ダンジョンに英雄王がいるのは間違っている   作:あるまーく

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遊郭の一室にて、ギルは狐人の少女と褐色の女性に出会う。
狐人の少女に興味を示したギルだった。


王の一日・その二

「我は王の中の王!英雄王ギルガメッシュである!その不敬な態度を改めよ女!」

 

「はぁ…?あんたが王様?嘘をつくなよ、それでどうやってこの部屋に侵入してきた、春姫に何をした!?」

 

「ア、アイシャさんも落ち着いてください!?」

 

褐色の肌をした女性ーーーアイシャはこの部屋に侵入してきたギルにそう問いただした。

 

そんな態度をみて、ギルが半ぎれ気味に言い、狐人の少女ーーー春姫は事態を収集させようと二人をおどおどしながら、落ち着かせようとした。

 

「なにぃ!?そこの窓から入ったが王たる我に文句でもあるのか!」

 

「やっぱり侵入者か!とっちめてやる!」

 

「我は女とて容赦はせんぞ!覚悟するがいい、女!」

 

「ふ、二人とも落ち着いてくださーい!?」

 

春姫の大声で、二人はちっ、と舌打ちをしてアイシャは今にも飛びかかりそうな雰囲気を沈め、ギルも『王の財宝』を発動するのをやめた。

 

ーーーーーー

 

「それで、あんたは何しに来たの?まさか、昼から女を買いに来たのかい?だとしたら夜にまたきな」

 

「ふん。我を下賤なものと 一緒にするな!」

 

あれから、二人は落ち着き渋々話をすることにした。

 

ギルは自身がこの都市に初めて来たこと、散策していて狐人が珍しいと思い一目見ようと、この部屋に入ったことを話した。

 

アイシャはそれを聞き、ギルの話に嘘はないことを感じ、春姫を襲いに来たのではないとわかった。

 

……春姫には特殊な力があるが、ギルドには話してなくファミリア内の人間しか知らないはず、まぁ、見た感じ初対面だし、でかいファミリアの一員じゃなさそうだし大丈夫だろう。

 

アイシャはそう考え、ギルに対する敵対心をなくした。

 

「ふん。なんだそうすると貴様らは娼婦か…」

 

「そうだよ、夜になって金を払えばあんたでも相手しやるよ!」

 

「たわけ、願い下げだ」

 

ギルの発言に春姫は顔を俯かせた。ギルはそれを疑問に思い、アイシャは顔をしかめた。

 

「なんだ貴様?娼婦が嫌なら嫌と言えばよかろう」

 

「……そーゆう訳にもいかないんだよね…」

 

アイシャはギルの疑問に、春姫がこのオラリオに来た理由を話した。

 

ーーー極東の生まれで貴族だった春姫だったが5年前に客人の神様に捧げるお供え物を食べて勘当され、その客人に引き取られたらしい。

 

その道中にモンスターに襲われ、その客人は春姫を捨てて逃げて、残された春姫は殺されかける寸前、盗賊に助けられ、生娘であることを確認したあと、オラリオに売った。その過程でとあるファミリアに買われ、今はそのファミリアの一員になった。

 

そして、今日から春姫もこの遊郭で働くことになった。

 

ギルはアイシャから春姫の話を聞き、いぶかしめな目を向けていたが、話が終わった瞬間唐突に笑いだした。

 

「フハハハ!ここまで愉快な人生を歩める道化がいるとは!」

 

「あ、あんたねぇ…まともな感性を持ってるなら同情のひとつでもしなよ」

 

「たわけ、流されるまま流される者に同情などするか!」

 

そう一蹴し、笑われたことに俯いていた春姫はその目尻に涙を浮かべた。

 

……この人の言う通り、私は何もしなかっただからこうたった、笑われても仕方ないよね…

 

そう心の中で考えていた春姫だったが、ギルはおもむろに自身の上着からヴァリスの入った小袋を取りだし、アイシャに放った。

 

「300万ヴァリス入っているはずだ、そこの娘は我が買おう」

 

「はぁ?ほ、本当だ!マジでそれぐらい入ってやがる…なんだい結局話を聞いてこの娘が生娘だから買うのかい?にしちゃあ、ばかに多いけど?」

 

「たわけ、我は娼婦は買わん。だが、そこな娘は道化として買おう、貰って帰るぞ女!」

 

「……悪いが春姫はファミリアでも、重要なんだおいそれと『身請け』は出来ない…」

 

「ふん。ならばこやつの娼婦としての時間を買おう…我以外の男をこやつにつけなければよい」

 

「お、王様さん?いったいどうゆうことですか!?」

 

春姫はぽんぽん進む話に驚いて、声を挟んだ。アイシャは小袋のヴァリスを確認し、ギルの発言に疑問を浮かべた。

 

「貴様は娼婦が嫌なのだろう?だから我が道化として買った。貴様は今後我がここに来た時に酒の酌と、酒のつまみの話をすればよい」

 

アイシャは内心で得心し、春姫は驚いた。

 

この人は自身を買ったが、夜の相手ではなく酒の相手として買ってくれたのだ。

 

「あんたも物好きだね…わかったよ、これだけの金をくれるんだ他の男はつけないよ、正しあんたも春姫を襲うなよ?別料金だからね」

 

「ふん。そのようなことするかたわけ。次来た時には酒のつまみぐらいつけておけ、そこな娘の飲み物もな、我は安酒は飲まんゆえ自分で用意する」

 

はいはい、そうアイシャは苦笑いで返し、ギルは話は終わったとばかりに窓からででいった。

 

春姫は今の話を反芻し、自身が娼婦をしなくて言いということ、目尻に涙を浮かべたまま、しかし笑顔で窓から飛び降りた王様に、ありがとうございます、とそう言った。

 

「ーーーで、あいつはいったいなんなんだい?こんな大金ぽんと出すし」

 

「……あの方は王様ですよ、アイシャさん♪」

 

春姫は浮かべた笑顔そのままでそう言った。

 

そしてアイシャのほうも、そうかいとだけ言い目をつむり笑っていた。

 

「まぁ、襲われたらちゃんと言いなさいよ、それとこんな大金で買ってくれたんだ、ちゃんと話の種ぐらいは探しておきな」

 

「……はい!」

 

そう言って春姫は、次来たときに何の話をするか考え始めた。

 

ーーーーーー

 

「……本当に我も甘くなったものだ」

 

フッと笑いながら自嘲気味にそう呟き、ギルはホームに戻るため歩いていた。

 

自身の変化を考えながら、ギルは夕暮れの街を歩いていった。


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