ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く 作:始まりの0
~駒王学園 中庭~
祐子が
白音とアーシアに向かってコカビエルの放った光の槍は青い何かに弾かれた。
「なに……俺の槍を弾くとは……何者だ?」
コカビエルが自分の槍を弾いた人物を見降ろした。それは
「ご主人様」「零さん!」
青い服で身を包んだ零だった。零はチラッとコカビエルを見ると、直ぐに白音とアーシアに視線を移す。
「白音……まさかイェーガーを使ったのか?」
「はい……ごめんなさい。でも私」
白音はボロボロの身体を起こそうとするが、零がそれを静止した。
「分かってるから……無理はするな」
そう言うと、零は白音の頭を撫でる。その眼は優しく見えるが、その奥では怒りの炎が激しく燃えていた。
『おい!』
「零さん、ごめんなさい。私……」
アーシアも申し訳なさそうに零に謝った。
『おい!聞こえてるだろう!』
「分かってるよ。アーシア………アーシアと白音は自分達の意志で動いたんだ。俺がどうこう言うつもりはないよ」
『無視するんじゃない!!!』
「白音を頼むよ。俺は後ろで五月蠅い、鴉を駆除してくるから」
零はそう言って、白音をアーシアに任せると立ち上がった。しかも全身から黄金オーラが立ち昇っており、振り返りコカビエルの方を見ると表情が一変する。
「おい、鴉」
その表情は怒り……と言うより憤怒。まるで般若様な表情だ。それに加え凄まじい殺気が放たれている。
「っ!フハハハハハハ!!何者かは知らんが、この殺気!その身から溢れるその力!神や魔王クラスの力だ!俺は幸運だ!貴様の様な奴にこんな場所で出会えるとはなぁ!!」
コカビエルは零の放つ力と殺気を受け喜んでいる。どうやら強敵に出会えた事が喜ばしいことらしい。
「そんな事……知ったこっちゃない。俺の家族に怪我させたんだ…………楽に死ねると思うなよ」
零の紅と金の瞳が輝きを放つ。
「ほぉ………お前との勝負は楽しみであるが、その前に」
コカビエルは光の槍を形成し投げる。零のいる方向とは全く違う方向に……。
「聖魔剣だと!?そんな馬鹿な!相反する2つの力が………そうか!聖と魔を司るバランスが崩れているなら説明できる!そう言う事か!先の大戦で魔王だけでなく、かm【ドスッ】がはっ!?」
聖魔剣の事を考えていたバルパーが何かを言おうとした瞬間に光の槍で貫かれ、消滅した。
「バルパー、お前は優秀だった。優秀であるが故にその答えまで至った………だがお前が居なくても俺の計画は進むんだよ。天使・堕天使・悪魔の三つ巴の戦争がな!」
コカビエルの目的はどうやら、悪魔・天使・堕天使の戦争を再び引き起こす事らしい。
「さて……待たせたな、そこの人間?……人間ではないのか?悪魔でもなく、天使でもない。お前は何者だ?」
コカビエルは零を見て今まで感じた事のない雰囲気を放つ零に問いかける。
「相手の事を聞く時はまずは自分から名乗りやがれ」
「おっとそうだったな。俺の名はコカビエル、堕天使の幹部をしている。お前は?」
コカビエルがそう名乗ると、零に聞き返す。
「俺は天王理 零……立場的にはこの世界の天照大御神の子だ……お前は俺の家族に怪我を負わせた事で俺の逆鱗に触れた。その羽、全部毟り取ってやるから覚悟しろ!【
零はそう答え、レイナーレの時に使った
「天照?……そうか、そうか!貴様が【ライディーン】かぁ!!!お前に会いたかったぞ!かつての大戦の時にお前を見た時に俺は震えた……いやあの場にいた者全てが震えた!あの二天龍を一撃の元に屠ったお前の力に!俺は本当に幸運だ!!お前の様な強者と巡り合えるとは!!!」
かつて二天龍を一撃で倒した零……【ライディーン】に出会えたことに。強者と戦える事にコカビエルは歓喜する。
「待ちなさい!コカビエル!!貴方の相手は私達よ!!」
そう叫んだのはリアスだった。だがコカビエルは興味が失せた目でリアス達を見た。
「はぁ………お前達では俺の相手にならん。サーゼクスの妹、赤龍帝、聖魔剣………それに『バラキエル』の娘」
そう言ったコカビエルの視線の先には朱乃がいた。それを聞いた朱乃は動揺している。
「私を……私を!あの者と一緒にするな!!」
朱乃は表情を一変させ、飛び上がると雷をコカビエルに向けて放つ。だがその雷はコカビエルの翼で簡単に受け止められた。
「はぁはぁ……」
朱乃は魔力は使い果たしてしまったのか、肩で息をしている。
「バラキエル?誰だ?」
「バラキエル………堕天使の幹部で『雷光』の二つ名を持つ雷の使い手だと聞いたことがあるよ」
「じゃあ朱乃さんは……堕天使の」
一誠の疑問に祐子がそう答えた。だが新たに一誠は疑問を持った。
「だが所詮はこの程度か……お前等は邪魔だ。此処で消えろ!」
コカビエルは無数の光の槍を形成すると、リアス達に向けて放った。それを回避しようとするが光の槍の数が多すぎて回避しきれない様だ。
「【メモリーコード:
零の左眼、記憶の力が宿る瞳が輝くとリアス達の前に七枚の花弁を持つ花を模した光の盾が現れた。光の槍を受けた盾は4枚の花弁が散ったが、光の槍を防ぎ切った。役目を終えた盾は粒子となって消えた。
「ほぉ………英雄アイアスの盾か。やはりお前は俺を楽しませてくれるようだ」
「リアス・グレモリー、姫島朱乃、一誠、木場………退いていろ。今の俺は怒っている、お前等を巻き込まずに戦えるほど、冷静じゃないんでな」
零の周りに光の粒子が集まり始め剣の刀身に収束し始めた。そしてその眼は本気だ、今の零は白音が怪我した原因である眼前のコカビエルを倒す事だけを考えている。もし一誠達が邪魔になれば本当にその剣で斬り伏せかねないだろう。
「行くぞ、鴉!力の貯蔵は十分か!?」
「こい!伝説の戦士!!」
零は剣を手に、コカビエルは光で形成した剣を手に互いに距離を詰めた。
金色の光を纏う零と黒い10枚の翼を羽ばたかせるコカビエルの剣と剣のぶつかり合い。互いに殆ど離れる事無く、剣と剣をぶつけ合っている。少しでも距離が開けば、コカビエルは光の槍を作りそれを放つ。零はそれを全て斬り伏せたり回避し、一気にコカビエルに接近しまた剣と剣のぶつかり合いが再開する。
「こっこれは………」
「力が違い過ぎますわね」
「まるで次元が違う」
「こっこれが本当にレイなのか?」
リアスや朱乃、祐子、一誠が思った。本当に目の前で戦っているのは零なのかと………確かに戦いになると圧倒的な力を発揮していた。しかしライザーの時には余裕を見せて戦っていた。だが今は違う、かつてアーシアの時に見せた殺気と膨大な力を剥き出しでコカビエルを倒そうとしている。
「なっなんだ……あれ……ゴクッ…これ」
一誠は自分の身体が震えている事に気付いた。それは零の放つ今まで感じた事のない圧倒的な殺気と力によるものだろう。
「無理もないわ………私でさえも怖いもの」
良く見れば、場にいるリアス達も震えていた。圧倒的な力による恐怖、だが一誠はある1つの思いを抱き、拳を握り締めていた。
【相棒……お前……】
「ドライグ……強くなりてぇ……強くなりてぇよ。そしてアイツと戦ってみたい」
【なら強くなるんだな。俺も協力は惜しまん………だから今の奴の戦いを良く見とけ、ありゃ神や魔王クラスの戦いだ。まぁ太陽神の息子って事は神だろうが】
「おらぁぁぁぁぁ!【ソウルコード:ユニコーン・ビームマグナム】!!」
零は剣を振りかぶり、コカビエルを吹き飛ばすと剣を左手に持ち替え右手にライフルを呼び出した。ビームマグナムを構え、引き金を弾くと銃口から巨大なビームが放たれカートリッジを排出した。
「ぬぉ?!ぐっ!?掠っただけで、右腕を持って行かれるとは……」
「チッ………外したか、流石は堕天使の幹部と言う所か……やはりビームマグナムは加減が効かないな。現状では白音達を巻き込む可能性があるな」
コカビエルはビームを完全に回避するものの、ビームの余波で右腕が焼けた。零はこの一撃を完全に捕えていたと思っていた様だ。しかし避けられたビームは校舎に直撃し、校舎を半分以上を吹き飛ばしていた。これ以上は周りに被害が及ぶと考えたのか、ビームマグナムを消した。
「ククク……フハハハハハハ!やはりお前は面白いぞ!!先の大戦で魔王と神が死んでからというもの、戦いのない下らん日々を我慢してきたかいがあったという物だ!!!」
「「「「「なっ!?」」」」」
コカビエルの言葉に零以外の全員が驚愕する。先の大戦で魔王だけでなく、神が死んだという事を聞かされたからだ。
「かっ神が死んだ?」
「ん?……あぁそうか、お前等は知らなかったのだな。そうだ、先の大戦で神と四大魔王は死んだ。ライディーンが二天龍を倒した後、直ぐに大戦は再開された。その結果、神と四大魔王は死に、各勢力も消耗し、休戦状態となった。トップを失った事で天使も悪魔も戦争継続不可能だと判断した。アザゼルも『これ以上は戦争しない』と宣言しやがった!ふざけるな!!あのまま戦争を継続していれば俺達は勝っていたかもしれないのだ!」
「主がいない?…‥そんな……でっでは………私達に与えられる愛は?」
憤怒しながら真実を語るコカビエルの言葉を聞き、アーシアが震えながらそう呟いた。アーシアだけでなく、今まで主である聖書の神を信じて来たゼノヴィアもまた真実を受け入れられなかったのか、膝を付いた。
「そうだ、神の加護、愛がなくて当然だ。神は既にいないからな。その点、ミカエルは良くやっている。神の代わりに天使と人間を纏めているからな。神の残したシステムさえ残っていれば、神への祈りも、祝福も悪魔祓いもある程度は機能するからな。だが神がいる頃に比べて格段と信仰は減ったがな………そこの小娘の【聖魔剣】が良い例だ、聖と魔は本来混じり合わない。しかし聖と魔のバランスを司る神と魔王が死んだ事で得意な現象が起きている」
淡々と説明するコカビエルの言葉を聞き、アーシアは気を失ってしまった。それ程、ショックだったのだろう。アーシアは赤子の頃に教会に拾われ、聖書の神を信じて生きてきた、その神が死んだと聞かされればショックを受けない筈がない。
「無理もない。私でも正気を保っているのが不思議なくらいだ……」
ゼノヴィアも正気を保つのがやっとの状態だ。
「だから、どうした?俺には関係ない、だが貴様は選択を間違えたぞ、コカビエル」
この場の全てを凍て付かせる程、冷たい零の声が響く。先程より怒りが増している様で、辺りが震えている。
「興味ない………俺が信じるのは母上と叔父上と伯母上のみだ。【メモリーコード:光の封殺剣】」
左の記憶を司る金色の眼が光ると、天から光の剣が現れてコカビエルを貫いた。
「グッ!?なんだ、動けん!」
「此奴は本来なら全く別の力だが、俺が改造した物でね。どんな相手でも3分間は完全に封じる事が出来る」
零はそう説明すると、ゆっくりと地面に足を付け【光の封殺剣】に貫かれているコカビエルを見上げた。
【此奴は俺達の時の………】
「それは違うぞ、赤龍帝ドライグ………アレは【光の封印槍】、敵を殺さずに封印する為だけの技だ。ふぅ……」
ドライグの言葉にそう答えると、ゆっくりと目を瞑り剣を構えた。すると、零の周りに光の粒子が集まり始めた。光の粒子は零の周りだけでなく、この結界内全域から溢れだし、零の持つ剣に収束し始める。
「これは?」
「光?」
集まり始めた光を見て、全員が何が起きたのか全く理解できなかった。
「皆さん、この場から離れて下さい」
全員が振り返るとアーシアを抱えている白音がいた。
「どう言う事、塔城さん?」
祐子が白音が言った言葉に疑問を持ち聞いた。
「ご主人様の持っている剣は聖剣です。今、その力を解放しようとしています。悪魔の皆さんは余波だけでも致命傷になりかねません」
「聖剣ですって!?」
白音は全員が集まっている事を確認すると、零に視線を向ける。そして静かに呟き始めた。
とある湖に住む妖精が1人の王にその剣を授けました、そして王はその剣を振るい勝利を手にしてきました。王は死の寸前に1人の騎士にその剣を返還する様に命じ、騎士は剣を返還する為に剣を湖に投げ入れ妖精の手に返されました。
それは
白音の言葉を聞き、全員が1つの名を思い浮かべた。聖剣の中の聖剣、祐子の事件の原因とも言える聖剣の名を。
「【
全ての光の粒子が聖剣の刀身に収束するのを感じた零は目を開き、コカビエルに視線を向けた。
「【
零は
「ぐああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「はぁ……あっ怒りに我を忘れて消し飛ばしちまった。アザゼルに引き渡さなきゃならなかったのに………一応
零はそう言うと、自分の張った
「ぐぅ………おっ俺は死んだ筈……」
「取り敢えず寝とけ!」
零は蘇えったコカビエルの頭を踏み付けると意識を刈り取った。その時に『ゴスッ、バキッ』と骨が折れる音がしたのを無視して、手に持っていた
「ご主人様」
事が終わったのを確認すると、アーシアを抱えた白音が零の元に駆け寄った。
「あぁ……怪我の方はもういいのか?」
「アーシアが治してくれました………今回はすいませんでした」
白音はそう言うと、申し訳なさそうに俯いてしまった。どうやら今回、勝手にこの騒動に加わった事を気にしている様だ。
「別にいいさ、白音とアーシアが自分で決めた事なら俺はそれで構わないよ。まぁ……イェーガーを使った事だけは頂けない。アレは使うにはまだ白音の身体がついていかないからね……さてと」
「あっ……」
「無理はしなくていい………ゆっくり休め」
零は白音からアーシアを引き受けると、白音も抱き上げた。どうやら白音の身体はまだイェーガーの反動が残っている様だ。零はそれを見抜いていた様だ。白音は安堵した様で、そのまま眠ってしまった。
「さてと………」
「―――流石は伝説の戦士という所だね。コカビエルを倒すとは」
声がした空の方向を全員が見上げる。零もまた空を見上げた。
やはりお前が来たか。一誠のライバルにしてかつて俺が封印した2匹の内の1匹。白き龍を宿す者……なんて大層な存在だけど……一誠とは違う方向性のドが付くほどの変態め。
「初めまして、今代の【赤龍帝】君。そして久し振りだね、会いたかったよ……君が伝説の戦士だったとは驚きだよ。零」
そこに居たのは八枚の翼と龍を模した白銀の鎧を纏う者だった。
「俺は会いたくなかったよ」という様な露骨に嫌な表情をしている零であった。