例えばこんな結婚生活(仮)   作:水代

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〆の話

 

“ゲームセット、だ”

 

 不機嫌そうに、少女が呟く。

 ごぽ、と口から血を吐き出し、呼吸をする。

 たった一呼吸、それだけのために全身に激痛が走る。

 それでも、呼吸を繰り返し、腹部の槍を抜こうと手をかける。

 

「…………情けない」

 

 そんな自身の姿に少女が呟く。

 

「まだ諦めないのか。まだ死に足りないのか。いつになったらお前は折れる?」

 

 そんな少女の言葉に、思わず苦笑しそうになる。

 しそうになって…………代わりに口から血が漏れ出る。

 

 けほ、けほ、と血と共に折角取り込んだ酸素を吐き出しながら、絞りだすように呟く。

 

「何度だって…………言ったはずだよ…………」

 

 もう声も出なくなってきた。

 

「見苦しくたって」

 

 目も見えなくなってきた。

 

「浅ましくたって」

 

 呼吸も辛くなってきた。

 

「情けなくたって」

 

 耳も聞こえなくなってきた。

 

「それでも俺は」

 

 だから――――――――

 

「それでも俺は」

 

 信じてるよ。

 

「フランと共に生きたい」

 

 フラン

 

 

 * * *

 

 

“フラン”

 

 声が聞こえた。

 幻聴などではない。

 自身がこの声を聴き間違えるはずがない。

 最早それは理解などではない、本能にも近い直観的行動。

 

 手を伸ばす、その先に彼がいることを確信している。

 

 (えん)と言う名の糸を、契約の名で結び合い。

 

 手を伸ばす、その先で彼もまた手を伸ばしていると理解している。

 

 絆と言う名の鎖を、恋と言う名で絡め合い。

 

 手を伸ばす、その先まで届くと信じて。

 

 例え遠く離れていようと。

 

 二人の間が隔たれようと。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 だから、そう。

 

 

「だから……………………絶対に届くって信じてたよ、タカヤ」

 

 

 少女の言葉に。

 

 

「……………………俺もだよ…………フラン」

 

 

 少年の言葉が重なる。

 

 

 伸ばした手は、いつの間にか繋がれていた。

 

 

 * * *

 

 

 突然現れた自身の妹に対する驚きは無かった。

 

 あり得ないはずだ。それは分かっていた。

 

 それでも、いつかこうなるかもしれないとは思っていたから。

 

「…………フラン、そこをどきなさい」

 

 呟く声に、妹が振り返る。そこにいつもの不安定さは無い。その瞳から感じられるのは、確かに芯のようなものを持った強い強い意思。

 

「やだ」

 

 短い拒絶。だがはっきりとした意思の発露。間違いなく、以前よりも格段に安定してきている。

 

「…………そうか。なら」

 

 それを嬉しく思うと同時に、危うく思う。

 

「無理矢理にでもどかすしかないな」

 

 彼を失えば、妹はどうなるのだろうか、と。

 

 

 * * *

 

 

 スカーレット姉妹。

 

 現代にまで残る数少ない吸血鬼の姉妹。

 

 吸血鬼の強さはその存在の格の高さでもある。ただ吸血鬼と言うだけで、無条件に強い。

 その身の丈にあまりにも不釣り合いなら怪力に、人の目には最早見ることすらできぬほどの俊敏さ。そして無限にも等しい莫大な魔力。

 太陽光に触れれば灰と化し、流れる水を前にすれば進むことすらできぬ。

 

 強烈なハンディは絶大な力の代償であり。

 

 その絶対なる力は、余りにも強烈すぎる弱点の対価である。

 

 少なくとも、姉妹は今までそうして敵を倒してきた。打ち勝ってきた。滅ぼしてきた。

 だがそれも今は無意味だ。

 

 同じ吸血鬼同士、持って生まれた力に大きな差異は無い。

 

 故に勝敗は最初からあまりにも明らかだった。

 

 

 だん、とフランドールが壁に叩きつけられる。

「…………ぐっ…………のぉ!」

 反撃にと撃ちだされた魔力の弾丸は、けれどレミリアの腕の一薙ぎで振り払われる。

「諦めなさい」

 ずどん、と先ほど少年にしたのと同じ、紅い槍を投げ、飛来した槍がフランドールの体を貫く。

「…………っ絶対に…………いy」

 痛みに堪えながら、何かを呟こうとしたフランドールの顔面を一瞬で間を詰めたレミリアの掌底が撃ち抜く。

 弾かれ、背後の壁に後頭部を強打したフランドールが一瞬ふらつき。

 ぐじゅり、とその胸にレミリアの腕が突き刺さる。

「が…………ああ…………」

 そこにある、人となんら変わりの無い体内で脈打つ心臓。

 レミリアの手を、何のためらいも無くそれを握りつぶす。

 がふ、と口から血を吐き出し。

 

「があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 絶叫。

 

 同時に、ぼん、とレミリアの顔面が弾け飛ぶ。

 

 フランドールがその右手を握りしめていた。その身に宿る破壊の力で、レミリアを壊した。

 

 それでも。

 

 消失したレミリアの首から上が、まるで時間を巻き戻したかのようにするすると復元されていく。

 フランドールの心臓も同じく再生していくが、その速度は遅い。

 

 まだ動きの鈍いフランドールに、レミリアが一切の反撃は許さないとその右腕を掴み、一瞬でへし折る。

 

「ぐ、あああああああああ」

 

 痛みに表情を歪めながら、フランドールが残った左腕を振り上げ。

 次の瞬間、レミリアがフランドールの腹部に突き刺さった槍を掴み、そのまま横に薙ぐ。

 

 何の音も、抵抗も無く。フランドールの腹部が一閃に裂ける。

 

 さしもの吸血鬼も、崩れ落ちる。そんなフランドールに追撃をかけんと手にした槍を振り上げ。

 

「チェックメイト」

 

 その首に突き刺し、喉を貫通し、床へと繋ぎ止めた。

 

「が…………が…………ぐ…………ぁ」

 

 喉を貫かれ、呼吸すらままならない吸血鬼が苦悶に悶える。

 

 最早闘争などと呼ぶのもおこがましい。

 

 それは蹂躙であった。

 

 同じ吸血鬼同士、それでもその力の差は絶対的過ぎた。

 

 それはひとえに、戦闘経験の差。そしてその身に宿す能力の差であると言える。

 

 破壊することがフランドールの力。だがこの力は妖怪などと相対するには相性の悪い能力であるし、吸血鬼を相手取る時、その相性は最悪とさえ呼べるだろう。

 

 吸血鬼の最も恐ろしい点は一体何だろうか。

 

 それは、弱点が…………否、()()()()()()()()()()()()()()()と言えよう。

 

 例えば太陽、例えば木の杭、など吸血鬼には殺し方が存在する。

 

 逆を言えば。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のが吸血鬼である。

 

 故に、例え首から上を失くそうと、心臓を失くそうと、全身を砕かれ粒子レベルにまで分解されたとしても、一瞬で再生するのが吸血鬼と言う存在だ。

 

 そんな存在を相手にして、相手の体を物理的を破壊する能力など、一体どれほどの意味を持つと言うのか。

 勿論、使い方次第では強力な手札になることは間違いない。

 

 だが前提として、妖怪は戦うための技術など磨きはしない。

 

 通用しない、と言う時点で最早どうにもならないレベルの問題なのだ。

 相手が吸血鬼である、と言う時点でフランドールの能力は意味の無いものへと変貌した。では翻ってレミリアの能力はどうだろうか。

 

 運命を操る、それがレミリアが自称する能力だ。不確定の未来の中から、幾重にも分岐し、枝分かれする未来の中から、自身に最も都合の良い未来を選び取る力。

 と言っても、運命を大河のような、と例えたのは彼女自身だ。

 

 そこに流れ、と呼べるものがあることを彼女自身理解している。

 大きな流れには逆らえないし、逆らおうとすれば、流れを変えるだけの大きな力を必要となる。

 

 逆に、流れに沿いながら要所要所で方向性をずらしてやることは可能だ。

 

 例えば、ほんの一瞬。自身が間を詰める間、フランドールが自身に気づかないようにしたり。

 

 例えば、刹那。握った拳が潰したものが、自身の心臓でなく頭部にしたり。

 

 例えば、一撃。腹部を切り裂けば思わず倒れてしまうタイミングを呼び込んだり。

 

 自身が望む方向性へ向けて、少しずつ少しずつ舵を切りながら大河を下っていく。

 それを逆らうには、同じく可能性に干渉することのできる能力を持つか、もしくは、少々の流れでは変えられないほどの大きな力を持って、運命を押し流してしまうか。

 

 少なくとも、レミリア以上に切れる札が無いフランドールにはどうしようも無い話ではある。

 

 つまりこれは最初から見えていた勝負。レミリアは当然として、恐らくフランドールにすらわかっていた予定調和。

 それでもフランドールは戦った。何故? そんなもの、レミリアにだって分かっていた。

 

 それほどまでに、好きなのか。

 

 少しだけ考えてしまう。そして見てしまう。

 

 妹をこれほどまでに変えてしまった少年を。

 

 どうして彼はダメなのだろう。

 

 ここまで妹を変えることのできる存在なんて、この先現れるかどうか、もう分からないのに。

 

 それでも、彼ではダメなのだ。

 

「…………ままならないわ、本当に」

 

 空を見上げ、呟く。浮かぶ紅い月が、幻想的な世界を生み出している。

 

 振り返り、気づく。

 

 フランドールが居なかった。

 

 

 * * *

 

 

 ずるずる、と重い体を引きずって、ようやくたどり着く。

 ずるり、と彼の隣に壁を背にして崩れ落ちるように座り込む。

「…………ぼろぼろ、だね。タカヤ」

「……………………ふらん…………こそ…………」

 苦しそうに、言葉を吐き出す少年に、少女が苦笑いする。

 本当に、お互いボロボロになったものだ。

「やっぱり…………お姉さまは、強いや、勝てなかったよ」

 精一杯やったつもりだったが、まるで子供扱いだ。ほとんど一方的に蹂躙された。

「…………どうしよっか」

「…………………………」

 呟く声に、答えは無い。最早声を出すのも辛いのだろうと理解する。

 代わりに、震える彼の手が、弱々しくも自身の手へと重ねられる。

「…………うん、そうだよね」

 彼の意思は分かる。十分過ぎるくらいに伝わってくる。

 だって少女と少年の気持ちは同じだから。

 二人は繋がっているから。

 

 だから、理解できる。

 

 まだ、諦めきれない、と。

 

「……………………ふら……ん……」

 

 弱々しく、彼の口から名前が呼ばれる。

 

「……………………けい……やく……しよう…………」

 

 契約、以前にも聞いた言葉だ。

 

「…………おれ……の………………ぜんぶを……あげる…………」

 

 ゆっくりと、時折血を吐きながら。

 

「…………だか…………ら」

 

 それでも彼は、今にも死にそうな顔で、呟く。

 

「おれと…………いきて…………ください」

 

 契約のやり方は知っている。一番原始的で、一番簡単で、一番手軽な契約。

 

「タカヤ」

 

 愛の契り、その方法は至って簡単だ。

 

「大好きだよ」

 

 二人の影が重なる。

 

「……………………ああ」

 

 唇と唇が触れ合い。

 

「………………………………………………俺も、だよ」

 

 そして契約が成った。

 

 

 * * *

 

 

 とくん、と心臓が跳ねる。

 

 こくん、と喉が鳴る。

 

 触れ合う唇。交わされる契約。

 

 そして自身へと流れ込んでくる、タカヤの流した血。

 

 一つ飲むたびに、魔力が高まる。

 

 二つ飲めば、全身に気力が漲り。

 

 三つ飲めば、最早誰にも負ける気はしなかった。

 

「…………フラン、アナタ」

 

 姉が、レミリアが、驚いたようにこちらを見て、目を見開いていた。

 

「きゅっとして」

 

 右手を開く、定めたのはその右腕。

 

「どかーん」

 

 握りつぶす。瞬間、レミリアの右腕が爆発する。弾け飛び、砕け散り、そうして…………再生しない。

 

「…………成った…………と言うの…………まさか」

 

 ここにきて初めてレミリアの中で焦燥にも似た感情が生まれた。

 

「……………………だとしても」

 呟く声に力は無い。認めなければならない、認めてはならない。二つの相反する感情がレミリアの中で渦巻いていた。

「本当にそれを御しきれるのか…………試されてもらうわ」

 

 もし飲まれたならば…………その時は。

 

「殺してリセット…………それしかないわ」

 

 

 

 ほとんどの存在が知ることの無い事実ではあるが。

 世界には三つの層が存在する。

 

 一つは物理の層。外の世界で理と呼ばれる概念。水は高い方から低い方に流れるし、物体を上へ放れば落ちてくる。つまりは物理法則に縛られた世界。

 

 一つは心理の層。人の心を現し、妖怪が生きる、魔法や妖術と言ったものここに分類される。つまり、意味と概念によって構成された世界。

 

 人も妖怪も、そのほとんどがこの二つで世界が構成されていると思っている。だからこそ、至らない。

 その存在を知らないからこそ、そこに至ることはできない。

 

 記憶の層。歴史と確率の世界。世界に刻まれた記憶が世界の可能性を分岐させ続ける。レミリア・スカーレットの力が絶対とならないのは、この層に干渉することができないからである。

 

 人も妖怪も、それぞれが持つ能力には干渉範囲が存在する。

 

 レミリア・スカーレットの運命を操る程度の能力ならば、多少なりとも人や妖怪の未来へと干渉を可能にする、だがそれが完全でないのは記憶の層に手が出せないから、だから心理の層に相当する。

 

 レミリアのメイド十六夜咲夜の時間を操る程度の能力は、時間の加速、減速、停止に加え空間の収縮拡張を行うことができる。だがそれだけだ、人の心に作用するわけでも無ければ、時間と言う概念を直接操っているわけでもない、故に物理の層が干渉範囲となる。

 

 二人ほど例えを出してみたが、ではフランドール・スカーレットのありとあらゆるものを破壊する程度の能力はどうだろうか。どんなものだろうと触れることも無く、そもそも近づくことすらなく破壊せしめる凶悪な力。だがその範囲は物理存在に限られる。つまり物理の層に限定されている。

 

 故にフランドール・スカーレットの能力は、強く、弱い。物理の層に干渉する能力に限定すれば、ほぼ最強格と言えるかもしれない、だが心理の層に干渉する能力と比べれば、どうしても一段劣る。

 特にこの幻想郷は、心理の層に属する存在が余りにも多すぎる。だから、()()()()()()()()は吸血鬼であると言うこと以外では、それほど特筆した存在とは言えない。

 

 だが。

 

 人もそうだが、こと能力に関しては妖怪も…………悪魔もまた、成長する。否、使いこなしていく、と言ったところだろうか。

 使えば使うほどに、理解を深め、そして少しずつ、その干渉範囲は広く、そして深くなっていく。

 

 そしてもし、フランドールの能力が、心理の層に干渉することができるようになった時、その猛威は発揮される。

 

 手を握るだけで、精神を破壊する力。まさしく妖怪最大の敵となるだろうことは明白である。

 下手をすれば管理者に目をつけられかねないほどに凶悪な力である。

 

 何よりも恐ろしいのは、フランドールの能力には、明確な防御方法が無い、と言うことである。

 

 ただ目視状態で、手を握るだけで発揮される能力をどうやって防げばいいのか。

 

 もしその干渉範囲が意味や概念にまで到達した時、レミリアの危惧は現実のものとなる。

 

 レミリア・スカーレットが何よりも危惧していたのは。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 何をバカな、と言うかもしれない。だが実際、フランドールの評価とはそうではないか。

 

 “狂気の吸血鬼”

 

 狂っているのだ、狂っていながら正気なのだ。

 例えそれが他人には分かりづらいものだとしても、フランドールは正気なのだ。

 正気で狂っているからこそ、自身の在り方が異常だと理解しているのだ。

 いっそ、正気も失ってしまえれば楽だったのかもしれない、だが中途半端に正気だったからこそ、フランドールは情緒が安定しない。

 そして、だからこそ、能力が成長した時、真っ先に自分に試してしまう。苦しいから、辛いから。いっそ自分なんて砕けてしまえばいいと、そう思ってしまう。

 レミリアだけが知っていた、その未来を知っていた。

 

 そうなるかもしれない、ならないかもしれない。

 

 レミリアとて自分の力が絶対の未来を引き当てるわけではないことは理解している。

 だが例えそうでないとして、大河の先はそうなっている。そして自分にできるのは小さなさざ波で僅かに流れの向きを変えることだけ。どこまでずらせば完全にその未来が消失するのか分からない。

 だが例え1%でも、そんな未来は許容できない。そして今のところ、そんな未来は1%どころかほぼ100%だ。そのためだけに幻想郷に来て、そのためだけに動いてきて、それでもその確率は1%も減じなかった。

 

 だからこそ、あの少年に期待した。

 

 記憶を取り戻したレミリアには分かる、どうしてあの少年がフランを受け入れることができたのか。

 

 フランは狂っている。例えるならば0.5。

 (正気)にも(狂気)にもなり切れない微妙なラインで、ぎりぎりのところで理性を保っている。

 

 だが何のことは無い、少年、タカヤはフランドールとは逆のベクトルで狂っている。例えるならば1.5。

 それが(狂気)に寄っているか、(正気)を超えているかの違いはあっても、決してまともな精神ではない、0.5(はみ出し者)同士なのだ。

 だからこそ、フランは安定した。少年と繋がったから。感情を分け合ったから。

 

 0.5+1.5を2で割ったから正気に近づいた。

 

 恋をして、愛を知って、感情は酷く安定した。

 

 このまま欠けた物を取り戻せたなら、本当にそれが出来たならば、未来は変わったかもしれない。

 

 レミリアにとって、最大の誤算は。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 余りにも早すぎる。契機は少年。やはりあの少年はさっさと殺してしまうべきだったのか、と一瞬思い。

 

「……………………確かめましょう」

 

 それでも、一度だけ信じてみたくなった。

 

 少なくとも、フランの瞳の意思は変わっていない。

 

 二人はまだ繋がっている…………否、先ほどよりもさらに強く繋がっているのかもしれない。

 

 だからこそ、一度だけ確かめる。

 

「この攻撃を凌いでみなさい、フラン」

 

 右腕の感触は無い。再生する様子も見えない。

 

 だから、残った左腕に、全ての魔力を集めていく。

 

 たった一度だけ、妹に向ける全力。

 

 自身の持つ最大の魔法。

 

 真紅の魔法。

 

 そうして放たれた魔法は。

 

「きゅっとして」

 

 フランドールの握りしめられた拳と共に。

 

「どかーん」

 

 容易く霧散した。

 

「…………………………ふう」

 

 完全に使いこなしている。そして精神に異常はない。

 

「……………………参ったわ」

 

 これはもう認めざるを得ないだろう。

 

「降参よ」

 

 二人の仲を。

 

 




と、言うわけで次がエンディング。
え、一話で終わりじゃなかったのかって?
本編はこれで終わりだよ、エンディングはまた…………別腹?

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