ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く   作:始まりの0

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EP36 三大勢力と日本神話

 ~駒王学園 深夜~

 

 今宵は天使・悪魔・堕天使のトップ達による会談だ。現在、駒王学園の一室に大きな机に5つの椅子が置かれていた。

 

 そしてその椅子に座っているのは

 

 白い鎧を纏う天使の長:ミカエル。その後ろにはフードを着たイリナが立っていた。

 

 スーツを着た堕天使の総督:アザゼル。その後ろにはヴァーリが居り、壁にもたれ掛かっていた。

 

 魔王:サーゼクスともう1人の魔王。その後ろにはリアスとソーナ、そしてその眷族達が立っていた。

 

 残る椅子はもう1つは零が用意したもの。此処に座るのはただ1人。

 

 沈黙が包む中で、突如空気が変わる。張り詰めていた空気が何処か暖かな神聖な空気に変化し、部屋の一角に眩い光と共に現れる。

 

 太陽神:天照大御神、月神:月読尊、荒ぶる神:素戔嗚尊。日本神話のトップの三貴子が此処に降臨する。その姿は零の家でしている様な格好ではなく、様々な装飾で身を飾った姿だった。

 

 その力を目の当たりにして各勢力のトップ達も身構えた。先に天照の力を目の当たりにしていたサーゼクスでされも冷静を装っているが冷や汗を掻いている。

 

 

「御待たせしました。日本神話……高天原を制する天照と申します。以後お見知りおきを、皆様方」

 

 

「夜を支配する月の神:月読だ」

 

 

「俺は今は黄泉の王をしている素戔嗚だ」

 

 3人がそれぞれ自己紹介するが、この場にいる全員はある1点を見て驚いている。皆の視線が集中しているのは天照の腕の中にいる小さい零だった。

 

 

「母様……そろそろ元に戻してください。流石にこのままでは話も進みませんし」

 

 

「あっそうですね」

 

 天照はそう言うと、零を降ろすと光だし元の姿に戻った。零は「やっと解放された」という様な表情をしていた。

 

 

「さてと………アザゼルやサーゼクス・ルシファーは知ってるだろうが俺は天王理 零。お前等が【伝説の戦士】などと呼んでいる存在だ。先に言っておくがそこにいる二天龍達との戦いで俺が介入したのは唯の偶然、お前等を助けるつもりなどなかったんで勘違いしないように」

 

 零はそう言うと、周りを見回した。

 

 

「罠はなし……ん?リアス・グレモリー、ギャスパーはどうした?」

 

 

「えっ……あぁ…あの子なら神器の力をコントロールできないから部室に置いてきたわ」

 

 

「そうか………母様、どうやら罠はないみたいです。どうぞお座り下さい」

 

 零はそう言うと、用意されていた椅子に天照を座らせた。

 

 

「……んん。まぁアレだ、とっと始めようぜ。会談をな」

 

 沈黙していた空気をアザゼルの言葉で切り出した。

 

 そしてサーゼクス達も天照達に自分達の紹介をすると、話し合いを始めた。天照達は始めの内は黙っていた。

 それぞれが主張していく、レイナーレの事件、コカビエルの事件、様々な事を言い合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ………こんな所で俺達がいがみ合っていても仕方ねぇ、さっさと結ぼうぜ、和平を」

 

 アザゼルがそう言うと、天照達以外が驚いた表情をしていた。

 

 

「ほぉ……いいのか?」

 

 

「今更、争ったって意味はねぇ。今の時代に俺達がしていた争いは不要だろ、これからの未来の為にもな」

 

 サーゼクスの言葉にアザゼルがそう返す。

 

 

「私にも異論はありません」

 

 ミカエルもどうやら和平には賛成の様だ。

 

 

「後は………アンタ達の意見なんだが……さっきから黙りっぱなしだが」

 

 アザゼルは始めから黙り続け笑みを浮かべている天照に視線を向ける。

 

 

「えぇ、貴方達が和平する事自体は喜ばしい事です。無駄な争いが無くなるのは良い事ですしね……」

 

 天照は一度言葉を区切ると、その身から光を放つ。神聖な光、闇を照らす太陽の光、悪しきものを焼き払う日輪の光が太陽神より放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この国は太古より我等制して来た国です。

 

 我等は人と共にあり、人の子等を見守りながら今までやってきました。

 

 我等は自らに似せて生み出した人の傍にあり、子等を護りました。それと引き換えに人の子等は我等を信仰する。どちらかだけでも、神も人も存在できない。

 

 ですが、人はその文明を進歩させるごとに信仰は失われていきました。我々にとって信仰は無くてはならぬもの……仮に総ての神が死に絶えた時、それはこの星から神秘が消える。そうなればこの星の命そのものが消滅するでしょう。

 

 

 

 

 

「ちっ地球が消滅!?」

 

 あまりの真実に一誠が叫んでしまう。

 

 

 

 

 

 

 神とはこの星の自然の意志とも言える存在。そしてこの地球そのものの分身とも言える存在です。その神がいなくなればこの星の命そのものが消えると言う事です。どの様な神であっても大なり小なりこの星の分身と言う事です。

 

 まぁ私や月読の様に太陽や月が神格化した存在もいますが、信仰がなくなれば消えるしかないでしょうから。

 

 それは置いておいて、今の問題はその信仰が他国から来た者達の性で余計に減っていると言う事です。本来この国の者達は我等が傍に居なくとも』常に我等を信仰してくれました。ですが悪魔達が「願いを叶える」という商いで人の身近に現れた。それにより我等が保ってきた神秘性が失われてきたのです。

 

 我等の許可もなく勝手に………貿易自体は悪い事ではないのですが、我等の許可なしに好き勝手するのどうなのでしょうか。

 

 それに悪魔達の種の存続の為に生み出した「悪魔の駒」という物で日本の人間や妖怪達を誘拐・拉致したこと、強制的に悪魔に転生させられた者も居たでしょう。

 

 その性に、一体どれだけのこの国の妖怪や様々な種が滅びたことか。

 

 可愛い息子の報告によれば、何処かの悪魔達がこの地を自分の領土などと言っているそうで。

 

 

 

 

 

 

 天照はそう言い終わると、光を収めた。そして最後の言葉にリアスは顔を青ざめさせている。

 

 

「これだけの被害、どうしてくれやがりますか。魔王殿?」

 

 天照は笑みを浮かべているが、明らかに怒っている。

 

 

「そっそれは大変申し訳ない。確かに我等もこの国の地を勝手に占領したこと、種の存続の為とはいえ『悪魔の駒』による悪魔の転生の件。分かっていたつもりでいたのですが………」

 

 サーゼクスは先程の力の波動により少し、動揺していたが直ぐに冷静に落ち着き謝罪する。

 

 

「謝って済むと思ってるのか、コラァ!テメェ等のせいでこっちは迷惑してんだよ!ついこの間も誰だか知んないけど、神社に参拝する為だけに神社の力を吹き飛ばした奴がいんだぞ!!長い間、積み上げてきた人々の思いや願い、信仰を簡単に吹き飛ばしやがったんだ!ふざけんな!!」

 

 

「うっ……(ギクッ」

 

 素戔嗚が声を荒げてそう言うと何故か動揺しているサーゼクス。

 

 

「此方としても戦争などしたくない。要求は2つだ。悪魔共この国より出ていけ、例外はない。そしてこの国の転生させた者達を返して貰おう。強制的に悪魔にさせられたなら此方で保護する」

 

 月読が淡々とそう告げる。これまでのこの国の被害を考えた結果だろう。このまま悪魔達が居れば同じ事がおきるだろう。

 

 

「えっでっでも、そんな事しても悪魔である限り……それにいきなりそう言われても」

 

 セラフォルーが月読の言葉に意見を言う為に発現する。そう悪魔として転生した以上はどうするにもできない。

 

 

「それについては問題ない。俺が転生悪魔から『悪魔の駒』を摘出すればいい」

 

 

「「「「「えっ?!」」」」」

 

 黙っていた零が突如発言した。「転生悪魔から『悪魔の駒』を摘出する」と。

 

 

「そっそんな事が可能な訳がないわ!悪魔として転生した時に、駒はその者に溶け摘出は不可能よ!」

 

 

「貴様等の常識で物事を図るな、リアス・グレモリー。貴様等の非常識など俺にとっては当然の事だ……なら実際にやってみせようではないか。おいで」

 

 零がそう言うと、零の背後の空間が歪み黒歌とアーシアが現れた。

 

 

「なっ!?はぐれ悪魔黒歌!?」

 

 

「貴様等が開発した悪魔の駒の被害者だ。黒歌から昔の事は聞いた、自分を無理矢理悪魔にされた挙句、妹の白音を無理矢理眷族悪魔にされそうになったとな。そのせいで黒歌が指名手配されている事も……正直言って腹立たしい。その悪魔が生きてたら光で拷問した上で消してやるところだったが………まぁ死んでしまったものは仕方ない」

 

 零は忌々しそうにサーゼクスとセラフォルーを見ている。

 

 

「だからこの日の為に俺は色々と研究していたんだが……黒歌、ちょっと痛いかもしれないけどいいか?」

 

 

「大丈夫にゃ、ご主人様を信じてる」

 

 黒歌は零を信じている、今まで自分と妹を護ってくれた主を信じている。

 

 

「あぁ……母様、アレを使います。いいですね?」

 

 

「えぇ……いいですよ」

 

 

「では………【$”GS&#"%RGSZ)%GS=|¥(この身に宿るは原初の神が血)】」

 

 零は突然、訳の分からない事を言い始める。すると零の両目が輝き始め、短い銀髪が突然伸び始めた。

 

 

「【E$"!RVERYU'&%$%$#"TGSF!#"$$%||~^\?>(原初の神が子の名において解放する)】」

 

 零の口から紡がれているのは、この場にいる全員には何を言っているのか全く分からない。だがその身から溢れるのは何かに場にいる全員が身を強張らせる。

 

 

「【F#$$"F!S$%$RF#(創造と破壊が相対し相克し合う)】」

 

 そして零の全身に七色に輝く痣が浮き上がっていく。

 

 

「【”Dd%$#%VSFEVEL?_Frwf¥*@(その先に残るのは無し。)】(パァン」

 

 両手を合わせると、零はその手で黒歌の胸を貫いた。正確には血は出ていない、どういう力かは分からないが零の手は黒歌の中に入っている。

 

 

「我は(0)にして無限()なり」

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 黒歌の背から悪魔の翼が現れると、次の瞬間に消滅した。そして黒歌は全身から力が抜けた様にその場に倒れそうになる。

 零は直ぐに黒歌の胸から手を抜くと、抱き留めた。

 

 

「ふぅ………これでよし、大丈夫か黒歌?」

 

 

「だっ大丈夫にゃ……凄く力が抜けて今は立てそうにないにゃ」

 

 

「そうか……なら。少し休め……」

 

 零はそう言うと、机の上に何かを放り投げた。それは悪魔の駒(イーヴァル・ピース)、他の種族を眷族悪魔にするためのアイテムだ。これは黒歌から抜き取られたものだ。

 

 

「この通りだ、サーゼクス・ルシファー。これではぐれ悪魔の黒歌など居ない、ここに居るのは猫又……日本の妖怪だ。これでも黒歌を狙うと言うなら、俺は許さない」

 

 そう言われればサーゼクスは何も言えない。言える筈がない、零はかつて天使・悪魔・堕天使が協力しても倒し切れなかった二天龍を一撃で倒した。

 その零が「黒歌は既に転生悪魔ではない。故に黒歌に手を出すな。もし手を出せば貴様等悪魔を滅ぼす、例外なくな」と言っている。これは取引などではない、完全に命令だ。

 サーゼクスもセラフォルーも反論できない、種の存続をさせる為とはいえ多くの種を犠牲にした。そして何より零の逆鱗に触れたくないのだろう。

 この場にいる各勢力のトップであるミカエル、アザゼル、サーゼクス、セラフォルーは強い、強いが故に先程の零の力を見て、零の強さを本能的に理解してしまったからだ。

 

 

「わっ分かった。黒歌のことは我々でなんとかしよう。しかし突然、この国から出ていk「ぁあ!テメェ等はこれまで俺等の領土で好き勝手してきたくせにテメェ等の言い分を聞くと思ってんのか!コラァ!」」

 

 サーゼクスは魔王としてこの地にいる悪魔達の為にできるだけの事はしたかった。故に出来る限り交渉しようとしたが素戔嗚の一喝で何も言えなかった。

 これまで好き勝手に日本の神々の地で商売やら転生悪魔などの多くの問題を起こしている。それに加え、日本の神々が悪魔側と交渉する為にコンタクトをし続けたが悉く無視された。そんな相手の存在を素戔嗚達は一秒でも早くこの国から出したい様だ。

 

 

「素戔嗚、少し落ち着きなさい。確かに貴方達、悪魔の横暴……決して許されるものではありません。しかし貴方達にもそれぞれの言い分もあるでしょう。ですからこの件はもう少し話し合いをするべきだと思います、勿論天使や堕天使の皆さんとも……今の時代、我々は協力しなければなりません」

 

 

「姉上がそういうなら……」

 

 素戔嗚は天照の言葉で大人しく引き下がる。

 

 

「ではまずは、話し合いを……」

 

 

「おっとその前に聞きたい事がある、お前にだ。零」

 

 アザゼルは突然、零に声を掛ける。

 

 

「俺に?」

 

 

「あぁ、お前はかつて二天龍を倒した。間違いないな?」

 

 

「あぁ……」

 

 

「だったらだ。それだけの力を持ちながら俺はお前の様な存在を知らない。正確には日本神話にそんな存在がいるなんて聞いた事もなかった。なのにあの戦いに突然、お前は現れた。お前ほどの力が在れば神話にも語られる筈だ。なのにどういうことだ?」

 

 零の力は強大だ。故にアザゼルは気になっていた。これほどの強大な力の持ち主が日本の神話に出て来ない筈がない。なのに語られていない、それがどういう事なのかと言う事が。

 

 

「それは今、関係ない話だ」

 

 

「いいや、十分に関係あるね。お前は日本神話体系の天照を母と呼んでいる。つまりは日本勢力の一員って事だ、そうなりゃ俺達はお前の力を知ってるが故に日本神話に従わなきゃならない」

 

 

「……俺はあくまでも母様の味方ではあるが、基本的には中立だ。どこの勢力にも力を貸す気はない」

 

 

「それは貴方はあくまでも天照さんの個人的な味方であって、どこにも属していないと?」

 

 セラフォルーがそう言うと零はそれに頷いた。

 

 

「お前等から見れば日本の味方って見えるだろうが………俺的にはこの世界がどうなろうが関係ない。俺は俺の守りたいものの為に戦うだけだ」

 

 

「フム……自分や仲間の害にならなければ敵でもなく味方でもないと?」

 

 ミカエルが零にそう聞くと、零は首を横に振る。

 

 

「そうであってそうでない。俺は俺の護るべきものの為に戦うが、気が向けば何所の誰でも味方になる。そこにいるリアス・グレモリーのナイトに力を貸してやったのも俺が力を貸すに値すると思えば力を貸す」

 

 

「「「「「………」」」」」

 

 一同はその言葉に唖然とする。自分は何処にも属さず、自分の護るべきものの為だけに戦う。しかし気が向けばどんな相手でも力を貸すと言ったのだ。通常ではありえない話だ。

 

 

「成程な……だがお前は何者だ?さっきも言った様に俺はお前の様な存在を知らない、お前みたいな奴が突然生まれる筈もない。お前の現れ方はまるでこの世界に突然現れた様だぜ」

 

 

「ククク……成程、頭がよく回る……だがそれ……これは!!?」

 

 零が何かを言おうとした瞬間に辺りは異様な力に包まれた。

 

 周りを良く見ると、天照、月読、素戔嗚、黒歌、アーシア、ミカエル、イリナ、アザゼル、ヴァーリ、サーゼクス、セラフォルー、リアス、一誠、祐子、ゼノヴィア以外が止まっている。

 

 正確には時間そのもののが停止している様だ。

 

 零はこの現象が起きた瞬間にある人物の事を思い浮かべた。周りの者から迫害され、自分と同じ哀しみと苦しみを持つギャスパーのことを。




次回予告

それは怒り。

ありとあらゆる物を破壊する者の怒り。

その者は決して許さない、愚か者達を。

逆鱗に触れた愚か者達は恐怖し、蹂躙される。命乞いなど決してその者には届かない。

光が纏うは白き一角獣、闇が纏うは3つの姿を持つ悪魔。

それを見た者は知る、次元の違いを。哀しみを。

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