文字数とかも特に揃えてないので、短かったりもっと短かったり、さらに短かったり。
特に伏線とか(多分)無いので気楽に読んでください。
それからそれから
ごろごろ、ごろごろ、ごろごろ
「……………………」
ごろごろ、ごろごろ、ごろごろ
「…………ねえ」
ごろごろ、ごろごろ、ごろごろ
「ねえ、フラン」
ごろごろ、ごろごろ、ごろごろ
「ねえ、フランってば」
「…………んー? なーに、タカヤ」
少しばかり声を大にして呼ぶと、ようやくフランが動きをぴたりと止めて返事をする。
「暇なの?」
先ほどからベッドの上をごろごろと転がっては落ちそうになり、反対側に転がっては落ちそうになりを繰り返してるフランに尋ねる。
「…………んー、うん、暇ひまひまー」
ごろごろ、ごろごろと再び転がり始めるフラン。見ていると愛らしくて癒される光景なのだがいかんせん、最近毎日こんな感じなので、いい加減不味いかなあと思い始めている。
「と、言ってもなあ…………外は今、出れないし」
「だよねえ~」
思わず呟いたその言葉に、フランが転がりながらため息を吐く。
今、幻想郷は猛吹雪に包まれている。
因みに季節は五月だ。
もう一度言う。
今は五月だ。
「…………ねえフラン」
「何? タカヤ」
「幻想郷って五月に雪が降るの?」
「そうなんじゃないの? だって実際に降ってるんでしょ?」
「そっかあ」
ずっと幻想郷に住んでいたフランがそう言うならばそうなのだろう。
しかしそうなると幻想郷とは一体どこにあるのだろう?
五月、と言えば日本では春から夏への変わり目の季節と言ったところだが、そんな時期に猛吹雪。
案外緯度としては南のほうにあるのかもしれない、と考える。
「それにしては和風チックなんだよねえ、人里って」
以前にメイド長に連れられ、フランと共に向かった人里と呼ばれる場所。住む人間は皆、時代に取り残されたような古めかしさはあったが、大半が日本人のように見えた。
まあ髪が金色の少女や、銀色の女性、茶髪の少女や、果ては紫色の髪の少女まで見かけたので存外日本以外と言う可能性も無くは無いとは思うが。
…………と、言うか、何だろう、金髪や茶髪。まあ銀髪まではぎりぎり分からなくも無いが、髪の色が紫って。どんな人種ならそんな風な色になるのだろうか?
染めたのかな、とも思ったがどうも見た感じ自然な色合に見えた。
「幻想郷って不思議なところだね」
「そーかな? うん、そーかもねえ」
多分他人が聞いたら「違う、そうじゃない」って言われそうなことを呟いている自身たちであった。
* * *
今日の昼食はいつもより冷めていた。
「咲夜が居ないとお屋敷って大変なんだね」
とのフランの言葉。理由は良く分らないが、メイド長は出かけているらしい。
「メイド長も大変だね、吹雪の中でかけないといけないなんて」
まあ行くとしても人里だろうけど、それくらいなら夕方までには帰ってくるだろう。
何せ、空を飛べるのだし。
「改めて考えると不思議だよね」
「なにが?」
「人間が生身で空を飛んでるってことが」
「外の世界は飛べないんだっけ? 不便じゃないの?」
「外の世界は想像していたよりもずっと現実的なんだよ」
「私の現実は外の世界の幻想だからねえ」
「車もしばらく空を走る予定も無いんだよ」
「くるま…………って何の話?」
「ロンリーロンリーな話」
ぽかん、としながら首を傾げるフランの可愛さに癒されながら、ソファーに体を埋めていく。
「あ~ふかふかあ…………これは人間をダメにするソファーだねえ」
「……………………」
「うあ”あ”あ”あ”あ”あ”~」
「…………むう」
沈み込むソファーの心地よさに思わず変な声が出る。
最近になってメイド長が持ってきたものなのだが、何の素材を使っているのかは知らないがとんでも無く柔らかく、体が沈み込む。そして全身をふわふわとした綿毛で包まれているような心地よさに昇天してしまいそうになる。
そしてそんな自身の様子を見たフランが何かもの言いたげな表情で自身を見つめて。
「えいっ」
ひょい、とベッドから飛びだし、跳びかかってくる。
「わあっと!?」
自身の真上に落ちてくるフランを思わず両手で抱き留める。
「…………ふふ、あったかあい」
そのまま自身の胸元にすりすりと頬を擦りつけてくるフランの姿に。
「ごふぅっ」
思わず吐血しそうになるが、なんとか堪える。
「んー…………ねえ、タカヤ」
「えっと…………なに、かなあ、フラン?」
「私とこのソファー、どっちがいい?」
「………………………………」
その言葉に、思わず素に返って黙り込んでしまう。
「ねーえー? タカヤ~?」
それが少しだけ不満そうに頬を膨らせるフランに、思わず苦笑した。
「何笑ってるのよ」
「く、ふふ、もしかしてフラン、ジェラシー? ソファーに?」
腕の中の少女を抱き留める。
そのままフランの頬と自身の頬をくっつけて。
「うん…………やっぱりそうだよ」
「むー、なにが?」
「フランとこうしてるのが一番幸せを感じるよ」
「………………………………………………………………」
耳元に口を寄せて呟いた一言に、フランがぴくりと震える。
「ふふ、か~わい~」
「む~! 反則! そういうの、反則なんだから!」
口をへの字にしながらぽかぽかと自身の背中を叩くが全く痛く無い。
単純にフランが手加減を覚えたのもあるが、それ以上に、
俺たちは繋がっている。
契約を交わしたから。
共に生きていくと、一生、寄り添っていくと。
故に俺はフランを傷つけないし、フランもまた俺を傷つけられない。
フランが傷つけば俺も傷つくし、俺が傷つけばフランもまた傷つく。
二人一体となるべし、なんて…………まさしく結婚だ。
絆で結び合い、愛で繋がる。
だから俺たちは寄り添って生きる。
それが誓約であり。
だから俺たちは生涯をかけて愛し合う。
それが宣約である。
妹様が可愛すぎて生きるのが辛いんだ(迫真