ダンジョンに英雄王がいるのは間違っている   作:あるまーく

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もしもの話です。


没ルート

「やったぞベル君、無難だ!」

 

「か、神様!?」

 

「……ヘスティアよ、騒がしいぞ。もう少し大人しく入れ」

 

嬉々として帰ってきた神様。その勢いのまま僕に抱きついてきたが、僕はその無難という言葉に引っかかった。

 

「『リトル・ルーキー』それが君の二つ名だよ!やったねベル君!」

 

「『リトル・ルーキー』か…。まぁましな名だな」

 

「そ、そうでしょうか?」

 

その二つ名に王様は同意していたが、僕的には…。

 

……うん。神様達が決めてくれた二つ名なんだ、不満なんてないな。うん、ない。不満なんて……ない…。

 

喜んでいた神様だったが、そこでふと、王様と目が合った。そして一瞬で反らした。

 

あれ?なんかあったのかな?

 

「なんだヘスティア、今の態度は?」

 

「い、いやっ!?何でもないよ。…ただ…」

 

この時の王様はまだ優しかった。そうこの時(・・・)までは。

 

僕も歯切れが悪いその言葉に気になったが、王様をチラチラと見ていた神様は、生唾を一つ飲み込んでから意を決したように口を開いた。

 

「き、『金ぴか』くん…」

 

「はぁ?」

 

「えっ?」

 

初めて王様がすっとんきょうな声をあげた。僕も声が小さかったが確かに聞き取れた。

 

……『金ぴか』君?

 

王様の訝しげな視線を向けられながら神様は神会であったことを語っていく。

 

「実は今日、神会があって…。命名式の時に、君の冒険者登録書が混ざってたんだ…」

 

「あ、アレですか…!」

 

「ああ。そのようなもの、最初に書いた記憶があるな…」

 

未だ歯切れが悪い神様だが、僕はそれに合点がいった。

 

……アレを見たのかぁ…。

 

オラリオに来て冒険者になろうとした時に書いた紙だったが、王様も一緒に書いたのだが…。

 

内容が酷くアレだった…。

 

勿論そんなもの通るはずもなく、エイナさんによって却下されたが、アレを神様達が見たのかぁ…。

 

ーーー下界に娯楽を求めてやって来た神様達が見逃すはずないよなぁ…。

 

「……それで、名前が書いてないことに神達(あいつら)は気づいたんだ…」

 

「当然だ。あのような駄紙に我の名がかけるか、我の名を残すのであれば、最高級の羊皮紙を用意するべきだ。…それで、どうしたのだヘスティア?」

 

「き、君の名前を、二つ名を決めようって話になったんだ…」

 

「ほう…」

 

隣で座っている王様の雰囲気が変わった。

 

それを感じた僕は、もう顔をあげていられなかった。

 

……もしかして、さっき神様が言ってたのって…。

 

「き、『金ぴか』という名に決まったんだ…っ!」

 

ーーーホームは静寂になった。

 

唯一聞こえるのは僕と神様の震える(・・・)音だけだった。

 

……隣を見ずとも分かる。今王様は怒ってらっしゃる。

 

いつか路地裏で感じたプレッシャーに僕達は子ヤギのように震えるだけしかできない。

 

「……誰だ?」

 

「「ひっ?」」

 

王様はゆっくりと口を開いた。

 

その声はまだ小さかったが、僕達は悲鳴をあげた。

 

「どこの雑種だと聞いている?…さっさと言わんかたわけっ!!」

 

「「ひぃぃっ!!」」

 

怒鳴り声に僕は座っているソファーから飛び退き、神様はホームの入り口の階段に隠れるように身をかくした。

 

「この我にそのような名を付けるか…。なるほど、余程死にたいらしいな!」

 

「お、落ち着いてくれ、王様君っ!?」

 

「おおお、お願いです王様っ!?静まってください!?」

 

脱兎の如く、神様の後ろまで周り二人で王様をなだめようとしたが。

 

……無理!って言うかこの前のミノタウロスなんか比じゃないくらい怖い!!

 

「ヘスティアッ!さっさと下手人の名を言わんかっ!!」

 

「ひっ!?ロ、ロキの奴で、ご、ございます!」

 

「ベルッ!そやつは何処にいるっ!!」

 

「ひ、ひぃぃっ!?た、確か、ロ、ロキ様のホームは、た、黄昏の館とか言う場所です!」

 

「……そうか」

 

スッと、王様は立ち上がり僕達の方に寄って来た。寄ってくる王様に僕達は立てなくなり、ホームの中とはいえ整備されてない地面に座り込んだ。

 

だが王様は僕達に目もくれず、階段を上っていきホームから出ていった。

 

王様が去っていくのを震えながら見ていたが、その背中はやがて見えなくなった。

 

「「……」」

 

王様がいなくなったのが分かり、気づかない内に抱き合っていた神様と目が合った。

 

「「こ、怖かったぁ…」」

 

ーーーーーー

 

ーーーロキ・ファミリアホーム『黄昏の館』

 

「……かぁ、やっぱり皆がいないと暇やなぁ…」

 

その中の一室で、ロキはベットに寝そべりながらそう呟いた。

 

……ファミリアのメンバーは遠征で出払っているため、ロキは広いホームの中一人いた。

 

「なんかおもろいこと起きんかなぁ。……こう急に隕石が落ちてきたり、ラグナロクー!が起きたり…」

 

独り言を言ってみたが、自身の荒唐無稽な発言に思わず笑った。

 

やることもないし、寝よか…。そう思った直後…。

 

ドゴォンッ!!

 

「な、なんやっ!?」

 

ホームの入り口、門が建っている辺りから爆音(・・)が響いた。

 

目を見開き、驚きの声を上げたが。ロキはすぐさまベットから飛び起き爆音が響いた場所に駆けていった。

 

ーーーそこには一人の男が立っていた。

 

「……貴様がロキか…。なるほど、下手人らしい貧相な体だ」

 

「お、お前は!?」

 

崩れ去った門の前に立っていた男ーーーギルは、目の前に現れたロキにそうこぼした。

 

「『金ぴか』か?…お前一体、どこのファミリアにこんな真似したのか分かっているのか?」

 

「……ほう。この我を前にして、まだふざけた口が聞けるか…。くっくっ、なるほど貴様は我が裁くにふさわしい賊だな」

 

ロキは目の前に立っている男に恐れることもなく、逆にその細い目を見開いたまま威嚇した。

 

「笑いごとちゃうぞ、お前?天下のロキ・ファミリアに喧嘩吹っ掛けんてんやぞ?」

 

「はっ!この我の前で天を語るか?おごがましいにもほどがあるぞ、雑種?」

 

そして、腰に備えられた剣を抜き、ロキの眼前に突き出した。

 

……だが、ロキはそれを前にしても怯えることもなく…。

 

(うち)に剣を向けるか?」

 

ーーー女神(ロキ)は神威を解放した。

 

下界の者を平伏させる神の威光。(こうべ)を垂れざるをえない超越存在(デウスデア)としての力。

 

……だが。

 

「貴様こそ誰に吠えている、雑種(・・)

 

ーーー目の前の男は神の威光(それ)を何事も無いように受け流し。あまつさえ、その眼光を鋭く光せていた。

 

ロキは神威を受け流した男に驚愕した。だが、自分のホームに強襲してきたこの男を許すはずはしない。

 

「……うちの所の子は、皆遠征で出払っている。帰ってきたら相手してやるさかい、精々それまで震えてな『金ぴか(・・・)』」

 

「……ほう、この状況になって我に待てと言うのか…。だがよかろう、貴様のその雑種共、我が貴様の目の前で一人残らず葬ってやる。その時に貴様がどうするか見物だな、雑種(・・)

 

向けていた剣は鞘に納められた。ギルはそれだけ言うとロキに背を向け去っていく。

 

ロキはその背中を見開いた目で睨み付けていた。

 

『ロキ・ファミリア』vs『英雄王ギルガメッシュ』

 

ここに両者による『戦争遊技』が決まった。

 

続かない!

 




という風になって、オラリオbatendが決まっちゃうので、かっこいい二つ名お願いします。

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