ダンジョンに英雄王がいるのは間違っている   作:あるまーく

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怪物祭も終わり。

再び、ダンジョンに入るギルとベル。


サポーター
7階層


『キギッ』

 

口をもごもごと動かし、歯を鳴らす蟻形のモンスター。

 

キラーアント、この7階層になって初めて姿を現すモンスターだ。

 

「ーーーふっ!」

 

僕はキラーアントに肉薄し、敵の攻撃を掻い潜り新しい武器ーーー『神様のナイフ』を突き刺した。

 

『ギッ!?』

 

小さいうめき声を出して、キラーアントは動かなくなった。

 

同じく後方で見ていた王様も、神様から貰った剣でキラーアントの首を飛ばした。

 

……初めての戦闘のはずだけど王様強いなぁ…

 

キラーアントと始め相対したとき、例の如く王様は睨み付けたが、キラーアントはそれを無視して襲いかかっていた。

 

「……虫めが…。考える脳もないのか…」

 

王様は忌々しげに、キラーアントの亡骸にそう言った。

 

どうやら虫形のモンスターには、王様の睨み付けは効かないらしい。それでも恩恵を貰ってないのに倒しちゃうのは凄いや。

 

僕も王様のことを気にしながら、何体目かのキラーアントを倒した。

 

「……うん、いい!」

 

僕は神様から貰った武器を再度見て、笑顔を浮かべた。

 

ーーーーーー

 

「ななぁかぁいそぉ~?」

 

「は、はひっ!?」

 

7階層での探索を終えた僕達は、自身のアドバイザーであるエイナの元に近況報告をしようと、足を運んだ。

 

「ベル君ッ!!私の言ったこと全っ然わかってないじゃない!!」

 

「ご、ごごごごめんなさいぃっ!?」

 

机を叩き、彼女の射竦める瞳にベルは身を震わせた。

 

「一週間とちょっと前、ミノタウロスに殺されかけたのは誰だっかな!?」

 

「ぼ、僕ですっ!?」

 

「過去のことを気にするのは愚か者のする事…。ベルよ気にするではない」

 

「な・ん・で・す・っ・てぇ~!!」

 

ぽふっと、僕の頭に手を置いて王様が口を挟んできた。エイナさんはそれを聞いて王様を親の仇のように睨み付けた。

 

……王様ぁ、フォローは嬉しいですけど、エイナさんを煽らないで下さい…

 

「キミは危機感が足りない!絶対に足りない!今日は私が徹底的にダンジョンの恐ろしさを叩き込んであげる!!」

 

エイナさんは王様を睨み付けていたが、視線を僕に戻し、そう言ってきた。僕はエイナさんの形相に、ひぃっと悲鳴を上げた。

 

「ま、待ってくださいっ!?僕っ、あれから成長したんですよエイナさぁん!?」

 

「ちょっと前に冒険者になったのに、成長しただなんて言うのはどこの口かな…!」

 

「ほ、本当です!僕の『ステイタス』、アビリティがいくつかEまで上がったんですっ!?」

 

「……E」

 

ぴたりと動きを止め、目を丸くしたエイナさん。王様もうむと、首肯した。

 

「そ、そんなの出任せでしょ…」

 

「本当です本当なんです!最近成長期みたいで、熟練度の伸びが凄いんです!」

 

「……本当に?」

 

ぶんぶんっと、勢いよく頷くベル。

 

「……本当に、E?」

 

「は、はいっ」

 

「何度も同じことを聞くでない、たわけ。」

 

隣で、事の様子を見守っていた王様も横槍を挟む。エイナさんはそれにむっ、としたが突然真剣な顔になり、僕に向き直った。

 

「ベル君…。キミの背中に刻まれている『ステイタス』、私にも見せてくれない?」

 

「……えっ?」

 

「あっ、君のことを信じてないわけじゃないよ?ただどうしても気になるから…」

 

「で、でも、『ステイタス』って、一番バラしちゃいけないんじゃぁ…」

 

「絶対に他言無用にするよ。もし、ベル君の『ステイタス』が明るみになれば、私はキミに絶対服従を誓うよ」

 

「そ、そんな、服従なんて…。でもわかりました」

 

ベルは、自身の背中に刻まれている『ステイタス』を見せるために、上着を脱ぎ上半身裸になった。

 

(……嘘)

 

エイナはベルのステイタスに驚愕した。ベルの態度でその可能性を考えていたが、いくらなんでもありえない。敏捷にいたっては、Dに突入している。

 

(……もしかして、なにかのスキル?)

 

そこでふと、一筋の可能性に気づき、視線を下げ背中の中頃辺りに落とし、『魔法』と『スキル』のスロットを見ようとした。

 

「……いつまで、ジロジロ見ているのだ?もしかして貴様そういう趣味か…」

 

「なっ!?」

 

唐突に後ろから言われた言葉にエイナは反応して、顔を上げ振り返った。後ろで二人の様子を見ていたギルが口を挟んできたのだ。

 

「ち、違います!?私にはそんな趣味ないです!」

 

「ふん。ならば、とっとと切り上げろ。ベルよ早く服を着ろ、いい加減戻るぞ」

 

「あっ、はい?」

 

ベルはその言葉に見終わったのだと解釈し、服を着始めた。エイナは短くあっ、と呟いたが、頭を切り替え、別の懸念について考えベルの頭から爪先まで視線を注いだ。

 

「ベル君」

 

「な、なんでしょうっ?」

 

「明日予定空いてるかな?」

 

「……へっ?」

 

ーーーーーー

 

翌日ギルは、一人街を歩いていた。

 

ヘスティアはいつものごとく、バイトに出掛け。ベルは今日はダンジョンに行かず、エイナと買い物をしに行った。ギルも最初は誘われたが、内容が武具購入のため、ついていかなかった。

 

「……あなたは」

 

「むっ?」

 

街をブラブラしていたギルだが、唐突に後ろから声をかけられた。

 

「……何者だ雑種?」

 

「そう言えば、初対面でしたね…。初めまして『豊穣の女主人』の店員の一人、リューです。」

 

ぺこりと、お辞儀をして祭りで出会ったシルと同じ格好をしたエルフの少女はそう挨拶してきた。

 

「なんだ、あの女将のところのものか…。それで、王足る我になんのようだ」

 

「いえ、先日のお礼を申しておこうと思いまして」

 

リューはそう言うと、「どうもありがとう」と再度お辞儀をした。

 

前回豊穣の女主人に寄った時、ギルは女将にお金を渡し、店員達に配るように言い、リューも例外なく貰ったのだが、いきなり渡されたお金に理由を聞いたら、

 

『どこぞの優しい王様からの貴賤だそうだ。ありがたく受け取っときな』

 

と言われ、疑問に思っていたが、先日の怪物祭から戻ってきたシルに、ベルの連れと一緒に回ったと話を聞き、その連れが王様と名乗っていたことも聞いた。

 

そして、リューは合点がいき前に貰ったお金はこの人からだと分かり、礼をのべたのだ。

 

「ほう、なかなか殊勝ではないか」

 

「いえ、当然のことです。それで、貴方は何をしていたのですか?」

 

「なに、この街を散策していたに過ぎん。……そうだ娘よ、貴様も我を案内しろ。我はこの街をよく知らんからな」

 

「案内ですか…。分かりました、私にも用事がありましたが前回のお礼を考えれば、承りましょう。後、私は娘という名前ではありません。リューとお呼びください」

 

「フハハ、そうか、ではリューよ王の案内を任す!」

 

はい、そう言ってリューはギルの案内をし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ベル・クラネル

Lv.1

力:E403

耐久:H199

器用:E412

敏捷:D521

魔力:I0

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