ぶっちゃけ、だんマチの二次一つ増やす程度にしか考えて無かったんですよね。
それが何でこんなことに…ッ!
ダンジョンに英雄王がいるのは間違っている。
再びスタート。
secondseason
うららかな日差しが整然とした石畳を照らしている。今日も晴れ晴れとした天気に、街行く人達の顔には笑みが咲き、弾んだ声が通りのそこら中に溢れている。
ーーー僕達は無事地上へと戻ってこれた。
「でも本当に、ベルさん達と王様が無事に帰ってきてくれて良かったです」
「はん。あり得ぬ空想など抱くでない娘」
「王様ぁ…。シルさん、ご心配をおかけしました」
人波の中を王様と共に歩き、西のメインストリートの一角、『豊穣の女主人』の側にいた。
最早、何度目か分からぬ謝罪を返す。隣に立つ王様は、変わらぬ態度で接していた。
……黒いゴライオスを倒し、地上に戻ってから、既に三日が経とうとしていた。
その短い間でも、本当に色々あったなぁ…。
ーーーーーー
あの戦いの後、テイムしたらしいゴライオス、名はジャガ丸をどうするかハッとなった全員が王様にどうするか聞いた所…。
『ーーー知らん』
まさかの回答だった。階層主をテイムするという偉業をしでかした人物は、事もなさげにそう答えた。
地上に連れ帰る事は、帰りの通路の関係で無理だが。いや、ジャガ丸が掘り進めれば可能だが…。
王様曰く、ジャガ丸はあの縄張りに置いていくとのこと。そこでどう過ごすかは、我の関与する事ではない。
ーーーまさかの放し飼いである。
その事実に困惑する僕達。先の戦闘からその強さが、通常のものとは思えないジャガ丸。それを17階層に置きっぱにするのは不味すぎる。
どうしようかと悩む僕ら、リヴィラの街に住む彼等もその回答に頭を抑える。彼等にとっては死活問題、ジャガ丸が言うことを聞くのは王様だけ、地上へと戻るにはそこを通らなければならない。王様がいない時にジャガ丸の側をだ。
どう考えても無理だ。王様が何とかしてくれない限り、今後そこを通ることが出来ない。皆が絶望に染まりかけた時…。
ーーーそこに救世主が現れた。
ピコンと、何かを思い付いたリリが、王様に近寄り耳打ちする。
皆が何だろうと、視線を集める中リリは王様と話を進める。次第に無表情だった王様がその表情を笑みへと変え、「ほぅ…」と感心の声を上げた。
「ジャガ丸!」
『オオオオ!』
王様の呼び掛けに、即座に返し、王様の側でキチンと直立するジャガ丸。その姿を見てもう王様に反逆することはないだろうなぁ、としみじみ思う。
そしてリリは、背負っていたバックパックをジャガ丸へと差し出した。
「ーーー良いですかジャガ丸…」
リリは臆することなく、ジャガ丸に説明しだした。
ジャガ丸が17階層にいては通行が出来ない。
でもジャガ丸はとても強い、しかも倒したら倒したで、王様が何をするか分からない。
なら、ジャガ丸には戦闘以外で通して貰おう。
何をもって?決まっている、古来より関所を通るならお金だ。
バンと、後ろで何かを書いていた王様がそれを広げた。
そこにはこう書かれていた。
『ジャガ丸の関所
通りたくば1000ヴァリス払うがよい
払わぬ場合はどうなるか、分かっているな?』
「そう言うことだ、分かったなジャガ丸?」
『オオオオッ!!』
ビシッと敬礼をし、ジャガ丸は王様が書いた垂れ幕と、リリのバックパックを持って17階層へと戻っていった。
皆がその発想に感嘆の声を上げる。これで今後通る時の問題は解決された。
王様の後ろで、リリとリヴィラの街のトップであるらしいボールスさんと、『ジャガ丸の関所』について打ち合わせしている。
皆が良かった、良かったと安堵している時、僕は確信していた。
ーーーははぁーん、これは僕がエイナさんに怒られるパティーンだな。
ーーーーーー
そして、その日の内に地上へと戻ることにした。
黒いゴライオスとの闘いの疲労で、満足に動けない僕だったが、幸いにして戦闘は皆無だった。
……いやまぁ、王様がいる時点で察してたけど。
帰り道、先頭を行く王様のおかげで、モンスター達は逃げ去っていった。
リリとヴェルフには説明こそしていたけど、信じてなかったのか、その光景に口をあんぐりと開けていた。
どういうことだ、と問い詰められても、僕にも良く分からない。強いて言うなら、『王様だから』かな?
そうして無事に地上へと生還した僕達だったが、その都市の変わり果てた光景を見て、目を見開いた。
南のメインストリート、リリに聞いた所、歓楽街と呼ばれていた場所が崩壊していたのだ。
神様に事情を聞いた所、歓楽街から突如、天に昇る紅き風が現れ、その暴風で歓楽街が崩れ去ったらしい。
僕達がいない間に、都市にそんな大事件があるなんて、犯人は一体誰なんだ…。
未だ見つからない犯人に、僕は恐怖で身震いした。
そして、その場で皆と解散をし、ホームへと戻っていった。
……大分日が経ってしまったが、またここに帰って来れたことに、口元が緩んでしまう。
寂れた教会の地下へと繋がる階段を歩いていく、段々と部屋に近づいて行く時、灯りが付いていることに気付いた。
……誰もいないはずなのに。僕達を探すために、よっぽど焦って出たのかな?
そんな事を考えていた僕の横で、神様が何かを思い出したかのように、あっと声を上げた。
最後の階段を降りた時に、聞こえた神様の声に僕は背後の神様と王様に振り返る。
「ーーーあっ、お帰りなさい王様。…えっ?」
『キュイイイイイッ!!』
誰もいないはずの部屋から声をかけられた。しかもその一つはモンスターの声だった。
振り返った僕の背に衝撃が走った。衝撃に首を回して確認してみると、抱き付かれていた。
ーーーアルミラージに。
「えええええっ!?」
突然の出来事に、僕は驚愕の声を上げた。
何で僕達のホームにモンスターが!?
と言うかこいつ、めっちゃ僕に泣きついてきてる!?
ヴェルフとヘルメスとの間にも色々ありましたが、後々回想するでしょう。
遅くなりましたが、空箱一揆様動画ありがとうございます。