ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く 作:始まりの0
~裏京都~
時代劇で見る様な江戸時代の町のセットの様な、古い家屋が並び立っており、その家屋から異形達が顔を出していた。
「すっすげぇ……これが全部、妖怪なのか?」
「あぁ。実際は妖怪……精霊の類は何処にでもいるがな」
「そうなのか……と言うか、その恰好」
一誠は零の姿を見た。高天原に赴く時に来ている衣だ。
「近くにいるだけでジリジリするんだけど?」
少し距離が近付いてみると、一誠の肌が焼けた。
「そりゃ……太陽神の衣だ。悪魔が近付けばそうなるわな」
「あちちちちっ!なら早く言えよ!」
「そりゃ失礼……」
零達が向かうのはこの裏京都の町で一番大きな屋敷だ。
「ようこそ、いらっしゃいました………偉大なる太陽神の御子様」
八坂の娘・九重、天狗、多くの狐妖怪が零の前に頭を垂れた。
「アザゼルは引率として………何で、魔王レヴィアタンが此処にいるのやら」
横目でアザゼルとセラフォルーを見た。
「えっと……その」
「まぁいい………迷惑をかけないなら別に構わんが、これで協力しても会談でお前等の肩を持つ気はない」
「っ……」
「大体の話は九重姫より聞いた…………此度は我が母と叔父上達、そして三大勢力が京都で会談をする事になった。
会談の為にも、九重姫の為にも、俺も協力しよう」
「あっありがとうございます!」
零がそう宣言すると、九重を含めた妖怪達が頭を下げた。
「取り敢えず………アザゼル、お前の方の調べはどうなってる?」
「あっ……あぁ、今の所は恐らく禍の団の英雄派による物だと考えている」
「禍の団………またか。英雄派………英雄か………まぁいい。
九尾の狐……京都……禍の団………何となく読めて来たが………(オーフィスがこっちにいるのに、何故に奴を狙う必要がある?)」
色々と分かって来たが、それを行う理由が全く見えてこなかった。考えても仕方がないので、思考を止め、九重の方を見た。
母の事を想い、その瞳に涙を浮かべている。
「なんにせよ…………一刻も早く、事を解決せねばならないな」
~翌日 京都 渡月橋~
本日は九重の案内で京都を観光していた零達。メンバーは零、アーシア、一誠、裕子、ゼノヴィア、イリナ、松田、元浜、桐生である。
途中でアザゼルとロスヴァイセと会ったのだが、諸事情にて別行動中だ。
「この渡月橋は」
桐生がアーシア達に橋の説明をしている様だ。何やらアーシア達は「振り返らない」と言っている、零はその様子を微笑ましく見ている。
だが直ぐに何かの気配を感じ、前を睨む。次の瞬間、霧が出現し辺りの景色が変色する。
「なんだ?!」
『お~い、お前等!』
一誠達が、周囲を警戒しているとアザゼルが飛んできた。
「おい、アザゼル。これはまた、お前の策か?」
「ちげぇよ!」
どうやらディオドラの一件以来、零はアザゼルの事を疑っている様だ。
「そう………ならいいんだけど。どうやら違う次元に飛ばされたらしいな……アーシア、九重、俺の後ろへ」
零はアーシアと九重を自分の後ろに下がらせる。
「そう言えば、亡くなった母上の護衛が死ぬ間際に言っておった。気付いた時には霧に飲まれていたと」
九重がそう言うと、零は目を細め前方を睨みつけた。すると霧の中から数人の人影が此方に近付いてくる。その中の1人、学生服の上に漢服を纏った青年が前に出る。
「初めまして、アザゼル総督、赤龍帝……そして伝説の戦士」
青年はそう挨拶してきた。
「お前が英雄派を纏めている男か?」
アザゼルがそう男に尋ねた。男は手に持つ槍でトントンと肩を叩きながら答えた。
「あぁ、曹操を名乗っている。三国志で有名な曹操の子孫………一応な」
「えぇ?!曹操!?」
「あの槍には気を付けろ!最強の
「アレがセラフの方々が怖れている聖槍……っ」
アザゼルの説明に息を飲む一同。
「信仰心のある奴はあの槍を強く見るな!アレは聖釘、聖骸布等と並ぶ聖遺物の1つだ。心を持って行かれるぞ!」
「おい、変態ドラゴン。アーシアを護れ!」
【問題ない】
零がそう言うと、アーシアの髪の中からファーブニルが出てくる。
「貴様!1つ聞くぞ!」
九重が憤怒の表情で曹操に言い放つ。
「何でしょう、小さな姫君。私ごときでお答えできることなら、なんなりとお答えしましょう」
「母上を攫ったのは貴様等か!?」
「左様で」
曹操はあっさりとそう答えた。
「母上をどうするつもりじゃ!?」
「御母君には少し、我等の実験に御付き合い頂くだけですよ」
「実験?」
「本来はスポンサーの為……と言いたい所だけど、オーフィスは伝説の戦士の所にいるからね。自分達の目的の為さ………此処に来たのは隠れる必要もなくなったから、君達と手合せしたくてね」
アザゼルが何かを言おうとしたが、零が前に出た。
「おい、曹操と言ったか」
「おぉ、これはこれは………二天龍を倒した伝説の戦士殿。なんでしょう?」
「お前は英雄を名乗っているそうだな?」
「えぇ………英雄の子孫、魂を受け継ぐ者達を纏めております」
「今すぐに九尾の大将を返せ…………そうすれば俺は何も言わないし、するつもりもない。だが返さないと言うなら、俺も本気でやらせて貰うぞ」
「おぉ………これは願ってもない事だ。貴方とは是非、全力で死合ってみたかったんだ」
「それは返す気はないと?」
「えぇ………実験がありますので」
「何をするつもりだ………オーフィスが此方にいる以上、
なら、目的は他の存在だ。次元の狭間に存在する物は限られる………それ等をこの京都と九尾の力で誘い出すって所か?」
零がそう言うと、曹操は驚いた様な顔をして手を叩いた。
「流石は伝説の戦士殿………その通りですよ。ある存在を呼び出す、それが私達の目的です。まぁ、グレード・レッドが出てきても問題はないんですけどねぇ」
そう言う、曹操の眼には黒い何かが宿っているのを見た零。
「成程………理解した。いいだろう、ならば全霊を持って相手をしよう」
零はそう言うと、上着とYシャツを脱いだ。
「「「!?」」」
「アーシア、持っててくれ……」
零は上着とYシャツをアーシアに預けると、曹操の方に身体を向ける。
「ほらっ、出番だぞ………思い切り暴れるぞ!【ソウルコード】」
零の右眼が光り出し、彼が凄まじい赤い熱気に包まれた。そして熱気が消えると、肌が黒く染まり石斧を担いだ零が現れる。
「おぉ!それが貴方の使う力ですか………ならば私も全力で御相手をしなければ」
「行くぞ………■■■■!」
零は咆哮を上げ、曹操に接近する。曹操もそれを迎え撃つ為に駆け出した。
零の石斧と曹操の槍が激突した瞬間、凄まじい衝撃波が起き、彼等を中心に半径30メートルが消し飛んだ。
「■■■■!!!!」
「おおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
神を貫いた
曹操は石斧を聖槍で弾く、そのまま身体を回転させ聖槍を零の身体に叩き込む。しかし零は素手で槍を掴み、地面に向かって曹操を投げ飛ばした。
「ぐぅぅぅ!!」
曹操は直ぐに受け身を取り、直ぐに体勢を立て直した。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
零は天を仰ぎ咆哮する。
「フハハハハハハ!流石だ!流石は二天龍を倒した英雄だ!!!!もっとだ!もっと!見せてくれ!」
曹操は直に感じた零の強さに高揚し、喜びが沸き上がってくる。再び槍を構え直した、その槍先に光が灯る。
「更に上げて行くぞ!■■■■――!!!」
零がそう言い咆哮すると、全身が赤く染まり熱気を放った。
そして再び、両者は駆け出すと凄まじい戦いを始めた。それは正に物語に出てくる様な、戦いだ。
零は曹操の神をも貫く槍を避ける事無く、その身体で受ける。神を貫く筈の槍は、彼の身体を傷付ける事はなかった。曹操はそれに驚いた様子だが、直ぐに次の行動へと移る。1度で駄目なら、2度、3度と繰り返していく。その動きは、攻撃を繰り返す為に早くなっていく。
零はその身に槍を受けながら、自分よりも巨大な石斧を振るう。零の攻撃を避けながら、曹操は何度も槍を繰り出す。
両者共、人間の領域を越えている事は素人が見ても分かった。
「■■■■■!!!」
曹操は確かに英雄だろう。普通の人間などが遠く及ばない強さを持っている。だが現在、彼が相手しているのは神の子であり、英雄の中の英雄だ。
「ぐぉぉぉぉぉ!」
石斧の一撃が曹操を吹き飛ばした。
「はぁはぁ………槍で護らねば死んでいる所だった。ふっ…………フハハハハハハッ!」
曹操の身体に斜めに大きな傷が出来ている。自分が傷付いたと言うのに、彼は笑い始めた。
「流石だ!流石、二天龍を倒した戦士!神を貫く槍をもってしても、これか!」
「……………」
「フフフ………ヴァーリとの戦いよりも、心躍る!だが残念な事に、そろそろ時間だ」
曹操がそう言うと、霧が段々と濃くなり始めた。既に曹操達の姿が見え難くなっている。
「今夜、私達はこの京都と言う特異な力場と九尾の御大将を使い、二条城で大きな実験を行います。是非とも貴方には参加して頂きたい!」
「……つまりは、その実験とやらまでは九尾の大将は無事という事か」
「その通り!少し精神操作はしていますが、傷付けはしてないのでご安心を」
「……いいだろう。貴様の望みどおりに参加してやろう。だが、九尾の大将が傷付いていた時は………」
「我が祖霊の名に懸けて傷付ける様な事はしませんよ。では、私共はこれで」
曹操はそう言い、一礼するとそのまま、仲間達と共に消えてしまった。
「お前等!元の空間に戻るぞ!武装を解除しておけ!」
アザゼルがそう言うと、皆は直ぐに武装を解除し、元の空間に戻るのに備えた。
~元の空間~
「おい、イッセー………って!零!なんで服を脱いでるんだよ!」
渡月橋を渡った場所に戻った様だ。元浜と松田が、此方を向いており零が服を脱いでいる事に驚いていた。
「………暑かったのでな」
―パシャ、パシャ―
「桐生……何故に写真を撮っている?」
何故か、桐生は零の上半身裸の写真を撮っている。
「そりゃ、売………通報の為よ」
「おい、今、売るって言おうとしなかったか?」
「気の所為よ………レア物だし、1枚1000円はかたいわね(ボソッ」
「あっ……あの、桐生さん、私にも」
何やら桐生は零の写真で一稼ぎするらしい、何やらアーシアも買おうとしている。
「あっ………零さん、服です」
「あっ……あぁ、勝手に人の写真を売るんじゃない」
と言っているが、零の言葉を聞く事なく桐生は既に計算を始めていた。