目が腐った黒(ブラック)トリガー   作:sewashi

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小町を失った八幡……


やはり俺は遠征に行くことが出来ない。

…………小町。

 

俺はあのあと、黒トリガーを使ってモールモッドを倒した……他のボーダー隊員が到着したのはその一時間後だった。

小町が死んだ事実を聞いた一色は泣いた。葉山や陽乃さん達もだ。

そして、俺は……

「……これが新たな黒トリガーか……」

本部に呼び出された。

「色々な隊員で試してみた結果、比企谷君にしか使えませんでした……」

小町を媒体にした黒トリガーは俺にしか使えないことが判明。そしてその能力から、その黒トリガーには『陰影』と名付けられた。

そして、俺は……S級隊員となった。

 ……。

 …………。

 ………………。

「と言うわけで、俺は雪ノ下隊を脱隊することになりました……ついでに遠征にも行けません」

黒トリガーとなった俺は、雪ノ下隊を辞めなければならなくなった。

勿論、それは雪ノ下隊の誰もが認めなかった。

一色なんて城戸指令に直訴しだした。

同時に、平塚先生も認めなかった。

だが、本部はその反対をおしきり、俺を脱隊させた。

いや、俺自身も、雪ノ下隊を辞めたかったのかも知れない。

奉仕部を、学校を、そして小町を失った俺に、もう何を守れと言うのだろうか……

数日後、雪ノ下隊は遠征に出た。

 ……。

 …………。

 ………………。

さらに数日後、雪ノ下隊は遠征から帰還。遠征したネイバー世界には由比ヶ浜達は居なかった……

雪ノ下隊はそこからが問題だった。

(裏の)エースが抜けたことで、ランク戦は敗北が続いた。

雪ノ下隊は遠征部隊選抜から程遠い部隊に落ちた。が、驚くことが起こった。

「平塚先生。雪ノ下隊に入って下さい」

雪ノ下隊オペレーターの城廻先輩が平塚先生に言った。

当時、平塚先生は無所属の隊員だったため問題はなかった。しかし、城廻先輩が言ったのは……

「戦闘員として入隊してほしいわけじゃありません。私がオペレーターから戦闘員になるので、オペレーターを変わって欲しいんです」

城廻先輩が……? 戦闘員に!?

ボーダーで戦闘員→オペレーター(エンジニア)は珍しくないが、逆は珍しかった。しかし、城廻先輩にはそれでもおかしくないサイドエフェクトがあった。

雪ノ下隊は変わった。新隊員、城廻先輩を入れたことで、ふたたびトップチームへと名を轟かせた……

俺は……そんな雪ノ下隊を見て……城廻先輩が『もう心配ないよ』と言ったように思えた……

 

俺はある日。忍田本部長から話があると呼び出された。

「今さらだが、妹さんは、残念だったな……」

「いえ……」

「話というのは……君に私の部下になって貰いたいという話だ」

何を言い出すかと思えば……

ボーダーには三つの派閥がある。俺はこの時は城戸派だったが、忍田派に移ってほしいとの事だった。

「無理ですよ……妹を殺されて……今さらネイバーを恨むななんて……」

「恨むなとは言わない……妹さんの事は私達にも責任がある。君に黒トリガーを預けた時、迅には君が黒トリガーになる未来と君に黒トリガー使いになる未来が見えていた。それをわかっていて君に黒トリガーを預けた」

「それはわかってます。だけど、できれば俺が黒トリガーになる方に未来が進んでほしかったです」

「それは違う! もし君が黒トリガーになれば、悲しむ人がより多かった。だから妹さんは君を生かしたんだ」

そんなバカな……だって小町は黒トリガーの事を……

「妹さんは知っていたよ。君が黒トリガーを持っていたことを」

……っ!? なんだと!?

「君が本部に呼び出された時、妹さんが迅のもとへ行って聞き出したらしい」

忍田本部長が言うと――

「忍田さんのいうことは本当だよ」

――迅さんが来た。

「妹さんにいきなり聞かれて、俺は答えた。妹さんは、もし、自分が黒トリガーになったらこう伝えてほしいって言ってた『小町は、ここにいる』」

迅さんは、黒トリガーのブレスレットに触れて言う。

さらに迅さんは――

「『風刃』の媒体の最上さんは、俺の師匠だった。だけど最上さんはここにいる」

――迅さんは言う。そうだ。小町は黒トリガーの中にいる。

俺はこの日忍田派になった。




次回から大規模侵攻編に戻ります。
めぐりん先輩のサイドエフェクトについてはまたいずれ……

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