ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く 作:始まりの0
今回は少し長めになっています。
~冥界~
「零さん!」
「「ご主人様!」」
「おわっと……いきなり飛び付くな、転んだらどうする?」
戻った零に飛び付いたアーシア達。零は彼女達を受け止めると、大河たちの方を見た。
「やぁ、久しぶりだね。零くん」
「久しぶり、長官とスワン。協力感謝する」
Jアークの飛んで行った方向を見る。
「取り敢えず、話は後だ。アベルを追い掛けよう……後、アザゼルには仕置きが必要だな。どうしてくれよう、ククク」
どうやらアーシアを巻き込んだ作戦を立てたアザゼルに大変ご立腹な様だ。
「でも今日はちょっと力を使い過ぎたな……黒歌」
「はいにゃ」
零は黒歌に声を掛け、彼女の首輪についているバンシィに触れる。
「【ソウルコード・バンシィ】実体化」
すると、黒歌のバンシィが光り出した。光で一同の視界が奪われた……そして光が止み皆が目を開くと巨大な黒い巨人が現れた。かつて零の纏ったユニコーンの兄弟機にして、獅子のガンダム。
「「「ななななななっ!?」」」
リアスとその眷族達は巨人の登場に驚き唖然としている。そんな彼女達を無視して零はバンシィを見上げた。すると、各部から緑色の光が溢れ出し始め、バンシィ・ノルン…デストロイモードへと変身した。
「これがバンシィの本当の姿にゃ」
「そう……ユニコーンもそうだが、この状態を使うのにはそれ相応の思念波がいる。まぁそれもその内教えてやる」
「でも何で、バンシィを使うのかにゃ?ご主人様は他の力も使えるでしょう?」
「今日はジェネシックを使って少し疲れたからな」
零はそう言い、手を上げるとバンシィがアーシア達の前に手を降ろす。
「皆、行くぞ。乗れ」
アーシア達は零の言葉に従って、バンシィの手に乗った。零も続いてバンシィの顔の横に飛び乗った。
「バンシィ、頼むぞ」
そう言うと、バンシィはそれに答えるかの様に両目のメインカメラが光り立ち上がった。そしてブースターが火を吹き、飛び始めた。
「……はっ!?みっ皆!後を追うわよ!」
「えっ……えぇ、そうですわね」
「いっ今のアイツじゃ何をしでかすか分からないし」
我に帰ったリアス達は直ぐに零達の後を追う。
今の零はディオドラの件で悪魔を完全に敵視している。今はテロリストである旧魔王派を倒す事を最優先にしているが、それが終われば悪魔に対して攻撃を仕掛けてもおかしくない状況だ。
零達がバンシィに乗って、Jアークの元に着いた。Jアークは地面に着陸しており、旧魔王派の悪魔達はアベルとその隣にいる男性に拘束されていた。因みにバンシィは到着と同時に黒歌の首輪に戻っている。
「………」
「あっ零、やっと来ましたか」
「あぁ……1つ聞きたいんだけど」
「はい、なんですか?」
「旧魔王派を拘束してくれた事は感謝するんだけど……何で、爺やそのお付きまで拘束しているんだ?アザゼルに関しては良くやってくれた」
旧魔王派の連中と一緒にアザゼル、オーディンも拘束されていた。
「いえ、そこの老人が「小さい」「(胸が)ない」などと言ってきたので腹が立ちまして」
~零がジェネシックを纏いシャルバと戦いっていた同時刻~
「おいおい、何か向こうの方から凄い力を感じてるんだが」
「同感だ……しかもこの力、
「サーゼクス、アザゼル」
オーディン、ロキ、ロスヴァイセ、イリナも2人と合流した。
「ぁ~零の奴、怒っとるのぅ」
オーディンはディオドラの神殿の方を見て、そう呟いた。
「これはあの方の力なのですか?以前とは全く、異なる力です」
ロスヴァイセはこの力を出しているのが零だと聞き、疑問を感じた。以前に零が発していた力とは、質が異なっていた。
「前は零自身も権能を出しておったからな……これはあの子の力であり、そうでない力。今、あの子の使っているのは言わば【絆】の力じゃ」
「絆……」
「フム……何かが近付いてきておるのぉ」
オーディンの言葉に耳を傾けているロスヴァイセ達。するとオーディンが城の方から何かが近付いてくるのに気付く。
その言葉で一同が城の方向を見て、目を凝らす。
「なんだありゃ?」
「白い……なんだ?」
「舟かしら?」
「でも……なんかすごく大きい様な」
段々と近づいてくる白い何かが舟の様な物だと気付いた。近付くにつれてその舟の巨大さがはっきりと分かった。
「「「「なぁ!?」」」」
「ホホホ……中々な大きさじゃのぅ」
自分達の真上を通り過ぎる舟……とある世界、とある宇宙の最終決戦時に建造された超弩級戦艦の大きさに唖然としていた。
~Jアーク内~
超弩級戦艦Jアーク、その艦内にある玉座、そこに座るのは零の元に現れたアベルと呼ばれた少女。そしてその後方に在る赤い宝石を嵌め込まれた鳥の紋章の前には1人の男が立っていた。
「Jー002、敵は旧魔王派の者達……それ以外への攻撃は禁じます。旧魔王派以外への攻撃は零に迷惑をかける事になりますから……後、殺すと面倒ですので以前に設定を付け加えた【非殺傷モード】で使いなさい」
「承知した……トモロ、設定を【非殺傷モード】に!照準合わせ!敵、旧魔王派!」
【リョウカイ】
J-002……またの名をソルダートJ。此処とは別の世界にあった三重連太陽系、赤の星の戦士だ。
彼はJアークのメインコンピューターを司っている【トモロ】に指示を出した。
【非殺傷モード】とは文字通り、相手を殺傷しないようにする為のモードであるが……このJアークの武装はどれをとっても悪魔なんてオーバーキルな武装ばかりなのだが……
A.
【半中間子砲、各メーザー砲、三連装無限ミサイルランチャー、非殺傷モード……照準:旧魔王派の悪魔】
「では……殲滅……いぇ制圧の時間です!Jー002、トモロ0117、赤の星の力を示しなさい!」
「全砲門、一斉射撃……撃てぇぇぇぇ!」
【全砲門、一斉射撃】
Jアークの全砲門が解放された、レーザーが、ミサイルが、旧魔王派の悪魔に襲い掛かる。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」
「なんでミサイルなんてものが!?」
「うぎぃぃぃぃ!」
旧魔王派の悪魔達が次々と墜とされていく。非殺傷モードとやらのお蔭で悪魔達は消し飛んではいなかった。
本来なら、原種と呼ばれる存在を滅ぼす為に製造されたJアーク。その気になれば、この冥界を破壊し尽くす事も可能だろう……故に一方的に蹂躙になっていた。
「あっ……アハハハハハ、もう訳分からんねぇ!」
「すっ凄い……」
悪魔達を殲滅するのに5分も掛からずに戦闘……蹂躙は終了した。アザゼル、ロスヴァイセ、サーゼクス達は驚愕していた。ロキの方は、自分の戦い勝った相手の味方であるならこれ位は当然だろうと思っている様だ。
「もう終わりましたか………悪魔と言うのは案外、呆気ないですね」
「アベルよ……私は堕ちた悪魔達を拘束してくる」
「では此方を……零から貰った悪魔を拘束する鎖です」
アベルはそう言うと、ソルダートJに零から貰った鎖を渡す。鎖には無数の手錠と札が付けられていた。Jはそれを受け取り、Jアークから降りた。
「トモロ……Jアークを降ろしなさい」
【リョウカイ】
ソルダートJが悪魔達を全員拘束し、そこにアベルが降り立った。
「初めまして皆様方……赤の……いぇ零の同盟者・アベルと申します。そちらは北欧神・オーディン……零のお爺様ですね?」
「ウム」
「そちらは堕天使・アザゼル……そして魔王サーゼクスですね」
「あぁ……それでお嬢ちゃん、その後ろのドデカい舟はなんだ?」
「企業秘密です……J-002、堕天使・アザゼルの拘束も頼みます」
「承知した」
凄まじい速度でアザゼルは拘束された。
「おっお嬢ちゃん、なんの冗談だ……ってこの鎖かてぇ!千切れねぇ!」
「零が貴方に用がある様なので」
「やっやべぇ……アーシアの事だな……」
顔を真っ青にしているアザゼル……その顔は本当に絶望の表情をしていた。
「ふむ………それにしてもお嬢ちゃん」
「はい、なんでしょう?」
「零とはどう言う関係じゃ?」
「えっ……と……戦友と申しますか……」
アベルはオーディンにそう聞かれて、顔を真っ赤にした。
「それにしても……あやつはこう言った「小さい」女子が好きなのかのぅ?……「(胸も)なさそう」なのに……やはり大きい方が良いと思うのじゃが」
「J-002!この老人も拘束なさい!」
~回想終了~
~現在~
「いいと思うよ……このままESウィンドウ開いて放り込んじゃえ」
「成程……永遠に時空の狭間を彷徨う事になりますね」
「待て!待て!儂を殺す気か?!」
「死にゃしないよ、永遠に彷徨うだけだから………さてと冗談はさておき……アザゼル」
オーディンからアザゼルに視線を向ける。その眼は完全に殺気立っており、今にも襲い掛かりそうだ。
「旧魔王派を討つ為とは言え、アーシアを巻き込んだんだ………それが何を意味するか、言わずとも分かるよな?言っておくが、言い訳は聞かんぞ………『【我】は怒っている』」
髪をかきあげた零の紅と金の瞳が鈍く輝いており、それに呼応するかの様に天は暗雲に覆われ始める。
「ッ……言い訳するつもりはねぇ。事前にお前に知らせなかったのも、アーシアが巻き込まれたのも俺の責任だ。ディオドラの事はサーゼクスやリアスから聞いて居た………お前に知らせておけば少なくともアーシアがあんな目に合う事はなかっただろう」
「いい度胸だ……安心しろ。お前の御仲間も後から全員送ってやるから」
それを聞いて何かを言おうとするが、場を覆い尽くす圧倒的で異質な力により強制的に黙らされた。零は完全にキレていた、故にアザゼルだけでなくその陣営総てを滅ぼそうと考えていた。
「我は大概の事は許す………だが身内を傷付けられて黙っていられる程、聖人君子じゃない」
言葉を言い放つだけで、空気の重さは倍になっていく。
「あらあら……どうやら怒らせてはいけない相手を怒らせてしまった様ですね」
そう言うアベルは肩を竦めている。どうやらこの状況下でも特に変わりはない様だ。
「それは幾度もお前に言ってきただろう………だがお前はそれを知った上で、此度の事を起こした。テロリストを倒すと言う名目が在ったとしても【我】やアーシアに関係ないの話だ。そして……魔王よ、それは貴様もだ………此度の事、主犯は悪魔だ」
アーシアを攫った主犯・ディオドラは悪魔だ………その悪魔が日本の最高神の加護を受ける巫女を攫ったという事は、日本に対する宣戦布告と受け取られても可笑しくはない。
「まぁまぁ、零。少し落ち着かんか……お主の【権能】は強力過ぎる。世界そのものが消えるぞぃ……流石に可愛いでも、理由なく世界を消滅させるのは見過ごせんわぃ」
オーディンは零に向かいそう言う、その身からは零と同じ異質な力を放っていた。
「邪魔をすると言うのか、祖父よ」
「邪魔はせん……しかし少し落ち着いて話し合いをするべきじゃと言っておるのだ」
「………話し合いが必要か?悪魔が誘拐したのは日本の太陽神・天照の巫女……太陽神の巫女を攫った悪魔は光にした。しかし問題はそう単純ではないのは言うまでもないだろう。
我が母は三大勢力にそれを正式に発表していた。それを知った上で、あの悪魔はアーシアを攫った。つまりこれは悪魔側の宣戦布告を意味する」
「お主の言いたい事は良く分かる。されどいきなり戦争を起こすのはいかん………ここで魔王や堕天使の総督を討てばそれこそ戦争だ。お主の力なら2つの勢力を滅ぼすなど簡単の事であろうが………」
諭す様に優しく声を掛けるオーディン。すると零の身体から放たれる力が弱くなり、その瞳の輝きも消えた。
「………この件、母様に任せよう。俺の一存で三大勢力の2つを消し去れば、母様に迷惑をかける故にだ。だが覚えておけ………次に俺の家族を傷付ける様な事をすれば」
未だ空を覆う暗雲は消えておらず、その暗雲の隙間から巨大な影が蠢いていた。それも1つではない、数えればキリがない程の数だ。加えて白音のライガーゼロや黒歌のバンシィ、アーシアのジャンヌの十字架も呼応する様に点滅を始める。
「俺の総てをもって貴様等を消し去ってやる」
再び紅と金の瞳が輝き、アザゼルとサーゼクス、旧魔王派の悪魔達を睨みつけた。言い終えると眼を閉じ、再び眼を開けた。その眼にはもう輝きもなく、空の暗雲も消えていた。
「アベル、J、今日は助かった」
「いぇ……どうせ、暇ですし…貴方が頼ってくれたことは嬉しいことです。では私達はこれで失礼します」
「私はアベルに従ったまでのこと」
2人はそう言うと、Jアークと共に光となって消えた。それを確認すると、アーシア達の元へと歩を進める。
「帰るぞ……今日は少し疲れた」
そう言うと、彼の身体が光り出し縮んでいく。
「暫くこの姿で力の回復するt……『きゃあぁぁぁぁ、可愛い!!』」
小さくなった零に飛び付く、黒歌達。
「こらっ、ちょっと……苦しい」
「小さいご主人様……ぷにっぷにっ」
「零……可愛い」
「はぅ……可愛いですぅ」
「ぇ~い……苦しいと言っている、早く帰るぞ!」
零がそう言うと、彼等は光に包まれてその場から去って行った。
「はぁはぁ……助かったぜ、オーディン」
「本当に助かりました……あの場で貴方がとりなして下さらなければどうなっていたか」
「構わんよ……あの子は家族思いの優しい子だけじゃからな。できれば無駄な殺しなどさせたくなどないんじゃ。それにしても、どうしたものか………ロスヴァイセや」
「……」
「ロスヴァイセ!」
「ひゃひゃい!」
ぼっーとしていたロスヴァイセはオーディンに声を掛けられ我に帰るが、声が裏返る。
「お主は零の元に行くといい……あの小さい身体では何かと不便じゃろうからな。儂に言われて来たと言えばあの子も無下にはせんだろう」
「はっはい……分かりました!」
ロスヴァイセも魔法を使い、その場から消えた。
こうしてアーシアを巻き込んだ事件は終了した。