Fate/magic bullet   作:冬沢 紬

6 / 7
今回結構グロい表現があります。主に食人とか。やだって人はバックぷりーず。


06

 俺は根城に戻った途端、龍之介を無視して牢に向かう。そう、牢だ。人を閉じ込めるための。そこには、11人の少年少女たちがうずくまっている。ぐずり、帰りたいと泣くものも少なくない。

 

「あの……下郎どもがッ!」

 

 そう怒鳴り、俺は怒りに任せて牢屋の鉄格子を破壊する。

 

「ヒッ……!」

 

 中にいた、まだ年のころ9ほどだろうか……少女は、怯えて後ずさる。だが、それを逃す俺ではない。首をつかみ、持ち上げる。そして……ワタを裂いた。もちろん、生きたままだ。響く悲鳴。だが、そこに救いのヒーローは現れるはずもなく……。苦しげに声を詰まらせる少女の腹に手を入れると、ブチュブチュとグロい音を響かせて臓器を取り出す。すなわち、子宮。

 

 それをためらわずに、俺は口にする。ぐちゃり、ぐちゃりと噛み砕かれ、嚥下されるたびにそれはマナとなり、俺の体を満たしていく。

 

「れ、レファ!? 何やってるのさ!」

 

「マナの補給ですわ。魔力が無ければこの先何もできない……。ですが、やはりいいものですわね。醸造された絶望を貯め込んだワタというものは。しかもこれから生きていくエネルギーを貯め込んだそれは、極上ですわ……! 量が少ないのが玉に瑕ではあるけれど」

 

「あーあ……。せっかく集めたのに」

 

「……まぁ、そうですわね。今宵はこの1人で満足ですわ。それに、早くお迎えに行かなければいけませんしね……」

 

「お迎え?」

 

「そう、セイバーの……追撃に」

 

 俺はそう言って、用意しておいた水晶球に魔力を送り込む。すると、そこには誰もいないいろは坂を疾走する一台の車が。さらにズームアップすると、そこには先ほどアイリスフィールと呼ばれていたマスターらしき女性の姿が見える。

 

 それを脇から龍之介が覗き込む。そして、喜色満面の笑みを浮かべた。

 

「いいねいいいね! 今度はこの“素材”を使って何するんだい!?」

 

「残念ながら、サーヴァントはマスターを殺害すると消えてしまいますの……。だから、このマスターを誘拐することにしますわ……! そして……ふふふっ。この“素材”は龍之介へのプレゼントとしますわ。素敵なオブジェを私のために作ってくださる?」

 

「くくく……アハハハハハハッ! いいね、いいよ、どんどん素敵なアイデアが湧いてくる! 任せてくれよ! 素敵な貢物を作ってあげるからさぁ!」

 

「期待してますわ……! さて……じゃぁ、行ってきますわね……」

 

 そして俺は転移の魔法でその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先ほどのいろは坂の中腹にてティーセットを召喚し、優雅にお茶を楽しむ俺。ああ、素晴らしい。充分に温めた容器にコポコポと紅茶を注ぎ、最後に隠し味に血を数滴垂らす……。すると、極上の味に変化するのだ。

 

 しばらくそうやって待つこと数分、一杯目の紅茶が切れようかという時、ようやくエンジンの爆音を響かせ、ヘッドライトが俺を照らし出した。俺の姿を認めたのか、路面に黒い焦げ跡を残し、急ブレーキをかける車。車種は、なんだろうか……。車に明るくない俺には、よくわからないが、おそらく外車なのだろう。高いんじゃないだろうか。

 

 その車から降りてくるは2人。黒いスーツ姿のセイバーと、白い服にコサック帽を被ったアイリスフィールと呼ばれた女性。

 

 俺は二杯目の紅茶を注ぎながら、目線を下げたまま言う。

 

「ごきげんよう、お二人さん……。特に、セイバーは今宵はお世話になりましたわね……」

 

「何のつもりだ、キャスター……。まさかここでお茶会の誘いというわけでもあるまい?」

 

 注ぎ終えた紅茶に数滴血を垂らして、香りを楽しむ。

 

「あら、それもいいですわね……ただ、ちょっとそういうわけにもいきませんの。“マスターから”貴女方の追撃を命じられまして、ね……。それにホラ、令呪というものもあるでしょう?」

 

 俺も本意ではないのだよ、といった言い方をする。まさか。本意も本意、乗り気である。

 

「というわけで、降ってくださいませんこと? 怪我をした貴女を叩きのめすのは本意ではありませんの」

 

 セイバー、即断。

 

「断る。ここで引けば、騎士の沽券に関わる」

 

「そうですの……。それでは、仕方ありませんわね……」

 

 俺は残念そうにくいっと最後の一口を飲み干すと、一瞬でティーセットを消す。

 

「では、こうしましょう」

 

 俺はにこりと笑い両手をポンと打つ。

 

「え?」

 

 アイリスフィールが呆けたのも一瞬、俺はデリヴランスを顕現させつつその背後に転移し、それを突きつける。

 

「一緒に来て……」

 

 頂ますわ、とは最後まで言えなかった。俺がその場に留まっていたら、間違いなく俺の首は落ちていただろう。セイバーは一瞬で俺の横に回り込み、剣を一閃させたのだ。バック転で優雅とは言えない回避を試みる俺。それでも余裕を見せつつ着地するあたり、もう体に染み付いてしまったのだなぁ、などと実感する。

 

「あら。ひどいですわ」

 

「アイリスフィールが誘かされるのを黙って見ていろと……? それこそ、騎士のする事ではない!」

 

「ふぅむ。じゃあ、仕方ありませんわね」

 

 俺はそう言うと、デリヴランスのトリガーをおもむろに1つ引く。すると、銃身から水で出来た剣が形成される。ブン、と軽く一振りすると、水の飛沫がぱしゃりと地面にかかる。

 

 俺は片手で構えなおし、セイバーと相対する。

 

「まさか貴女は私が片手だからといって、手加減するつもりではあるまいな……?」

 

「そういう剣なのですわ。決して侮っているわけではありませんことよ?」

 

「ならばいい……全力でいかせてもらう!」

 

 その言葉を皮切りに、戦闘は始まった。

 

 セイバーが剛の剣でくるのならば。

 

「私は、柔ですわ!」

 

 思い切り叩きおろしたその見えざる剣に合わせるように、俺は勢いよく剣を振り下ろした。セイバーの見えざる剣は、俺には届かない。逸らされ、地に傷跡を穿つのみ。

 

「なっ!?」

 

「ッ!」

 

 息をのむ二人に、俺はニヤリと笑いかける。

 

「今度は身体強化などしていなくてよ?」

 

「そんな!? セイバーの剣が素のキャスターに届かないなんて!」

 

 セイバーは焦ったような表情で、もう一度剣を振るう。今度は逆袈裟斬りに、地面からすくい上がるかのような見事な一太刀。しかし――

 

「それも……届かないッ!」

 

 逸らされた剣は自重であさっての方向へ向かう。そこを見逃す俺ではない。上方に払ったそのまま踏み込み、剣を突き出す。セイバーはそれを鎧で受けようとするが……。

 

「ぐっ……!?」

 

 バシュリと決して浅くはない傷がセイバーの左胴に開く。剣をブンと振るって俺を牽制し、バックステップで距離を取る。

 

「単分子カッターというものをご存じかしら? 知らないのなら、帰って調べてみることをお勧めしますわ。こういうのをググれって言うんでしたわね」

 

 ニコニコと笑いながら、俺はいつもの調子で告げる。

 

「どうして……サーヴァントが単分子カッターなんて代物を知っているの!? あなたはいったい何者なの!?」

 

「それを答えてはサーヴァント失格ですわ!」

 

 その言葉を皮切りに、再び斬りかかっていく。まだ間合いには届かない。しかし、躊躇なく俺は剣を振り切った。飛び散る飛沫。それがセイバーの顔にもかかる。その瞬間、セイバーは顔をしかめてバック転で後退する。

 

「熱湯か……姑息な真似を……!」

 

「戦術と言ってほしいですわね。では、ここから本番と参りましょうか……!」

 

 俺は大きく息を吸い込んで、詠唱を始める。

 

「loctepeautis, foucjuificu!」

 

 もちろんその隙を逃すセイバーではない。当然俺に斬りかかって来る。が。

 

 俺はそれでもニヤリと笑う。セイバーの剣が迫ろうかというその瞬間、俺とセイバーの間に氷の壁が生成された。セイバーの剣はそれに阻まれて届かない。氷の壁は一瞬後に砕け、その破片がセイバーに向かって降り注ぐ。明らかに指向性を持って。マズいと感じたのかセイバーは後退するも、まるでそれは生き物のようにセイバーを追う。

 

「いいんですの? そんなものにかまけていて?」

 

 俺はアイリスフィールに触れると、龍之介の根城へと転移する。

 

「アイリスフィールッ!」

 

 セイバーの声は、誰もいなくなったいろは坂にむなしくにこだました……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あーあ、やっちゃったよレファさん。さぁて、この後の展開はどうしようか……。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。