海燕さんも浮竹さんも出てきます。
それではどうぞ!
入隊することに意味がある
あれから、大分月日が経った。
恋次から聞いた話だが、ルキアが朽木家の養子になったらしい。
恋次は止めようとせずに友として喜び、応援した。
けど、ルキアは嬉しい顔をせずに、複雑そうな顔をしていたんだとよ。
そりゃあ、そうだよな。
子供の頃は貧乏暮らしだったし、霊術院に入ると、同期である俺たちとは実力の差ができて、まるで自分が取り残され、独りぼっちの感覚だったろう。
そこで困惑を拍車に掛けるように、貴族の朽木家の養子になれ、って言われたらさらに困惑するだろう。
きっと天秤にかけていたんじゃないか?
友をとるか朽木家をとるかで・・・
結果、恋次に押され、朽木家をとってしまった。
もしかして、ルキアは止めて欲しかったんじゃないのか?
・・・なんてことを恋次が愚痴でこぼしていた。
俺は別にルキアがどんな形にでも決めたことなら口出しはしない。
ルキアが決めたことに止める権利なんて幼馴染でも友でもそんな権利はない。
だから、恋次がやったことは正しいと思う。
ただ、時間がなかっただけだ。
これからゆっくり時間をかけてこのことを話せばいいんじゃないかな!
さて、湿っぽい話は終わり!
次は恋次についてだ。
恋次は死神になるための試験を1次、2次、と終わらして、もう少し月日が経てば死神になれる感じだ。
吉良と雛森も同じ。
俺か?
俺は成績が超優秀だったため特例で先に死神になれるんだってさ。
読者の諸君。
前に雛森が俺のことを霊術院では問題児扱いしていたらしいが、事実だ。
俺はモノを壊したり、俺と恋次を中心に一騒動起きるなんてしょっちゅうだ。
だが、しかぁし!
俺は転生者で神様からもらったチート特典付きだぞ。
優秀にならないわけがない!
とまぁ、なんやかんやで、俺、死神になれましたっ☆
そして、配属された隊が・・・
「一三番隊か・・・ラッキーだな」
イィィィヤッホォォォォゥゥゥゥゥィィィィ!!!!!
一三番隊だってよ!俺の大好きな一三番隊だぜ!
浮竹さんもいるし、海燕さんも生きてるし、ルキアと同じ隊だ!
こんな嬉しいことはない!
俺は内心、心の中でお花畑が咲き乱れ、ハッピーな気持ちになりながら、一三番隊舎へと向かった。
おっといけね、スキップしてた。
会って早々、変人なんて思われたくねーしな。
「・・・・・・どこだここ」
隊舎には入ったのはいいんだけど・・・只今、絶賛迷子中でゴザイマス。
少し前の俺のハッピーを返せ!
これじゃあ、海燕さんに会う所かルキアとも会えねーぞ・・・トホホ・・・
なーんて、考えていると俺の少し先の部屋から怒鳴り声が聞こえた。
『オラオラ!何こんな所で油売ってんだテメーら!見せもんじゃねーぞ!持ち場に戻れコラ!』
「!!・・・今の声ってもしかして・・・」
海燕さんの声っぽかった。
俺はすぐさま声が聞こえた部屋へと向かう。
そして、襖を開けた。
「・・・”はあ、どうも?”・・・何だその挨拶は!?」
「ひぃ・・・!?」
「副隊長が名乗ってんだぞ!オメーも名乗って『よろしくお願いします!』だろうが!!!名は何だコラ!」
「・・・く・・・朽木ルキア・・・です」
「ホウ・・・で?」
「よ・・・よろしくお願いします!!」
・・・何だこの展開・・・
今、海燕さんがルキアの頭を鷲掴みにして、恐怖を植え付ける(?)説教じみたことをやってる。
「お?オメー、ここに何の用だ?」
海燕さんが俺に気づいた。
それと、同時にルキアも振り向く。
「え・・・!?きょ、京夜!?」
「よ、ルキア。お前も一三番隊に所属されたんだな」
「なんだ、お前ら?知り合いか?」
俺とルキアは置いてけぼりにされている海燕さんに経緯を話した。
「へ~、お前ら幼馴染だったのか。しかも、所属された隊が2人とも同じ所だなんてよ・・・偶然というか運命というか・・・」
「ちょ、ちょっと海燕殿!これはきっと偶然です!運命だなんてそんな・・・」
おい、どうしてそこで過剰に反応する。
それと、気のせいかもしれないが、頬が少し赤いぞ。
「まぁ、それは置いといて、オメーにはまだ自己紹介をしてなかったな。俺は一三番隊副隊長の志波海燕だ!よろしくな!」
「はい、よろしくお願いします!俺もさっき自己紹介しましたが、改めて。俺は鬼柳院京夜です。早く霊術院を卒業した特例者です。よろしくお願いします」
「ルキア、お前もこんな風にしていれば良かったんだぞ」
「うぅ・・・も、申し訳ございません・・・」
海燕さんはルキアを指で指しながら、指摘をする。
ルキアは海燕さんに謝りながら俺のことを睨んでいるようだ。
どこの世界でも自己紹介は大切だからな。
常識だぞ・・・
「まぁ、そんな堅くなるなっての!オメーらを一三番隊に歓迎する!」
海燕さんは満面な笑顔を俺たちに向ける。
「一三番隊(ウチ)は隊長が体弱くてな!殆ど俺が仕切ってんだ!」
そう言い張る海燕さんはとても輝いて見えた。
「だから俺のこと時々間違えて『海燕隊長』って呼んでもいいぜ!」
「・・・はあ、考えておきます・・・」
「ハ、ハハ・・・」
ルキアは曖昧に返事をし、俺は苦笑いしか出なかった。
すると、スっと海燕さんがルキアに手を差し延べた。
「・・・は?」
「握手だよ!オメーらは一三番隊に入隊を決定したんだ。そうした以上、俺の仲間同然だ!これはその証みたいなもんだ!さっさと、手握れ!」
「は、はい!」
ルキアは慌てたように海燕さんと握手を交わす。
やっぱ、ええ人や!
下級死神の俺たちにもこういうことをしてくれるなんて!
涙が出そうだ!
「ほら、京夜、お前もだ!」
「はい。俺たちは仲間です」
俺は海燕さんと握手を交わした。
「・・・・・・・・・」
「?」
けれど、海燕さんはすぐに手放そうとせず、目を見開いた後、俺の手を見つめていた。
なんだ?俺の手になにか付いていたのか?
「海燕さん?」
「あ、ああ、悪ぃな。これで俺たちは仲間だ!」
なんだか歯切れが悪いな。どうしたんだ?
「そんじゃあ、オメーら!明日からビシバシしごいていくからな!覚悟しとけよ!」
「は、はい!」
「覚悟しときます」
どうやら杞憂だったようだ。
海燕さんはいつも通りだ。
「よし!今日はこれで解散!」
「今日はスゴイ人に会ったな」
「ああ、本当にスゴイ人だ」
俺とルキアは並んで帰っている。
こうやって帰るのもいつ以来だろうか。
「しかし、問題児であったお前がこんなにも早く卒業するなんて。しかも、特例で」
「おいおい、俺は確かに問題を起こしまくっていたけど、一応成績はトップクラスだったからな」
「な、なに!?そうだったのか!?」
ちなみに1位をずっと独走していた。
「人を見かけで判断するなよ?それにしても・・・クックック、俺を特例で先に卒業させるって聞いた教師陣の顔!今でも思い出して笑えるな」
あの目が点になるのは面白かった。
ま、なぜか担任だけは平静としていたけどな。
もしや、俺の実力を知ってたのか?
「と、京夜、送るのはここまででいいぞ」
「お?そうか?」
といっても、朽木家までは大分距離があるぞ。
もしかして、自分が朽木家の養子だとバレたくないのか?
「あ、あの、京夜・・・」
「ん?」
「その・・・聞かないんだな。どうして私が早く入隊できたことを」
「別にお前が話したくないんだったら話さなくていい。もし、話せる日が来たら話してくれ。いつでも聞いてやる」
「京夜・・・ありがとう・・・」
「はて?なんのことやら?」
「フフッ、それじゃあな!」
「ああ!また明日な!」
ルキアは俺に踵を返し、そのまま走り去っていった。
俺はその後ろ姿を見えなくなるまで手を振っていた。
「海燕、仕事は順調かい?」
海燕が書類をまとめていると一三番隊隊長の浮竹十四郎が覗きこんでいた。
「た、隊長!?出歩いて大丈夫なんすか!?」
「大丈夫だよ。あまり寝すぎていても体に悪いからな」
「それはそっすけど・・・」
「ところで、今ヒマか?お茶でもしないか?」
「ええ、いいっすよ。丁度、仕事も一段落したところなんで」
「それじゃあ、いつもの場所に行くか」
2人は移動し、池が眺められる廊下でお茶をした。
「悪かったな。新人の相手を任せてしまって」
「なに言ってんすか。いつも隊長の代わりをしてるんすよ。気にしないでください」
「本当に君には感謝しているよ・・・ところで、どうだ?君の目から見て今回の新人は?」
「1人はまだ慣れてないから緊張してるっすね。まぁ、朽木家の養子になったばかりって聞くし、環境がコロコロ変わってついて行けてないってのもあるかもしれないっすね」
「ふむ・・・そうか・・・」
「だとしても、あいつ礼儀がなってねーっすよ!俺が挨拶したってのに返ってきた言葉が『はあ、どうも』っすよ!」
「ハハハ!きっと海燕が纏っている雰囲気は友好的なんだよ!」
「やめてくださいよ・・・副隊長の威厳が・・・」
「で、もう1人の方は?」
「もう1人は・・・」
そこで一旦言葉を区切る海燕。
考えながら、何かを思い浮かべているようだった。
「どうした?」
「あいつは・・・スゲーやつだと思います」
「どう言う意味だ?」
「俺があいつと握手した時、感じ取ったんっすよ。霊力を」
「霊力が高いのか?」
「確かにあれは並の死神の霊力じゃないっす。でも、他にも何か不思議な力がありそうなんすけど、よくわかんねーんすよ」
「不思議な力か・・・」
「それに、あいつは俺を超える逸材かもしれないっす」
「なに!?君がそこまで賞賛するほどなのか!?」
「あいつから感じた雰囲気?みたいなものなんっすけど、あいつは俺を超え、隊長になれる器があると感じました。ま、ただの勘っすけどね」
「君がそこまで言う新人か・・・いやぁ~、今回の新人は期待ができそうだ!」
「ハハ!俺もあいつらには期待してますよ・・・」
そこで、海燕は自分の右手を見つめる。
つい先刻、京夜から感じたもの。
それは、底知れぬ力。
それが善なのか、悪なのかわからない。
(けど、俺はあいつらの仲間だ。絶対に護ってみせる!)
そう決意した後、池を眺める。
池から呼応するように、カコン!っと音が鳴った。
いかがでしたか?
今回はサラサラと書けました。
それでも何か違和感があったらお教えください。
次回は何を書こうかなぁ~