ギルもそれを知り、ベルとヘスティアを探す。
そして、捜索中アイズ達の戦闘を目撃する。
「ちっ、ベルめ騒動に巻き込まれるとは!」
ギルは屋根を飛び回りながら、そんな悪態をついた。前日にエイナから怪物祭のことを聞いており、出ているモンスターが今のベルが探険している階層より、下の階層にいるモンスターということを知っているギルは、今のベルでは太刀打ちできないとわかっていた。
ギルとしては、ベルの今後に興味があり、このような些事で命を落とすなど認められなかった。
その時、ギルの前方で大きな戦闘音を聞き、そっちの方向に駆けていった。
ーーーーーー
「ロキッ!!」
「アイズー!?」
アイズ達は、花形の見たことのない新種のモンスターと戦闘していた。
剣が壊れ、打撃で攻撃していたが効果がなく、苦戦していたが、レフィーヤが本気の魔法を撃ち込み氷付けにして、粉々に砕くことができた。が、新たに地面から出てきた一匹が子供を背負ったロキに襲いかかり、それに唯一反応したアイズがロキを突き飛ばしたが逆に自身が窮地になったしまった。
「ちっくしょう!間に合わねぇ!?」
「アイズさーん!?」
「アイズ逃げて!!」
アイズは自身を心配してくれる仲間に、顔を俯かせた。戦闘終了直後という気を抜いた瞬間だっため、ロキを助けることはできたが、自身の防御が間に合わなかった。
花型のモンスターに襲われる直前、前方に突き飛ばしたロキと目が合い、ごめんと小声で伝えた。
ロキはそんなアイズの言葉を聞き、やめろー、と叫ぼうとした時。
ーーー上空から二槍の槍がモンスターに突き刺さり、モンスターは霧散した。
「えっ?」
「嘘ッ?」
アイズは今まさに襲われそうになったモンスターが霧散したことに驚きの声を上げ、周りで見ていた仲間も言葉は違うが驚いていた。が、アイズが無事だったことに感激し、アイズに飛び付いた。
アイズとロキは飛来してきた槍を眺めていたが、音もなく粒子になり消えていった。
ロキはその光景に再度驚愕し、アイズは屋根の上を見た。
ちょうど去って行く時だったのか、背中しか見えなかったが、アイズはその背中に見覚えがあった。
(……助けられちゃった…)
ーーーーーー
「ふん。ベルかと思い見に来たが、いつぞやの雑種共か…」
ギルはちょうど、アイズ達がモンスターを砕いてる場面でそこに着いた。ギル自身も終わった場所に長居する気もなく、去ろうとしたがそのタイミングで新たに一匹が現れ、アイズに襲いかかった。
ギルは助けるつもりはなかったが、ベルのスキルを思いだし、あやつが死ぬと効果を無くすことに気づき、二槍の槍を射出した。
「ちっ、余計な時間をくった。早くベルを見つけなければ」
霧散したモンスターを確認した後、再度戦闘音のある場所に駆けていった。
ーーーーーー
「ベル君。君が、あのモンスターを倒すんだ」
「僕が君を勝たせてやる。勝たせてみせる」
ベルは突如現れた、シルバーバッグに襲われ最初逃げ回っていたが、神様のその発言を信じ、物陰に隠れ、ステイタスの更新をしていた。
その手に一振りの短刀を持って。
(速く速く、急げ急がないと!)
ヘスティアは内心で焦りながらも、手は正確にベルのステイタスを更新していた。
突如現れたシルバーバッグに、ベルと一緒に逃げていたが、執拗にヘスティアを狙ってくることから、逃げ切れないと判断し迎撃することにした。
冒険者になってから日が浅いベルが挑むなど、無謀極まりないが、ヘスティアには勝算があった。
新しく用意した、『神のナイフ』とベルが発動したスキル『憧憬一途』だ。
「神様、来ました!」
「出来たッ!」
目の前の大きな通路からこちらに向かってくるシルバーバッグ。そして、ほぼ同タイミングでステイタスの更新が終わった。
(……ッ!?全アビリティ、上昇値トータル600オーバー!?)
自身の想像を遥か上に行った、成長速度に驚愕したが、今の状況ではまさに天恵。
(これならっ!)
「さぁ、行くんだ!」
万感の思いを込め、ヘスティアはベルの背中を叩いた。
ーーーーーー
『ガァアアアアアアアアア!』
雄叫びを上げながら突っ込んでくるシルバーバッグの攻撃をかわした。
今までとは明らかに違うスピードにベル自身も戸惑ったが、相手は待ってはくれない。
再度、突撃してくるシルバーバッグをかわしすれ違いざまに神様から新しく貰ったナイフで切りつける。
先程とは違い、ナイフは砕けず相手に確かにダメージを与えた。だか、それでも怯むことなく、再度突撃してくるシルバーバッグに僕は大きく後ろに飛び、かわした。
(大丈夫…今ならやれる。だから震えるな!)
僕は先程から相対するモンスターに恐怖から震えていた手を見て、内心で叱責した。
だか、それでも手の震えは止まらなかった。
(くそ、くそッ!!)
僕は自分の情けなさに、憤り悪態をつくが手の震えは止まらないし、相手も待ってくれない。三度突撃してきたシルバーバッグの突進をかわし、シルバーバッグは前のめりに倒れた。
その好機にも、僕は動けずにいたが上空から聞き慣れた声が聞こえた。
「何をしているベルよ!?さっさとあのような雑種倒してしまわんか!!」
「お、王様!?」
「王様君!?」
「ええい、今は目の前の雑種に集中せんか!」
僕達の呼び掛けに、王様は立ち上がろうとしているシルバーバッグを指差し、僕にそう告げた。
「で、でも僕じゃかなわないんです…」
「たわけがっ!!貴様が目指す英雄は、あのような雑種ごときに臆するのか!!」
王様の発言に、昔読んだ英雄譚に出てくる英雄達を思いだし、自身の心に火がついた。
「でも、僕は王様みたく強くないです…」
「抜かすなっ!!ベルよ!貴様は我が見いだしたのだ!そんなお前が弱い等あり得ん!!」
「王様…」
ーーー震えは止まっていた。今まさに立ち上がったシルバーバッグを僕は睨みつけ、王様と神様に背を向けて宣言した。
「王様、神様、見ていて下さい!」
「ベル君ッ!!」
「行くがよい!ベルよ!!」
立ち上がったシルバーバッグが雄叫びを上げて、再度突撃してきた、僕もそれに向かってーーーシルバーバッグの胸目掛けて突貫した。
『ガァアアアアアア!!』
「ーーーぁああああああッ!!」
軍配は僕に上がった。シルバーバッグの胸、その奥の硬質な何かを砕いた手応えを感じた。
『ガァッ……』
短く悲鳴を上げ、シルバーバッグは背中から倒れ、最後は霧散した。
「やった…ッ!」
霧散したシルバーバッグを確認した瞬間、僕も地面に尻餅をついた。
『ーーーーーッ!!』
同時に歓声が迸った。今の戦いを隠れていた住民達が姿を表し、ベルを称える喝采を浴びせた。それに気づいたベルは戦闘の緊張を解き、笑顔を浮かべ背後で見ていた二人に振り返った。
やりましたと、顔を輝かせ二人に笑いかけようとしてーーー路上に倒れているヘスティアを発見した。
王様もそれに気づき、先程までいた屋根の上から飛び降り、神様の安否を確認していた。
「神様ッ!?」
「案ずるな。寝ているだけだ」
慌てて近寄ってきた僕に対し、そう返した。僕は王様の答えを聞きほっと、安堵の溜め息を出し、また地面に座りこんだ。
「良かっ…」
た、と言いたかったが、僕も先程までの戦闘のせいか意識を手放してしまった。
ベル・クラネル
Lv.1
力:G221→E403
耐久:H101→H199
器用:G232→E412
敏捷:F313→D521
魔力:I0