ダンジョンに英雄王がいるのは間違っている   作:あるまーく

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ベルを連れて帰って来たギル。
ヘスティアはそれに一安心し、強くなりたいベルのために神の宴に行く。


ヘスティアの思い

「まったく昨日は心配したよベル君、強くなりたいのは分かるけど、ろくな装備も着けず夜中のダンジョンに行くなんて自殺行為だよ!!」

 

「…すいません神様…」

 

「分かってくれれば良いよ。…こ、これは!?」

 

あれから一夜明け、ヘスティアはベルに説教をしながらステイタスを更新していたが、ベルのステイタスの熟練度に思わず言葉が詰まった。

 

(どう考えてもアレのせいだよね…やっぱり『レアスキル』だったんだ)

 

ヘスティアは内心でそう考え、ベルに口頭でステイタスを伝えた。

 

……娯楽で飢えている神々に知れ渡れば間違いなく、全力で興味を持って全力でちょっかいをかける。なかには自分の『ファミリア』に勧誘しだす馬鹿者もいる。ゲーマー根性ここに極まれりだ。

 

「とまぁ、熟練度が凄い勢いで伸びてるわけ。何か心当たりはある?」

 

「い、いえっ、全然…あ」

 

「何?」

 

「い、一応…一昨日は6階層までいったんですけど…」

 

「ぶっ!?あ、あふぉーっ!!防具もつけないまま到達階層を増やしてるんじゃない!とゆーか王様君は6階層まで行って大丈夫だったのかい!?」

 

「たわけ何度も言わせるな、我の心配など百年早いわ」

 

「ご、ごめんなさい!?」

 

ベルは背中の上でまくし立てられ、身を小さくし謝り、ギルはどこ吹く風と言うに聞き流していた。

 

「はぁ…、本題に入ろう。今の君は理由ははっきりしないけど、恐ろしく成長する速度が早い。どこまで続くかはわからないけど、言っちゃえば成長期だ」

 

「は、はい」

 

「良かったではないか、理由はわからぬが成長期らしいぞベルよ」

 

「(知ってる癖に…よくもまぁいけしゃあしゃあと)……これは僕個人の見解に過ぎないけど、君には才能があるとおもう。冒険者としての器量も、素質も、君は兼ね備えちゃってる」

 

ベルの背中から降りベットに腰掛け、ベルは王様が座っているソファーの隣に座った。ヘスティアは内心で口を挟んできたギルにそう言い、言葉をつむいだ。

 

「……君はきっと強くなる。そして君自身も、今より強くなりたいと望んでいる」

 

「……はい」

 

「我が見いだしたのだ当たり前だ」

 

王様…、ベルは王様の発言に内心で感激し、ギルはニヤリと笑いながらそう言った。

 

ヘスティアは二人を再度確認し、心細そうに目を伏せがちにして、吐露した。

 

「……約束して欲しい、無理はしないって。この間のような真似はもうしないと、王様君も恩恵を与えてないんだから無茶しないでよ…」

 

「僕は……」

 

「ちっ、何度も言わせるでない…」

 

「強くなりたいっていう君の意思は尊重もする。応援も、手伝いも、力も貸そう。王様君は確かに凄いかも知れない…。でもやっぱり心配なんだ…だから」

 

潤みそうになった瞳を我慢して、ヘスティアは二人に心底ねがった。

 

「……お願いだから、僕を一人にしないでおくれ」

 

ベルは、はっと肩を揺らし大きく目を見開き何かを思い出すように、自分に課した約束を掘り返すように、うつむいて目を閉ざし自己の内面に潜り。ギルは、ヘスティアのその様相にばつが悪いように顔を反らし、それでも確かにヘスティアの願いを聞き入れた。

 

二人はヘスティアの発言にしばし無言でいたが、ベルが顔をあげ、ギルはヘスティアの方に顔を戻した。

 

「……はいっ!」

 

「……まぁ、我の家族を名乗るのだ聞き入れてやろう」

 

「ふふっ、その答えが聞ければ、もう満足かな」

 

ベルの胸に飛び込みたくなる衝動を抑え、未だに上半身裸のベルに服を渡し、照れたように「すいません」と言って着替え始めるベルに背を向けて、ヘスティアは天井を見据えた。

 

(……よしっ)

 

さっそくベルのために動こうと決める。食器棚の方に移動し、中段ほどにある引き出しを漁りいろいろな紙でごちゃ混ぜになっているなかから目当てのものを見つける。

 

『ガネーシャ主催 神の宴』と書かれた、ある催しの招待状だ。

 

開催日を確認してるみるとーーー今日の夜になっていてげっ、と顔をしかめたが、とある友人に会うために慌ただしく動き始めた。

 

「二人とも、僕は今日の夜…いや何日か部屋を留守にするよ。構わないかな?」

 

「えっ?あ、わかりました、バイトですか?」

 

「なんだ急に、男でもできたか?」

 

「バカ言うなっ!男なんていないから安心してねベル君!友人のパーティーに顔を出そうかと思ってね。ひさしぶりに皆の顔を見たくなったんだ」

 

ベルは急にヘスティアにそう言われ「は、はい。遠慮しないで下さい」と答えた。ギルはそれを面白そうにニヤニヤ見ていた。

 

「ベル君、もしかして今日もダンジョンへ行くのかい?」

 

「そのつもりなんですけど…ダメですか?」

 

「ううん、いいよ、行ってきな。ただし君はまだ怪我してるんだから、無理しないでね。王様君はどうするの?」

 

「我はベルとともに行こう。なに無理はしないか見といてやるわ」

 

「あははっ!王様君もだよ、それじゃあ行ってくるね」

 

ヘスティアはギルの発言に笑いながら部屋を後にした。

 

 


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