ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く 作:始まりの0
昔々ある所に1人の少女が居た。少女は何の変哲もない平和な日々を暮していた。だが戦争が起きた、少女はその戦争で苦しむ民を見て1つの決意をした。
丘の上にある1つの岩。その岩には1本の美しい剣が突き刺さっていた。少女はそれまでの全てを捨てて、その剣を引き抜きその国の王となった。
そして様々な戦場を渡り、折れてしまった剣の代わりに【湖の淑女】より1振りの剣と鞘を授かった。
王は騎士達と共に国を守り、民を導いていった。だが何時しか騎士達の中に王のやり方に対して不満を持った者達が現れた。その騎士達は王の元を去った。『王には人の心が分からない』そう言葉を残して。
王は最後に自らの息子の剣により傷付き倒れる。王は傷付きながらも何とか1人の騎士と共に逃げ延びる。そして王は騎士に自らの剣を【湖の淑女】に返還する様に命じた。騎士が剣を返還し、王の元に戻り報告すると共に生きを引き取った。
そして彼の王の持っていた剣は、王の名と共に後世に伝わった。
【聖剣・エクスカリバー】と。
~撮影会から3日後 駒王学園 朝 教室~
何時もの様に登校してきた生徒は話しをしながら過ごしていた。そんな中で浮いている存在がいた。
「イッセー!!!こんのぉ!」
「裏切りものがぁー!!!」
松田と元浜がイッセーに向かい嫉妬と羨望の目を向け叫ぶ。その眼には若干ではあるが殺意が篭っているのは気の性だろう。
「ちょ…ちょっと待て!?一体何だよ!?」
この騒ぎの原因である一誠は混乱していた。2人に恨まれる様な覚えがないからだ。
「白々しいぞ!聞いたぞ、この野郎!」
「あのリアス先輩と一緒に家から出て来たって!」
どうやら一誠がリアスと一緒に出て来た所を誰かに見られたらしい。片や学園の変態、片や美人文武両道の学園のお姉様。その2人が同じ家から朝出てきた。それだけで何か在ったと思われても可笑しくない話だ。それが松田と元浜が怒っている原因。
「まさかリアスお姉様が……」「きっと何か弱みを握られてるのよ。最低」「何時か始末してやる」
などと女性陣から聞こえてくる。
「「「「「兵藤!!!!!!」」」」」
聞こえてきた憎しみの声。そして松田と元浜と同じ様に嫉妬と羨望の目をした男子生徒達が飛び込んできた。
「うげっ!?なんだ!?」
一誠は嫉妬と羨望に加え殺意の籠った目で睨まれる。男子生徒達はカッターを取り出し投げようとしている。
「待て!そんなん死んじまうだろ!」
「「「「「大丈夫だ!非殺傷設定だから!」」」」」
「なんだそりゃあぁ!?」
訳分からない事を言う男子生徒達の言葉に突っ込む一誠。
「うるさい…」
教室全体の空気が冷たくなり、生徒全員が何かに押しつぶされそうにな重圧を感じる。全員がその冷たい空気の流れる方向を見てみると、白銀の髪の修羅がいた。
「退け……」
「「「「「はっはいぃぃぃぃ!!!」」」」」
修羅の言葉に道を開ける男子生徒達。そして一誠と松田達の元に向かい歩いていく。何故か、3人にはそれが死神の足音にしか聞こえない。
「おはよう…3馬鹿」
「「「れれれれれれえれれれれr…レイ!?おおおおおおおおっおはよよよよ」」」
3人は零から向けられている殺気に全身が震え出し、上手く喋れなかった。
「れっレイ、おっお前今まで何で休んで」
元浜が何とか気を逸らそうとそう聞く。
「あぁ……少しな。それよりもだ………白音から聞いたんだけど、女子更衣室のロッカーに忍び込んで覗きをしたんだってな?」
「「「えっ…‥ぁ~うん。絶景でした」」」
満面の笑みをそういう3人。その中で一誠だけが気付いた。覗きをした時にあの場には白音がいた。零は白音を大切に思っている。その白音から覗きをされたと聞かされた零。そうなると零が怒っている理由もこれから起こる事も容易に想像できた。
「白音のも見た?」
殺気が消えると何時もの笑みを浮かべてそう尋ねた零。
「えっと……ご馳走様でした!」
「脳内のメモリーに保存してます!」
「ばっ馬鹿!」
松田と元浜の言葉に顔を青くする一誠。
「そっか………お前等、少しO☆HA☆NA☆SHIしよっか?」
零は何処からともなく鎖を取り出すと3人を縛り上げると引き摺りながら出て行った。
それから十数秒後
『『『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁ!!!!!』』』
学園内に叫び声が響き渡った。叫び声は直ぐに止んだものの、4人は昼まで戻って来なかった。
昼が過ぎて戻ってきた一誠達は壊れたスピーカーの様に「ごめんなさい」を呟き続けていた。
~放課後 オカ研部室~
「……………」「……………」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「これはどういう状況かしら?」
「何があったのでしょうか?」
ごめんなさいを連続で呟く一誠を見て首を傾げているリアスと朱乃。その前には零と零の膝の上に頭を乗せている白音、そしてアーシアがいた。
「此奴等には少し仕置きをしただけだ。大丈夫だ、特に身体に問題はない」
「それは信じていいのかしら………天王理くん…いぇ【伝説の戦士ライディーン】と呼んだ方がいいのかしら?それとも【天照大神の御子息様】の方がいいかしら?」
「「えっ?」」
アーシアと白音が驚いた様な表情で零を見る。
「ぜっ零さんが伝説の戦士?」
「ご主人様が太陽神の息子?」
「ぁ~……後で説明するから2人とも少し黙ってて。リアス・グレモリー、そう敵意を剥き出しにするな。別に俺はお前等に敵対するつもりはない。まぁ……お前等が母様の領土で勝手をしてるから消してやろうと思った事も無い事もないが…それはそれだ。現にリアス・グレモリーお前の婚姻を潰す為に手を貸してやっただろう?」
紅茶を飲みながらそう言うと、白音を撫でる。
「それは今後も私達に力を貸してくれると思っていいのかしら?」
「阿呆かお前は?今回は俺の目的と一誠の思いに応えて力を貸してやっただけだ……お前等と慣れあうつもりなどない。これまでと同じ様に互いに不干渉だ。まぁアーシアや白音達はお前達と仲良くしているからそれは止めんがな。だが………俺の大切な物を傷付けた時は神であろうが、悪魔であろうが、堕天使であろうが……この世界から消すだけだ」
零がそう言うと両目が輝く。それを見るとリアスと朱乃、一誠は圧倒的な力を感じる。
「まっ……今まで通りであれば何もせんよ。一誠の覗きは別だけどな………ん?魔剣使いはどうした?」
「祐斗は………」
「部長……そろそろ彼女達が来ますわ」
朱乃が時計を見ると、リアスにそう言う。
「来客の様だな」
零が扉を見ると、2人の外套を被った少女がいた。
「私の名はゼノヴィア・クァルタ」
「私は紫藤イリナ。御存じの通り、そこのイッセー君の幼馴染よ」
青い髪にメッシュの入った少女と栗毛ツインテールの少女がそれぞれ自己紹介した。
そして、リアス達と零達は彼女達から事情を聞いた。何でも【聖剣エクスカリバー】は先の大戦で折られた。しかし錬金術で7本の聖剣となり天界に保管されていた。だがその内の数本が何者かによって奪われた。
それを受けた教会は砕けた【エクスカリバー】から再生された7本の内の2本を使用するこの2人を派遣し、【エクスカリバー】の奪還または破壊を命じたそうだ。その任務にあたって悪魔側に邪魔をするなと話をしに来た様だ。
「こちらとしても私の領土で勝手にされると困るんだけど」
「く…………ぐふっ…」
零はそれを聞いて口元と腹を抑えて苦しんでいる。
「?」
「ねぇそこの貴方……悪魔じゃないみたいだけど何なのかな?」
イリナが零にそう聞いた。
「ぶっアハハハハハハハハハハ、苦しぃ……はぁはぁ……ハハハハハハ、腹が痛い。ぶっくくく」
突然、笑い始める零に全員が不思議な視線を向ける
「はぁはぁ……ぁ~苦しかった。こんなに笑ったのは久しいぞ。お前等根本から勘違いしてるぞ」
「なんだと?」
ゼノヴィアが怒った様子で零を睨む。
「そのエクスカリバーとやらが聖剣とは……全くおかしい。そんな贋作如きが、真なる聖剣と言われるなど……それに誰の領土だって?此処は貴様等悪魔の領土ではないぞリアス・グレモリー?」
「ッ!?」
リアスは零に睨まれて身体を硬直させる。それを見るとゼノヴィアに視線を変えた。
「分からんならそれでいい。しかしだ、お前達だけで勝てるのか?」
「例え勝てずとも、この身と引換えに破壊してみせる」
どうやら2人は奪還が敵わない時には、命と引き換えに聖剣を破壊するつもりの様だ。
「無理だな。断言しよう、お前等の力と命ではその贋作如きでさえ壊す事はままならぬよ」
「なんですって?!」「ふざけるな!何者かは知らんが私達を舐めるなよ!」
ゼノヴィアとイリナは零を睨む。
「贋作とは言え仮にも聖剣だ。人間の命の1つや2つで破壊出来はしない、例え欠片であってもな………」
「……………まぁいい。こちらは悪魔達が邪魔をしないと言うなら文句はない」
「そうね。イッセー君、悪魔を止めたくなったら言ってね?私が浄化してあげるから」
2人はそう言うと、この場から去ろうとする。
「ん?君はもしかしてアーシア・アルジェントか?」
「えっはい」
「アーシア・アルジェント?確か落ちた聖女様だった?」
アーシアはそう言われると顔を伏せた。零と白音の表情も固まった。
「教会から消えたと聞いていたが、まさかこんな所に居たとは。どうやら悪魔にはなっていないようだが……1つ聞きたい、君はまだ主を信じているのか?」
「ぇ~でも彼女は異端なんでしょ?」
「昔、異端となったものが後ろめたさや後悔から主を忘れきれなかった者がいた。彼女からはそう言った匂いがする」
「ふぅ~ん。ねぇ!アーシアさん、貴方はまだ主を信じているの?」
ゼノヴィアとイリナは、アーシアにそう問いただす。
「ッ……忘れきれないだけです。ずっと信じてきたものですから」
アーシアは涙を流しながらそう答えた。アーシアは教会で拾われ、ずっと聖書の神を信仰してきた。だが悪魔を助けた事で異端者・魔女などと言われ追放された。
「貴様等………」
零の右眼が光ると共に右手に風が収束し始める。
「赦しません。アーシアを……私の家族を侮辱した事……生きている事を後悔させてあげます」
低い声でそう言い放ったのは以外にも白音だった。何時も無表情で感情を滅多に出さない彼女は今この時、怒りを顕にしていた。それを見ると、零の右手に収束していた風が消え、眼の光も消えていた。
「珍しく怒ってるな……」
「ご主人様……ライ使っていいですよね?」
白音はそう零に聞くと、零は黙ったまま頷いた。
「そう言う事なら僕も参加させて貰うよ」
そう言ったのはリアス・グレモリーのナイト木場祐斗だった。何時もの木場とは違い、その眼には暗い闇が灯っていた。それは憎しみ、何かに対する憎しみが木場の中で渦巻いていた。