っているトレーニングの後、就寝前に零に渡された【みえ~る水晶くん】頭に当て近くに置くと眠りについた。
リアスが眠りにつくと、夢を見た。その内容は特に変哲もないものだった。
何時もの日常を第三者の視点から見た様なものだった。そして、近頃起きたレイナーレの事件のこと、ライザーとの婚姻の時のこと、コカビエルの事件のこと、三大勢力の会議の時の光景が流れていく。
「……私に足りない物……それは一体……何だと言うの……」
リアスは未だ気付いていない。零の言った【大切】な事が何なのかを、それは当然の事であるが、それ故に気付いていないのだ。
『くだらない……くだらないわ』
「えっ?」
突然聞こえた声にリアスは振り返ると、そこには禍々しい黒いオーラを纏う人影がいた。リアスはその人物の顔を見て目を見開いた。その人物はリアスと全く同じ姿をしていた。
「だっ誰?!」
『私?私はリアス、リアス・グレモリーよ』
「違う!リアスは私よ!」
『そうね、貴女も
「もう1人の私?……」
『コインに表と裏がある様に、悪魔にも、人間にも表と裏の人格があるの。貴女を表とするなら、私は裏ね』
現れたもう1人のリアスは自分を、リアスの裏の人格だと名乗る。
「………それでもう1人の私が何の用かしら?それにさっきのくだらないとはどういう意味かしら?」
リアスはもう1人の自分の出現で焦っていたが、此処は夢だと思い出し無理矢理にでも気を落ち着かせた。
『その言葉通りよ。貴女の日頃の行動を見ていたら虫唾が走るわ……大体、眷族悪魔なんて唯の使い捨ての駒でしょう?』
「なっ!?ふざけないで!!」
リアスはリアス(裏)の言葉に激昂した。全身からは滅びの魔力が立ち昇り、そのままリアス(裏)に向けて滅びの魔力を放つが、全く効いていない様だ。
「どっどうして!?」
『不思議に思う必要があるかしら?貴女がリアスであると同時に、私もリアス。
「ッ?!」
『本当に貴女ってお馬鹿さんね。これじゃあ本当にあの下僕達が可哀想ね。なんせ、自分達の事を全く信用していないのが自分達の主なんて』
「えっ?なっなにを……言って」
リアスはもう1人の自分の言葉に頭が真っ白になった。
『あらっ?気付いてなかったかしら?貴女はね、これっぽっちも下僕達の事を信用してないのよ。親友である朱乃でさえもね……』
「ちっ違う!そんなことない!私は皆のこt『してないわよ。自分でも全く気付いていないみたいだけど……いいわ、教えて上げる』」
リアス(裏)が手を振ると、暗かった景色が突然変わる。そしてそれは以前の三大勢力の会談の場面だった。
この場には悪魔、天使、堕天使の長達と日本神話の頂点の三貴士、その身内・従者達が勢揃いしていた。
この中でリアスの眷族達は1人を除き揃っていた。そしてその1人とはギャスパーの事だ。この時、ギャスパーは
『だからこそあの事件が起きた。貴女がギャスパーを信じて連れてきていれば、天王理にあの子を連れていかれなかったかも知れない』
『ライザーの時もそう……貴女は下僕達の力を信じられなかったから、自分だけでライザーに挑んだ。他の眷族達と一緒にライザーと戦う作戦をたてていれば負けずに済んだかもしれない』
次々と景色が変わって行き、リアス(裏)が言い放つ。そしてその事実がリアスの今まで気付かなかった現実を突き付けていく。
「私は……私は……」
リアスは膝を付いて倒れ込んでしまう。
『当たり前であるが故に……気付かぬこと……そして貴女の思い込み・己の力の過信から誰かを心から信じる事が……信じ切ることができない……それが貴女に欠けていたもの』
「あなたは……」
リアスが顔を上げると、そこにはリアス(裏)は居なくなっており代わりに紫色の髪の巫女服を着た少女が立っていた。
『貴女は今、自分を見つめ直す事が出来た筈………
~リアスの寝室~
「はっ!?…………今のは夢?」
リアスは直ぐに起き上がると、ふっと【みえ~る水晶くん】の方を見た。
「あれ?……あれ?どこに?」
置いた筈の場所に水晶は無かった。だが何故か、リアスはすっきりとした表情をしている。
『貴女がこれからどうするか……答えを見出した貴女の行動によってこれからがどう変わるか……全ては貴女や仲間達の選択次第なのです。ふぅ……これで僕はお役御免なのです。彼の所に戻るとしましょう』
先程、リアスの夢に現れた少女は空からリアスの部屋を見降ろしており、そのまま消えていってしまった。
『報酬は特製シュークリームなのですよ。にぱぁ~』
【道具紹介】
名称:みえ~る水晶くん
零がリアスに渡した紫色の水晶。
1日中肌身離さず持ち、就寝前に額に当て、近くに置くだけで【自分が気付かない事を夢にして見せる】【どうしても思い出せない事を夢にして見せる】ことができる。
前者の能力の関しては夢に見ても本人が気付くかどうか分からない為、この水晶に宿る精霊?が手を貸す事もある。