ダンジョンに英雄王がいるのは間違っている   作:あるまーく

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ヘスティア・ファミリアに入ることになったベル達。
ホームは寂れた教会、眷族は自分達二人だけという事実を知ったベル達。



恩恵

ーーーーーー

 

「ま、待ってくれたまえ!もう遅いんだしとりあえずここに泊まっていきなよお二人さん。今なら恩恵のサービス付きだぜ!」

 

「ええーい!うっとおしい離れんか!?寂れた教会がホーム等神が聞いてあきれるわ!!ベルよさっさと他のファミリアを探すぞ!!」

 

「良く言うだろう?住めば都だってさ。…まぁ僕も今日からここに住むんだけど」

 

「ここが都だと!?もう既に没落しているところは都などと呼ばんわ!!」

 

「お、王様も神様も一旦落ち着きましょうよー!!」

 

僕たち三人は、あれから神様のホームーーーこの寂れた教会の前で、言い争っていた。

 

けど、寂れた教会がホームだなんて僕自身もショックが大きいや…

 

けど、僕でも入れてくれるファミリアをこんな時間から探すのはどう考えても無理だ…

 

つまり、神様のファミリアに入り、この寂れた教会をホームとするか、今日は野宿し明日またファミリア探しを行うか、ということになる。

 

……贅沢を言うなら僕だって、もっと良いファミリアに入りたい。けど、今日一日いろんなファミリアに門前払いされた記憶が蘇る。

 

『僕のファミリアに入らないか?』

 

…っつ。不意に神様から言われた言葉が蘇る。…そうだ、こんな僕でも誘ってくれる神様なんだなら…!

 

「……僕は神様のファミリアに入ります!」

 

俯いていた顔を上げ、そう言った。僕の発言を聞いた二人は、「正気かベルよ!?」「ほ、本当かい!?」と驚愕した。

 

「僕はあの時神様に誘われるまで、ずっと門前払いされてきました…でも神様だけは僕に手を差しのべてくれた…あの時本当に嬉しかったんです!だから僕、このファミリアに入りますよ…いや神様のファミリアに入れてください!」

 

僕は言いきった。自分の偽りのない本心を語った。

 

「ベル君…こちらこそ騙すようなことをしてごめん!そして、改めて僕の眷族としてよろしく!」

 

神様は騙したことに頭を下げてくれた。…神様に頭を下げさすなんて僕も王様のこと言えないな…

 

「…王様。王様は嫌かも知れないですけど、僕はここに決めました。…王様も一緒に入って欲しいんですけど駄目でしょうか…」

 

「……我はベルに好きなファミリアを選べと言った。そして、そのファミリアに一緒に入るともな…。本来であれば、極刑ものだが、下僕兼家族の頼みだ。我もこのファミリアに入ろう」

 

げ、下僕兼業なんだねと、神様がひきつった笑みを浮かべながらそう言っていた。…そうなんです下僕兼家族なんです自分。でも王様は口ではこう言いつつもなんだかんだ言って許してくれる優しい人なんです。言葉にはしないけど。

 

ーーーこうして僕たち二人はこのヘスティア・ファミリアに入ることとなった。

 

 

ーーーーーー

 

「じゃあ、僕も初めてだけど恩恵の授与を今からするね♪」

 

「お願いします!」

 

「…本当に貴様にできるのか?」

 

王様はまだちょっと神様のことが心配みたいだけど、僕はワクワクしっぱなしだ。

 

……これで恩恵を貰ったらいよいよ僕も冒険者になるんだ!そう思うと心臓の音がうるさいくらいなっている。王様は信じてないみたいだけど…

 

「じゃあベットに仰向けになってね。…それじゃあ始めるね」

 

そう言い神様は自身の手にはりでちょっこと傷をつけた。

 

そして僕の背中に血で文字を書き始めた。

 

……初めてといった割にはあっという間に文字は書き終わり、恩恵の授与は終了した。

 

「……お仕舞いだよベル君!これで君は今日から僕の眷族で、冒険者だよ!いやもはや眷族じゃなくて家族だね」

 

「あ、ありがとうございます神様!」

 

鏡越しに自分の背中を見ると確かにヒエログリフ『神聖文字』が刻まれていた。

 

……これでやっと僕の夢が一歩進んだんだ!後はダンジョンで女の子と運命的な出会いをするだけだ!

 

僕の頭のなかはこの時までは、そんな邪な考えで一杯だった。

 

「次は君の番だぜ!王様君!さぁベットに仰向けになりたまえ」

 

「我は恩恵等いらん」

 

神様が王様にベットの上で手招きして呼んだが王様は興味が無さそうにそう言った。

 

「要らないって…王様君恩恵ないと」

 

「安心しろ。先も言ったが我は貴様のファミリアには入った、が別にそれは恩恵欲しさにと言うことではない。我はベルの行く末を見守るためにファミリアに入ったに過ぎん。無論ファミリアとしての最低限の責務は果たすつもりだ。が、そんなものなくても我は別に困らん」

 

辛いだろう…神様はそう言おうとしたが、王様はきっぱりと拒絶した。

 

……王様は背中に文字を書かれるのが嫌なんだろうか?僕はそんなとんちんかんなことをこの時思っていた。

 

「……まぁ確かに恩恵なくても、ファミリアには貢献できるしね!でも欲しくなったら何時でも言ってくれよな、直ぐ書いてあげるよ!」

 

「それとこれがベル君君の今のステータスだよ♪」

 

そう言って神様は僕に1枚の紙を渡してくれた。

 

ーーーーーー

 

ベル・クウネル

 

Lv.1

 

力:I0

 

耐久:I0

 

器用:I0

 

敏捷:I0

 

魔力:I0

 

ーーーーーー

 

渡された紙にはそう書かれていた。

 

……実物は初めて見たげとこれが僕の今のステイタスか…

 

やっぱり最初だとこうだもんな、これから頑張っていこう!

 

「まぁ、最初はどの子も一緒だよ!これからダンジョンに潜ってバンバンエクセリア『経験値』を稼げば直ぐ強くなれるぜ!」

 

王様も気になったのか、僕から紙を受け取って「…何もないな」と、呟いていた。

 

……これから強くなるから良いもん!


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