唯一魔法が使える少年   作:きゅうじょう

14 / 21
なんかもう死にそう。


第14話

14話

 

普段よりも少し遅れて、起床して朝食を食べに行こうとすると、風呂場の更衣室でペリーヌさんが叫んでいた。

 

「こ、これは事件ですわ!!」

 

「どうかしましたか?ペリーヌさん」

 

更衣室に向かって言うと坂本さんが返事を返した。

 

「ああ、ペリーヌのズボンが無くなったらしい。後で食堂に行くから先に行って待っていてくれ」

 

「はぁ。分かりました」

 

食堂に向かって歩き出す。と言ってもそこまで遠い距離ではないのですぐに食堂についた。

食堂にいたのは、バルクホルンさん、シャーリーさん、ルッキーニちゃん、エーリカ、そしてウィーラーだ。

 

「おはようございます」

 

「おはよ流斬!」

 

「ああ、エーリカ。おはよう」

 

「流斬。おはよう」

 

「ウィーラー。おはよう。どうだ?ここの生活は」

 

「今までとは違う。そうだな、一つ前の所は凄く厳しかったんだ。だけどここは新しい体験が色々できる。本当に楽しいよ」

 

「それは良かったよ。戦場でも期待してるぜ」

 

「ウィザードの戦い方、見せてやるよ。とりあえず今は朝食を食べようぜ」

 

「そうだな」

 

そう言ってウィーラーとエーリカの間に座る。ちなみにウィーラーの隣はシャーリーさんだ。どうもシャーリーさんはウィーラーのことが気に入ったらしい。同じリベリオン出身だからかな?

 

「芋だけ?」

 

「そうだよー?」

 

エーリカがなんの疑問も持たないが、これは俺だけなのだろうか?気にしていても仕方ない。あるものを食べよう。

 

ジャガイモを2個食べた所で坂本さんと、芳佳、ペリーヌさんが食堂に来た。

 

「あー、みんな聞いてくれ。先程風呂に入っていたんだが。ペリーヌのズボンが無くなった。そして、宮藤のズボンが更衣室に落ちていた」

 

それを聞いたバルクホルンさんは。

 

「これは、事件だな」

 

「あの、私の服を…」

 

芳佳がおずおずと聞くが。

 

「いや、これは証拠物件だ」

 

「え!?でも…」

 

さっきか、服の裾を掴み隠そうとしているので多分何も履いていないのだろう。バルクホルンさんもそれに気づいた。

 

「何も履いてないのか?なら、私のを貸そう」

 

焦りながら否定する芳佳。なんでもいいのだが、ここでやらないで欲しい。ウィーラーと俺、目のやり場に困る。ペリーヌさんもズボンを履いていないし。

芳佳は坂本さんの上着を羽織るようだ。

 

「では、捜査に入る。まずクロステルマン中尉のズボンが何故無くなったかだ。クロステルマン中尉の前に更衣室にいた人物は?」

 

風呂に入っていた人はある人物を見た。それにつられて他の人物もある人物を見る。その人物は芋を手に取りながら口に運ぶ最中に固まっていた。

 

「フランチェスカ・ルッキーニ少尉…」

 

バルクホルンさんが犯人の名前を呼ぶとルッキーニちゃんは芋をほり投げ、逃走する。少し躓いて芳佳のズボンに手をかけるとそのまま持って行った。それを追っていく探偵の皆さん。

 

「ウィーラー。どうする?」

 

「…一応手伝うか。俺はフランチェスカ少尉を追う。お前は真犯人を探してくれ」

 

「そうだな。ルッキーニちゃんがわざわざズボンを履かずに風呂までいって、そこから盗むなんて面倒なことはしないだろうし。そっちは任せるよウィーラー」

 

「ああ、任された。駆けっこと同じくらいでやってやろう。本気でやってしまってはすぐに終わってしまうしな」

 

「お前、楽しんでるな…」

 

「勿論だとも。じゃあ行ってくる」

 

「はいよ」

 

ウィーラーはいつもよりも軽めに走って食堂を後にした。

 

「…で?エーリカは行かないのか?」

 

「ん?だって興味ないし。あとフラウって呼ぶって約束でしょ」

 

「悪かったよフラウ。さて、どうしようか…。フラウ、誰か心当たりがある人はいないか?」

 

「うーん。そうだねー。そういう人は思い浮かばないかな?」

 

「そうか…」

 

さて、どうしようか。こうなったら頭の悪い俺じゃあ、総当たりしか思い浮かばないぞ?とりあえずエーリカを確かめるか。

 

「じゃあ総当たりするか。フラウ一応確認させてくれないか?」

 

その言葉を聞くとエーリカは目を逸らした。

 

「おい、まさかお前じゃないだろうな?」

 

「ま、まっさかー。私じゃないよー」

 

「…じゃあ確認させてもらうぞ」

 

心の中で断りを入れてエーリカのズボンを確認しようとすると、エーリカは走り出した。

 

「あっ!おい待て!」

 

食堂を飛び出し廊下を走り階段を駆け上がる。流石にエースなだけあってかなり速い。きちんと基礎訓練をした子である。

そのままエーリカは部屋に逃げ込み鍵を掛けられた。

 

「おい!開けろエーリカ!てか、なんで盗んでるんだよ!」

 

「だって!私のズボン見つからないんだもん!」

 

「じゃあ一緒に探してやるから開けろ!」

 

エーリカは少し考えて返事をした。

 

「やだ」

 

「なんで!?」

 

「この部屋見られるのやだ」

 

「…そんなに汚いのか?」

 

「………」

 

「図星かよ…じゃあ一緒に片付けてやるから。まずは開けてくれ」

 

エーリカは鍵を開けゆっくりと扉を開けた。そして顔だけひょっこりと出して聞いてきた。

 

「本当に汚いよ?」

 

「なら片付けないとな」

 

「引いちゃうくらい汚いよ?」

 

「引かないから。俺だって前は汚かったし」

 

「…分かった」

 

今度はちゃんと扉を開いて部屋を見せてくれたが…。

 

「予想よりも少し汚いな…」

 

少し引いてしまったが、声には出てないと思う。大丈夫だな。

 

「…流斬今引いたでしょ」

 

ジト目で聞いてくるエーリカに対して俺は、少し目を逸らした。

 

「やっぱり!やっぱり引いたな!」

 

「わ、悪かった!片付けはちゃんと手伝うから!」

 

5分くらいでなんとか宥めることに成功して、片付けを始めた。

 

「まずはズボンを見つけないとな。エーリカ今日表彰があるんだろ?それまでに見つけないとな」

 

「よし!頑張ろー!」

 

「はいはい」

 

 

 

 

 

探し始めて少し時間が経ち。

 

「あったぞ!ズボン!」

 

「えっ!本当!」

 

エーリカがこっちに寄ってくる。

 

「わぁ!ありがと〜!」

 

そしてここでルッキーニちゃんのズボンと自分のズボンを履き変えようとするが、ズボンに手を掛けた所で止まり。

 

「…早く出て行ってよ。恥ずかしいじゃん…」

 

「わ、悪い」

 

すぐにエーリカの部屋から出る。あの散らかっている部屋からズボンを見つけ出したことに達成感を感じて座ってしまっていた。これは俺が悪いな。……悪いのか?そもそもエーリカがきちんと整理整頓をしていればこうはならなかったのでは…?いや止めよう。

この思考が終わると同時にネウロイが来たことを知らせる警報がなった。

 

「エーリカ!行くぞ!」

 

「分かってる!」

 

階段を駆け降りてとある扉に近づくと誰かのため息が聞こえた。

 

(ん?この辺りに誰かいるのか?)

 

「エーリカ少し待ってくれ」

 

「どうしたの?」

 

「はぁ、怒られるよね。勝手に警報のスイッチ入れたのばれたら」

 

「なんのスイッチ入れたって〜?」

 

なんかしてやったり見たいな顔をしながらルッキーニちゃんの前に歩みでたエーリカ。ルッキーニちゃん完全にビクビクしてるぞ。やっちゃった!見たいな顔してるし。

 

「お前が言えたことか!ちゃんとルッキーニちゃんに謝るんだ」

 

「分かってるよ〜。あの、ルッキーニ。ごめん!ルッキーニのズボン盗んだの私なの…」

 

「え!?あっ!私のズボン!」

 

「これでこの事件は一件落着。とりあえずっと」

 

魔法を使い、魔導針を起動して、ネウロイがいるか確認をする。

 

「よし!ネウロイもいないな。じゃあルッキーニちゃん、みんなに謝りに行こうか」

 

「……うん」

 

 

 

 

 

格納庫に急いでる時にミーナさんに会い、警報の誤報を伝えて今は格納庫手前。ミーナさんがみんなに誤報だと伝えた。ルッキーニちゃんを見つけたのはエーリカという事になっている。これは特に意味はない。みんなに話しかけられているのを見ながら、こっちに歩いて来たウィーラーに話しかけられた。

 

「で?真犯人はハルトマン中尉だったのか?」

 

「ああ。でも今はそっとしておこう」

 

「その方がいいな。俺もなかなか新鮮な体験をさせてもらったよ」

 

「それじゃあ、ハルトマン中尉の表彰をしましょう!」

 

 

 

 

 

この後の受賞は滞りなく進み、今は……

 

「後少しだから、ほらそんな所で寝転ぶなって」

 

「だって〜面倒くさいんだもん」

 

エーリカの部屋の片付けの続きだ。ズボンを探したときは少ししか片付けられられなかったがあの量も後少しである。なかなかに時間がかかった。

 

「はぁ、エーリカ後少しだけだろ?この一塊どうにかしたら終わるんだから頑張れ」

 

「分かったよ…」

 

渋々手を動かすエーリカ。なんだかんだきちんとやるのに、何故今までやらなかったのか気になる所。本当に後少しだけだったので、今エーリカが運んでいる荷物だけで終わりだ。あんなに散らかっていた部屋がもう見違えるほどに綺麗になった。

 

「やっと終わったな。じゃあ俺は部屋に戻るよ。今度は散らかすなよ」

 

扉の取っ手を回し、部屋を出る。

 

「流斬!」

 

少し廊下を歩いた所でエーリカが俺を呼び止めた。

 

「ん?どうしーーーッ!!」

 

突然エーリカがキスをしてきたのだ。

それと同時に何故か以前読み取ったエーリカの固有魔法の『疾風』の使い方・構造が、読み取った時よりも、より細かくなって脳内に流れ込んできた。ほんの一瞬の筈なのに、五分間魔法を解析した時よりも多く情報を得た事と、エーリカがキスをして来たという事に対して頭が混乱していた。

 

「今日はありがとっ!また明日!」

 

そう言ってエーリカは自分の部屋に戻っていった。

 

「なんだったんだ?今の………」

 

二つの事に対して呟いたが、誰も返してくれる人はいなかった。

 

 

 

 

 

エーリカは少し前の行動について恥ずかしそうに枕を抱えてベッドに寝転んでいた。

一番初めに意識したのは、バルクホルンが怪我を負った時。帰りに言われた言葉が凄く嬉しくなった。それから少しづつ話すことが多くなって今さっきの恥ずかしい行動に出てしまった。

きちんと笑えていたか、顔はかなり赤かっただろう。

思い出すだけでも頭から煙が出そうなくらい恥ずかしい。

 

エースとしてではなく一人の女の子として優しい言葉をかけてくれる彼。自分で言うのもなんだけどあんなに散らかっていた部屋を嫌な顔せずに一緒に片付けてくれた彼。

 

これらは自分がそう思っているだけかも知れない。でも別にそれでもいいやと、そう思ってしまう。彼は私だけにそうしているのではない。他の子にも優しい言葉をかけている。エイラなんかは完全に意識しているだろう。ルッキーニも少し意識しているかも知れない。サーニャは無自覚だけど、彼に依存しているところがある。これからまだ増える気がする。

 

「はぁ、ライバル多いなぁ」

 

ファーストキスを初恋の人にあげた女の子はそんな事を呟いた。




ウィーラーさんがいたら一瞬で終わりそうなので、手を抜いて遊んでもらいました。
ちなみに月影君しかいない状態なら普通にルッキーニちゃん追ってました。ウィーラーさんが新しく来たから真犯人探ししてもらいましたけど。
とまあ、そんな感じてオリジナル展開。そして綺麗になるエーリカの部屋。そして新たにわかる月影君の特殊能力。
キスしたら固有魔法が細部まで分かるようになるとかどこのエロげだよ!考えたやつ誰だ!(自分)

ラストのエーリカのシーン。書いてて凄く死にたくなりました(恥ずかしくて)
変になってなかったら良いんですけど。

俺の一番はサーニャ。エイラも可愛い。でもやっぱりEMT。
はい。暴走してごめんなさい。

こんな作者ですが次回もよかったら見てください!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。