ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く 作:始まりの0
EP26 来る母
~日曜日 早朝 天王理家~
「ふぁ~眠い」
この家の主、零は寝癖のついた髪のままソファーに座り寛いでいた。本来であればこの時間には食事を作らないといけないのだが、今日はアーシアと白音が用意をしているのでゆっくりとしている。
因みにオーフィスと黒歌はまだ寝ている。
(休みだし、朝飯ができるまで二度寝しよう)
零はそう考えて、寝室に向かおうとすると
『ピンポーン』
現在時刻、午前6時。今日は誰も来るはずないんだけどな。何かの勧誘か?
と考えながら玄関に向かい扉を開ける。
「新聞や広告、勧誘はいりまs……」
零は扉の前にいた人物を見て、表情を強張らせる。
「おぉ!会いたかっt「バタン」ってえぇ?」
零は直ぐに扉を閉め、鍵を掛けチェーンをする。そして慌ただしく扉に札やら注連縄をかけていく。
「なっなんで?………まさか……いやでも1週間前に……でもあの人なら」
『お~い、開けろ~。お姉ちゃんが来たんだぞ~』
『お兄ちゃんも来たぞ~』
外から扉を叩く音と共に声が聞こえてくるが、零は耳を塞ぎ無視し続ける。
「張ってある結界の強化だけじゃ足りない……この家を外界から断絶する、そうすれば簡単には入ってこれない筈……」
零はそう言うと、何やら呪文を唱え始める。
「零さん、誰か来られたんですか?」
「誰も来てない!来てないから!!」
慌ただしい音を聞いてやって来たアーシアに零はそう言うと、詠唱を続ける。
『お~い、可愛い甥っ子や~い。開けてくれ~』
「でも………」
『あらあら……こんな朝早くから騒がしいですよ。貴女はもう少しお淑やかになるべきですよ』
『あっ……はい、姉上。申し訳ありません』
『はぁ………零、開けなさい』
零はその言葉を聞いた瞬間、諦めた様な表情になると
「お願いです、母様。10分……いえ5分だけ待って下さい。身支度するんで」
『分かりました。待ってますからね』
零はそう聞く前に身体が動いていた、直ぐに自分の部屋に入ると着替えを始めた。それに加え寝癖を直したりと慌ただしい。
「アーシア!白音!取り敢えず、奥の部屋に行ってて!!直ぐに帰らせるから!」
「えっでもご主人様のお母様ですよね?挨拶した方が……」
「そうです!」
どうやら2人は零の母に挨拶したいらしい。だが零はそれをして欲しくない様だ。
「だっ駄目!あっ時間が!ぁ~もう!!何でこんな時に来るんだよ!!(ばたっばたっ」
何時も冷静な零が取り乱している、というよりキャラが崩壊している。零は玄関に移動すると深呼吸して扉に手を掛けた。
「おっ御待たせしました………母様、姉上、叔父上」
玄関の前にいたのは、太陽神・天照、月神・月読、荒ぶる神・素戔嗚。日本神話の最高位に立つ三貴士だった。服装は天照は桜柄の着物、月読は紫色のドレス、素戔嗚は革ジャンとジーパンだ。
「お久しぶりですね、零」
「「ぉ~我が愛しの甥っ子よ~」」
月読と素戔嗚が零に飛びついた。
「月姉!叔父上!離れて下さい!!」
「おぉ~相変わらずお肌すべすべ、髪もサラサラ。男とは思えないな~」
「おっ毎日鍛えてるな、結構身体がしっかりしてきたじゃないか」
月読は零の頭や顔を撫でながら頬ずりをしている。素戔嗚は零に抱き着きながら、身体の筋肉のつき具合を確認している。
「取り敢えず離れて下さい。月姉、肋骨が当たって痛いです。叔父上、男に抱き着かれて喜ぶ趣味はないんで離れて下さい」
零は何もかも諦めた様な表情でそう言ったが、2人の神は離れる気はないらしい。その光景を見て、アーシアと白音は全くついていけていない。それに加え、騒ぎで起きてきたオーフィスと黒歌がそれを見て何が起きたのか分からないでいた。
~リビング~
「それで母様達は一体、何をしに此方にいらしたんですか?」
「何って………来週の【公開授業】を見にですよ」
天照が零の問いに笑顔で答える。
「…………はぁ~。分かりました、でも来週ですよね……なんで来週なのに今日来るんですか?!」
公開授業、それは駒王学園が授業を父兄に公開するものだ。神様が態々公開授業にくるのはどうなんだろうと思う零だが今の問題はそこではない。公開授業は来週、だが来週なのに何故今日来たのかという所だ。
「可愛い息子の世話をするのは母として当然でしょう」
「姉として可愛い弟(?)の世話をしたいと思うのは当然だろう」
「叔父として可愛い甥っ子の生活を見るのは当然だろう」
3人ともそれぞれそう主張する。3人ともさも当然の事の様に言っている。言う事は分かるのだが、それは通常の場合だ。
「仕事の方はいいんですか?」
「「「仕事と貴方(お前)と天秤にかけるまでもないでしょう(だろう)」」」
(きっと周りの神々を脅してきたんだろうな………)
零の脳裏には日本の神々を笑顔で圧倒する三貴士の姿が思い浮かぶ。勿論周りの神々はそれに逆らえる筈もなく大人しく従うしかないだろう。
「それに来週は貴方が準備した会議もありますから…………それにしても何やら可愛い同居人が増えましたね」
「いやこっこれには海より深く、宇宙より大きな事情がですね………」
~説明中~
「成程……そんな事情が……そう言う事であれば仕方ありませんね」
天照は事情を聞き納得した様に頷いた。月読も素戔嗚も納得している。
「そう言えば自己紹介が未だでしたね………私の名は天照と申します。零の母で、この世界では日本の太陽神をしています」
「私は月読だ」「俺は素戔嗚だ」
三人がそれぞれ自己紹介すると
「じっ自己紹介が遅れてすいません、私はアーシア・アルジェントと申します。零さんには命を救って頂き、今もお世話になってます」
「わっ私はご主人様に助けられた、猫の黒歌です」
「いっ妹の白音です……ご主人様にはお世話になってます」
「我、オーフィス。
それぞれ自己紹介しているが、オーフィス以外は緊張しているのか喋り方がぎこちない。これが普通の反応だろう、なんせ目の前に居るのは圧倒的な絶対の神。普通なら緊張しない筈がない。
「それで零、彼女達には原初世界の事は話したのですか?」
「えぇ……まぁ………」
「そうですか…‥まぁ別に構いませんよ。貴方が話そうと思ってそうしたのなら」
「それで、もしかしてですけど本気で公開授業に来たんですか?」
「「「勿論ですよ(だ)」」」
3人の神は迷う事無くそう答えた。しかも満面の笑みで、零はそれを見て疲れた様な表情で溜息を吐いた。
「公開授業に関しては別にいいですよ……夜には会談もありますし」
「「「会談?」」」
白音達が会談と聞いて首を傾げた。
「あぁ……来週にな、天使・堕天使・悪魔の三勢力のトップ達の会談がある。だからそれに母様達も参加する事になっている。と言うよりは無理矢理入れたんだけどな」
「と言うか、ご主人様はそれをどうやって知ったのかにゃ?」
「この間、アザゼルを街中で見つけてな。アーシアやコカビエルの時の事を含めてO☆HA☆NA☆SHIをしたんだ。オーフィスと一緒にな」
「うん……我、楽しかった。またラクガキしたい」
「でもなんでそんな会談に?」
「その理由は私が話しましょう」
天照がニッコリと笑みを浮かべながらそう答える。そして話し始めた。
私はこの国……つまり日本神話の神です。月読と素戔嗚もですけどね。
そして今回、会談には私達が参加できるように零に用意して貰ったのです。
私はこの日本の主神として、太古よりずっとこの国を守ってきました。我等は巫女を通じ、人に言葉を伝え、時に力を……奇跡を与えました。そして人々は我等に感謝し、畏れ、信仰する。
我等はそうして、これまで信仰を得てきました。しかし近代になり、科学という力を手にした人は神への感謝や畏れを忘れていきました。信仰は我等にとって必要不可欠なものですから、何とかしなければなりません。
しかし我等は他の神話体系とは異なり常に巫女を通し人を導いてきました。それもより神秘を神秘たらしめる為に必要だったのです。もし神が直ぐ傍に居る様な身近な存在だと思われれば、神秘性がなくなりますから。
ですが……この所、天使や悪魔などの存在が常にこの国に我等の許可なく活動しています。そうなれば我等への信仰もまた減る事でしょう。
それを解決する為にも、各勢力との話し合いの場が必要であると考えたのです。そして我が子が偶々機会を見つけてくれたので、参加する事にしたのです。
「と、その様な感じですね」
「まぁ難しい話はこの辺でいいだろう、姉上。それよりもだ……零、久しぶりに飲もうぜ」
痺れを切らしたように、素戔嗚が酒瓶を持ちながら零に近付いた。
「叔父上……まだ朝なんですけど」
「そうですよ、素戔嗚………」
天照がそう言うと、素戔嗚は渋々酒瓶を仕舞った。
「それよりも私は皆さんと話がしたいです」
天照がそう言うと、月読が何処からともなく大量の分厚い本を持ってきた。零はそれを見ると、血の気がさっと引いていく。それの本はどうやらアルバムの様で『零の成長アルバム』と書いてあった。
「可愛い甥っ子の話も踏まえてな。これは『零のアルバム』だ。これは1~16巻、0歳~15歳までのだ」
その日は、零の恥ずかしい黒歴史を暴露され本人は疲れたのは言うまでもない。
・零の成長アルバム
監督:天照
撮影:月読
編集:素戔嗚
神の力で創られた、零のアルバム。写真の筈なのに、動画の様に動く。
1冊で1年分が収められており、何冊あるのかは零本人にも不明であるが、零にとっては恥ずかしい過去の集大成である為、何とかして封印してしまいたいと思っている。