どうもきゅうじょうです!
「あっ!月一投稿してる!」って驚いているだろう。
自分が一番驚いてる。
今回は心配される流斬君とウィーラーさんの過去のお話。
ウィーラーさんの過去、白石442さんの物語より本当に少しだけ設定が付け加えられています。
…怒られないか不安だぜ!
ではどうぞ!
18話
何時間眠っていたのだろうか。何度か寝ていた医務室のベッド。隣のベッドには坂本さんが寝ている。まだ治療が済んでいないのか芳佳が汗を流しながら寝ている。
左腕を軽く動かしてみる。
「いっつ…」
肘まで包帯で巻かれた左腕はまだ動かせるが、やはり痛みがなくなるまでは治っていないようだ。強く握ると血が出てきそうだ。
隣で音が聞こえたのでそっちを見ていると、芳佳が顔を上げて治癒魔法を使っていた。
本能が必要な情報と感じたからか、自分の思いとは関係なく治癒魔法を解析し始める。ある程度するとまた芳佳が倒れてしまった。
俺は起き上がり坂本さんの近くによると治癒魔法をかける。一点集中で魔法をかけると少しは傷が塞がる。だがやはり覚えたてしかも病み上がりなのでほとんど治らない。中途半端に治してしまうと、余計に苦しむだけなので残念だがここで終わる。俺は医務室から出た。
医務室から出ると椅子に座っているのが何人かいた。一人はミーナ中佐。前々から坂本さんの魔法力の低下に気づいていただろう人。そしてペリーヌさん。坂本少佐に特別な感情を抱いているであろうその人はずっとこの椅子に座っていたのかここで眠っている。そしてエイラとサーニャ。この二人は俺が怪我をすると毎回心配してくれている。本当に良い人を仲間に持ったものだ。今回はエーリカも横にいる。この三人もペリーヌさんと同じように寝ている。
「月影君。左腕はまだ動くかしら?」
「ええ、まだ痛みはありますが動きます」
「そう。坂本少佐はやっぱり…」
「…はい。年齢による魔法力の低下でしょうね。俺がフォローに回ろうと思っていたのですが、力不足だったようです。申し訳ありません」
俺は深々と頭をさげる。
「ううん、月影君が謝ることじゃないわ。貴方は良くやってくれたもの。私こそごめんなさい」
「それも貴方が謝ることじゃないですよ。とりあえず俺は三人を部屋まで運びます。ではまた後で」
俺はサーニャとエイラ、エーリカを一人づつ部屋に運んでいく。そして俺はサーニャ達の部屋から出るときに「心配してくれてありがとう」と書き置きして自分の部屋に戻った。
部屋に戻った俺は治癒魔法で少しずつ左腕を治していく。ある程度治り左腕をきつく握る。
「いって…。やっぱりそこまで治ってはいないか」
だが医務室で試した時よりもかなりマシだった。これならM10を両手持ちしても大丈夫だろう。
コンコン
「はい、どうぞ」
「流斬君?」
「サーニャ?どう……うおっ!どうした!?」
サーニャが抱きついてきた。分かっていたがまた心配させてしまったようだ。本当に申し訳ない。驚いて硬直していたがゆっくりとサーニャを抱き寄せて優しく撫でる。
「また心配させちゃったな、ごめん。結果論だけど俺は大丈夫だ」
「…流斬君が帰ってきた時、血だらけで帰ってきてびっくりした。また無茶したんだって、前の時みたいに意識を失ってて。でもちゃんと帰って来てくれた。私はそれだけで嬉しい…」
「…エイラに心配させないって約束したんだけど、破っちゃったな。また、謝りに行かないと」
「エイラもきっと許してくれるわ」
ゆっくりと顔を上げて微笑むサーニャ。
その笑顔にドキッとしたのは本人には黙っておこう。
「でも、私とも約束。流斬君は無茶するだろうけど。ちゃんと帰って来てね…?」
「…ああ、約束する」
サーニャは何故か周囲を見渡し始めた。ここ俺の部屋だから他に誰もいないんだけど。そして俺を見た。
「約束、だよ?」
その言葉の後サーニャが近づいてきてそのままキスをされた。
エーリカにされた時のように魔導針の使い方がより複雑に鮮明に分かるようになる。
そしてサーニャの唇が離れる。彼女の顔は赤く火照っていた。恥ずかしそうに足早にこの部屋を出て行った。
あのサーニャが大胆な行動に出たのが驚きだ。
「…流行り?」
んな訳ないだろうよ、俺。
俺は何を言っているんだろうか。
ちなみにエイラとエーリカはキスはしてこなかったが、めちゃくちゃ心配されていた。申し訳ない気持ちと嬉しい気持ちが同時に込み上げてきた。他の人からも大丈夫?など聞かれた。良い仲間を持ったなぁ。
サーニャの大胆な行動の次の日。坂本さんが目覚めた。その後、芳佳の処罰の決定。独断先行。その結果上官が負傷で1週間の自室待機だった。なんか、軽いな。もう少し重くなると思っていた。その時芳佳は何かを言おうとしていたそうだが、ミーナさんに遮られてしまったので何を言おうとしていたかは分かっていない。
ウィッチーズ隊の女性メンバーはお風呂に入っているので、俺とウィーラーは食堂でコーラを飲んでいた。
「ウィーラー完全にコーラにハマってるな」
「シャーリーと会話する時はよく貰うんだ。そのせいかコーラが手放せなくなったよ。……流斬が怪我をした時は何事かと思ったが、とりあえず帰ってきて良かったよ」
「心配してくれてありがとうな。だが、今の問題は芳佳だ。あいつ下手な事をしなければいいんだが」
「人型のネウロイだったか。宮藤はそのネウロイに攻撃しなかったんだよな。……何か情報を得たのか、それとも人型だから撃てなかったのか。本人にしか分からんな」
今はその本人も自室にいないだろうけどな。多分風呂に入ってるし。
「ふと思ったんだが、流斬の両親は?」
「ああ、亡くなってるよ。母さんはネウロイの襲撃の時に俺を逃して。父さんは研究者で研究所にいたんだ。そこも襲撃されて亡くなったらしい。俺もハッキリとしたことは分からん。俺も自力でこっちに渡ってきたからな。しばらくあっちにいたし」
「そうか。すまないな」
「気にするな。お前の親はどうなんだ?辛かったら話さなくてもいいぜ」
「いや……どうせなら語ろうか。俺はリベリオンのスラム街に住んでたんだ。親父はマフィアに所属していたんだ。ある日出て行ったまま、帰ってこなくなったよ。母さんは親父が出て行く少し前から薬をやっててな。親父が出て行った後くらいからその頻度も多くなって、そのまま中毒死だ。正直俺自身よく覚えてないよ。ただ、この二つに関連する事…薬と殺人は絶対にしないって決めてたよ。
よく覚えてないまま気づけばストリートチルドレンになってたな。…この前、シャーリーにフライドチキン作ってもらった話したろ?あの時に言った『昔食べた味』って言うのはこの時によく万引きして食べてたやつなんだよ」
俺は静かに黙って聞く。
「ある日コーヒーショップに行ったんだよ。強盗するためだ、当時の俺らにはそれしか無かったからな。その日運悪く警察に見つかってな。更に銃で撃たれたよ。それで捕まって警察に言われたのが『このまま刑務所に入るか、犯罪経歴をチャラにして軍に入って最前線で戦うか』ってな」
「それで軍に入ったのか。その時から魔法力があったのか?」
「いや、その時は無かった。だけどすぐに頷いたよ。俺の誕生日はリベリオンの独立記念日なんだ。それだけが理由って訳じゃないけど、当時から人一倍愛国心はあったつもりだからな。軍の生活も当時は楽しかったよ。訓練はかなりキツかったけど、ストリートチルドレンの時よりも快適だったからな」
ここまで言い終わって急にウィーラーの顔に陰が差した。
「ある日部隊長にまでなって303高地っていうところで戦ったことがあるんだ。これまで一緒に戦った戦友。いや、もう兄弟って言っても過言じゃないと思うよ。あの日に一気に消えたんだ。俺を一人残して。皆消えちまった…。兄弟は死ぬ間際に笑顔で俺に『生きてくれ』って言うんだ…。出撃する前に『死ぬ時は小隊全員一緒だ』っていたのによぉ…」
ウィーラーは涙を流しながら語る。当時の辛い思い出を無理に笑顔を作りながら。
「……
「ああ、そうだな。俺もお前が死ぬのは見たくない。だが俺たちは軍人だ。当然危険な事もあるだろう」
そう言って俺は立ち上がる。
「だけど約束しよう。俺は瀕死になった状態でも、這いつくばってでも帰ってきてやる」
いきなりの行動に少し驚いているウィーラーを見ながら手を差し出して言う。
「だから、お前も死ぬなよ。『ブラザー』」
「クッ……ハ、ハハハハ!」
ウィーラーは笑いながら立ち上がった。
やはり臭いことを言いすぎただろうか?
「カールスラント住まいの扶桑人が無理してリベリオン語を使おうとしてんじゃねぇよ。…俺は死なない。死にかけでも舞い戻ってやる。
約束。破んじゃねぇぞ?『brother』」
ウィーラーは俺の手をしっかりと掴んで約束してくれた。
…やっぱりあいつの方が発音いいなぁ。
ウィーラーさんの過去が全て語られていないという事実。魔法をどうやって手に入れたとか言ってないもんね。次の話で言ってもいいんだけど、どうしようか。
まあ、今後どうしようかまだ悩んでるからいいか。
とりあえずサーニャ可愛い。結婚しよ。
ではまた次回!