ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く 作:始まりの0
EP0 いざ世界へ
~真っ白な空間~
真っ白な空間に一人の美しい女性がおり鏡を見ていた。鏡には女性の顔ではなく、多くの人や景色が写っていた。女性はそれを見ると表情を曇らせる。
「やはり……そうなりますか、さて困りましたね。一体どうしましょうか?」
「何を考えているのだ、姉上」
女性が振り返ると、薄い紫色の髪の女性がおり此方を見ていた。
「今、ある世界を見ていたのですが……貴女はどう思いますか?」
紫色の髪の女性も鏡を覗き込むと、表情を曇らせる。
「こりゃまた……凄い事になってるな」
「仕方ありませんね、あの子に行って貰うとしましょう」
黒髪の女性がそう言うと、手を振った。すると光と共に銀色の髪の少年が現れる。少年の手には茶碗と箸が握られていた。少年はどうやら食事中だったらしい。
「あら、ご飯中でしたか。ごめんなさいね」
少年は黒髪の女性に気付くと、直ぐに口の中の物を飲み込み茶碗と箸を自分の後ろに隠す。
「母様!いきなり喚ばないで下さいよ。びっくりするじゃないですか」
「ごめんなさいね、でも急用だったから」
どうやら、この少年は黒髪の女性の子供の様だ。
「それで何の用ですか?」
「実は貴方に逝ってほしい世界があるんですが」
それを聞くと少年は呆れた様な表情をする。
「またですか……まぁ毎度の事ですから慣れてますけどね。それでその世界に行って何をすればいいんです?」
「フフフ、私は本当にいい息子を持ちました。その世界では色々な事が起きています、神・堕天使・悪魔・ドラゴン等々の様々な種が居るのですが、ある事をきっかけにその世界の拮抗が崩れるのです。そして世界のバランスが崩れ始めた」
「そこでお前がその世界に行って、出来る限りそのバランスを整えて欲しいと言う訳だ」
黒髪の女性の後に紫髪の女性がそう言った。
「分かりましたよ、叔母様」
「おい!誰が叔母様だ!お姉様、または姉様、お姉ちゃんと呼べと何時も言っているだろう!」
どうやら紫髪の女性は叔母様と呼ばれるのは嫌な様だ。
「はぁ……それで向こうにいったら、俺の力は何処まで使っていいんですか?」
「何時も通りで構いませんよ」
少年と黒髪の女性は無視して話を続けている。
「おい無視か!泣くぞ!お姉ちゃん泣くぞ!泣くからなぁ……ぐすっ」
「分かってますよ、つく姉」
紫髪の女性が本当に泣きそうになると、少年がそう言った。すると泣きそうだった女性は笑顔になる。
「では、そろそろ往くとしますか。母様、送って下さい」
「はい、あっそうだ。偶にはこっちに帰って来て下さいね、食事は毎日三食食べるんですよ?勿論栄養も考えて。あと手洗いとうがいも忘れずに、家とお金は此方で用意しますが無駄使いはいけませんよ。あっ何時もみたいにお腹を出して寝てはいけませんよ」
「母様、俺はそんなに幼い子供ではありません。何時までも子供扱いは止めて下さい」
「ですが貴方は何時までたっても私の可愛い息子ですよ?」
「もういいです。それじゃ送って下さい」
黒髪の女性が手を振ると、少年の前に穴が開く。
「ふぅ……では行ってきます!!!」
「「いってらっしゃい」」
少年は穴に飛び込むと、直ぐに穴は閉じた。
~???~
「はてさて……母様には困ったものだ。違う世界に来たら突然、パラシュート無しのスカイダイビングだなんて。もう少し考えて送って欲しいな。おっ雲を抜けたか」
少年は青空の中を重力に従い落下しているのだが少年は何事も無い様に落ち着いていた。やがて雲を抜けると、地上が見えてきた。
「取り敢えずは地上に降りてからか」
少年が何かを呟くと、何処からか白い外套が現れるとそれを纏った。そして顔を隠すと落下速度が徐々にゆっくりになりそのまま地上に足を着けた。だが何やら辺りは黒い煙に立昇っており、地面も何故か揺れている。
「ふぅ……はてさてこれからどうするかな……それにしても揺れてる…地震か?と言うか何だ、この地面、赤いな」
少年は地面が赤い事に気付くと、顔を上げた。
「赤いドラゴン?それに何か白いドラゴンもいるし、周りのは天使に、悪魔、堕天使?なんだこりゃ?」
少年が今立っているのは巨大な赤いドラゴンの身体の上、そしてその近くには赤いドラゴンと睨み合っている。しかもこの2体のドラゴンは今にも殺し合いそうな雰囲気だ。しかも周りには白い翼の天使、蝙蝠の様な翼の悪魔、黒い翼の堕天使が無数におり2体のドラゴンを取り囲んでいた。
「えっと……本当になにこの状況……」
《貴様!この俺の身体の上に乗るとは何者だ!!!》
「えっ…此処の奴等は喋るんだ。それは済まなかったな、赤いの」
どうやら喋っているのは少年の乗っていた赤いドラゴンの様だ。少年は赤いドラゴンの身体から降りると2体のドラゴンの間に浮いている。
《折角の我等の決闘を邪魔しやがって!貴様等纏めて燃やし尽くしてやる!!》
《同感だ!我等の邪魔をするものは何者であろうと排除する!!》
赤いドラゴンに加え、白いドラゴンまで喋り出す。そして2体のドラゴンはその巨大な咢から赤い閃光と白い閃光を放つ、2つの閃光は先程の少年を飲み込んだ。
『おいおい……物騒な、少しは話し合いをするつもりはないのかよ』
2つの閃光に飲み込まれた筈の少年の声が響き、赤と白の閃光を掻き消し黄金の光柱が天空に立ち昇った。
光柱が消えると、そこには先程の少年が黄金のオーラを纏い浮いていた。
《なっ我等の攻撃を受けて無傷だと!?》《そんな馬鹿な!?》
2体のドラゴンは自分達の攻撃を受けて無傷だったのにかなり驚いている様だ。
「さて……ライディーン………【フェード・イン】」
少年の左腕の紋様から黄金の腕輪が現れ、身体を黄金の鎧が包み込んだ。
《《貴様!何者だ!?》》
「俺は唯の通りすがりの人間です。と言う訳で1回は1回でも倍返しでいいよね?答えは聞いてないけどね!【ゴッドワンド】」
天空より、黄金の錫杖【ゴッドワンド】が飛来すると少年はそれを手に取る。すると空に黄金の光の魔方陣が浮かぶと、一瞬の内に少年は魔法陣の元に移動した。
少年がゴッドワンドを天に掲げると、魔法陣に巨大な光の槍が2本出現する。その矛先は赤いドラゴンと白いドラゴンに向いている。
「【光の封印槍】」
錫杖を振り下ろすと、光の槍が2体のドラゴンを貫いた。ドラゴン達は槍で貫かれた事によりのた打ち回っている。
《グギャァァァァァ!!》《ウガァァァァァ!!》
だがやがて光の槍の力によって動かなくなり、倒れた。
「悪く思うな、1回は1回だ。はてさてこれからどうしたものか」
【「零」、聞こえますか「零」?】
少年の頭に声が響くと、少年は天を見上げた。
「母様……これはどう言う事ですか?一応攻撃してきた2体のドラゴンは動けなくしておきましたけどいいですよね?」
【総て見てましたよ、それよりも貴方を送る場所を間違えました。直ぐに本来の場所に送るのでジッとしておいて下さいね】
少年の姿が徐々に薄くなり始めた。
「母様も相変わらず天然だな…さて……次はちゃんと着きますように」
少年は自らの母に願いながら、その場から消えた。
先程の光景を見ていた、天使・悪魔・堕天使達は唖然としていた。
「なっ…いっ一体何者なのだ…あの赤龍帝と白龍皇を一撃で」
「ばっ馬鹿な、ありえん。魔王様でさえも手を焼く2体のドラゴンをあぁも簡単に倒すなんて」
「うっうそだろ……あっ在り得ない」
それぞれ目の前で起きた事が理解できずにいた。しかし実際に目の前に2体の龍が倒れているのを見ると嫌でもそれを信じるしかないが、未だに困惑していた。