ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く   作:始まりの0

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EP45 日本神話への加入

 ~神殿内~

 

 神殿の中に入ると目に入ったのは、外観からは予想できぬ広大な空間とそこに居る神々。

 

 そして、奥の玉座に座る天照。その両隣には月読と素戔嗚が立っていた。

 

 三貴士以外の神々は零達の姿を見ると、嫌悪の眼を向ける。

 

 

『何だ、あの者達は?』『アレは猫又か……それに異国の人間まで』『それにアレは名のある龍神ではないか?』

 

『あの銀色の髪、あの眼……アレが大神様のお気に入りと言う』『大神様は一体何を考えているのだ?』

 

 などという声が聞こえてくる。

 

 

「皆さん、よく来ましたね。どうぞ前へ」

 

 天照がそう言うと、玉座の前へと歩を進めた。その後ろにはアーシア達が続く。

 

 

「母様……この度はお時間をとって頂きありがとうございます」

 

 

「構いませんよ……さて、零。例の話ですが、私と月読、素戔嗚の意見は一致しました」

 

 

「そうですか……ありがとうございます。ではさっそく」

 

 

「えぇ……アーシアさん、白音さん、黒歌さん、オーフィスちゃん、此方へ」

 

 アーシア達が困惑しながら零の方を見ると、零は黙って頷いた。アーシア達はぎこちない動きで天照の前に行くと天照は玉座より立ち上がった。

 

 

「では皆さん、私と零が考えた事なのですが……貴女達を我等、日本神話体系の一員として迎え入れたいと思います。これについては月読と素戔嗚も賛同してくれました。どうでしょうか?」

 

 天照がそう言うと、オーフィス以外が困惑している。

 

 

「理由は簡単です、貴女達を護る為に零が私に話しを持ち掛けました。私も零と同じ意見です、貴女達の身を護る為にも私の加護下に入って貰いたいのです」

 

 零はアーシア達を護る為にそれぞれに力を与えているが、それでも悪魔の駒(イーヴァル・ピース)の件がある。オーフィスはグレードレッドや零を覗けば勝てる存在はいないが、アーシアや白音、黒歌は零に力を与えられていても神や魔王クラスの相手には勝てない。

 

 リアスの様にアーシア達を自分の眷族にして零を味方に付けようと考えている者がいないとも限らない。その為、零はアーシア達を日本神話の一員とすることで天照の加護下におく事で誰も手を出すことができない様にしようと考えた。

 

 天照の加護を直接受ける者に手を出すと言う事は、日本の神話体系に戦争をふっ掛ける事と同じだ。仮にリアスが白音や黒歌達を悪魔にすると、零の怒りを買うだけではなく天照の怒りも買う事になり、零&日本神話VS悪魔と言う戦争が起きる。

 

 勿論、そんな事になれば魔王や悪魔達は零に加え、オーフィス、日本神話に一方的に殲滅させられるだろう。

 

 零の怒りに触れる、オーフィスの怒りに触れる、それだけでも危機なのに日本神話まで加われば確実に全滅する事になるだろう。

 

 零としてはそれでも構わないが、そうなれば他の勢力も零を危惧し仕掛けてくる事もあるかも知れない。零なら簡単にあしらう事もできるだろうが、面倒なのでしたくないのだろう。

 

 なので零は天照にアーシア達の身柄をどうにか出来ないかと相談したところ、天照の庇護下に入るという意見に至ったのだ。

 

 

「でっですが私の様な人間がお義母様の加護を受けていいのでしょうか……」

 

 

「はい、問題ありませんよ。貴女の人柄も、性格も、魂も私は気に入っています。それに貴女には巫女の素質もあるみたいなので私としても嬉しい限りです。近年は神の声を聞く巫女も少なくなっていますし……私としては娘になって欲しいくらいです」

 

 

「ふぇ?」

 

 

「「にゃ!?」」

 

 

「もきゅもきゅ」

 

 天照の言葉に顔を赤くするアーシア、驚く白音と黒歌、零から貰ったお菓子を淡々と食べるオーフィス。

 3人は天照の言ったのを「娘になって欲しいくらいです」→「娘になってほしい」→「零と結婚する」→「義理の娘になる」と解釈したらしい。

 

 

「そう言えば母様、オーフィスを態々日本の神話体系に所属させる意味あるんですか?無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)のオーフィスが日本所属となると色々と面倒なのでは?」

 

 オーフィスはグレードレッドを除いて最強と言われる無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)。本来は何処にも所属せず孤高の存在であった。そのオーフィスが日本神話の所属となると均衡を保っている現在の勢力のバランスが崩れる事がなるからだ。

 

 

「可愛いは正義………いえ理と言っても過言でありません。なのでいいのです」

 

 

「なるほど……流石は母様。それは道理ですね」

 

 天照の言葉に激しく同意している零。訳の分からない話だが本人達は納得している。だが周りはそれを理解できないでいる。

 

 

【【【そんなんでいいのかよ!?】】】

 

 と周りの神々が思うが主神に言える訳もない。こうしてアーシア、黒歌、白音は保護すると言う目的で、オーフィスは良く分からないが日本神話の所属となった。

 

 他の神はそれを良しとする者は少なく、殆どが反対だが自分達の頂点に立つ神々に意見をいう命知らずはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、零達は天照の居城に呼ばれ宴を行った。

 

 

「あぁ、そうだ。もう1つ叔父上に頼みがあったのは忘れていた」

 

 

「俺に頼み?なんだ?何で言えよ!俺にできる事ならなんだってしてやるぞ!」

 

 零は素戔嗚の盃に酒を注ぎながら耳元で何かを呟いた。

 

 

「なに!?確かに出来るけど……しかしそれはだな……むぅ」

 

 どうやら零の頼み事は素戔嗚が戸惑う程の大事らしい。零を溺愛している素戔嗚でさえも渋るほどの事を頼んだ様だ。

 

 

「仕方ないですね……できれば使いたくなかったんですが…ゴクッゴクッ……ぷはぁ」

 

 零はそう言うと、懐から小さな小瓶を取り出し中身を一気に飲み干した。すると徐々に零の身体が小さくなっていく。すると2~3歳くらいの姿になった。

 

 

「と~しゃま………おねがいしましゅ(うるっうるっ」

 

 幼い零は金と赤の眼を潤ませて、素戔嗚を見上げた。俗言う涙目上目使いという奴だろう。

 

 

「(思考停止中)…………………ぶはぁ!」

 

 停止していた思考が動きだし、やっと目の前の状況を理解すると鼻血を吹き出し吹っ飛んだ。

 

 

「「すっ素戔嗚!?」」

 

 アーシア達と話していた天照と月読が何事かと思い吹っ飛んだ素戔嗚を抱き起した。素戔嗚は満足した様な表情で鼻血を流し続けている。

 

 

「わっ我が……生涯に………いっぺん……の悔い……無し(がくっ」

 

 

「「素戔嗚!!!!!一体何が!?」」

 

 死した素戔嗚の原因が何なのかと思い、吹っ飛んできた方向を見てみると幼い零が座っていた。

 

 

「ぜっ零………とうとう母の願いが通じたのですね!(ぽいっ」

 

 

「かっ可愛い!……何と愛らしい!流石我が甥っ子!邪魔だ、素戔嗚!(ぽいっ」

 

 2人は抱き起していた素戔嗚を放り投げた。放り投げられた素戔嗚は頭から落ち、首が変な方向に曲がっているのを無視して天照と月読は幼い零に駆け寄る。

 

 

「ははしゃま……あねしゃま(うるっうるっ」

 

 

「こっこれは……素戔嗚が死ぬのも無理はありません。私でさえも平静を保っているのがやっとです(だくっだくっ」

 

 

「かっ神すらも殺す愛らしさ……流石我が甥っ子……これを見て死ねたんだ素戔嗚も本望だろう(だくっだくっ」

 

 そう言いながらキリッとした表情で鼻血を滝の様に流している天照と月読。しっかりと幼い零を抱きしめている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~天王理家宅~

 

 

「…………(ずぅーん」

 

 高天原から帰宅した零。すっかりと元に戻っていた。だが何やら沈んでいる。そして服には大量の血が付いている(天照・月読・素戔嗚の鼻血)。

 

 

「くっ……目的の為とはいえ……あの様な手を使うとは……何か大切な物を失った気がする」

 

 どうやら素戔嗚への頼みの為に小さくなる薬を使った事で落ち込んでいる様だ。

 

 

「小さい零さん可愛かったです」

 

 

「ご主人様にもっと色々な服を着せたかったです」

 

 

「そう言う訳でもう一回小さくなって欲しいにゃ」

 

 どうやらアーシア達はもう一度小さい零を見たい(愛でたい)様だ。

 

 

「いやです……アレはどうしても達成しないといけない事があったからしたんだ。記憶があるから余計に面倒だ……あの恥ずかしい記憶……消してしまいたい。どうせなら記憶を残らない薬を用意すれば……いやそれじゃあ目的が……しかもまたあの姿で叔父上と過ごさないといけないとは……」

 

 どうやら大変な目に合ったらしい。かなり病んでいる様だ。

 

 

「よし!こういう時は癒しがいる!オーフィス!」

 

 

「なに?」

 

 

「これ着ようか(すっ」

 

 そう言って出したのはオーフィスサイズの駒王学園の制服やらコスプレ用品だった。

 

 

「勿論、白音達の分もあるぞ~……可愛いは正義!さぁ!撮影を始めよう、ハハハハハ」

 

 こうして零の病んだ心を癒す為の撮影会が始まった。勿論、撮影は長時間続きオーフィス以外は疲れて寝てしまい、零は徹夜で現像作業をしていたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~高天原 天照の神殿~

 

 

「ふぅ……やっと終わりましたね」

 

 

「あぁ……終わったな」

 

 

「もう死んでもいいや」

 

 天照、月読、素戔嗚がそう言って満足した顔で赤い液体のついた雑巾をバケツに絞る。素戔嗚が死んでない?神様である事と幼い零を再び愛でると言う意志で復活を果たしたのであった。因みに3人がしているのは自分達の鼻血の後始末である。

 

 天照の側近の神によると「神殿内が血の海で、天照様たちがその中に浮かんでいた」との事だった。

 

 

「それにしても零が一番嫌がっている方法をとるなんて、一体何を頼んだんです?」

 

 

「そういや、零に何か頼まれてたな。ほらっ吐きやがれ素戔嗚」

 

 

「なんでも、ある人間を一時的でもいいから甦らせて欲しいってさ………まぁ……またあの可愛い姿を見れるなら理を覆すくらいはな……はっ!?」

 

 素戔嗚は自分の言った言葉で墓穴を掘った事に気付いた。

 

 

「ほぉ……またあの可愛い零と一日を過ごすと……」

 

 

「詳しく話を聞かせて貰おうか」

 

 この後に素戔嗚は自分の妻であるクシナダに「姉が怖い」と泣きついていたそうだ。


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