ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く 作:始まりの0
~闘技場~
此処はライザーとの勝負の為に用意された闘技場だった。
ライザーは既に立っており、何時でも勝負を始める事ができる様だ。
勝負の前に一誠は制服姿の零に声を掛ける。
「レイ……本当にいいのか?お前だったら直ぐにあんな奴は」
一誠は零にそう言う。それは先のレーティングゲームの際の圧倒的なゼオライマーの力、そしてアーシアの事件の際の応龍皇の力を知っている。ならばライザーと戦うのは自分ではなく零の方が良いのではないのかと思っていた。
「たわけ、これは俺の勝負じゃない。それにお前はリアス・グレモリーの為にその腕を捨てた。なら今は、その力を奴に見せつけてやれ。そしてリアス・グレモリーを取り返して来い」
「レイ、何でその事を」
「さて………な。取り敢えずお前は実戦不足と実力が足りないのは言うまでもない。だから手は貸してやる。だから男を見せろ、一誠」
「レイ……おう!そんで部長と部長のおっぱいを取り戻すんだ!」
「………折角の雰囲気を壊すなよ。まぁいい。それじゃあ、援護は任せとけ」
零はそう言うと少し下がる。そして一誠は覚悟を決めてライザーに向かって歩いて行く。
「行くぞ、焼き鳥野郎!!!」
赤龍帝の籠手を装備する。
「調子に乗るな!小僧!!!」
ライザーはその背中から炎を吹き出させて翼を形成した。
そして勝負が始まった。
「行くぞ!
赤龍帝の篭手の宝玉が光り、一誠の身体を包み込んだ。光が止むと一誠の身体を赤い龍を模した鎧が全身を包み込んだ。
「なんだ、その姿は!?」
「これは
【One】
そう言うと、一気に駆け出しライザーの懐に飛び込んだ。ライザーは驚きにあまりに一瞬判断が遅れて一誠の拳を真面に受けた。
【Two】
「ぐっ!このぉぉぉぉ!!」
ライザーは直ぐに正気に戻ると一誠を応戦し始めた。閃光と化した2人は衝突しながら互いに攻撃を続けている。
【Three】
赤龍帝の篭手よりカントダウンの音声が聞こえる。これは一誠が現在の状態を保っていられる時間を表していた。一誠は自分の神器の中にいる赤龍帝ドライグと取引した。己が左手を代償に力をくれと。そして現在の状態は禁手と呼ばれる状態だ。この状態では今までにない圧倒的な力を発揮する事ができる。しかし現在の一誠では今の状態は10秒ほどしか維持できない。一誠もそれを知っているため、出来る限り早く勝負も決めなければならない。
【Fore】
「フェニックスをなめるなぁぁぁぁ!!」
ライザーは下級悪魔である一誠にダメージを受けている事で怒りを顕わにする。
「テメェこそ、俺達の部長を泣かしやがって絶対にゆるさねぇ!!うらぁぁぁ!!」
【Five】
一誠の拳がライザーの腹に直撃した。
「がはっ!?……下級の分際でぇぇぇぇ!!!」
【Six】
ライザーは直ぐに傷を治癒させて一誠の顔に炎を纏わせた拳を放った。一誠は真面にそれを受けると、頭部の鎧が砕け吹き飛ぶ。
「ぐっ…くそっ…」
【Seven】
地面に激突した一誠は直ぐに立ち上がる。
「小僧!リアスは俺の物になるのが運命なんだよ!貴様は邪魔だ!此処で死ね!」
ライザーが一誠を本気で殺す気で攻撃は放つ。
「ふざけんな!!テメェは部長を本気で思ってねぇだろうが!そんな奴に部長を渡せるか!!と言うか部長のおっぱいは俺の物だぁぁぁっぁ!!」
【Eight】
再び頭部の鎧を形成しライザーとの戦闘を再開する。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「はあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
【Nine】
一誠とライザーが衝突すると辺りが一瞬光りに包まれた。そして一誠とライザーは地面に落下し互いに倒れ込んでいる。
「ぐっくぅ…」
【Ten】
10秒のカウントが終わり、地面に伏している一誠の鎧が強制的に解除される。
「くっくそ、こんな時に!?」
~一誠の精神世界~
一誠の目の前が炎に包まれ、前にドライグが現れる。どうやらドライグに精神世界に呼び出された様だ。
【時間切れだな】
「クソッ!今度はなんだ!何を代償に払えばいい!?」
一誠は新たに代償を支払う事で力を手にしようとしている。
【無理だ。今のお前ではどれだけ代償を払っても、これ以上はお前自身の身体が持たない。しかし最後に力を篭手の宝玉に取り込めた。それをうまく使え】
「でもどうやって!?」
【あの野郎が上手くやるだろう。俺の予想が当たっていれば奴は……】
そこで一誠は現実世界に意識が戻る。
~零side~
成程…アレが
さて……そろそろ、俺も用意するか。『攻撃』はしないと言っただけで、その他の事はしないなんて一言も言ってないからな。
零はニヤリと笑みを浮かべていた。
「準備しとくか……」
左手に金色の腕輪が現れる。それとほぼ同時に一誠とライザーが地面に落ちた。
~闘技場~
一誠は現実世界に意識を戻すと何とか顔を上げる事ができた。すると一誠は立ち上がっているライザーの姿を見た。
「くっ…ぅ……くっククク…アハハハハハ、俺の勝ちだ!此処に立っているのは俺だ!そして地に伏しているのはお前だ!」
「さて…それはどうかな」
高笑いするライザーに対し、そう誰かが言う。ライザーはその声を主が誰なのか直感し一誠の後ろにいる零だ。
「れっレイ?」
一誠も振り返ると零の姿を捉える。零の腕には金色の光を放つ腕輪があり、全身から眩いばかりの光を放っている。
【やはり奴は………】
赤龍帝の篭手の宝玉が点滅しドライグの声が聞こえた。
「【ソウルコード:ライディーン】フェード・イン」
零が金色の光に包まれると、黄金の鎧を纏った。
~婚姻会場外~
勝負の様子を大きな水晶で見ていたリアスとその眷属、レイヴェル、天照、サーゼクス、リアスとライザーの両親と多くの悪魔達。
一誠とライザーが衝突し地面に落ちるとざわめきが起きる。
「この勝負、一誠君の勝ちですね」
そう天照が言い始めた。
「何を根拠にそんなことを」
「理由は簡単です。私の息子が味方をしているからですよ……ほらっ」
レイヴェルの言葉に天照がそう言うと、水晶は一瞬だけ眩い光に包まれる。黄金の鎧を纏った零の姿があった。
「あっあれは……まさか」
「そっそんなことが」
「なっなぜあの者が…いやまさか」
「あの方は…あの時の」
多くの年配の悪魔達や魔王達が騒ぎ始めた。若手の悪魔達は訳が分からない様だ。
~会場~
「さぁ……始めるか!【ゴッドワンド】!」
ライディーンの鎧より放たれた光が天に昇ると、黄金の杖が天より零の前に召喚される。零はゴッドワンドを手にすると巧みに振り回すと会場一帯を包み込む黄金の魔方陣が出現する。
魔方陣ややがて小さくなりライザーの足元だけに浮かぶ。
「なっコレは?!身体が動かない!?」
ライザーは自らの身体が拘束された事に気が付く。
「俺は「攻撃」はしないとは言ったけど「拘束」しないとは言ってないよ……と言う訳で」
零は一誠の横に移動すると、一誠を立たせた。
「れっレイ、その姿は…」
「細かい事は気にするな。俺が奴の動きを止めてる間に決めろ」
そう言って零は一誠の肩を押す。
「えっ?身体が?」
「俺はあくまで援護だからな……取り敢えず早くしろ。俺も早く帰りたいんでな、おまけもつけてやったぞ」
「あぁ!サンキュー、レイ。ん?おまけ?」
どうやら一誠の身体に触れた時に何かをしたようだ。今の一誠はボロボロの状態ではあるが体力は少し回復したようだ。
【Dragon Booster Limit Break】
「なっなんだ!?」
赤龍帝の篭手から凄まじい力が一誠の身体に流れ込み、全身を赤いオーラが覆う。
【恐らく奴がお前に力を分け与えたのだろう。今のお前は鎧こそないが、一撃だけなら
不機嫌な声でドライグがそう一誠に伝える。
「マジか!?ありがとう、レイ!」
振り返り零にそう言うと、零は手を上げて何かを払う動きをしている。どうやら「分かったから、さっさとやれ」という事の様だ。
「行くぜ!鳥野郎!!うおぉぉぉぉぉぉ!!」
一誠の全身を覆っていたオーラが
「こっこのぉぉぉぉぉ」
ライザーも拘束から逃れようと必死に足掻くが、ピクリとも身体は動かない。そしてライザーの顔面に一誠が全ての力を込めた一撃を放った。
それと同時に魔方陣が消え、ライザーは吹き飛び闘技場の壁に激突し気絶している。
「勝ったのか?勝った!勝ったぜ……ぇぇぇ」
一誠は零に与えられた力と最後の体力を振り絞り放った拳で勝負は決したが、体力が尽き倒れそうになった。
「おっと……勝ったのに倒れるなよ。ほらっよっと!」
零は倒れそうな一誠を支えると、空に向かい放り投げる。
「ちょえっ?!レイ!?」
零の行動に驚いている一誠だが、視界に赤い髪が見えた。
「イッセー!」
それは一誠の主であるリアス・グレモリーだった。
「部長!わっぷ……」
一誠はリアスに抱き締められ、胸に顔を埋めている様な状態となっている。
その光景を見て零は思った。
「ぁあ……絶対に鼻の下伸ばしてるなアレは、まぁ俺も力を貸したとはいえ今回は上々か」
一誠とリアスから視線を外すと、倒れているライザーを見る。そして、ライザーに向かって歩き出す。ライザーの前に着くと、ゴッドワンドをライザーに向けた。
「待って!」
ライザーとの間にライザーの妹のレイヴェルが割り込んできた。
「お兄様はもう戦えません!これ以上は」
どうやら零の行動をみて、ライザーに止めを刺そうとしていると思った様だ。
「へぇ……兄とは言え、女を権力やらを使って手に入れようとした奴を庇うのか?」
「確かにお兄様は、妹の私から見てもどうかと思いますが…それでも私の兄である事に変わりはありません!」
レイヴェルは真っ直ぐに零を見る。それを見ると、ゴッドワンドを下げ、代わりに地面を突いた。するとライザーの足元に魔方陣が浮かび上がり、傷が一瞬の内に治癒した。
「えっ?」
「フェニックスと言えど、精神が弱ってる状態じゃ治癒もできないからな……行動はどうかと思うが、根っから悪い様な奴ではなさそうだから今回は見逃してやるよ」
零はそう言うと、唖然としているレイヴェルの頭を撫でる。そしてライディーンの鎧は光り出した。
「さぁ~て後の事は任せて帰るか……」
それから零はその場から消え、天照の横に転移する。周りのサーゼクス達が驚いた表情をしている。
「黄金の戦士」「ライディーン」という言葉を零を見て呟く魔王達。
「では帰りましょうか、零」
「はい、母様………」
零がゴッドワンドで地面を突くと、魔法陣が浮かび上がり零と天照を飲み込むと消えてしまった。
それから、冥界はある噂が広まった。
「かつて二天龍を封印した戦士が再来した」と。