俺たちは今海に来ている。芳佳とリーネさん以外は訓練が終わっているので海で泳いでいる。今さっき芳佳とリーネさんが海にストライカーユニットを付けながら飛び込んで行った(落ちて行ったの方が合ってる気がするが)。
俺はと言うと砂浜をひたすら走っていた。あともう少しで終わりだ。
まあ実際俺は魔法でユニット無しでも飛べるのでこの訓練はいらない気がするので面倒が減って…無いわ。俺走る方が嫌いだもん。
そんなことを考えていたらもう終わってしまった。俺は走り終わってすぐにその場に転がり息を整えた。
「はぁ…はぁ…」
正直言って、水着があっても走った後じゃ泳ごうとは思えない。俺は岩場の影に行って寝ることにした。
「………」
岩場の影に来たが全く寝れていなかった。岩場から見えるのは石とあまり好きじゃない海、そしてウィッチーズの皆だ。芳佳、リーネさん、シャーリーさんは寝転がって気持ち良さそうにしている。他の皆はまだ泳いでいるようだ。
俺は結局岩にもたれているだけになってしまった。暇である。
「ネウロイ!」
いきなりそんな声がして振り返るとシャーリーさんがハンガーに走っていた。
全員がミーナさんの指示に従ってハンガーに走っていく。だがルッキーニちゃんだけは途中で止まってしまった。
「ルッキーニちゃんどうかした?」
「えっとねシャーリーのストライカーを壊しちゃってね…。そのまま行っちゃったから…」
「お、おいそれはまずいだろ。ミーナさんにはいったのか?」
「隊長に報告したらなんて言われるか分からないから…」
しかしこれではシャーリーさんが怪我をしかね無い。ルッキーニちゃんには悪いがこれは報告させてもらおう。
「ルッキーニちゃんには悪いけどこればっかりはミーナさんに報告するよ。これでシャーリーさんが怪我をしちゃったら大変だしね」
「………うん」
「大丈夫だよ。俺も少しはフォローいれるさらさ」
ルッキーニちゃんの頭を撫でてやる。三回くらい撫でてミーナさんの元に向かう。
「ミーナさんに報告があります。シャーリーさんのストライカーユニットはルッキーニちゃんが壊してしまったらしく、いつ墜ちるかわからない状況です」
「なんですって!?坂本少佐!」
「分かった!」
ミーナさんが坂本さんに呼びかけるとほぼ同時に坂本さんがシャーリーさんに通信で呼びかける。
「大尉!シャーリー大尉!直ちに帰投せよ!」
坂本さんも呼びかけているがなかなか繋がらないようだ。
ルッキーニちゃんはこっちに追いつくなりヴィルケさんに拳骨を食らっていた。
「シャーリーさん……。宮藤さんリーネさん、早く追いついて……」
「クソッ!燃費はかなり悪いがやってやる!」
「月影君!?何をするつもり!?」
「あの三人に追いつくんですよ!俺の飛行魔法は魔力を多くかければいくらでも速度がでる!それで追いついて見せます!まだそんなに距離は開いてないはずです!」
「ちょっ、ちょっと!月影君!!」
ミーナさんに止められるがそれを聞かずに飛んでいく。皆は速いとかそんな感想を呟いていた。
「流石にシャーリーさんは速い!」
目の前に芳佳とリーネさんが見えるがシャーリーさんはまだ遠い。更に速度を上げるため更に魔力の出力を上げる。
「あ、あれ?月影君が後ろに…」
「は、速い!」
「悪い!横通るぞ!」
俺は体を少し捻って二人の横をすり抜ける。二人を抜かす位の速度はあるがシャーリーさんに追いつけない。短くなるどころか少しづつ離れている。するとシャーリーさんは突然減速した。
ーーーそしてそのままネウロイに体当たりした。
「んなぁ!?」
そしてその体当たりはそのままネウロイのコアを破壊しネウロイは砕け散った。
シャーリーさんは無事だったがストライカーユニットが外れ服が破けている。正直目を背けたいがそんなことをしたらシャーリーさんが死んでしまうので助けに行く。
「……!よし!掴んだ!」
シャーリーさんの手を掴み背中におぶる。せめて視界に入れないようにした。だが背中には柔らかい感覚があった。
(気にするな!無心だ!無心!)
しかし考えないようにすればするほどそっちに意識がいってしまう。
(クソッ!早く来てくれ、芳佳、リーネさん!)
それから二十秒も立たずに二人が来たがめちゃくちゃ長く感じた。
シャーリーさんは二人に任せて、二人の前で飛んでいたが魔力が無くなって来たので近くの浜辺で先に降りることにした。
「悪い、俺先に降りるわ。シャーリーさんの事頼んだよ」
「分かりました。こっちは任せてください…。芳佳ちゃんはこうなってますけど」
芳佳はさっきからシャーリーさんの胸を鷲掴みにして「おっきい…」なんて呟いていた。
「じゃあそっちは任せた」
そう言って俺は浜辺に降りた。
砂に足をつけると同時に眠気が襲ってくる。魔力を限界まで使ったので疲弊だろう。
「ああ、駄目だ…眠い……なんて、燃費の悪い……魔法だ……」
睡魔が俺を襲いその戦いに負けた俺は海に当たらない所までよろよろと歩いて仰向けで倒れて意識を手放した。
………目が覚めると知らない天井、では無いが、周りを見渡すとベッドが幾つかある。ここは医務室なのだろう。
「…あ」
自分のベッドを見るとサーニャとエイラが突っ伏して寝ていた。
「…ありがとう」
俺は寝ている二人に微笑みながら頭を撫でた。
「月影、起きてるかい?」
「シャーリーさん、どうしたんですか?」
突然シャーリーさんが医務室に入ってくる。二人の女の子を撫でていたので見られていたと思うと恥ずかしい。
「その、お礼を言いに来てね。ほらルッキーニも入って来なよ」
「うん」
「なんでそんなに悲しそうな顔なんだ?」
「ルッキーニ、隊長に怒られて今日から一週間トイレ掃除なんだよ」
なるほどと俺がつぶやく。
「ルッキーニちゃん、落ち込むなって。一週間なんてすぐに過ぎるさ」
「うん、がんばる」
「シャーリーさんも暇があれば手伝ってあげてくださいよ」
「あはは、そうだね。暇があったら手伝うよ。だからそんなに落ち込むなって。私も無事だったし月影も魔力を使いすぎただけだったし」
「そうだな、俺も結局無事だったし。なにも怒ってないよ?シャーリーさんも怒ってませんよね?」
「そうだね。音速を超えてこんな体験なかなか出来ないからね。それを考えたらこっちがお礼を言いたいよ」
ルッキーニちゃんが責任を感じないようにわざとらしく言ったけど大丈夫かな?と思ってしまう。
責任を感じてここに来ている、と思っている。俺としては別に死ななかったので問題が無い。怒ったりもしないので優しく微笑んで見る。
「ありがとう!シャーリー!流斬!」
「あれ?今、名前で呼んだ?」
「良いじゃん別に!」
もちろん断る理由は無いので、良いよ、と言う。
「じゃあ私も流斬って呼ぼうかな。流斬は私の事呼び捨てでも良いからね」
「じゃあそうするよ。もちろん、名前で読んでくれるのは嬉しいけど、サーニャとエイラが寝ているから今は静かにね」
「じゃあ、起こしても悪いし私達はこれではお暇するよ。行こう、ルッキーニ」
「流斬、またね!」
「ああ、またな」
シャーリーとルッキーニちゃんが部屋を出る。俺はサーニャとエイラの髪を優しく撫でる。この二人が起きるまでベッドから出れないのでもう一度寝ることにした。
エイラーニャに優しくし過ぎですかね?